『世界の果て』を登り始めて早三時間、再びリリスの飽きがやってきてしまった。

最初のトラップ以降、多くのトラップが何度となく恭也たちを襲い、それを掻い潜りながら上へと登っていた。

だがまあ、リリスがこれを登ろうと言い出した一番の理由がトラップを見てみたいというものであったのだが、それはもう達成してしまっている。

そのため、目的を果たしたリリスは登ること自体もう飽きてしまっているため、戻ろうなどと言い出す始末。

それに恭也もケンも、ここまで登ったのだからと説得を試みるが、楽しいこと好きなリリスが飽きてしまったことを続けようとするわけもなく。

 

「恭也〜……おんぶして〜」

 

などと登るという行為を続ける替りと言うかの如く、駄々を捏ね始めたのだ。

それにはさすがの恭也も困ってしまい、助けを求めるようにケンを見るが、ケンの目は諦めろと言っていた。

というか、それは今まで酷い目に合わされた仕返しなのだが、リリスに仕返しをしない辺り見た目通りチキンである。

 

「はぁ……少しだけだからな」

 

結局、渋々という形で了承した恭也にリリスは満面の笑みを浮かべつつ背中に飛び乗る。

いきなり飛び乗ってきたことに少しだけバランスを崩しながらも、恭也はよっと言って背負いなおし、再び歩き始める。

 

「えへへ、楽チン楽チン♪」

 

そう言いながら何を思ってか、思いっきり胸を押し付けてくることに恭也は少し理性に困った。

しかしまあ、これも鍛錬の一つだと割り切ることにし、恭也は上機嫌なリリスを背負いつつのぼり続ける。

そして、そんな二人を横でパタパタと飛びながら見ていたケンは……

 

「なんやリリスはん……幼児退行して、ぶっ!?」

 

ポツリとそう呟いて殴られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤミと剣士と本の旅人

 

【グランディアの世界編】

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上機嫌なリリスをおんぶしつつ『世界の果て』を登ること更に二時間。

ようやく満足したのか、背中を降りたリリスに恭也はやっと解放されたと疲れたように溜め息をついた。

実際、肉体的にはまったく疲れてはいなかったのだが、なんというか……いろいろな理由で精神的に疲れたらしい。

まあそんなわけで再び地に足をつけたリリスと共に、数々のトラップを掻い潜りつつ登っていく最中、先頭を歩いていた恭也が不意に足を止めた。

突然立ち止まった恭也にリリスもケンも不思議そうな顔で視線を向けると、恭也は進行上のある一点をジーッと見つめていた。

 

「……恭也?」

 

「なんかあったんでっか、兄さん?」

 

無言で進行上を見続ける恭也に、本当にどうしたのかと思った二人はそう聞く。

それに恭也は無言のままではあったが、立ち止まった理由を示すかのように腕を上げて前を指差した。

指差されたその方向を辿って二人が視線を向けると、そこには何やら蝙蝠っぽいものが二匹ほどパタパタと飛んでいた。

 

「何あれ? 魔物?」

 

「よう知らんけど……たぶんそうだと思いまっせ。 あんな奇妙な形をした蝙蝠、見たことあらへんし」

 

二人はそう言い合い、再び蝙蝠っぽいそれへと視線を戻す。

それは蝙蝠だと断言するには少し変な体をしており、大きさも若干ではあるが実際の蝙蝠よりも大きい。

まあ、それが変な蝙蝠であれ魔物であれ、本来恭也たちにはまったく興味など抱くようなものではない。

ならばなぜ恭也は立ち止まったのか、その理由は簡単……その二匹の蝙蝠もどきが恭也たちの進行上をパタパタと飛び回っているからだ。

 

「……邪魔ね、この蝙蝠もどき」

 

「せやな〜……」

 

「ケンちゃん、ちょっと行って退いてもらうよう話つけてきて」

 

「無茶言いますな〜、リリスはん。 ワテみたいな、かよわいオカメインコにあんな見るからに獰猛そうな蝙蝠もどき、どうにかできるわけないやろ」

 

「……役に立たないわね、この黄色饅頭は」

 

「肉団子の次は黄色饅頭かいな……」

 

正直ケンの言うことは一応正論ではあるのだが、リリスには正論と名のつく言葉はまるで効かない。

まあそんなわけで、どうしようかと二人が悩んでいる中、ジーッと蝙蝠もどきを観察していた恭也が不意に動いた。

といっても大きな動きではなく、蝙蝠もどきの動きを読んで腕を振るい、鋼糸で絡め取っただけである。

鋼糸によって絡め取られた蝙蝠もどきは、翼を動かすことできず地面へと落下し、頭からぶつかったのかピクピクと痙攣していた。

そんな蝙蝠もどきを、恭也は鋼糸のリールを巻くことで引き寄せ、鋼糸を巻きつけたまま目の前に吊るし、マジマジと見る。

 

「ふむ、リリス……一つ聞きたいんだが」

 

「なんとなく何言うか想像ができるけど……とりあえず、何?」

 

「これ、食べられると思うか?」

 

「食べられるわけないでしょ……というか、食べられたとしても食べたくないわよ」

 

「そうか……食料確保、と思ったのだがな」

 

少し残念そうに恭也は鋼糸を解き、蝙蝠もどきを地面に落とす。

ちなみにその後、仲間がやられたということで怒ったもう一匹が襲撃してきたが、小刀による一撃であっけなく沈んだ。

 

「にしても兄さん、食料の心配なんてしてたんやなぁ」

 

「それはそうだろ……とりあえずここを登るのなら、一晩二晩は覚悟しないといけなさそうだからな」

 

「そうだとしても、これを食料にしようなんて思わないでよね……」

 

そう言い、思わずその蝙蝠もどきを食す所を想像したのか、リリスはうぇと気持ち悪げに口元を押さえる。

まあそんなこんなで、お邪魔な蝙蝠もどきを強制的に退かした恭也たちは、再び道を歩き始める。

その際に先ほどの蝙蝠もどきがまた何体も見られ、襲ってくるたびに恭也によって撃墜されるというのがたびたび見られた。

そしてそんな状況が続きつつ登っていく中、何を思ったのかリリスが突然それを口にした。

 

「ねえ、恭也。 その鋼糸っていうの……太いのもあるの?」

 

「まあ、あるにはあるが……それがどうかしたか?」

 

「うん、あったらちょっと貸して欲しいなって思って」

 

「ふむ……まあ、いいか」

 

太い鋼糸なら怪我をすることもないと思ったのか、恭也は手持ちの一番太い鋼糸のリールをあっさり渡す。

鋼糸を受け取ったリリスは、受け取ると同時にケンを手招きしつつ呼び寄せ、近づいたケンをガシッと掴む。

 

「な、何しはるんや、リリスはん!?」

 

「ふっふっふ……」

 

ケンの言葉には答えず、リリスは不気味且つ怖い笑みを浮かべる。

そして、それに冷や汗を流し始めるケンに、借りた鋼糸をその太った胴体に巻きつける。

巻きつけてる最中、ケンは何をされるのかがようやく分かり、必死に逃げ出そうとする。

しかし、力は圧倒的にリリスのほうが強く、結果としてその努力空しく胴体に鋼糸を巻きつけられてしまった。

 

「で〜きた♪ ねえ見て見て、恭也! ケンちゃんヨーヨーの完成よ!」

 

「……一応聞くが、それをどうするんだ?」

 

「ふふふ、見ててね〜……えいっ♪」

 

可愛らしい掛け声で握ったケンを投球し、壁に激突させるリリス。

まあ、それだけならいつもの光景だが、ここからがいつもとは違うところだった。

壁に激突させたケンを、リールを巻くことで引き寄せて手元へと戻したのだ。

投げたケンが繋がれた鋼糸によって戻ってくる……まあ、ある意味『ケンちゃんヨーヨー』というのはもっともな名である。

 

「凄いでしょ〜。 これなら、恭也が戦うのを少しは手伝えると思うのよ!」

 

「ふむ……まあ、ほどほどにな」

 

ブイサインを出しながらどこか誇らしげに胸を張るリリスに、恭也は差し障りのない言葉で返す。

というか、殺傷能力が限りなくなさそうなそれでどうやって手助けするのかと疑問が浮かぶのだが、嬉しそうにしているのに水を差すのもあれなので恭也は何も言わなかった。

ちなみに、ヨーヨー化されたケンはというと、叩きつけられた衝撃と引き戻されたときの腹の圧迫感で気絶していたりするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこともありながら、恭也たちはちょっとずつではあるが『世界の果て』を登っていく。

その途中でやはり何度となく蝙蝠もどきと遭遇しては、恭也が撃墜していくという光景がよく見られた。

しかし、今度ばかりはリリスも見ているだけではなく、借りた鋼糸で作った『ケンちゃんヨーヨー』を使って戦う。

鋼糸に繋がれたままパタパタと横を飛ぶケンを引き寄せ握り、蝙蝠もどき目掛けて……

 

「ていっ!」

 

「ひえぇぇ!」

 

思いっきり振りかぶり、投球する。

だが、投げられたケンは悲鳴を上げつつ蝙蝠もどきへと向かうのだが、蝙蝠もどきの動きはそれなりに素早いため、なんなく避けられる。

そして避けられたケンはその後どうなるか……それはとても簡単なことで、鋼糸の伸びる限界に達し腹を圧迫されて、ぐぇっと声を漏らすのだ。

そこからリールを巻いてケンを引き寄せると、圧迫感にケンの顔が青褪めているのは見なくても容易に想像ができるだろう。

 

「もう……ちゃんと当たりなさいよね」

 

「そんな……無理言いなんなや」

 

正直ケンの言うことはもっともである。

思いっきり投げられた状態から必ず当たるように方向をコントロールするなど、投げられている側には無理に近い。

しかし、ここで忘れてはいけないのが、リリスには正論というものが通じないということだ。

 

「当たらないで戻ってくるだけのケンちゃんなんて、ただの役立たずじゃない」

 

「む、無茶苦茶や……」

 

握られながらそう言うケンの言葉は、当然の如くリリスには届かない。

そして二人がそんな漫才風なことをしている中でも、恭也はなんなく蝙蝠もどきを撃退してのける。

数こそそれなりに多くなってきてるが、一体一体がさして脅威でもないため、倒すのに時間は掛からない。

そのため、リリスとケンがそんなやり取りを終えたときには、すでに殲滅し終わって小刀を懐にしまうところだった。

 

「相変わらず見事な手並みやなぁ、兄さん」

 

「そうよね〜……どこかの鳥もどきとは大違い」

 

「……ワテを当てにするほうがおかしいとちゃいます? というか鳥もどきやなくて、正真正銘の鳥や!」

 

ケンが珍しく強く反論するが、リリスは当然の如く華麗にスルーして恭也へと駆け寄る。

それにケンは握られた状態から脱出しつつシクシクと泣きながら、ほぼ鋼糸で強引に引っ張られるようについていく。

しかし、リリスとケンが駆け寄ってきたにも関わらず、恭也は顎に手を当てて何かを考え込んでいた。

その恭也の様子に二人ともどうしたのかと思い首を傾げながら尋ねると、恭也は二人のほうを向いて口を開いた。

 

「いや、さっきから考えてたんだが……食料はどうしようかと思ってな」

 

「ああ、そういえばさっきもそんなこと言ってたわね。 別に心配しなくてもいいんじゃない? お腹が減ったら本から出ればいいわけだし」

 

「むぅ……それも考えたが、折角ここまで来たのだから最後まで登りたいというのもあってなぁ」

 

リリスの言うように、食料の心配をしなくても本から出てしまえばなんの問題もない。

だが、一度本から出たら今いるここと同じ場所へ正確に戻ってくることは難しいのだ。

登り始めて大体六時間、折角そこまで登ったのに、途中で投げ出し放棄するというのは恭也としても考え物らしい。

 

「む〜……でも、別に最後まで登ったってページがあるかはわからないわよ?」

 

「だが可能性はゼロじゃないだろ? なら、俺はそれに賭けてみたい」

 

初めて恭也と会ったときに聞いたのと同じ言葉。

それを聞いてリリスは小さく溜め息をつき、しょうがないなぁと小さく呟く。

 

「じゃあ、さっきの蝙蝠もどきでも食べてみる? 食べられたものかどうかは正直わからないけど」

 

「む、さっきは食べられないと言ってなかったか?」

 

「それは……まあ、私の好みの問題よ。 普通、女の子が蝙蝠なんて食べたいとは思わないじゃない」

 

「ふむ……」

 

「それに、もし食べられないとしても、一応非常食がいるしね」

 

「リリスはん……それ、もしかしなくてもワテのことですかいな?」

 

恐る恐るといった感じでケンが聞くと、リリスは答える代わりに極上の笑みを見せる。

それにケンの顔色から血の気はサーっと引いていき、即座に逃げ出そうとするが、哀れなことに鋼糸で繋がれているので逃げられない。

そして逃げようとしたケンを、リリスは鋼糸を引くことで引き寄せ、ガシッと握ると怖いほどに笑みを深める。

 

「な〜に逃げようとしてるのかな〜、ケ〜ンちゃ〜ん?」

 

「ご、後生や……せめて食べるなら焼き鳥に」

 

「そうね〜……こんがりと焼いた焼き鳥というのも、悪くないわ♪」

 

冗談を言い合っているようにも見えるが、だらだらと冷や汗を流しているケンを見るとあながち冗談にも見えない。

というか、その状況下でニコニコと笑みを浮かべるリリスに失神しない辺り、それはそれで大したものである。

 

「冗談はその辺にしといてやれ、リリス」

 

それにさすがにケンが哀れに思えてきたのか、恭也はリリスにそう一言だけ言う。

するとリリスはわかったと言って、いともあっさりケンを手放し、ケンは本当によかったというように溜め息をついた。

そしてケンが鋼糸に繋がれている関係上リリスの横を飛びつつ、三人は再び道を歩き始める。

『世界の果て』を再び進みゆく間で、もうお馴染みの蝙蝠もどきの襲撃があるが、変わらず仕留めつつ一応食料として確保する。

その後、大体数にして四匹程度の蝙蝠もどきを確保した頃、三人の歩く先に今までよりも広い場所が見えてくる。

 

「あそこ、休憩場所かしら?」

 

「さあな……だが、魔物の気配もないし、休むにはちょうどいい場所ではあるな」

 

「せやなぁ。 そろそろ日も暮れてきたことやし、今日はあそこで……って、よう見たら誰かいますやん」

 

ゆっくりと近づいていく中、ケンがそう言うと同時に恭也もそこにある人の気配に気づく。

そして更に近づいていくと、感じた気配通りそこには三人の人の姿があった。

一人は、赤毛の髪に帽子を被り、ゴーグルをつけているのが印象的な見た目男の子と言える者。

対して残りの二人は、頭に鳥っぽい生物を乗せた少女と、男の子と同じくらいに見える少しラフな格好をした同じく少女だった。

その三人は見たところ冒険者なのか、大きな荷物を持っており、今はテントを張りつつ食事の準備をしていた。

 

「あ〜、あれって……あれよねぇ、ケンちゃん?」

 

「ですなぁ……もしやと思うたけど、まさか同時期だったなんて驚きですわ」

 

「? 一体なんの話をしてるんだ?」

 

「ん? あ〜、いや、あの三人……というか、あそこにいる二人にちょ〜っと見覚えがあってね」

 

「ふむ……見覚えがあるということは、この本での重要人物、ということか?」

 

「まあね。 あ、どういう風に重要かは今聞かないでね。 凄く長い説明になっちゃうから」

 

「む、わかった」

 

聞く前にそう釘を刺され、恭也は発しようとした言葉を飲み込み、そう言って頷く。

そして、止めていた歩みを再開してゆっくりとその三人に近づいていくと、ある一点に達したところで三人は恭也たちに気づいた。

恭也たちに気づいた三人は別段特に警戒した風もなく、どちらかというとなんでここに人が、と不思議に思うような顔を一様に浮かべる。

そんな三人に恭也たちは歩調を緩めることなく近づき、ある程度近づいたところでその歩みを止めた。

 

「お晩どす〜、あんさんたちは冒険者の方やろか?」

 

「わ、鳥が喋った……」

 

「プー!」

 

「いた、いたた! やめてっ、突かんといて!」

 

いの一番に話しかけたケンに、一番歳の下っぽい少女が驚きを浮かべる。

そしてその瞬間、少女の頭に乗っていた鳥っぽい生き物が飛び立ち、ケンへと近づいて突っつき始める。

突かれるケンは叫びつつ逃げ回り、恭也とリリスに助けを求めるがスルーされ、追い回されるままに視界から消えていった。

 

「あ、あの……あれ、あのままでいいの?」

 

「大丈夫大丈夫。 こんなのいつものことだしね」

 

「そ、そう……」

 

ラフな格好の少女はリリスがそう軽く言ってのけるのに対して、ほんとにいいのかなというような表情を浮かべる。

しかしまあ、姿がすでに見えなくなってしまっているので、どうしようもないかと割り切ることにして再び恭也たちへと向き直る。

 

「それで、さっきの質問の答えだけど……」

 

「ああ、それなら別に言わなくていいわ。 荷物とか見たら分かることだし、何より冒険者でもなければこんな場所来ないでしょ?」

 

「それはまあ、そうね。 じゃあ、こっちから質問……あなたたちも冒険者なの?」

 

「そうね〜……厳密には冒険者じゃないけど、旅をしているって意味ではそうかも」

 

その少女とリリスがそう話し合っている最中、会話に入らずただ黙している恭也はふと自分に向けられる視線に気づく。

その視線を向けるのは先ほどまで頭に鳥っぽい生き物を乗せていた少女と赤毛の少年だった。

一体どうしたのかと思い、恭也は声を掛けようとしたが、よくよく見て二人の向けている視線が自分でないことに気づいた。

ならば何に視線を向けているのか、それを知るために視線をゆっくり辿ると、そこにあったのは食料として確保してあった蝙蝠もどきだった。

なぜそれをジーッと見ているのかに恭也は不思議に思い、やはり声を掛けようかと思い口を開こうとするが、それよりも早く少女が恐る恐ると言った感じで口を開いた。

 

「ね、ねえ、お兄さん……それ、何?」

 

「これか? これは、その辺に飛んでたんで仕留めたのを数匹食料として確保したものだが」

 

「しょ、食料!? もしかして、それを食べる気なのか!?」

 

「他に食べるものがなくてな……やっぱり不味いのか?」

 

「いや、美味い不味い以前に、食べられるかどうかも怪しいと思うけど」

 

「むぅ……」

 

二人に駄目だしされ、恭也は少し残念そうな顔をする。

それに二人はちょっとだけ困ったような顔を浮かべるが、正直そんなものを食べるところを考えたくないので言わざるを得なかった。

まあそんなわけで、蝙蝠もどきが食べられないとなった今、恭也は今日の食事はどうするかということを再び悩み始める。

そんなとき、何やら先ほどまで少女と話し合っていたリリスが恭也へと歩み寄り、少し嬉しそうにそれを告げた。

 

「恭也、喜んで! さっき食料のことで相談してみたんだけど、そしたらフィーナがよかったら一緒にって!」

 

「フィーナ……というと、リリスと話してた彼女か?」

 

「そそ。 ま、何にしてもよかったわ〜……こんな蝙蝠だかなんだかわからない生き物食べる羽目にならなくて」

 

「ふむ……では、これはどうするか」

 

「食べないなら持ってても仕方ないでしょ、えいっ!」

 

言うや否や、リリスは恭也から蝙蝠もどきの束を奪うように取り、そのまま掛け声と共に崖側に投げ捨てた。

崖側に投げ捨てられ見えなくなっていく元食料を恭也はなぜか残念そうな表情で見ていたが、リリスはそれに気づかなかった。

というか、了承したとはいえ蝙蝠もどきを食べるのが本当に嫌だったのか、食べなくていいという嬉しさで一杯なのだろう。

そしてその後、ボロボロになりながらもようやく戻ってきたケンを加えて、恭也たちは三人の食事の準備を手伝い始めるのだった。

 

 


あとがき

 

 

ふむ、主人公たちがようやく出ましたな。

【咲】 ようやくって言っても、グランディア編もまだ二話目だけどね。

まあな。 でもまあ、この時点で『世界の果て』のまだ半分程度しか到達してないんだけどね。

【咲】 確か本編でもかなりの長さよね、『世界の果て』って。

だねぇ。 まあ、見た目での話だけど、百階建てのビル以上の高さはあるんじゃないか?

【咲】 どうかしらね。 ゲームの中のものだから、実際どうとも言えないわ。

それを言ったら見も蓋もないって。

【咲】 まあそれはそうだけどね……ところで、相変わらずケンちゃんの待遇が悪いわね。

あれはもう、しょうがないんだよ。 ケンちゃんはああいうポジションがデフォなんだよ、きっと。

【咲】 まあ、確かに……原作でもお世辞にもいい待遇とは言いがたいしね。

まあつまりは、ケンちゃんは基本的にああいう目に合うのが運命ということだな。

【咲】 そうね。 それでもう一つ聞くけど……グランディア編は原作の完結までやるの?

さあ、どうだろ? さすがにガイア戦争まで関わらせると、歴史が大きく変わる可能性があるからなぁ。

【咲】 いいんじゃないの? 平行世界がいくつも存在してるんだから、そういう世界になっても。

むぅ……まあ、どっちにしても結構飛び飛びになるから長くはならんけどね。

【咲】 そう……じゃあそう言うってことは、次以降の話の構想もできてるわけね。

それはもちろん!

【咲】 あら珍しい。 あんたからそんな言葉が聞けるなんて……これは夢かしら?

何気に酷いですね、あなた。 まあ、そんなわけで、今回はこの辺にて!!

【咲】 また次回会いましょうね〜♪




蝙蝠の炒め物。
美姫 「いきなり、何訳の分からない事を言ってるのよ!」
ぶべらっ!
……蝙蝠って、国や種類によっては高級食材になってるんだぞ。
美姫 「それは知ってるわよ。でも、普通は飛んでる蝙蝠を捕まえて食べようなんてしないでしょう」
へいへい。と、世界の果ては半分ぐらいまで来たらしいぞ。
美姫 「登りきった先には何が?」
いやー、次回が楽しみですな〜。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



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