剣士と守護の楯

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第三話 「依頼承諾〜修史side〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Syuuji‘s view

 

 

 

「ちょっと待てや、コラ。おい!!」

 

 

「修史、口を慎め。任務を言い渡すとこだぞ。それと言葉遣いが悪い。」

 

 

誰が慎むか、こんなかっこうさせられれば口も悪くなるわ。

 

 

「なんなんだよ、コレは?装備って女装なのか?普通、武器とかじゃないのか?」

 

 

「甘い、甘いぞ。修史ぃぃぃぃぃぃぃぃ。女装こそ最強といっても過言ではない。

特に修史みたいな女顔・・・げふんげふん、じゃなかった。男前なのが着ることによって、その効果は二倍、三倍にも膨れ上がるのだ。」

 

 

なんだ、そのどこぞの漫画みたいな装備は。しかも女装がか。女顔って言わなかったか。

 

 

「効果云々は別として、馬鹿相手の素人には有効かもな。本物相手だと意味はないだろうが。しかし、本当に似合っているな。真一郎と遜色ないぞ。」

 

 

「真面目に批評しないでください。それにその真一郎って人と比べないでください。その人に対しても失礼です。」

 

 

「失礼にはならないぞ。真一郎は女装すると綺麗だぞ。本当に男なのかどうか疑問を持ってしまう。女であるボクでさえ、自信を失くしてしまう可能性もある。」

 

 

「ほぉ、そんなにか。・・・うちの修ちゃんとどっちが可愛い?」

 

 

「そこ、ガチで聞くな。」

 

 

「え〜、修ちゃん固いよ。」

 

 

固くない、俺は普通だ、どこもおかしくない

 

 

「まぁ、修史の言い分は放っといて。

今、現在なら断然に真一郎に軍配が上がる。

なんといっても女装させられている年数が長いからな。

対して、修史は女らしさがない。

まぁ、これは初めてしたんだからしょうがないとしても、普段のしぐさからものが違う。

というより本当は女だろうという気がしてならない。

きっと今も女装させられて男にでもナンパされているんじゃないか。」

 

 

 

 

 

ちなみにその頃の真一郎はというと

 

 

「にゃはは、相変わらずスカートでも違和感ないね。真一郎。」

 

 

「うるさいよ、唯子。どうして私が女装なんてしなきゃいけないの?」

 

 

「真一郎は男のかっこうでいてもどっちにしろ、ナンパされるから変わらないでしょ。

そりゃ恭也くんみたいにかっこよかったり、耕介さんみたいに包容力があったら恋人みたいだけど、真一郎じゃね。」

 

 

「ぐっ、恭也くんや耕介さんなら確かに・・・」

 

 

「えっと、わたしにはよくわからないけど、今の真くんならわたしたちといても違和感ないよ。」

 

 

「ぐはぁ。」

 

 

小鳥の口撃によって、胸を押さえてうずくまる真一郎。

 

 ちなみに真一郎の今の服装というと淡いピンク色のしたワンピースとその上に羽織るために淡い色の紫のカーディガンとワンポイントにネックレスをしており。ナチュラルメイクで赤いハイヒールである。

 

 どこからどう見ても女性としか思えない。

 

 

「ど、どうしたの。真くん。」

 

 

「小鳥、小鳥。それ言ったら駄目だよ。」

 

 

「どうして?真くんによく似合ってるって褒めてるのに。」

 

 

「……」

 

 

訳がわからないという表情の小鳥と苦笑を浮かべるしかない唯子といじけている真一郎。

 

真一郎の怒りが頂点に達するときに男が声を掛けた。

 

 

「ねえ、そこの彼女。キミだよ、よかったら・・・ああああああ、ぐぁ。」

 

 

声を掛けてきた男(生け贄)に合掌。

 

 

 

 

 

その真一郎って人も苦労しているんだな。

 

普段からさせられているなんて・・・

 

 

「並ばせて見て見たいな。」

 

 

「断固拒否します。」

 

 

課長の言うことに即答する俺。

 

これ以上課長に喋らすと話が進まなそうだから、次の仕事を聞くことにしよう。

 

 

「で、この女装になんの意味があるんですか。」

 

 

「修史には次の仕事で女装して潜入、要人を護衛してもらう。

ちなみに胸パッドは特殊加工で防弾性だ。凄いだろう。」

 

 

「そりゃ、凄いけど。女装する意味がわかりませんが。」

 

 

「それは今回の任務である潜入先の私立セント・テレジア学院はカソリック系の完全寮せいの女子校だからだ。」

 

 

「えっ……女子校?」

 

 

「うん。」

 

 

「女子校に単独潜入?俺がですか?」

 

 

「うん。修ちゃん、うらやましい〜。」

 

 

そんな楽しそうな顔するな

 

嬉しくもなんともない。

 

 

「お、降ります。そんな任務降ります。」

 

 

「降りられません。」

 

 

「降ろさせてください。俺には無理です。女が苦手な俺にまともな護衛が到底出来るとは思えません。こんな任務まっぴらご免です。」

 

 

「さっきのセシリアの任務では出来ていたじゃないか、最後は公衆の面前で鼻血を出してぶっ倒れていたけど。」

 

 

っく、まださっきの痴態を引き出されるのか。

 

 

「さっきとは状況が違いすぎます。リスティさんも俺が女性に囲まれて護衛するなんて自分には最悪の環境だってことは理解されているでしょう。」

 

 

「確かに私立セント・テレジア学院といえば高級官僚や財界の親を持つ娘が通われていることで有名なお嬢様学校だ。しかし、物は考え物だぞ、修史。」

 

 

「なにが言いたいんですか。」

 

 

「培養された清らかな百合の花たちがお茶会を催しているような場所なんだぞ。ボクの家の近くにある聖祥とは訳が違う。」

 

 

「それでも女子校であるのには変わりません。」

 

 

「修ちゃん、『ごきげんよう』とか言われるんだぞ。」

 

 

「だからどうしたんですか。それと課長が『ごきげんよう』とか言わないでください。気持ち悪いですから。」

 

 

「がーん・・・・・・修ちゃんが冷たい。」

 

 

部屋の端に移動して、背中を向けて床にのの字をいじいじと書き始める課長。

 

あぁ、もうめんどくさい。

 

 

「……パパ、元気出して。」

 

 

ぐぁぁ、虫唾が体中を這い回る。

 

そういった瞬間、俺の目の前に普段より凛々しい課長がいた。

 

 

「さぁ、改めて任務の説明をしよう。」

 

 

「……お願いします。」

 

 

俺が疲れた表情で促すとリスティさんが口を挟んできた。

 

 

「しかし、男だったら最高の環境じゃないか。」

 

 

「そうは思えません。」

 

 

「修史しか頼めないんだ。任務を引き受けてくれ。」

 

 

「しかし、俺たちの任務に失敗は許されません。失敗は死を招きます。自分にとっても、護衛対象にとってもです。それでも俺に行けと言うんですか。」

 

 

「うん、でも失敗はできない。」

 

 

「他に誰かこの任務につくんですか。」

 

 

「アイギスから潜入するのは修史だけだ。サポートとして学院の外にはいる。」

 

 

「俺じゃなくてもこの任務は出来るでしょう。シールド4の三上さんがいるじゃないですか。三上さんは女性だしうってつけです。」

 

 

「三上に学生の真似をしろと言うのか?教師としてならともかくそれはムチャだ。」

 

 

ちなみに三上先輩の四捨五入で40の大台に乗る。

 

 

「教師として潜入すればいいじゃないですか。」

 

 

「駄目だ。修史、よく考えろ。護衛対象は学生なんだ。

できる限り対象の近くにいるには同じ学生のほうが都合いい。

教師だと常にいられるわけじゃないからな。それに全寮制の学校だと伝えただろう。」

 

 

「ますます無理です。俺に女子寮で生活なんて……」

 

 

「それならボクにいい考えがある。」

 

 

「ほう、リスティの案を聞こうじゃないか。」

 

 

「……激しく嫌な予感しかしませんが、聞かせてください。」

 

 

俺がそういうとリスティさんが小悪魔的な笑みを浮かべた。

 

聞く前から嫌な汗が頬をつたう。

 

 

「簡単なことさ。女子寮が駄目というなら、女子寮での生活に慣れてもらえればいい。つまり……今からさざなみに行こう。」

 

 

「リスティさん、ものすごく聞きたくないのですが、俺にさざなみ女子寮で暮らせと仰られているのですか?」

 

 

「オフコース。それ以外になにがあるんだ。」

 

 

「嫌で「それいいね。」」

 

 

俺の声は空しくも課長の声に遮られた。

 

なにをいうこのバ課長。

 

俺にあの人外魔境に行けというのか。

 

前に無理矢理、リスティさんにテレポートで連れて行かれたときは宴会という名の悪夢だった。

 

特に、真雪さんが徐々に魔雪さんに変わって絡まれるとアリ地獄にはまったが如く、抜け出すのは限りなくゼロに等しい。

 

酒が飲めるといってもあれだけはなんとしても回避をせねば。

 

 

「なにをいうんですか、あの場所に行くことと任務は関係ないじゃないですか。」

 

 

「「え〜。」」

 

 

「二人とも、『え〜』じゃないです。」

 

 

「さざなみに行くのは冗談としても、任務は命令だぞ。シールド9、如月修史。」

 

 

「う……」

 

「女装で任務を行なうことに関しては私とリスティの趣味は……入っていないと思われる。……多分。」

 

 

多分かよ、絶対入ってるだろ。

 

 

「これはお前の体躯、護衛能力を考慮された上でのプランだ。上層部もこの案で行くことで了承を得ている。ふざけている訳じゃない。これは仕事なんだ、是が非でもやってもらう。」

 

 

こう言われたら断ることなどできないじゃないか。

 

でも、よりによって護衛先が・・・女子校・・・か。

 

 

「修史、やってくれるか。」

 

 

「わかりました。行きます。行けばいいんだろ。」

 

 

「わーい、わーい。」

 

 

「ヤッター。」

 

 

俺の目の前に課長と先輩、リスティさんだけでなく後ろで情報を集めている女性オペレーターが万歳しながらハイタッチを繰り返す人達がいる。

 

ちくしょう、殴りたい。

 

俺、人生の選択誤ったかな。

 

 

「……護衛対象は誰ですか。」

 

 

「護衛対象はこの二人だ。一人は春日崎グループの令嬢であり、唯一の跡取りの三年の春日崎雪乃、もう一人が父親が弁護士をしている椿原蓮だ。」

 

 

課長がデスクの上にファイルを広げた。

 

写真も一緒についている。

 

対象の二人を写真で見てみる。

 

二人ともかなりの美形だ。

 

テレビで見る下手なアイドルより可愛いと思う。

 

でも、彼女達が女であることに代わりはしない

 

女は異星人と同じだ。あんなふにふにした胸を持つ軟体動物は俺には理解不能だ。

 

孤児の頃から、周囲は男しかいない俺にとってそれが当たり前の生活を送ってきたんだ。

 

そんな俺が女子校に通うなんて悪夢としか思えない。

 

そんな考えをしてると課長が説明をしてきた。

 

 

「彼女達は現在、とある事情から陰謀に巻き込まれる危険性を孕んでいる。

既に警備体制は整っているが、こと数週間に不穏な動きがあって警備の強化が必要になった。そこで、最も護衛しやすい形を考慮した結果、学生として潜入することが一番だと判断した。そして、シールドナンバーをもつ者で学生に変装できるのは修史しかいないとの決定が下った。」

 

 

課長にそう言われた俺は再度、鏡を見る。

 

目元まで隠れた前髪、そばかす化粧、立ち方やしぐさは全く女には見えない。

 

それでも女に見えるのか?……結論、無理。

 

 

「……これはヤバイ。絶対ばれる。」

 

 

「大丈夫じゃないか、修史は身長低めでボクより少したかいだけじゃないか。顔は男とは思えないぐらい可愛いし、声も高い。どこに問題があるって言うんだい。」

 

 

「リスティさんの目は節穴ですか。」

 

 

「とにかく、頑張ってくれ。」

 

 

「修史、着任は明日だ。先ほど学院には転入の件は連絡をしておいた。」

 

 

明日から・・・随分と急な任務だな。

 

 

「明日から、お前は山田妙子だ。田舎の大地主の娘ということにしてある。」

 

 

「既に寮の部屋の内装は昨日のうちに、ボクと課長がしておいたよ。」

 

 

相変わらず準備に抜け目ないな。二人が決めた内装ってのが気になるが気にしないようにしておきたい。

 

 

「護衛することを知っているのは理事長だけだ。他のものには正体を知られないようにしてくれ。その他の資料と二人の資料は明日まで読んでくれ。それと今から別室で淑女講座に参加しろ。それでは健闘を祈る。」

 

 

「はい。……あの、淑女講座ってなんで「さぁ、行こうか。」ちょ、先輩。どこに行くんですか。淑女講座ってなんですか。」

 

 

「淑女講座は淑女になるための講座に決まっているだろう。頑張れよ、女装少年。」

 

 

「俺は少年じゃない〜。」

 

 

 

 

 

Others view

 

 

修史は先輩であるシールド3に連れ去られていき、この場に残るのは課長とリスティ、

 

数人のオペレーターのみとなった。

 

課長が改めて、リスティに向き直る。

 

 

「さて、本来の依頼に戻ろうか。」

 

 

「そうだね、修史も十分いじったことだし。今回の内容は修史と同じ護衛かな。」

 

 

「君なら大体予想はついているだろう。」

 

 

「まぁね。修史一人では心配だからもう一人潜入させたい。

しかし、アイギスには潜入できる人物に適当なのが思い当たらない。

そうなると外部に依頼するしかないとなる。

外部に依頼となると金もかかるが、それ以上に信頼の足る人物であり護衛能力に優れている人物でなければならない。

そうなると依頼する人物は限られてくる。

それでボクを通して恭也に依頼したいということかな。」

 

 

課長である神崎恭一郎は驚き半分、分かっていたような感じ半分で頷きながらリスティが指摘したことを肯定した。

 

 

「概ねその通りだ。修史も大分一端の護衛能力が身についたとはいえまだまだ甘いところがある。それに女性に関してはあれだから。楯となりうることができるのかが私としては不安なんだ。」

 

 

「親馬鹿だね、恭一郎。」

 

 

「否定はしないさ、血が繋がっていなくとも修史の成長を見てきたんだ。愛情も湧くさ。」

 

 

「そうだね、ボクも似たような立場だからその気持ちはわからなくもないかな。それでは早速依頼を届けることにするよ。他になにかあるかい、恭一郎。」

 

 

「依頼に関してはその資料に全て書いてある。後は、先ほどのDVDを渡しておくよ。」

 

 

「ああ、サンクス。これで今日の酒のつまみができたよ。それじゃあ行くね。」

 

 

リスティが行くと伝えたときにはリスティの背中には金色に光る三対六枚の羽が、リアーフィンが広がってはじけて、辺りを閃光が包む。

 

その後にはリスティの姿はもうなかった。

 

 

「頼むぞ、リスティ。」

 

 

恭一郎は天を見上げ、誰にも聞こえないように呟いた。

 

 

 

 





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