このSSではとらいあんぐるハートシリーズ、魔法少女リリカルなのはシリーズにおいてネタバレと私自身の個人的解釈及びオリジナル設定が入りますのでこのシリーズを見ていない方やゲームをプレイしていない方にはオススメは致しません。

 それでもどんと来いという方のみ下記へとスクロールしてください。


























     誰かの想いを誰かに……



     あなたに伝えられなかった言葉がある。



     あなたに伝えきれなかった言葉がある。



     あなたに伝えようとして伝えなかった想いがある。



     あなたに伝えた言葉がある。



     そう……



     この物語は誰かの想いを言葉にのせて紡がれる人々の想いが溢れる物語。



     あなたは『今でも優しい想いで語られる物語は好きですか?』



     『想いをかけがえのないあなたに伝えて』


     始まります。

















「あなたの左手は消せない、消えない。けど、家族になる私なら包むことができるのが私の我が儘」

















あー、なんだかなって思う。元々、私は伝えたいことは面と向かって話すのが性分なんだけど、本当に大事なことは言えないみたいだ。だから、こうして筆を取って筆先を走らせていくんだけどさ……改めて伝えるのって照れ臭いんだよ。

それでもこうして手紙でしか伝えられないものとか想いがあると思うんだ。

だから、今しか伝えることができることを伝えようと思う。

『香港警防隊』に所属するあなたではなく、友達の一人としての『菟 弓華』に。

これから私たちと家族になるあなたに送るものとして……

























私は御剣家の一員としては落ちこぼれの部類に入る。

高校生のとき、弓華が海鳴に来る前だが私は当時伸び悩んでいた。

それは忍者としての私もだけど、一人の人としても伸び悩み、毎日の日々を生きていた。

鍛練をしても自分の実力があまり伸びていないのは気付いていた。もとより私の実力は低い方だ。それでも自分の実力はまだ把握している方だと思う。

低いのを自覚しているから鍛練は徹底的に行った。休む暇を与えず、ただ、ただ……ひたすらにたった目の前にある遠い目標へと向かって。

でも、どんなに技ができても……どんなに鍛練へ時間を費やしても自信にはならなかった。

本当にこれでいいのか?

これで間違っていないのか?

これで私は大丈夫なのか?

いくら思考の渦に飛び込んでも抽出することはできずになにもかもが交わり、混ざり、私の頭では処理できなくなってしまう。

そんな気持ちのままにいつしか、ある放課後に瞳さんへ奇襲をかけた。

それまでにも何度かこうした奇襲から模擬戦をしている。奇襲が奇襲でなくなったら、それはもう奇襲とは言わない。いや、言えない。対峙したときにはそこは既に私ではなく瞳さんの土俵。奇襲が失敗したとはいえ、瞳さんとの応酬は当時の私にとっては学ぶものが多かった。

もし、死合いならば手段を選ばない私が勝つだろう。しかし、ただの仕合ならば私はほぼ確実に負けるだろう。そして私と瞳さんが行うのは仕合でしかない。だが、私たちに負けは許されない。私たちの世界は負け=死だ。敗北を喫した時点で死なのだ。

力量がわかっていようとも諦めることなどできやしない。

が、このときは何故か相川がいた。後から聞いた話だけど、相川が瞳さんに「放課後一緒に」って誘ったらしい……あんの女っ誑しがっ。

そのときは相川が瞳さんの前に立ち、私の一撃を受け止めた。そう……頭でだ。もちろん相川は意識を失った。人体の急所や頭部は鍛えようとしてもそう簡単に鍛えられるもんじゃない。ましてや、当時は明心館空手から長い間離れていた相川だったしな。

さすがに昏倒した相川を放っておくことはできないから瞳さんに頼んで公園まで一緒に運んだ。それで瞳さんは用事があったから私が介抱したんだ。

ホントに相川が女だったらか、もしくは私が男だったらこんなにも悩まなかったんだろうなって思う。

なんでこんなにも綺麗な顔立ちで肌もツヤツヤしているのに女性でないのか、なんで私は相川と友人として知り合ったのかと悩んで悩んだ。その気持ちのままで期末試験も終わり、私たちは綺堂を除く七人でカラオケでの打ち上げをした。

発案者が誰だったのかはもう覚えていない。それでもあの時の私たちは幸せだった。ただ、友達という枠の中で満足していた。

…………いや、違うか。きっと私は怖かったんだ。あの時の関係を壊したくなくて。あの時の気持ちをごまかしたくて。あの時の笑顔を見ていたくて。

相川は無自覚でカラオケをしている最中に歌っては席を変える。いや、座る場所を変える。野々村を膝の上に座らせ、唯子の膝の上に乗り、瞳さん、井上、そして私の横に座ってその隣に座る人の心に対してもっとも必要な歌を奏でる。相川の声がどうしようもなく私たちの、私の心に響き、抗うこともできずに蹂躙されていく。

他の皆にはどういう届き方をしたのかはわからないが、私には心に奥深く突き刺さる。それが痛くて、当時の私にはその場から逃げ出したくなるほどに……

でも、その場の雰囲気もあるから壊したくなくて私は耐えた。耐えられてしまったんだろう。私は自らをごまかしたくて、偽りたくて、嘘の気持ちで塗り固めて、もう一人の自分を造りだした。

造りだしたのは相川の友達としての御剣いづみ、ごまかしたのは真一郎様を愛する一人の女性としての御剣いづみ。

このときはまだ恋や愛なんて感情とはわからなくて、それがとてももどかしくて、でもそれが今の距離が心地好くて甘えてた。

はっきりと自覚したのはあの頃だ。弓華は知っていると思うが、私たち御剣の家が受け継ぐのは御剣蔡峨流。そして、SPとして動いたりするときに必要な資格がある。



『総合諜報・戦技一種資格』



そしてその資格は柔道や空手のように級位や段位によって振り分けをされる。




















当時、まだ高校二年生だった私は三級だった。空也兄様や澪姉様からは優しく「ゆっくりと精進しなさい」と言われ、火影兄様からはきつく「いづみならやれるはずだ」と当たり前のように言われ、父様からはぶっきらぼうに「行ってこい」と、母様からただ優しく笑って送り出され、祖父からは温かい眼差しで「頑張ってくるんじゃよ」と手を振られ、鋼兄様からは目線を合わせることなく「悔いのないようにな」と、弟の尚護からは希望に満ちたけがれなき瞳で「いづみ姉様ぁ−」と大きな声で大きく手を振ってくれていたのを今でも鮮明に覚えている。

私はその年の冬休みの間に二級への試験へと臨んだ。

二級に受かれば憧れの澪姉様へとまた近付ける。そう思うだけで私は昂揚してきたのを実感していた。けれど、当時の私からすれば二級の壁は厚かった。身体能力から考えれば普段の私ならばほぼ確実に合格点を貰えたはずだった。しかし、私の精神面は硬く脆かった。

硬いというのは確かに強固である反面、私のように一度壊れてしまうと戻すのが困難という一面も併さる。

私はもしという話は好きじゃないが当時の私が柔軟な思考をしていれば、今の私とはまた別の道を歩むことになったのではないかと思う。

柔軟な精神状態というのは常にクッションを入れているということ。もし、思考とは違う思考の死角の出来事でも臨機応変に対応できるからだ。死角に対応できるようになるには日々の鍛練を積み重なることでしか対応できない。しかし、私は北海道から上京していて学業はもちろん、最低限の生活費しか渡されなかったので学業の傍らにバイトをして稼ぐしかない。

「働かない者は食うべからず」とはよく言ったもんだ。私自身それは身を持ってよく知っている。

それで鍛練の時間は思ったようには取れなかった。

当たり前か……思考を分割することはできても私の体は一つしかないのだから。

鍛練は早朝、学校の休み時間、放課後のバイトまでの僅かな間、寝るまでの深夜にも近い時間、後はたまにバイトが休みになる少し長めの時間だけ。それでも私の鍛練はそれなりに濃密な時間であったと思う。だが、私は高校二年生の冬休みに試験を受けて、結果は不合格。



鍛練が足りなかった……

時間がもっとあれば……

途中でミスしなければ……

と、たらればを山のようにいくら並べても結果はもう変わらない。

私たちがいるこの世界は優しくない。優しい人達は知っている。けれど、世界の大多数がきっと優しくない。

この世界は矛盾と理不尽が満ちている。

ある人は言う。「君がいると邪魔なんだ」 私がなにをしたっ?

ある人は言う。「君の存在そのものが悪だ」 だから、私が一体なにをしたっ?

ある人は言う。「ココカラキエロ」

この世界は優しくないのは誰のせいでもない。人が歩んできた有史の中で憎悪がない世界などありはしなかった。それは人だけが歩むことができることだと思う。人が有史に現れて以来、生物の頂点にいられたのか?と疑問に思ったことはないか?人は進化に伴い、形を変えていったから。知恵と知識を持つ生物だから。動物も知恵や知識はあるだろう。それでもより大きく進化した『人間』には敵わない。

それは何故か?『人間』が唯一道具を使うことができるからだ。チンパンジーも人間と同じように道具を使うことができるが、それはその程度しかない。人間ほど上手く道具を使う存在は未だ発見されていないのだ。だから、人間は生物の頂点と言えるのだろう。

生物の頂点たる人間は繁栄と破滅を繰り返してきて今がある。生物の、特に人間は欲求がある。この場合は欲望だ。際限がない。今、欲しいものが手に入ると次に欲しいものがある。それが欲望であり、無限にあり続けるもの。

私は弓華ほどじゃないが、高校を卒業してから際限なく多くの人を見てきた。その中にはさざなみ寮や高町の人達みたいな優しい人達はいるけれど、そんな人達はごく少数だと思う。

海鳴にいる人達は優し過ぎる。あの場所は私にとって、転機の場所であり、大切でかけがえのない場所であり、私の故郷は第一が旭川で第二が海鳴と言えるほどに。

だからこそ、鈍らせる。だからこそ、重い。

それが原因で落ちた訳ではないけれど、当時の私にとっては重すぎた。きつかった。

そして、私は期待に応えられずに絶望した。

それからの私は主観的に見ても客観的に見ても酷いの一言で済まされる。

学校には行かず、家には帰らず、路上に座り込んで瞳には生気の色は戻らずにただ無気力に過ごし、寄ってくるたくさんの男からを適当にいなしていた。

そこに通り掛かったのが相川だった。運命の偶然なのか、それとも巡り合わせの中での必然か。私はこの瞬間をどう思ったのだろうか?自問自答で私の中にいる二人の御剣いづみが自らの闇と正直な心を見つめ直した。

見られたくなかった……なにを?

今の御剣いづみをだ……どうして?

私と相川は対等だったから……それが?

崩れてしまう……それで?

崩れたら私は自らを支えられない、奮い立つことができない。私は一人だとなにもできないから。私は弱いからきっと縋り付いてしまう……誰に?

私の内にある誰かが疑問の声から甘美な誘いに代わる。

相川にだ、相川真一郎という私が学生時代に想いを馳せたたった一人の男にだ……いいじゃないか、縋り付いたって。みっともなくたって。

怖いんだ……なにが?

私と相川の関係が変わってしまうことが……当たり前だろ。他者との関係なんて常に変わるものだ。それがどんな関係になろうと今まで築いてきたものが変わることは当たり前のこと。けれど、そこに築かれたものは御剣いづみと相川真一郎だけのもので御剣いづみが相川真一郎を信じていることには変わりはない。

本当にそうか?そう言い切れるのか?……そんなのわかる訳ないよ。無責任なのかもしれないけどさ、最後に決めるのは自分自身なんだ。関係が変わることは必然であるならば気持ちの変化は必然なんだ。

私が相川を想うのは必然なのか?この気持ちはまやかしじゃない?……それはもうわかっているのだろう。私が答えることじゃないし、さっきも言ったけどさ、最後に決めるのは御剣いづみというたった一人の恋する女の子なんだ。

私が恋か?恋に浮かれているから試験に落ちたんだな……違う!!現実を見つめろ、御剣いづみ。理由がどうあれ、試験には落ちた。それが事実であることに変わりはないんだ。もしかしたら他の平行世界には合格した世界もあるかもしれない。でも、ここにいる御剣いづみは落ちたという事実があるだけだ。今はただ休めばいい。落ち込んで、休んで、慰められて、後ろを振り返って、前を向けるようになればいい。ただ慰めるのが目の前にいる相川真一郎という想い人なんだ。

そうか、ならば少し休もう。私は疲れたんだ……ああ、休め。つかの間の休息なんだから。



そう思うと私の中にあるナニカが弾けて混ざる。

それは私が一つの理想として頭の隅に掲げていた女性像。おしとやかで聡明で優しく慈愛に満ちていて誰からも好かれる理想像。一番そう思える女性が身近にいた。義姉の御剣澪を模写した御剣いづみが相川真一郎の前にいた。

私は気付いたら相川の家にいて、相川のことを「真一郎様」と呼んでいた。そのことに嫌悪感など覚えることはなく、どこかそのことに幸福感を抱いていた自分に気付く。

それに気付いたとき、理解し、歓喜に内心満ち溢れた。

それから私は借家には帰らず、相川の家にいた。その様は新妻のように、近所からはどんな噂をされようとも私は気にしないようにした。

私は本家での末席とはいえ御剣の名を持つ者だ。御剣の基本は隠密と諜報。よって、技能は自ずと決まってくる。気配の断ち方、探り方、隠蔽工作などを重点的に教えられる。

ごく自然に、当たり前に、耳の中へと入ってくる噂の内容に頬がにやけそうになるぐらい嬉しい気持ちになるのと同時に家に置いて貰っていることへの申し訳なさが同居する。

私はこれでいいのかと自問する。けれども、真一郎様の家にいることでの安堵感が思考を遮る。思考の隅に追いやられ、もう一人の私が出てくる。御剣いづみではなく、有り得たかもしれない未来の相川いづみが。

御剣いづみとしては有り得ないほどに真一郎様へと献身的に尽くす。もし、知っている者がいれば思わず「誰だ、あれ?」と言うほどに。

でも、第三者として見る私はとても幸せそうで御剣など関係なく過ごすことができるんじゃないかと錯覚してしまいそうになる。そう……忍者を辞めて、裏の世界から身を引き、一般人として退屈な日常を過ごすことを夢見てしまう。















真一郎様の家に何日か泊めていただき、私は抱かれた。私から迫った。例え、今の時間が夢なのだとしても真一郎様との確かな繋がりが欲しくて。浅ましいことや卑怯なことだってこともわかっている。でも、このときは真一郎様へと必死に縋り付いてないと今にも崩れそうで立つこともできなかった。情けないのかもしれないが、私は弱い。身体能力は高いと思う。けど、私は弱い。唯子よりも瞳さんよりも神咲先輩よりも綺堂よりも弓華よりも、なにより武力を持たない野々村と岡本よりもだ。でも、抱かれたことに私はとてつもない幸福感を感じている。それが泡沫の夢でもいい。たった一度きりの夢だとしても私にはかけがえのない確かなものとして証が刻まれたのだから。

真一郎様は私を愛してくれた。それが偽りでもいい。真一郎様は違うと否定するかもしれないけれど、私は愛してくれたと私が感じる。それでいい、自己満足だが私をこんなにも満たしてくれる。

言葉でもなく、物でもなく、確かに私だけに築かれる証。私だけに与えられる唯一の証。

その証が私の体に刻まれる。それは確かに不変であり、誰にも覆すことなどできやしない。例え、神様なのだとしても。

それから学校で明らかな違和感を感じた。なんというか学校にあってはいけないもの、ある訳がないもの。それを確かに感じてしまった。幸いにも真一郎様は気付いてないのかもしれないけれど、違和感は大きくなってくるのを強く感じるようになった。

そして、私たちは出逢ってしまった。

学校からの帰り道、真一郎様と久しぶりに二人きりで帰ることができた冬の日。

物陰から出てきたのは戦闘服に身を包んで鋭利な雰囲気のままで誰も寄せつけないように存在する刃物を持ったあなたが。

雰囲気は違うが、姿形は普通の留学生として馴染んできていたあなたが。

真一郎様はすぐに気付いてしまった。気付いて欲しくなかったのはあなたもだろう。今は違う想い人がいても闇から救い出したのは紛れもない真一郎様を想っていたのだから。

あなたがそこから去った後に火影兄様がきて、あなたが『龍』の手足の一部である泊龍で「もう関わるな」と言葉だけを残してだ。

信じられなかった。信じたくなかった。そう思うほど学校でのあなたの演技は完璧でいたから。

二人して呆然としながら気付くと真一郎様の家にいた。先程見たことを否定したかったけれど、否定なんてできなくて事実であることを受け止めるのに時間を要した。

私は御剣の名を持つ者としてどうすればいいのだろうか。除籍に近い身としてこの件に関わってもいいのだろうか。関わるとなると今の生活を手放すことはほぼ確実だ。それでも愛しいこの人は自ら関わるのだろうか。

やはりと言うべきか、私の視線だけで言いたいことを察したのか決意を伝えてくれる。その決意は無駄だと知りながらも前へと進むのはやめやしない。その姿に私はやめて欲しいとは口には出せず、ただ頷くだけ。なら、私のやることは決まっている。改めて惚れた真一郎様を護り抜くだけだ。

それには主従関係から対等に戻る必要がある。『龍』は裏社会に属する者なら知らない者はいない。非情さ、狡猾さ、なによりその組織力と隊長クラスの実力。末端はそこまで実力の練度や経験はない。

泊龍。当時の弓華にそこまでの力量があるかは図れなかったが、火影兄様からの話だと要人の暗殺が目的だったから弓華だけの単独任務とは限らない。必ずバックアップをする人間がいるはずと辺りをつけた。

バックアップがいるということはかなりの確率で真一郎様へと牙は剥く。主従関係はきっと、私にとっては甘えとなる。なら、私が甘えるのは終わりだ。

主従関係は終わり。仮だとしても私には久方振りに安寧できる唯一の場所だった。手放すには惜しい気持ちを心の奥底に押し込みながら、私は真一郎様へと別れを告げた。

一生の別れじゃない。別れじゃないのにどうして、どうしてこんなにも涙が止まらないのだろう。溢れ出してくるのだろう。どうしてこんなにも声が嗚咽をあげながら真一郎様を想うのだろう。

ああ、そうだ。私はこんなにも相川真一郎というたった一人の男を愛している。想いが溢れ出して止まらないくらいに。別れたくない。けど、別れなければいけない。この矛盾した気持ちが持つ故に。

なんとなくだけど、別れたらもう同じ気持ち、関係になることはないと思った。私がではない。真一郎様が私に対してだ。

真一郎様には瞳さんと同等のファンクラブが校内に存在する。……まぁ、私も会員なんだが。それに性分というか必ずと言っていいほど厄介ごとには関わってしまうだろう。きっと私の時と同様の危険性を含めるほどに。

でも、もう決めたんだ。全部が終わったら私は振り向くだろう。気持ちのどこかでは納得してないだろう。それでもだ、決めたことに後悔はしないと決めた。どんな結果だろうと受け止めると。

慰めてもらったのはこれで最後。そう、心に決めて立ち上がって数日後に決戦の時を迎えた。














場所は深夜の風ヶ丘。誰かが示し合わせたかのように暗闇の中で刃が擦れ合う嫌な音が響く。相川と協力してなんとか二人の暗殺者を退け、屋上へ向かう。そこにきっとあなたがいるとどうしてか確信があった。

屋上へと向かう階段を駆け足で上る。隣で愛しいと思う相川と。扉を開け放つ前に一息で呼吸を整え、決戦の場へと足を踏み入れた。

そこには月明かりを背にして、右手を刃の柄におき、悲哀の表情で佇んでいた。あの時はなんて綺麗なんだろうと思った。学校の屋上という場所にそぐわない服装なのに今はその手に持つものとか合わさって正装であり、全てが正しいように思えたんだ。けれど、そんな感情に浸ることもなく相川を後ろに下がらせて構える。私が得意としてるのは後の先。気配を絶つことはできるが、攻撃の際に『発』がどうしても出てしまう。それは裏社会に属していない瞳さんにわかってしまうほどに稚拙。当時の力量を省みても負ける可能性は高かった。

それでも負ける訳にはいかない。後ろに相川がいる。相川が見てる。今の私は相川と一蓮托生なのだ。だから負けられない。

円を描くようにして回り、半円を描く頃にあなたは動いた。呼応するように雄叫びを咆哮してあなたの一閃を紙一重で避ける。懐に飛び込み、私は『円架』で斬りかかるも容易く防がれる。けど、諦めずに斬りかかった反動を使って左足を足元目掛けて勢いよく掬う。が、それもジャンプでかわされて同時に私の顎をかち上げようと蹴りを上げられる。私は無理矢理顔を横にずらし、ギリギリのとこで避けて一足飛びにその場を離脱する。

一瞬の攻防の末に息つく暇なんてものは存在せず、間合いの外にいる今だけで息を整える為に丹田へ集中して気を高める。浅く、深い呼吸を繰り返しながらあなたを見る。


強い……


ただ、そう思った。数合交えただけだが、おそらくは私よりあらゆる面で上だということはわかった。力も速さも経験も戦略もなにもかもだ。それでも何故だかな、不思議と負けるとは思わなかった。

それと勝負はそんなに長くはかからないと感じていた。実力が伯仲していることと戦闘のタイプが似ていること、色んなことが考えられたけど、勝負は一瞬。刹那にかけるこの想いだけは譲れないから。

再度、手の中にある『円架』を握りしめて向かい合う。実力は負けている。だからと言って実力が下位であるから必ず負けるとは限らない。あなたがなにを迷っているかはわからないけど、どこかに勝機はきっとある。諦めたらそこで終わりだ。

じりじりと足をすり合わせながら間合いの一歩手前までいき、呼吸を深く深く丹田へと落とす。落とした瞬間にギリギリの間合いに入り、爆発させるように踏み込む。同時にあなたが動いたのに気づいたが、止める訳にはいかない。

一瞬早くあなたが先手を打ち込もうとして逆転の一手を放つ。


放った技は『蔡雅御剣流・陽炎』


速度の限界を超え、相手に対して認識の誤差を生じさせる後の先の技。私がもっとも得意としており、あの時は唯一通用する技と思ったからだ。

あなたは迷っている。戦う前からそう思った。屋上であなたを見つけたときに悲しく哀しく辛そうな顔をしていたから。いや、違うか。本当はあのときからだ。私と相川に鉢合わせてしまったあのとき、あの場所で。見られたくなかったんだろう、知られたくなかったんだろう。特に相川と野々村の二人に。

私たちの中でも二人は親しかったから。相川は留学生であるあなたを優しくしていた。それはもう嫉妬で焼け焦がれるぐらいに。

野々村は会って間もないにも関わらずに旧来の友のように打ち解けていたから。野々村の性格を考えれば驚愕ものなんだ。幼なじみの相川と唯子は当たり前として、気を許しているのは年長である瞳さんとどこか似た雰囲気を持つ綺堂、ちびっ子同盟の岡本、チャット仲間の知佳ぐらいだろう。

私はそれほど仲が良い訳ではないから。正直な話、羨ましかったのだろう。嫉妬とは違うな。ただ羨ましかった。もう戻らないと決めた私は今のスタンスを破る訳にはいけなかった。ましてや、相川と関係を持ってしまった今となれば余計だ。

野々村は純真だ。優しいから。あなたの『優しい』は半分嘘でできていることを知らない。けれど、もう半分の優しさは嘘じゃない。あの優しさが嘘でしていたと野々村が気付かないはずはない。あなたは本当に優しいから必ず止めてみせる。

野々村の為だけじゃない、相川の為だけじゃない、あなたの為だけじゃない、なにより私の為に、私自身の為に、御剣いづみが御剣いづみであるには負けられない。止める、誰でもない私の為に止めるんだ。

あなたが先手を打とうとして一瞬早く私の懐に飛び込み、腕を掴み、踏み込んでくる。私は『円架』であなたの左手を斬りつける。掠る程度であるが、それで充分。内心で「やった」とニヤリと笑みを作った瞬間に前身から背部へと突き抜ける感覚が襲う。数瞬遅れて吹っ飛ばされて屋上の柵へとぶつけられる。

声が出ずにその場で崩れ落ち、学校に来る前に食べてきた相川の料理を吐き出しそうになるも無理矢理堪えて飲み込む。気持ち悪いと思うが、これだけは吐き出せない。ここから近くて遠いどこかで相川の悲鳴みたいな声が聞こえる。

なんかこれだと普通は逆だよな、とこの状況なのにやけに思考は冷静だ。柵に掴まり立ち上がる姿は生まれたての小鹿や子馬みたいに膝がガクガクと震える。みっともないなと思うけど、逆転への布石はできた。後は仕上げを行うだけだ。なら、動け。私の体。後、ほんの少しなんだ。これさえ終われば事後処理は火影兄様に任しておけばいい。目の前の悲しいあなたを救うために今こそ動け、私。

あなたはトドメを刺そうとして突っ込んでくるがここに来て布石が発動する。いきなり動きが鈍くなるも構わずに突っ込んでくるあなたをいなし、腕を取る。あまり動きは変わっていなくても今の私にはそれで充分。それだけの時間が必要。腕を取った瞬間に私はあなたを背に背負い、足を足首から上へと刈り上げて跳ねる。

強引に宙へと浮かし、それでも途中で反転して着地を決めようとするあなたの腕をキメてコンクリートへと叩きつける。反転しようとしていたから側面から落ちるのは投げた私から見ても痛々しい。けど、今の私にはもう余裕がない。あなたを気絶させたのを確認すると同時に意識を落とした。相川の声がやけに近くなってきたなと思いながら。

それから起きたのは半日以上が過ぎたこと。火影兄様が事後処理に動いており、私は布団の上から動くことができなかった。相川は安全が確認されてから家に帰された。日常に帰ったことに安堵を覚えるも寂しさみたいに胸に穴があいたような感覚に襲われる。

それを理解したくなくてごまかすのに動かない体を錆び付いた撃鉄を引くように力まかせで起こす。痛みは尋常ではなく、少しの間だけ忘れられた気がするのがせめてもの助けかと思う。

時間は残酷だ。今でこそともに笑えるけれども、あの幸せだと思えた日々はもう来ない。あのときはなにかお互いに足りないものを埋めようとしたり、傷を舐め合うようにしていたのだから。それが必要なくなれば私たちの関係はなくなるのが必然と言える。だからこそあの出来事は過去のことだと言える。だけど、あれが正しい関係とは言えなくても私はあのときに幸せを確かにこの手に、体に、心に、温もりを感じていたんだ。

私は無理矢理跳ね起きた体に鞭をうち、家の中を這いずるようにしてあなたを探す。あの決戦の結果が夢ではなく現実に感じれるように。

あなたは離れの一室にいて、ただ正座をしたままなにかを償うように眼を閉じていた。私にはそれがなにかはわからない。けれど、その真摯さだけは見てとれた。

誰もが触れたら火傷しそうな感じでいて私は近寄ることができずにいたところ火影兄様が私の肩を叩いたかと思うと横を通り過ぎて触れた。そこには私が入り込めるものなど一切なく知らずに私は部屋を後にした。

それからどんなことをしたのかはわからないがあなたは普通にまた登校してきた。あなたがいたことには驚いたが、傍らに火影兄様がいたから無事に済んだのだとわかった。そのことが嬉しい。私はあなたにとって救いになれたのか、野々村にとってこれでよかったのか、相川を守れたのか、色々あるけど、今はこれでいいと思えた。














季節は流れ、私たちの学年は一つ上に上がってゴールデンウイークを向かえる。私は薫さんからさざなみ寮で真雪さんの漫画がアニメになるんだがなんだかでパーティーをやることになったらしい。真雪さん曰く「印税入ってがっぽがっぽ」だとか。ちょうどそのときに相川から電話があり、瞳さんのお祝いをするとこ。岡本に話したらさざなみ寮にも連絡がいったらしく合同になったらしい。

で、だ。つい、電話が鳴ったからとはいえ誰かの前で取ってしまったのがまずかった。目の前にいた薫さんには相川からの電話とわかったらしいとこから私が未だに相川へ気持ちが残っていることを見抜いたらしい。確かにまだあの決闘からそんな時間経ってないからまだ残っていないとは否定できない。否定したくない。

それで言葉少なく薫さんとはその場で別れて一人で湖へと向かった。海鳴に来たときからお気に入りの場所の一つであった。周りには人気のない場所で静かで落ち着く。私にはその雰囲気がとても好ましいものであった。

それから相川にとって、相川と関わる人にとって大切なことが起きた気がした。

確か私は山の中で『誰か』を見つけて、さざなみ寮へと駆け付けた気がする。もう誰かとはモヤがかかったように思い出すことはできない。ほぼ同時刻に相川は『ナニカ』を保護したのを片隅に覚えている。

しばらくすると確か五月という暦に雪が降り、瞬く間に景色は一面を白で覆われていく。それでも空は快晴で気温は昨日までと変わりがない。

『誰か』はその風景を「雪色」と呼んだ。

木々も雪で覆われ、空からも雪が降り続けるその景色は確かに「雪色」と呼ぶに相応しいのかもしれない。けれど、私が思ったのはそれだけだ。「雪色」と呼ぶ景色は美しいと思えるが、寂しいと思ったんだ。この雪は覆われて冷たいのだと。私が知る雪はこんなもんじゃない。故郷である旭川は柔らかく優しくなによりどこか冷たいのに温かいんだ。

当時さざなみ寮にいた人達と相川、唯子、野々市、瞳さん、綺堂、井上、私、あなた、それと『誰か』で雪合戦をしたのを覚えている。結果はよくわからないままで終わってしまったけれど、相川の隣に『誰か』がいたことだけは覚えている。それが誰なのかが私は悔しい。

なぜなら私を含め、ここら辺ぐらいから記憶が曖昧になり始めてきているからだ。この時期ぐらいから相川はどこかおかしくなった。どこがどうとは言えないけれど、相川がおかしいと感じるようになったのはきっとここにはいない思い出せない『誰か』なのだろうと思うから。

『誰か』になにを言えばいいのかわからないけど、この気持ちをぶつけなければならないのだと思う。なにより、待ち続ける相川の為にも。












それから高校生、最後の夏休みに綺堂の提案で海に行くこととなった。なんでも忙しい先輩方に英気を養う為だとか。そこには相川の為だというのがまる見えの綺堂がいた。

綺堂の案内で行くとそこには紫色の髪をした小学生と当時は無表情に近いメイド服に身を包んだ背の高い女性がいた。彼女らは綺堂の姪と姪の付き人らしい。未だに金持ちのことはよくわからん。

とりあえずは勉強がメインだから講師役として瞳さんが来てくれた。薫さんは勉強がどっちかというと苦手だということで辞退していた。手合わせできたかもしれないのに……

岡本とかは勉強が嫌いですぐに海に行きたがっていたけど、瞳さんと知佳がしっかりと手綱を握っていたから逃げ出すことはできなかった。かく言う、私も捕まった一人なのだが。

講師は瞳さんと唯子、知佳の三人で、時折あなたが入るくらい。私と相川って低レベルの争いをしてたんだなって改めて思う。低レベルというか底辺か?

まぁ、それはいいとして勉強は順調に進んで昼食の時間になって、どこからかカレーのいい匂いがしてきた。その匂いに釣られるように二人、いや二匹の食いしん坊がフラフラと歩き出していく。涎まで垂らしていくその様はゾンビに近いものを感じる。

まぁ、全部食べられるのは瞳さんと知佳に止められていたが。そんな中で相川は野々村や綺堂と談笑していたが、心のほとんどがここにはないような気がしていた。錯覚だと思いたいけど、そんなことはなかったのだと今ならわかる。

相川はここにいない誰かを求めていたのだと。それが私は誰かを知らないし、知っていても思い出せない。私ではきっと相川の雪を溶けやしないのだから。

温泉での覗き騒動でも魂の抜けたような返事で今はどうでもいいような気がした。海で遊んでるときも、花火をしているときも。でも、一つの出来事だけ相川が表情を変えたのを私は見た。あなたは見たか?相川の悲痛の表情を。

あれはきっと大切なナニカを失ってしまった表情だ。忍ちゃんやノエルさんはまだ大切といかなくても身近な人が失うのがきっと怖かったんだろうか。もしくは綺堂に同じ想いをさせたくなかったのかは私にはわからない。わかるはずもない。他人の苦しみは全く同じ経験をしなければ共有することは決してできないのだから。それは私もあなたも知っているはずだ。

そして、七瀬さんは最後だと言った。これで最後なのだと。

確か、彼女は風ヶ丘にある旧校舎にいたと相川と綺堂から聞いている。今はいない幽霊なのだと。

それでも彼女は目の前にいる。話せる。なのに、最後なのだと言う。

相川が激昂するように叫んでも七瀬さんと綺堂の表情は変わらない。悲痛なのか、寂しさなのか、私には判断がつかなかった。

話の内容を聞くと忍ちゃん達を助ける為に怨霊がいた洞窟で無理をしたのがいけないらしい。無理した直後に綺堂から霊力を貰えばまだよかったらしいが、そのときはそんなことを言ってられる雰囲気ではなかったらしい。

私は無力なのかなと思ってしまう。私では手を出せない場合でも私がその場にいればよかったのにと思ってしまう。きっと結果は変わらないのだとしても思ってしまうのはしょうがないことなのだと。

七瀬さんは最後の別れだというのに笑っていた。もう会うことはできないというのに。あの人は私たち皆の姉さんだった。生まれや出会いがどうであれ、私たちを見守ってくれていた。それが事実であり、真実なのは私の中にある。それは天と地がひっくり返ろうが変わらないこと。

彼女は最後まで私たちを妹のように接し、労ってくれた。姿が形なきものだとしても。そして、笑ったまま、光へとなり、闇の中へと消えた。きっと、いつしか海鳴という優しい場所でまた出会えると信じて。


















それから高校を卒業して、私たちは別々の道をゆく。相川は明心館空手を続けて大学へと、野々村は大学か調理師の専門で迷っていたが大学へと進んだ。一心不乱に無茶をする相川を見守りたいという想いもあったらしい。唯子は以前から考えていた体育大学へと進み、教職を目指すと。瞳さんは大学に進学しても変わらずに護身道を続けて連覇を続けている。綺堂は風ヶ丘を卒業後は大学を経て大学院へと進んだ、家のことをするには学ぶことがあるらしい。薫さんは退魔師を続けながら、大学を卒業、実家に帰って当主になったことによる愚痴を零された。知佳は海外へ飛び出し、世界的に有名な人のとこに行ったらしく、国際救助隊の副隊長だかになったらしい。岡本はバスケットの誘いを受けて大学から大阪へ向かった。向こうでも小さいエースで永遠の15番は変わらないらしい。他にさざなみ寮にいた人達は変わらずにいてくれている。

それで私は御剣に連なる者として、あなたは『法の守護者』と呼ばれる世界最高の集団『香港警防隊』へ入隊した。

入隊する前に火影兄様から聞いたよ、あなたにプロポーズしたけど断られたって。当時なら「どうして?」と問い詰めたのかもしれない。でも、今ならわかるのかもしれない。成長して大人になれたからわかるような気がする。

あなたは怖かった。なにをと言いたくなるかもしれない。否定するかもしれない。でも、私はそう思った。誰かと幸せになることが怖かったんじゃないかって。風ヶ丘での任務がもし、成功していたらあなたの闇は晴れることなどなかった。今でも晴れていないのかもしれない。だから、あなたはもっとも身近でわかりやすい贖罪として御神を選んだ。違う?

違うならそれでもいい。御神美沙斗を贖罪として選んで彼女に「私には資格がない」と言われて、正月に私を成田空港で紹介してから海鳴に住む高町恭也と引き合わせた。

彼は正に御神を体現していた。彼は自身のことを欠陥品と言っていたが、彼以上の存在なんて数えるほどにしか出会ったことがない。

そんな彼はとても優しく、なにより誠実だった。無口で無愛想な感じは見受けられるも彼の雰囲気は穏やかで暖かで包まれる気がした。

それでも彼は御神の剣士なのだと身をもって実感した。スイッチが入ったように彼からは感情が消え、能面の表情をつけたナニカがいた。あれは鬼とか修羅といった人ならざる者。私は理解してしまったんだ。彼にはどう足掻いても勝つというイメージが湧かない。

試合ならば私でもあなたでも、薫さんなどといい勝負はできる。けれど、死合いとなると話は別だ。きっと徐々に力の差を思い示されてやがて絶望する。敵わないのだと。

そんな彼はあなたに言ったらしいね。どんな話をしたのかはわからないけど、『許す』という尊いことを。あなたは許されたんだよ。

あなたは幸せになってはいけないなんて誰が決めた?決めるのはあなただ。他の誰でもないあなただ。

だから、火影兄様と繋いで欲しい。手を取り合って欲しい。あの火影兄様が勇気を出して手を掴んで欲しい。手を伸ばして欲しい。

火影兄様から言われたとかそんなことじゃない。私はあなたと火影兄様が幸せになるのを見たいだけだ。私の自己満足なのかもしれない。でも、あなたも火影兄様を互いに愛しているのは私から見ても誰から見てもわかるぐらいなのに、手を取り合うことができないなんて言わないでくれ。

これから家族になる者として、未来の妹として、親友として、私の願いを叶えてくれよ。

菟 弓華。

あなただけが私のもう一人の大好きなお姉様になることが許されるんだ。だから、菟ではなく御剣の姓を受けて御剣弓華と名乗れるのはあなただけ。他の誰でもないあなたは幸せにならなきゃいけない義務がある。誰よりも辛い道を歩んできたあなただから幸せになる権利がある。

 言ってたじゃない?空也兄様も澪姉様も「幸せになりなさい」って。

 だから、幸せになって。私の戦友 弓華というたった一人の女の子よ、幸せにあれ。









                                          御剣 いづみ  より




   あとがき



ふう、燃え尽きたよ、真っ白にさ
時雨「お?できたのね?どれどれ…………ちょっといいかしら?」
なんだよ?今、終わって燃え尽きたんだよ
時雨「この前、投稿したときになんでもう一つのが進んでいないのか聞いたことあったわよね?」
ああ、そんなことも言ったこともある気がするわ
時雨「で、今見たらほとんど進んでないし、これが出来上がってるのかしら?」
うむ、最近全く構想が出来ずにいたからこれと他のとこのが異様に進む、進む (笑)
時雨「…………ふぅぅぅ」
ん?どうした?
時雨「はぁ!!!振動・爆砕。ブレイク……ファイア!!!」
ぶぐぉ、おえ
時雨「まったくなにやってるやら。」
ちょ、いたい、いたい。足で顔踏んでる、踏んでるぅ
時雨「今回はいづみから弓華へ送られるものとなりました。いづみの中にある葛藤や闇にあるもの、いろいろありますが原作のいづみみたいに描かれているでしょうか?ビジュアルファンブックで原作者の都築さんもおっしゃってますが「努力」と「挫折」と「期待に応えられない情けなさ」「逃げ出したさ」そしてそれらを克服するという心情を表せてるいいなと思います。」
ぐりぐりってしたらだめ、だめ
時雨「他になにかあるかしら?」
他?他って…………あ、水色
時雨「は?…………見るな!!バカ!!振動・爆砕。ダブルブレイク……ファイア!!!……ふぅ、全くきっと浩の影響ね。こんなことするのわ。今度お姉さまとお仕置きしなきゃいけないかしら?」



いづみによって語られる過去から今の話。
美姫 「そして、少し未来の話って感じよね」
だな。弓華と一角の仲なら普通に話したりできるけれど、こういう事を語るのに手紙という形がまた良いかも。
美姫 「投稿ありがとうございました。今回も楽しませて頂きました」
ありがとうございました。



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