このSSではとらいあんぐるハートシリーズ、魔法少女リリカルなのはシリーズにおいてネタバレと私自身の個人的解釈及びオリジナル設定が入りますのでこのシリーズを見ていない方やゲームをプレイをしていない方にはオススメは致しません。

 

 それでもどんと来いという方のみ下記へとスクロールしてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     誰かの想いを誰かに……

 

 

 

     あなたに伝えられなかった言葉がある。

 

 

 

     あなたに伝えきれなかった言葉がある。

 

 

 

     あなたに伝えようとして伝えなかった想いがある。

 

 

 

     あなたに伝えた言葉がある。

 

 

 

     そう……

 

 

 

     この物語は誰かの想いを言葉にのせて紡がれる人々の想いが溢れる物語。

 

 

 

     あなたは『今でも優しい想いで語られる物語は好きですか?』

 

 

 

     『想いをかけがえのないあなたに伝えて』

 

 

     始まります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     「愛する人との忘れ形身であるあなただけに送る受け継いできた願い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……すまない、美由希。

 

 

 

 

 

どうしても始まりの言葉は謝罪になってしまう。

 

今さら私が美由希の母親だというにはおこがましいと思う。

 

いや、本当はいけないのだと思っている。

 

どんなことがあったにせよ、私はたった一人の愛娘を自分の手から離したのだから。

 

この先、どんなに償いの言葉や行動をしたとしてもその事実は変えられない。

 

そう、変えられない。

 

……今まで私がしてきたことは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

あれからどのくらいの時間が過ぎたのだろう。

 

私が全ての日々から決別したと思っていたあの日から。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

運命のあの日、私は私の義理の姉である御神琴絵さんの結婚式に参加する予定だった。

 

幼い頃から病の為に枷を課せられて、御神として生きられなかった琴絵さん。

 

一度だけだが、琴絵さんと剣を交わしたことがある。

 

 

 

結果は私の惨敗。

 

 

 

あの時は少し自惚れていたのかもしれない。

 

射抜を十五という若さでほぼ極め、夫の静馬さんと兄さん以外に特別なルールとかない限り負けることなどなかった。

 

不破の次期当主である弟の一臣にさえ負けなかった私が鍛錬をほとんど行うことができない琴絵さんにほぼ手も出せないで負けたのだから。

 

 

 

『御神の舞姫』

 

 

 

その名に恥じぬ美しさ。

 

その名の通りに見惚れるほどの舞。

 

その名を呼ばれるに相応しい剣筋。

 

琴絵さんの全てが美しかった。

 

 

 

最後は神速からの奥義之伍『花菱』

 

琴絵さんの一番得意な奥義だった。

 

花火のような軌跡を突きと斬撃の花で浴びせる技。

 

この奥義を使えるのは当時ではあまりいなかった。

 

まともに使えるのは静馬さんと兄さん、琴絵さん。

 

他に挙げるとしたら御神の現役から引退した人が数えるほど。

 

私も今では一通りの奥義を使えるが、当時は実戦で使えるものでは射抜以外なかった。

 

その中でも琴絵さんの花菱は凄かった。

 

放った瞬間にはもう衝撃を受ける。

 

避けることができないので、方法としては迎撃するしか手がないのだ。

 

私はその軌跡を見ながら衝撃を自らの体に受けた。

 

 

 

 

 

その時はショックだったよ。

 

当時の私は自惚れていたんだ。

 

女性の中でも一、二を争う私が鍛練をほとんどしていない琴絵さんに負けるはずがないとどっかに思い込んでいたんだ。

 

 

目標としたのは齢十五。

 

高校入学を控えた春だったのを覚えてる。

 

それ以来は鍛練に力を入れ、琴絵さんを目標の一人として研磨してきた。

 

そして私は御神の剣士と同時に女性であることを強く意識し始めたのは幼少期の頃から従兄妹であり、兄の士郎の親友でもある御神静馬さんに恋心を抱いていることに気付いた時だ。

 

幼い頃から兄さんと静馬さんの後をついていく私と弟の一臣の様子を後ろから優しい笑顔で見守る琴絵さん。

 

それが御神本家と不破本家の未来を担う私達の幼い姿だった。

 

今、考えれば幼い頃から私は静馬さんに好意を抱いていたんだと思う。

 

 

 

どんな時でも優しかった人

 

どんな時でも強かった人

 

笑顔を絶やさなかった人

 

 

幼い頃から私は静馬さんに恋をしていたのだと思う。。

 

だからだろう。

 

私が中学になるぐらいから静馬さんの好みや好きな物を姉である琴絵さんや仲居のスミさんに聞いたり、琴絵さんから裁縫や編み物を習い始めたのは。

 

 

そのことを琴絵さんに聞くたびに言われる一言が

 

嬉しかった……

 

恥ずかしかった……

 

 

 

『美沙斗、がんばってね!!』

 

 

 

決まって私は答える。

 

 

 

『はい、ありがとうございます。』と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が意識し始めてきた時には私から静馬さんを誘おうと何度か声をかけようとしたのを今でも覚えている。

 

その度に私は金縛りにあったように声を発することができなくて、顔を赤くして俯いて逃げだしてしまいそうになる自分が嫌だった。

 

けれど、いつも助けてくれるのは静馬さん。

 

助けてくれる度に私は嬉しくなり、顔が綻び崩れるのを自覚していた。

 

その時の私は相当しまらない顔をしていたのだろう。

 

そんな状態が高校入学してからもしばらく続いた。

 

私が高校に入学してから兄さんから静馬さんにお見合いの話が来ていることを幾度となく聞かされた。

 

その度に私はどうしようもなく

 

 

 

強く……

 

 

 

暗く……

 

 

私の中にある負の感情が渦巻いていたんだ。

 

他にもその情報を持ってくる兄さんをどうやって始末しようかと考えている自分に嫌気もさしたこともある。

 

 

 

 私が十六の誕生日を迎える何日か前のある日に琴絵さんから静馬さんが私の誕生日にお見合いをするという話を聞いた。そのときから私はどうしようもなく駄目だった。

 

静馬さんが私の知らない女性と会っているというだけで嫌だった。それだけで私の胸は張り裂けそうでたまらなくて涙をこらえていたのを今でも覚えている。

 

 その日、母さんが家にいなくて兄さんになにか言われた気もするけれど、私にはなにを言われたのかまったく覚えていないから。

 

 

 

 

 

私は静馬さんがお見合いの日は眠れなくなり、不安になり、怖かった。

 

翌朝起きたときは目を赤いままで静馬さんと顔を合わせては心配してくれるのが嬉しかった。と同時に恥ずかしかった。

 

毎回の様に囃し立てる兄さんには無言で飛針を投げては余裕しゃくしゃくで避けられるのには腹が立った。

 

十六の誕生日を迎えるまで静馬さんは数えるのも億劫になるぐらいお見合いをしていた。

なのに、静馬さんは全て断っていた。

 

御神の次期当主として、寄ってくる綺麗な女性はたくさんいたのに……

 

 

 

 

誕生日の宴会の後に私は庭先にある池の水面に映る月を見ながら佇んでいた。

 

静馬さんが私の誕生日の日にお見合いをしていて十六の誕生日を迎えても喜ぶことは出来なかった。

 

 誕生日のお祝いの日にはお見合いで静馬さんはその両家の宴会の場には顔を出さなかったの。

 

今でも私は静馬さんと交わした言葉を覚えている。

 

 

 

 

 

 『……静馬さん。』

 

 

『よ、遅くなっちゃったな、十六の誕生日おめでとう……美沙斗。』

 

 

『…………。』

 

 

『怒ってるか?』

 

 

『っ、怒ってません!!』

 

 

『怒ってるじゃないか。』

 

 

『怒ってませんってば!!』

 

 

 『……ごめんなさい……』

 

 

 『………………』

 

 

 『あー、お見合いな。相手の人、いい人だったんだが……断ったから。』

 

 

 『……そうなんですか?』

 

 

 『親父には随分と小言を言われたけどな。』

 

 

 『当たり前です……どうして、どうして一緒にならなかったんですか?』

 

 

 『……嫁に欲しい子がいるからな。』

 

 

 『それって?』

 

 

 『物静かだけど、心のうちに強い意思を秘めている。少し気は強いが、優しい子で俺の兄弟子の妹だ。』

 

 

 『ぁ……』

 

 

『なあ、美沙斗……うちに来ないか?』

 

 

静馬さんはそうやって言葉を続けてくれた。

 

私は嬉しさのあまり涙が溢れた。

 

止まらなかった。

 

止めるつもりもなかった。

 

どうしようもなく涙がとめどなく溢れてきて堪えることができなかった。

 

そんな私に静馬さんは御神の歴史を護るその体で、御神の背負うその腕で優しくも力強く抱きしめてくれた。

 

もうダメだった。

 

今まで耐えていたけど、抱きしめられた瞬間にはダムが決壊したように私の口からは呻き声が漏れた。

 

 

 それから朝が来て目が覚めても夢だと思ってしまって、でも、やっぱり現実で嬉しくて確かに私には静馬さんと繋がったんだと幸せな気持ちになれた。

 

 朝一番に兄さんと会い、静馬さんが報告していたようだけど、なんか「な、なにぃ?正気か?本気か?」と言っていたのでしっかりと粛清しといたけれど、兄さんなりに祝福してくれていたのが嬉しかったので照れ隠しでもあったんだけれどもね。

 

それから私達は何度も心を通い合わせた。

 

まるで今までの蓄積していた想いを爆発させるように。

 

高校一年の冬に私は妊娠をした。

 

静馬さんとの子だ。

 

私と静馬さんはお互いに笑って喜びの声をあげた。

 

もちろん御神に関わる全ての善き隣人は歓喜の声をあげてくれた。

 

お腹の子が女の子だと知ると私達は悩んだ末に美由希という名をつけた。

 

 

美  貴女はどんなときでも美しく

 

由  貴女は私達が生きる理由であることに

 

希  貴女が御神の希望

 

 

となるように願いを込めて。

 

 

私は結婚を機に私は高校を辞めた。

 

クラスメートからは驚かれたが何度も『おめでとう』の言葉や私の子に対して『頑張れ』と貰った。

 

普通じゃない私達が祝福されることは素直に嬉しかった。

 

私が誕生日を迎える日、宗家では私の誕生日を祝ってくれた。

 

母の美影と兄さんが言い争って、一臣が笑っていて、琴絵さんが幼い恭也をあやしていたのを覚えている。

 

恭也はこの頃は一歳になった時だと思う。

 

私の十六歳になる誕生日の約一年ちょっと前に兄さんが生後間もない乳児を連れて来たときはびっくりした

 

問いただすと一言。

 

 

『俺の子供だ。』

 

 

としか言わなかった。

 

さらに詳しく聞いてみるとどうやら不破の分家に当たる不破夏織さんとの間に出来た子供だという。

 

私も何時か面識があり、お世話になったことがある。

 

確か琴絵さんと同年代だったかと……

 

琴絵さんとは違った魅力を持っていた女性。

 

家庭的で御神不破にいることが似つかわしくない女性だったと思う。

 

兄さんが恭也を連れて来る何日か前にいくつかの分家が襲撃されたことを母から聞いた。

 

夏織さんのその後の詳細はよく知らない。

 

それに知っていてもこれ以上は恭也がいないと話せない。

 

 

 

……話が逸れてしまったね。

 

昔を思い出すのはどうしても長くなってしまう。

 

 

 

 

それからは妊婦としての日々だった。

 

時折、美由希が元気よくお腹を蹴るのを感じるとたまらなく嬉しかった。

 

そして、来たるべき11月25日に美由希は産まれた。

 

待望の出産。

 

誰もが望み、誰もが喜び、誰もが願った美由希の誕生。

 

 

私は……

 

私達は…………願った。

 

美由希が世界中全ての人に愛されて育つことを。

 

 

 

運命のあの日まで美由希は誰よりも多くの人に愛されて育ってきた。

 

静馬さんと私で美由希に伝えたことがある。

 

美由希は覚えていないのかもしれない。

 

けれど、記憶の片隅にでも覚えていて欲しい言葉。

 

 

『美由希……お前はなにになりたい?御神の剣士か?それともお嫁さん?私達がなんでもならしてあげる。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

運命のあの日はやってきた。

 

琴絵さんの結婚式当日。

 

兄さんは恭也を連れて全国を回っていて、青森辺りで路銀が尽きたと電話があり、祝電だけ。兄さんらしいとも思いながらもやはり義姉の結婚式には出て欲しかった。

 

結婚式前日辺りから美由希は寝込んでいた。

 

熱が下がらず、心配になった私は琴絵さんに断りを入れ、静馬さんに最寄りの病院に連れていくことを伝えた。

 

静馬さんも行きたがっていたが、当主としての立場から行けないのを残念にしていた。

 

車で10分ぐらいのとこにある総合病院に駆け込み、美由希を診てもらった。

 

風邪と診断されたが、経過を見るために入院となったので私は病室で美由希を見ていた。

 

時計を見れば式は始まって、中盤辺りだろうかと考えていると外で物凄い音がした。

 

その後に建物を揺らす地響き。

 

私は最初理解ができなかった。

 

なんだ……今のは?爆発?どこで?

 

やめろ…考えるな。

 

想像するな。

 

私の頭の中で否定したいことなのにどうしても浮かんでしまうことがある。

 

それは……

 

 

 

私は美由希の病室に来た看護師に家に戻ることを伝え、宗家に戻って見たものは想像してしまったものだった。

 

長い時代、裏から支えていた御神宗家の家は跡形もなかった。

 

残るのは…………

 

建物の残骸……

 

赤く飛び散った血……

 

思わず息を止めたくなるほど焼け焦げた死臭……

 

誰かもわからない肉塊……

 

その全てを否定したかった。

 

これは夢だと。

 

現実じゃないと。

 

私は信じられないまま、式場までおぼつかない足どりで向かった。

 

そこで見たものは悲劇、惨劇としか言いようがない。

 

いや……そんなもんじゃない。

 

言葉じゃ言い表せない。

 

最初に見つけたのは一臣と母の焼け焦げ、なんとか本人だとわかるだけの死体……

 

それから夫婦で寄り添うようにして建物の下敷きになっている琴絵さん……

 

最後に爆発で半身を奪われ、御神の伝承刀である『龍燐』をなんとか握って息絶え絶えの私の最愛の人……静馬さん。

 

私ははち切れんばかりに静馬さんの名を叫んだ。

 

その度に静馬さんは口から血を吐き出してまで、尚、続けようとする。

 

私は「もう喋らないで」と言うが、止めようとしない。

 

静馬さんは龍燐を私に差し出し、受け取る私に笑顔を向け、いつものように私の頬を撫でてくれた。

 

それがたまらなく嫌だった。

 

もう最期なのだとわかってしまったから……

 

撫でてくれた頬は静馬さんの血で塗られていた。

 

私をいつものように撫でてくれた手を伝い、目を閉じて静馬さんと唇を合わせた。

 

それから静馬さんは最期の私との交わりを経て、二度と目を開けなかった。

 

私は体中の水分が失くなるまで涙を流し、声が枯れるほどの悲鳴をあげたんだと思う……

 

 

 

数時間もしたら雨が降り出し、私は全員を埋葬することにした。

 

何日かかるかわからなかったが、考え事をするにはちょうどよかった。

 

全員を埋葬し、黙祷が終わったとこで兄さんが恭也を連れて来たんだ。

 

私はその間に自分で考えた結果、仇討ちに出ることを兄さんに伝えた。

 

兄さんは反対しなかったが、ただ一言言った。

 

 

『……美由希はどうするんだ?』

 

 

この事は美由希も知っている通りだ。

 

兄さんには

 

 

『捨てたと言っといてくれ』

 

 

と頼んでいた。

 

本当は兄さんも私のようになりたかったのかもしれない。

 

ただ恭也がいるからできなかったのと兄さんは強いからこそ真っ当な道を行けたのかもしれない。

 

私は弱かった。

 

美由希や兄さん達と一緒に行く道もあったのかもしれない。

 

けれど、静馬さんや琴絵さん、一臣、母さんを始めとした御神の人達を失ったことに私は

 

 

 

保てなかった……

 

許せなかった……

 

逃げたかった……

 

 

 

だから私は復讐という道に進んだんだ。

 

 

 

 

 

これが私達、御神の……運命の別れ道だ。

 

 

 

ここからは復讐に走った愚かな者の物語だ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はすぐに海を渡り、香港に着いた。

 

犯人の目星はついていた。

 

御神に怨みや恨みを覚えるのは少なくない。

 

その中でも私はある組織に目をつけていた。

 

 

 

総合犯罪組織『龍(ロン)

 

 

 

あらゆる犯罪組織の頂点に位置し、ここ最近の御神や香港警防隊の対立していたとこだ。

 

特に『龍』は手段を問わない。

 

任務達成が全てであり、失敗は死を意味するなど聞いたことがある。

 

しかし、奴らの本拠地らしき場所はいくつも挙げられるも私一人では本物かどうかわからなかった。

 

長い年月をかけて一つ一つ潰してもガセネタか末端組織で『龍』の尻尾すら掴めなかった。

 

そんな折り、私は暗殺の依頼を受けた。

 

報酬として受け取るのは

 

 

 

『龍』の在りか

 

 

 

私は胡散臭いのも感じたが、他に当てもないことからその依頼を受けた。

 

何回も同じような依頼を受けた。

 

 その中には京都で武者修行中の恭也とも対峙したこともある。このときのことは本当に恭也に申し訳ないと思う。剣士として、御神を扱う者として道を狭めてしまったから。

 

 だが、あのときは恭也を止めるために砕いてしまった。私とは違う道を歩んで欲しかったから。剣を持たずに幸せになってほしかったから。

 

 それでもあのときに戻ることができたのだとしてもきっと私は恭也の膝を破壊して再度砕くことになるのだと思うし、あのときは最善のことだと思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殺すたびに罪悪感を覚えるもののしばらくすると霧散してしまう。

 

この手で何人も殺してきた。

 

犯罪組織の者……

 

罪を持ち、逃げようとしてる者……

 

罪を罪と思わずに隠れる者……

 

……罪のない者

 

私がこれまでにこの小太刀で斬ってきたことになにも変わらない。

 

そして、最後の依頼として美由希も知っている通りだ。

 

ティオレ・クリステラの最後のコンサートを中止にすること

 

私は兄さんがクリステラ家と親しくしていた事を知っている。

 

だからこそ私が持っている最後の心情として殺しはしたくなかった。

 

その為にコンサートの前にホテルで強迫をしていくことにしたんだ。

 

事前に居室を知らされていたので、すぐに警備網を抜けて部屋の前で気付いた。

 

全部で四人……

 

その中でとても懐かしい気配を感じた。

 

御神特有の希薄な気配。

 

間違えるはずがない。

 

一人は私よりほんの少しだけど劣るが、互角に戦えるだろう気配。

 

もう一人は御神の剣士として名乗るにはまだ未熟なれど、私にとっては……

 

 

 

……なんだ?

 

 

この感情は?

 

 

もう既に記憶の彼方に追いやったはずだ……

 

 

なぜ?

 

 

今さら?

 

 

今頃?

 

 

やめろ……

 

 

もう手遅れなんだ……

 

 

もう引き返すことなどできないんだ……

 

 

もう私は幸福にはなれないんだ……

 

 

 

 

 

私は部屋に入ってすぐに気付いた……

 

気付いてしまった……

 

気付きたくなかった……

 

私とほぼ互角の実力なのは信じられないが、私の甥で兄さんの息子の恭也。

 

兄さんが死亡していることと御神が滅亡していることで考えられるのは恭也しか考えられなかった。

 

もう一人は一目見ればわかる……

 

 

 

私の一番大切な一人娘の美由希……

 

 

 

本当は言いたかった。

 

私があなたの母親だと……

 

でも、どうしても言えなかった。

 

 

私は覚悟を決めたんだから。

 

 

 

当日の恭也との剣を交わした時に私が勝てたのは私の方が実戦での経験豊富だったからだろう。

 

そうでなければ私は恭也に勝てなかった。

 

それほどまでに私達の実力は拮抗していた。

 

その後は美由希もよく分かると思うが、美由希との対峙。

 

終始、私が押していたのは明らかだった。

 

それなのに私は美由希に致命傷を与えられない。

 

いや、今思えば与えられなかったんだと思う。

 

実の娘に刃を向けるほど堕ちてはいなかったんだと気付いた。

 

 

美由希が奥義之極の『閃』を打つ直前に私に放った言葉が私を揺らがしたんだ。

 

覚えているかな?

 

 

『赤黒く血に染まったこの剣でも、綺麗な歌を……時代を作っていく優しい人達を、守ることができる!』

 

 

美由希はそう言ったんだ。

 

その時に思い出したよ。

 

御神の剣を扱う本質を……

 

あの時、美由希は抜刀の構えを取った瞬間、私にははっきりと見えたんだ。

 

私に向かってくる一本の光の剣筋の軌跡が……

 

その時に思ったんだ。

 

私達の娘は今までの御神の中でも最高の御神になれると確信した。

 

 

 

 

それから私は裏からではなく表から『龍』を追い詰めるために香港警防隊に入隊した。

 

今でも『龍』の本拠地はわからないが、近いうちに見つかり、御神の無念を晴らせることができるのではと思っている。

 

 

さて、随分と長い間話してしまったな。

 

美由希に伝えたいことはたくさんある。

 

桃子さんと恭也に聞いたが、幼い頃に自分の事をいらないと思ったそうだな?

 

私が復讐の為に美由希を手放したことは事実だ。

 

でも、美由希は全ての人に望まれて産まれたきたことを知っておいて欲しい。

 

あなたは皆に愛されていることを。

 

あなたは誰よりも強く、誰よりも弱く生きて。

 

 

 

私は静馬さんの想いを継ぎ、言葉を紡ごう。

 

 

美由希の守りたいモノはなに?

 

御神の剣を学び、御神の理を知り、御神の伝承刀の『龍燐』を継いだそんな貴女だからこそ護ると決めた時、きっと護れる。

 

真っ直ぐに育ってくれた美由希だからこそ護れる。

 

貴女は私達の誇りです。

 

私達は御神美由希を、不破美由希を、高町美由希を誰よりも愛していることを忘れないで下さい。

 

 

 

 

 

 

 

                                御神 美沙斗 より

 

 


   あとがき

 

 脱・稿!!時雨さん、できました。どうでしょう?

時雨「やっと、できたの?遅いわよ、ヘタレ」

 前回投稿してからそんなに日にち経っていないのだが、言われるのか?

時雨「当たり前じゃない、なにを当然なことを?」

 そんなさらっとさも当然だと言うのか

時雨「……来い、わが剣。血を求めろ、真名開放、ダーインスレイヴ」

 ぎぃやぁあああああああああああああああ…………そ、それは北欧の、ぐ……

時雨「ふぅ、相変わらずしぶとい。それにこれは以前のを修正と補足するだけだけでしょ?」

 なら、だからって当たり前のように当然というのは間違っている。と浩さんが以前言っているのをどこかで聴きました。

時雨「あら?そうなの?それはいいことを聴いたわ。さっそく美姫さまに連絡しないといけないわね。」

 あ……やっちゃった。すいません、口を滑らしてしまいました。ということで、私はこれでお先です。時雨、細くは任せた。あばなね。

時雨「あ、あのバカ……次回もお仕置き確定かな。それと各関係者へ通達と。それでですね、今回は親子の絆をテーマにしましたが、いかがでしょうか?オリジナル設定もありますし、ツッコミ満載です。特にuppersの文章力のなさで伝えきれたないものも多くあるのでもう少し闇の部分あってもよかったかな?と思っているそうです。まぁ、美由希に生臭いのを見せたくないというか教えたくないのかもしれないということもありますがどうでしょうか?」




…………な、何故……。
美姫 「投稿ありがとうございます。今回は美沙斗から美由希へ。
     近況報告と美由希への挨拶かなと思ったけれど、美沙斗の過去の話なども出てきて楽しませてもらいました。
     琴絵や静馬との過去とか、恭也たちと対峙した時の美沙斗の心情とか。
     思わず読み耽ってしまいました。本当に上手く描かれていて、本当にどこかのバカにも見習わせたいと。
     次は誰から誰へ、になるのか、楽しみにしてますね」
……い、いい加減、あ、足の爪先で……け、蹴りながらしゃ、喋るのはや、やめ、ぐふっ!
美姫 「それじゃ〜ね〜」



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