このSSではとらいあんぐるハートシリーズ、魔法少女リリカルなのはシリーズにおいてネタバレと私自身の個人的解釈及びオリジナル設定が入りますのでこのシリーズを見ていない方やゲームをプレイをしていない方にはオススメは致しません。

 

 それでもどんと来いという方のみ下記へとスクロールしてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     誰かの想いを誰かに……

 

 

 

     あなたに伝えられなかった言葉がある。

 

 

 

     あなたに伝えきれなかった言葉がある。

 

 

 

     あなたに伝えようとして伝えなかった想いがある。

 

 

 

     あなたに伝えた言葉がある。

 

 

 

     そう……

 

 

 

     この物語は誰かの想いを言葉にのせて紡がれる人々の想いが溢れる物語。

 

 

 

     あなたは『今でも優しい想いで語られる物語は好きですか?』

 

 

 

     『想いをかけがえのないあなたに伝えて』

 

 

     始まります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            「親友と書いてライバルと読み、対等に立てるたった一人の強敵と書いて友と読む人へ感謝を捧げる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うちが初めて本気を出せると思ったのはあんたやった。

 

 

 

うちを初めて対等に見てくれていたのがあんたやった。

 

 

 

うちが初めて本気で負けたくないと思ったのがあんたやった。

 

 

 

うちを『病人』としてではなく、ただ一人の『人間』として接してくれたのはあんたやった。

 

 

 

うちに体からぶつかって拳で気持ちを伝え、勇気をくれたのはあんたやった。

 

 

 

今だから言えるんよ。

 

 

 

当時はとてもじゃないんやけど、面と向かって気持ちを伝えるのなんてなんや恥ずかしくて言えんかった。

 

 

 

せやけど、今なら言えるわ。

 

 

 

ありがとう……晶。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

うちは中国生まれの父、鳳 俊瑛と関西生まれの母、鳳 小梅の間に生まれ、神奈川で育ったんや。

 

そんでな、小さな頃から病気を患っていたんや。

 

よく病院に入院していて真っ白で無機質な天井をよく眺めていた。

 

そんな時やった。

 

うちに白黒の世界から色づく世界へと変わっていったんは。

 

まだ赤ちゃんやったなのちゃんを抱いてきたお師匠とお師匠の袖を掴んで離さずにいた美由希ちゃん、優しく笑顔で話しかけてくれた桃子ちゃんが病院に来てくれた。

 

あん時になのちゃんが泣いてしもうてオロオロするお師匠が可愛かったのをよぉ覚えとる。

 

それから時々、桃子ちゃんの忙しい仕事の合間にうちを訪ねてくるようになったんのが今は懐かしい。

 

そんなある日のことやった。

 

お師匠と美由希ちゃんと三人で話していた時、お師匠がうちの読んでいるある一冊に目を向けた。

 

その本はうちの家系が継ぐ拳法『鳳家拳法』の中にある棍法の演舞の一つ。

 

お師匠が読みながら一節を病室で型の動きを繰り返していく姿は綺麗の一言やった。

 

その後、幼い美由希ちゃんを相手に棍法を演舞して見せた。

 

その時の雰囲気がうちにはとても眩しかったんや。

 

今、思えば当時は今みたいに洗練されたもんじゃなかったんやけど、ろくに動けなかったうちには眩しかった。

 

いつしかうちはお師匠を『恭也くん』から『お師匠』と呼び、目標とした。追い付くことはできなくてもあの背中を目指したくて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

それからうちは体調が回復して退院したらお父さんに拳法を習い始めたんや。健康の為やったけど、体が思い通りに動いて型が決まると気持ちよかったんや。

 

それがうちにはたまらん快感やった。

 

うちに家の拳法が合っていたんかはわからんけど、綿が水を吸収するように覚えてった。

 

爺ちゃんに言わせれば、うちは『天才』らしいんやけど……なんで体はこんなんなんやろうって思ってたん。

 

体がこんなんやったらそんな希望なんて持ちとうなかった。

 

希望持ってしもうたら失敗した時とか余計に辛くなるだけやってと思うた。

 

だから、うちはあの時、『今』を望んだんや。『未来』を選んだんやなく、楽しい『今』を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

それから両親がアメリカに店を構えることになり、引っ越すことになったんや。

 

けど、うちは嫌がった。ただでさえ、引っ越して新しい環境になるのにアメリカなんて言葉も通じへんのなんて耐えられへん。

 

うちはハーフやけど、日本人や。日本人でいたかったから他の国なんて考えられへんかった。

 

頑なになり、縋った。

 

どうしても離れたくなかったから。

 

一縷の望みをかけ、うちはみっともなくすがったんや。

 

けど、親からすれば冗談じゃ済ませられんかった。心臓の病を抱え、日本で身内以外にそんな迷惑をかけられる訳がない。

 

一応、神戸の爺ちゃんのとこもあったんやけどな、うちは関東地方で育ってきたんや。関西に住むなんてアメリカと同じように行きとうなかった。

 

どうしても行きとうなくて駄々をこねていた時に桃子ちゃんの名前が出たんや。

 

それで桃子ちゃんは快く了承してくれて高町の家に世話になり始めたん。

 

その時はもう晶はおったな。

 

最初は『なんやこいつ?』とか思ってたんやけど、今じゃあんただけにしかわからんこともある。

 

うちは居候し始めたときはまだ料理はもちろん家事なんてできなくて、肩身が狭い思いをしてたんや。

 

その中、オサルは当たり前のように台所で料理を作っておって、うちは悔しくて料理ができると言ってしもうた。

 

まぁ、当たり前なんやけど料理なんか作ることなんてできなくて桃子ちゃん達には慰められ、あんたには馬鹿にされたのを今でも鮮明に覚えとる。

 

馬鹿にされたのがものすごく悔しゅうてうちは母に料理を教えて欲しいと頼んで、鳳家だけではなく店のレパートリーを教えて貰おうた。

 

料理を教えて貰うのに桃子ちゃんに頼むのもあったんやけど、桃子ちゃんは忙しそうやったし、なにより桃子ちゃんではなく母に料理を教えて欲しかったんのとうちの料理として食べてもらいたかったから。

 

はじめは美由希ちゃんレベルとは言わんけど、あまり食べるものとは言えんかった。地道に料理を繰り返して、食べれるものが作れるようになったら作るのが楽しゅうなってきて、レパートリーも徐々に増えて、皆に料理を振る舞うことができるようになって、「おいしい」って言ってもらえて、いつしか料理を作るのがうちにとって当たり前になったんや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

月日が経っていつの間にかにココがうちの『居場所』やと思ってた。

 

うちを受け入れてくれる人がいる。

 

それだけで嬉しかった。

 

そんな中、うちとお猿で初めて喧嘩をした。

 

内容はくだらないことやったけど、当時のあんたは今と同じように全力でうちが羨ましいぐらい真っ直ぐに拳を撃ち込んできた。

 

うちは父さんや祖父ちゃんから教えてもろうた『鳳家拳法』での戦い方であんたの拳をかわして、掌底を爪先から足背と踵へ、足背と踵から膝へ、膝から腰へ、腰から背中へ、背中から肩へ、肩から腕へ、腕から掌へ螺旋の動きを体重に乗せて突き通した。

 

そしたら、あんたは体をくの字に曲げて途端にそのまま文字通り、数メートル吹っ飛んでいったんよ。

 

晶が吹っ飛んでいく先にお師匠の盆栽棚や美由希ちゃんのガーデニングがなくて、ほんまによかったわ。

 

……いや、あの時は初めて他人に『拳法』を使ったんで、もしかして死んでしもうたんじゃないかと不安ではあったんよ。

 

だってなぁ、あん時のあんたは吹っ飛んだらうちが声かけるまで動かなかったやないか。

 

あの時のうちははっきりと戦うというかうちが使う拳法で誰かにケガをさせるということにお師匠や美由希ちゃんみたいにしっかりとした覚悟を持ってへんかった。

 

晶が使う『明心館巻島流空手』はどちらかというと外気功と言われるもんや。外気功は簡単に言えば衝撃を外から伝えるものであるのに対して、うちが使う『鳳家拳法』は内気功を主に使う。

 

内気功は体内にある気を通し、衝撃を体内へと伝えるもの。

 

どちらも使い方次第では対象を死へと誘う技。

 

うちはその時、初めて鍛練ではなく誰かへと使ってしもうた。

 

晶が起き上がる直前までヒヤヒヤだったわ。

 

その心配もすぐに霧のように霧散した。

 

なぜって、そりゃあ何度同じように吹っ飛ばしても、うちから見たら嬉々として立ち上がって迎ってくる姿見てたらなんかバカらしくなったんや。

 

ああ、晶ならいいんや。大丈夫なんやって思ったんよ。だから、うちは晶以外にあまり使ったことはない。

 

そんなことを幾度となく、繰り返していつしか海鳴中央への入学式を迎えた。

 

当日までお師匠と美由希ちゃんは山篭もりから帰ってこなくて、皆が心配しとったんのを今では懐かしく覚えとる。

 

それから那美さん、久遠、忍さん、ノエルさんと知りおうて、花見をして、うちら二人一緒に翠屋で誕生日を祝ってもらえた。

 

特にな、誕生日祝いでな、たくさんの人たちに囲まれ、たくさんのおめでとうとプレゼントを貰ったのがうちは嬉しかった。

 

 美由希ちゃんからは晶とお揃いのゴスロリ服を送られたんのはあんたも覚えているだろうやけど、ホントに似合ってへんかったな。お互いに。

 

 宅配で送られてきたのが晶には明心館の館長から革手を、うちには中国の爺様からなぜか鎖鎌。……なんで鎖鎌やねん!!

 

お師匠からは晶にごっつい丈夫な腕時計を、うちには可愛らしい腕時計を。お互いに家事をやるから防水機能が付いてて、今でも宝物として使っておる。

 

フィアッセさんからは抱きしめて、うちらに伝えてくれた。

 

 

 

「生まれてきてくれてありがとう」と。

 

 

 

うちは嬉しかったんよ。こんなうちでも生まれてきてよかったんだと思えたから。

 

でもな……うちは思ってしまったから。

 

 

 

『今を、みんなが笑ってくれる今をなくしたくない』と。

 

 

 

今、思えばバカやったなってわかるんやけどな。あの時はどうしてもと目の前のことしか見えなかったからしゃーないっちゃしゃーないんや。

 

それから晶との弁当勝負。

 

結局は最終戦まで持ち込んでしもうたんがうちの落ち度やな。本当ならストレートに負かすはずが最終戦までいったからあの結果になったんや。

 

あれさえなきゃ、うちが確実に勝っていたのに。

 

……けどな、今思うとああなってよかったんやと思う。でないと、うちはきっと今でも嘘つきのまま過ごしてもうここにはいなかったかもしれんから。

 

うちが体調を崩して、弁当勝負は結局お預け。それでフィリス先生がいる海鳴大学附属病院へ入院。主治医である先生にはその時に言われたんや。

 

 

「レンちゃん、わかってるの?あなたの心臓はもう弱っていてすぐにでも手術しないといずれは死んでしまうのよ。」

 

 

わかってたんよ、言われなくてもわかってたんよ。

 

きっと、うちは長く生きられないだろうと幼い頃に伝えられたんやから。

 

でも、うちは未来じゃなくて、今を、今生きることを大事にしたかったんや。大切にしたかったんや。

 

だから、二回目に倒れて再度入院した時にフィリス先生からお師匠や晶、みんなに知られた時もうちは拒み続けた。

 

確かに手術をすればうちの心臓を治る確率はあるのかもしれん。

 

けど、けどな、もし、手術中にうちが死んでしもうたら?手術しても治らんかったら?

 

そしたら、うちはこの想いを秘めたまま後悔ばかりが残ってしまう。

 

思うてしもうたら止まらんかった。

 

山を下るように踏み締めるとかそんなんやなく、高層ビルの屋上から一気に落ちるようにうちは止められなくなってしもうた。

 

それから、うちは病院で無機質で怠惰な日々を送ってたんや。

 

誰になにを言われようと手術を受けようとは思わんかった。

 

例え、肉親である両親や爺ちゃんに言われたとしてもや。

 

それでもや。

 

そんな中でもあんただけは諦めんかった。

 

晶がうちのとこに来るまでの数日間になんで心境の変化があったんかは知らん。

 

けど、あんたは来た。それも大会当日という晶にとってとても大切な日に。

 

朝も早い時間で、病院も受付もまだ開いて間もない静かな病室へと病院に不釣り合いな空手着に身を包んだ晶が。

 

晶にとって正装と言えるだろう空手着は晶の決意が感じられた。

 

それでも信じられなくて、信じたくなくて、つい聞いてしもうた。

 

「な、なんであんたがここにいるんや?」と。

 

聞かなくてもわかっとたんやけど、それでも聞かなアカンと思ったから。

 

そしたら、あんたは堂々と自らの足で三戦立ちに立って、拳を前に出して宣言したのがうちには眩しかった。眩しすぎたんや。

 

あの時のうちは嘘に嘘を重ねて、晶みたいに立つことなんてできなかったから。

 

でも、うちには自ら引き返すことなんてできんかった。うちは弱いから引き返すことができんかった。

 

それでも嘘で塗り固めた自分をごまかしたくて、誰にもばれないようにしたくて虚勢で立ち続けた。

 

支えるものは自らついたたくさんの嘘だけ。
 
今でも倒れそうなうちの気持ちだけ。でも、うちは弱いから誰かに背中を押してもらわんと決心がつかんかった。

 

晶はそんなうちを後押しするためだけに大会をほっぽって、決闘を申し出た。

 

決闘場所は病院の裏にあるちょっとした公園。その中でうちと対峙したあんたはいくら拳を、蹴りをかわされても諦めんかった。何回、うちがあんたを吹っ飛ばしたって立ち上がってきた。

 

そんな晶にうちは棍を振り回しながら、飛んで蹴りを二発放つ。

 

放たれた技は『絶招・浮月双雲覇』。

 

最初の蹴りで体勢を崩し衝撃を与え、二度目の蹴りで骨が軋む嫌な音をさせながら晶は派手に吹っ飛んで背中を木へと強打し、その場に崩れ落ちた。

 

うちは思った。

 

晶じゃ止められんかったかというのと晶が止められんかったという相反する想い。

 

視界の隅に映るお師匠とフィリス先生、山科先生、見知った看護士さん達がおった。

 

お師匠は黙って見守っていて、フィリス先生達は目を覆い隠してオロオロしていたのが見えた。

 

うちは淡々と言う。

 

 

 

「あんたは勝てん!うちに勝てる要素なんか一個もあらへん!!」

 

 

 

うちが発した言葉にあんたはゆっくりと立ち上がって腹の底から反論の言葉を出す。

 

 

 

「負けそうなら戦うなってか!?ふざけんなよ、レン。おまえみたいな腰抜けと一緒にすんな!!」

 

 

 

獣のように咆哮をあげ、真っ直ぐに突き上げる。

 

 

 

「俺にはこの目がある!拳がある!足だって!!」

 

 

 

俺たちは生きている。と自らの存在を誇らしげにさらに吠える。

 

 

 

「俺は生きてる!戦える!戦わずに震えてるヤツにバカにされるほど弱くなんかねぇぞ!!」

 

 

 

あんたはボロボロになりながら、体中に土がついて、擦り傷をこしらえても、全身に痣ができても、今だけは痛みなんてないように地面にしっかり立って拳を真っ直ぐにうちへと突き出す。

 

 

 

「見えてるか……俺の本気を!!」

 

 

 

あんたの躯から放たれた闘気が収束していき、拳に集まる。

 

 

 

「レン、見えているか……おまえがどんなに無様か……!!」

 

 

 

うちは認めたくなくて虚勢を張り続ける。

 

 

 

「なに、言うてるんや……おまえ、自分のかっこ、わからんわけやないやろ……!?」

 

 

 

あんたは半身に構えて腰を落として、泣きそうな顔で消え入りそうな声ではっきりと呟く。

 

 

 

「わかるさ、だけど……どんなでも、おまえよりはマシだ。進むことをやめない限りは……!!」

 

 

 

そん時に理解してしまったんや。晶はなにが起きても真っ正面から受け止めて、戦うことをやめずにひたすら前へと進む強き者。

 

対して、うちは未来を怖がって、晶みたいな強き者を罵って、嘘で固めた仮面をかぶって虚勢を張り続けて、受け止めずに受け流して、うずくまって震えてる弱き者。

 

どちらが無様か?どちらが弱者か?

 

わかってしまった。

 

 

 

「……もう、わかってんだろ……レン!!」

 

 

 

あんたは踏み込み、拳を振り上げて尚、咆哮する。

 

 

 

「……どっちに進むか、わかんねぇなら、いつものおまえなら、迷わねーだろ!!!……いつだって俺たちには……前しか、ねーじゃんかよ……!!!俺たちの進む先は……前しか、前にしかないだろうが……!!」

 

 

 

わかってしもうても、止められんからうちは棍を振るい、あんたの拳を受け止める。

 

 

 

「生きることのなにが怖いんだよ!!」

 

 

 

受け止めた棍が軋む。

 

ひびが入って徐々に広がっていく。

 

あんたは止まらずにそこからさらに爆発的に踏み込み、突き出す。

 

 

 

「レン!!!」

 

 

 

突き出した拳が棍にヒビを入れて突き破る。

 

晶が放ったのは明心館空手巻島流の奥義の一つ『吼破』。それでも足りんかったから棍の上からゼロ距離でうちの寸掌を真似たのが明心館空手巻島流の奥義『吼破』の裏に当たる『吼破・改』。

 

突き破った拳はひび割れた棍の細かな破片を砕き、大きな破片は拳に突き刺さる。

 

突き刺さった拳から夥しい血が溢れ出てるのに余りにも痛々しいのに真っ直ぐに凛として立っていた。その姿がうちにはとても眩しかった。

 

ああ、こいつはバカや……どうしようもないバカや。でも、そんな晶だから、真っ直ぐな晶だからうちは対等でいられた。真っ正面からぶつかり合えた。

 

確かにあの勝負は負けたのかもしれへん。でも、うちは晶だけには負けたと思いたくなくて、また戦いたくて沸き上がるこの気持ちの行き場に憤りを感じながらもどうしたらいいのかわからなかった。

そうしたらあんたがその場で倒れたんよ。慌ててうちが受け止めると晶が呟いた言葉をよぉ覚えとる。

 

 

 

「レン……生きろよ……戦えよ……死ぬなよ……おまえは……俺の親友なんだから。俺の隣でおまえが張り合ってなきゃ……っ……それでなきゃ……つまんねぇだろ……」

 

 

 

うちはその言葉を聞いて胸の奥底になにかがストンと落ちた。虚勢で張り続けた仮面が砕けた。

 

仮面の下にあった、臆病で泣き虫で、淋しがり屋な『鳳蓮飛』という小さな少女がいた。

 

その後は気を失った晶を抱きしめて、お師匠がゆっくりと近付いてくるのを待っとった。

 

うちから晶を持ち上げて見慣れた不器用に微笑むお師匠から告げられた言葉にうちは力強く頷いたんや。

 

 

 

「……手術、するか?」

 

 

 

「……はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、うちの手術を成功して今は同年代と遜色ない以上に晶へと迫る勢いで運動している。

 

退院時には晶の拳もフィリス先生から完治のお墨付きを貰って駆け足で扉が壊れるような音を立ててもうすぐこの部屋ともお別れになる場面にやってきた。

 

その前にお師匠がうちに話してくれた。

 

 

「あれが晶だけの、晶にしかできない覚悟とレンへの想いの表し方だったんだろう。俺や母さん達にはできないことだ。」

 

 

お師匠がうちの荷物を片付けながらうちじゃなく、まるで自分に言い聞かせるようなそれでいて違うような虚空に問いかけるような様々な感情が折り重なっていたのが見て取れた。

 

それは桃子ちゃんやフィアッセさんも似たような顔をしていた。

 

後から聞いた話やけど、うちより年長であるにも関わらず説得できなかったこととその資格がないことに悩んでいたんやと。

 

きっと説得できるのは血の繋がった家族である両親や爺様だけと考えていたらしい。

 

確かにあのときのうちは誰に言われても首を縦に振ろうとしなかった。でも、あんただけは違った。諦めんかった。願っていたんや。

 

 それがあの晶の行動であり、願いやった。

 

 うちの多彩な攻撃を受け止め、真っ正面から拳を打ち込むことにこだわった晶。

 

 これからの空手の全国大会よりも、その拳で空手ができなくなることも、もしかしたら料理さえもできない可能性もあったのにも関わらずにあんたにとってはうちがいなくなることに比べれば替えるものがないとあんたはうちに示してくれた。

 

 それだけでうちは勇気が持てた。なによりも大切なものを。

 

 だから、うちは手術を行おうと思った。

 

 今を生きるのも大事であるが、未来を放棄してまで今に縋りつく必要はないのだと。今があるから未来があり、晶が、皆がうちとの未来を望んでいるのならその希望に生きたいと思う。

 

 今を一瞬に生きるのは刹那で儚くも美しいと思える。それは花火のように。ただ、それはすぐに消えてしまうもの。前まではうちはそう思っていた。

 

 けど、うちはもうそれは思えない。

 

 知ってしまったから。

 

 ウチを心配してくれている人がいることを。

 

 うちを見てくれている人がいること。

 

 うちを対等と見ていてくれている人がいることを。

 

 今、思えばなんであんなに意固地だったんやろう。やっぱ、体にメスをいれられるからか、それとももしかしたら麻酔の途中で死んでしまうかもしれないという恐怖もあったのか今ではよぉわからん。

 

 今になって思うけど、もっとうちに勇気があったならこんなにも悩まなくて済んだのではと思うときもある。でも、それはたらればの仮定でしかないんや。

 

 だからこそうちは今を生きてる。これからの未来を生きていく。

 

 どんなに泥臭くても地面に這いつくばってもうちは醜くてても生きてやる。

 

 お師匠がうちとかには家族や妹のような感覚やったからきっとうちの初恋は実らないけど、きっとこれからはうちにも出会いがあるだろう。

 

 うちには輝かしい未来が待ってるんや。

 

 その未来を導いてくれたんは晶、あんたやったことは忘れはしない。きっとこの気持ちはあんたには伝わらんやけど、それでも心の中じゃうちは数えきれない感謝をあんたに捧げる。

 

 諦めないこと、前へと進むこと、歩みを止めないこと、道を切り開いていくこと。

 

 生きることで大切なことや。

 

 教えたのは桃子ちゃんでも、肉親であるパパやママでもなく、お師匠でもない。あんただけなんや。

 

 うちは晶にたくさんのことを教えられて、競い合ってきた。うちはできる限り競い合いたいと願っている。あんたさえよければ一緒にこれからもよろしく頼んます。

 

 最後にもう一言言わせて、この言葉を言わないとうちはこれからのスタート地点に立つことさえもできんと思うから。

 

 

 

 

 

          『  あ  り  が  と  う  』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最高朋友的晶只想 一句,「謝謝,可以与 能遇 

 

最高の友である晶にたった一言伝えたい、「ありがとう、あんたと会えてよかった」

 

 

 

                                 鳳 蓮飛   より

 

 


   あとがき

 

 時雨「さて、懺悔の言葉はあるのかしら?」

 えっと……なんの懺悔でしょう?

 時雨「もちろん、投稿が遅れたことと予定していたはずのおとは違うからよ。」

 それはしょうがないだろう?リアルが忙しいんだから。

 時雨「それはあんたの都合でしょう?そんなもん、あたしには一切関係ないに決まってるじゃない。」

 俺の都合一切無視!?

 時雨「なにを当たり前な?浩なんて泣きながら嬉々とした表情で作品を作ってるわよ……うわ、あの表情はさすがにヒクわ。」

 違う!!あれは境遇の理不尽さに泣いているんだ。あんなのはただの……

 時雨「あ……あ、危ない。向こうからなにかが。」

 ただの……がっ、ぐふぅ、こ、これは、剣?!ど、どこから?

 時雨「これは?確か、美姫姉さまの貯蔵コレクションにあった投攪用の剣。

 な、なぜ……?

 時雨「ただのお仕置きでしょ?いらんこと言うから飛んできたんじゃない?……あれ?もう意識ないか。え〜では、今回の説明をさせていただきます。」

 

 時雨「今回はとらハきっての名コンビ、レンと晶の物語をお送りしました。どちらかというとレンルート準拠というよりは小説を見本としております。メインはレンの病気を中心とした二人の友情を描いたドラマであり、ありのままの「自分」を認めてもらうことで好きになることをテーマにしてます。

 もちろん、晶も最初からレンを説教できることはできません。特に高町家に来た当時なんて荒れていたのは原作をプレイしたことがある人はわかると思います。二人はとらハシリーズの中でも強いとは決して言えないと私は思っています。けれど、私はそんな二人が弱くも精一杯生きることに共感ができます。

 uppresのこの作品に込めた想いを読んで共感などしていただけたら大変嬉しく思います。

 

 それでは、次回の作品にまたお会いしましょう。それと浩はその顔どうにかしなさい。」




うひゃひゃひゃ〜、あひゃひゃひゃ〜、書いてる、書いてるじぇ〜!
だから、剣は拳は蹴りはやめて〜! 炎も雷もいや〜! ひゃっーひゃひゃひゃ!
美姫 「って、正気に戻りなさいよね!」
ぶべらっ!
美姫 「まるで私が無理強いしているみたいじゃない」
……違ったのか!? ぶべらっ!
美姫 「今回も投稿ありがとうございます」
今回は名コンビである晶とレンで、
美姫 「レンの気持ちね」
実際に思っていても口にはしそうにもない二人だけに、こういう手紙と言う形が余計に嵌るというか。
美姫 「確かにね。今回も楽しませてもらいました」
うんうん。ですが、少々残念なというか申し訳ない!
美姫 「HTMLでは幾つかの漢字が表示できないのよね」
ああ。送ってもらった漢字が『UNICODE』じゃないと表示できないものは?になってしまいます。
美姫 「なので、?になった部分は削除するしかありませんでした」
最後のレンの中国語表記部分で可笑しいと思われる方がいらっしゃるかと思いますが、そういう事情なのです。
美姫 「申し訳ございません」



▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る