剣士と守護の楯
第0話 「プロローグ」
様々な状況下での要人警護を得意とする組織があった。
組織の名は『アイギス』
『アイギス』は近年設立された大手警備会社である。
社歴は浅いながらも、その前身はユーロ圏内のとある国で発足した超法規的組織であり、当時の権力者たちにより、あらゆる手段を用いて自分たちを護るべく創設された。
組織はそのあと、一般の警備会社に変化しながら大企業化・国際化の道を歩む。
その過程でも警察関係者OBや政府関係者の天下りなどを積極的に取り込み、権力機構との太いパイプを維持・拡大していった。
こうして『アイギス』は一般家庭のセキュリティから企業警備までこなす表の顔と設立当初からある政治権力者から犯罪者でさえ護衛する裏の顔を持つこととなる。
この『アイギス』で、裏の顔をとなる個人護衛を任務としている部隊が特殊要人護衛課である。
その存在は一般には秘匿されている。
主要メンバーは10名弱。あらゆる個人情報が非公開とされ、シールドナンバーという番号を冠される。
彼らは各国政府のシークレットサービスを超えるレベルの仕事を一人でこなし、狙撃すら防ぎうる能力を持っている。
如月修史は『アイギス』特殊要人護衛課に所属する新人エージェント。
コードネームは『SHIELD−9』
様々な状況下での『護る』ことを信念とし、神を卸し、神をも殺す一族がいた。
その名は『永全不動八門一派・御神真刀流・小太刀二刀術』
裏の世界では『最強』の名がふさわしいほどの暗躍がされていた。
しかし、その一族にも終わりが来た。
十年ほど前、本家の御神家の長女である御神琴絵の結婚式当日に結婚式場ごと爆破された。
後に残ったのは、瓦礫の残骸と無残にも飛び散った彼らの遺品だけで、結婚式に参加した人間は一人もその姿はなかった。
生き残ったのは、四人。
御神美沙斗。
旧姓は不破美沙斗、不破家の長女。御神家の長男であり、当主でもある御神静馬に嫁いだ。
彼女は娘の風邪が長引き、医者に見てもらうために病院に立ち寄っていた。
そのために彼女は生き残ることができたのだ。
そして、彼女は復讐に走った。
彼女が愛する人の仇を討つために。
最愛の娘を兄に預けて。
御神美由希。
御神家当主、御神静馬と御神美沙斗の最愛の娘であり、次期当主である。
彼女が結婚式当日に風邪をこじらせて、病院に行かなければ彼女と母親は共に跡形もなく消し飛んで生きてはいなかった。
そんな彼女は母親から伯父である不破士郎に託され、義理の父となった士郎のもとで御神流を学ぶ決意をしたのだが、その義父もすぐにある爆弾テロによって故人となる。
その後、兄が義父が残したノートや様々な文献を用い、兄の師事のもとに『御神流』を習い、理不尽な暴力が許せないほど真っ直ぐに育っていた。
不破士郎。
御神家当主 御神静馬と同等の能力を持ち、唯一対抗できる力を持った不破家随一の剣士。
長男なのだが、家を継ぐことを考えておらず、弟の一臣にその役目を譲る(押し付けるともいう)。
一族滅亡後に、護衛を続け、アルバート議員の護衛時に滞在していたホテルのチーフパティシエである高町桃子に惚れ、結婚し、高町性を名乗る。
その後、子供を授かるがイギリスで護衛中に爆弾から少女を護り、命を落とす。
生まれるはずである最愛の娘の顔を見ないままに。
不破 恭也
父・不破士郎の内縁の妻、夏織との間に生まれた私生児として生を受けるも数日で捨てられ、母の情を知らぬまま士郎と武者修行と称して各地を放浪とする旅を続けることになる。
ただ母親のことは夏織としか名前しかわからない。
士郎本人に「全ての御神、御神不破を越える剣才」と言わしめた存在。
当時の年齢は齢五にも満たぬ幼子である。
小さい頃から父である士郎についていき、武者修行で全国各地を渡り歩いていた。そのため、御神家の結婚式には参加せず、五歳の時にテロ組織「龍」によって御神宗家が爆弾テロに遭い帰る家を失い、爆破から逃れた。
その後は父の結婚で高町姓を名乗るようになり、御神流の鍛練を続ける。
父の死後、家族を護る重責がのしかかる様になり、強さを求めるが故に無茶な鍛錬をした結果、重傷を負ってしまう。
剣士としては完成できないと考えているようだが、いまだに弟子である美由希からは一本も取られていない。
やがて、運命は交じり合う。
修史は『アイギス』の先輩諜員の手で服を剥ぎ取られ、特殊装備に無理矢理に身を包まれる。
「お、降りますっ、そんな任務降ります。」
慌てふためく修史の肩を直属の上司が優しく諭すように叩く。
「それはできない。」
「俺には無理です。」
しかし、上司は聞く耳持たず、これ以上ないくらいの笑顔で断言する。
「大丈夫、お前ならきっとやれる。だってこんなにカワイイし、よしよし。ハァハァ。」
実に楽しそうに送り出してくれた。
最後のは気にしないようにしよう。
海鳴にある有名な喫茶店・翠屋。
その店内で喫茶店に似つかわしくない雰囲気を醸し出している席がある。
向かい合う男女は何も知らない人が見たら恋人たちの語らいに見えるかもしれない。けれども、その二人の周囲に纏われている雰囲気がそれを否定する。
「…………ということなんだけれど、この依頼どうするんだ、恭也。」
「春日崎グループのご令嬢と椿原議員の娘ですか。一人で行うには少しきついかもしれませんね。」
「ああ、そのあたりは心配はいらないだろう。学院にはエージェントが入り込んで学院の警備をしているから多少の輩なら入ることさえできないから。それに『アイギス』からも来る予定だからね。」
「『アイギス』ってあの『アイギス』ですか。」
「その『アイギス』さ。護衛には『アイギス』から来るのとで二人で行ってもらいたい。やってくれるかい。」
「わかりました。しかし、どういった方法で潜入するんですか。潜入先は女子高ですよ。それと一緒に護衛する名前はわかりませんか。」
「護衛者の名前は如月修史。まぁ、変装はしてくるんじゃないか。潜入方法はいくつか案があるんだが、どうする、恭也。」
実に楽しそうに提案する銀髪のリスティ槙原。
その提案の内容に困惑気味に対応していく高町恭也。
「ごきげんよう」
そんな挨拶がまかり通る場所。
それが良家の子女が集まる学校の一つ、『聖テレジア女学院』
学校に潜入した修史と恭也のハードな生活が始まる。
あとがき
時雨 「なにやってんのよ、あんたは」
uppers「ぐはっ、いきなり飛び蹴りはないんじゃないか。」
時雨 「あんたがなんか血迷ったことしているからでしょ。」
uppers「血迷ったことってやってみたかったことをしてなにが悪い」
時雨 「うわっ、開き直った。この男。あ、すいません。挨拶遅れました。『あとがきアシスタント』の時雨です。」
uppers「執筆者のuppersです。やってみてお嬢様学校って絡めることできるなぁと思い、はじめてしまった愚か者です。」
時雨 「あんた、卒論や実習のレポートあるでしょ。しかも携帯でもオリジナルの書いているし。死ぬわよ、あんた。」
uppers「ぐっ……わかってるわい、わかってるけどやめられない。仕方ないことなのさ。ふっ。」
時雨 「かっこつけてんじゃないわよ。ゲシゲシ。」
uppers「ちょ、それい……じょうは、ぐわっ。ほんt……とうに、死……ぬ。」
時雨 「あ、やりすぎちゃった。まぁ、明日には復活するからいっか。それではこれからよろしくお願いしまーす。」
恋する乙女と守護の盾、とのクロス〜。
美姫 「アイギスからは修史が派遣されて、そこに恭也も加わるのね」
一体、何が待っているのか。
美姫 「楽しみにしてますね〜」
ではでは。