このSSは、「とらいあんぐるハート3」と「ヤミと帽子と本の旅人」のクロスーバーです。
ですが、これはこの時点でのことであり、後々これに加えていろいろなものがクロスされていきますのでご了承ください。
時間軸は、とらハ3はオールエンド後でフリー、ヤミ帽は初美エンド後となっております。
といっても、とらハ3ではほぼ恭也しか出ませんし、ヤミ帽では主にリリスとケンちゃんぐらいしかでません。
ですので、このことからいろいろと違和感等が出てくると思いますが、それをご了承の上でお読みくださいませ。
ヤミと剣士と本の旅人
プロローグ 前編
その日も、いつも通り何もかもが普通に過ぎていくはずだった。
朝起きて、鍛錬をして、朝食を食べて、学校へ行って。
勉強(という名の居眠り)をして、昼食を食べて、午後の授業を受けて、家に帰って……。
普通の、恭也にとっていつも通りで極普通な一日が流れるはずだった。
その少女と出会うまでは……
夕食を食べた後、恭也は日課となっている夜の鍛錬を行うため、裏山へと向かっていた。
本来ならば、美由希も一緒に向かっているはずだったのだが、あろうことか元来のドジっ子気質のせいで捻挫をしてしまった。
故にこの日、恭也は久しぶりとも言える一人での鍛錬を行うために裏山へと向かって歩いていた。
身につける装備はいつも通り、飛針、鋼糸、小刀、そして鍛錬用の小太刀。
しかし、いつも通りであるはずの装備の中に、一つだけいつもは持ってこないものが一つだけ含まれていた。
それは恭也の愛刀であり、亡き父である士郎の形見である小太刀、八景だった。
「……」
道を歩きながら、恭也はいつもは持っていかないはずの八景について考えていた。
今まで美由希が何かしらの理由で鍛錬を休んだときも持っていきなどしなかったのに、なぜ今日に限って持っていこうなどと思ったのか。
なんとなく、と自身には言い聞かせてはいるが、それでも持ってきた理由としては納得できない自分がいる。
なぜだろう、なぜだろう……歩き続ける中で、いくら考えてもその答えが見つかることはなかった。
「まあ、見つからない答えを考えても仕方ないか……ん?」
無駄だと思い思考を中断したところで、恭也は戻した目線の先に人の姿を見つけた。
薄茶色の長髪で両サイドに赤いリボンを付け、風ヶ丘のものと思われる制服を着た、そんな少女の姿。
(見たことのない人だが……あの制服を着ているということは、風ヶ丘の生徒だろうな)
少女の着ている制服から、風ヶ丘の生徒であると推測をつけ、同時に一つの疑問が浮かぶ。
夜も遅いこんな時間にその少女はこんな場所で一体何をしているのだろうか、という疑問を。
その疑問に対して浮かんだ答えが、人を待っているというものだったが、こんな遅くに人と待ち合わせというのも可笑しい。
というわけで、その答えは浮かんですぐに除外されたが、それ以外の答えが浮かばず恭也は首を傾げる。
(ふむ……直接聞いてみるか? いや、それは不味いか。 こんな時間に俺のような見知らぬ者が声を掛けても不審者にしか見えないだろうし……)
まあ、服の中にぎっしり武装を詰めている男が声を掛けたら、それは明らかに不審者だろう。
しかし、恭也が考えていることは武装うんぬんではなく、この時間に自分のようなというこの一点のみであった。
武装をつけることがある意味日常化しているのでおそらくはそれが不審だと思わなくなってきているのだろうが、少しずれているというには違いない。
とまあそういうわけで、恭也は少女に声をかけるかどうかを決めかねていると、少女は不意に身を動かした。
それに、家に帰るのだろうか、と恭也は思い、内心でちょっとだけ安著するが、その期待はすぐに打ち破られた。
「……」
身を動かした少女は、再びまた壁に背中を預けるように寄りかかったのだ。
期待を裏切られ、恭也は小さく落胆の溜め息をつきながらも、やはり放っておけないと考えて少女へと歩み寄る。
そして、近場まで歩み寄っても今だ恭也に気づいていないのか、下を向いている少女に口を開いて声を掛ける。
「あの……」
「……?」
声を掛けた恭也に、少女は俯いていた顔を上げ、不思議そうな顔を向ける。
見知らぬ男に声を掛けられたにも関わらず、その表情からは警戒心の欠片も見出すことはできない。
それに恭也は無防備なと少しだけ呆れ、開いた口で先ほどまで聞きたかったことを口にする。
「えっと、こんな時間のこんなところで、一体何をしてるんですか?」
「……」
「もう時間も遅いですし、あなたのような人が一人でこんなところにいるのは危ないですから、帰られたほうがいいですよ?」
「……(ふるふる)」
恭也の言葉に少女は首を横に振り、なぜか恭也を見てニコニコと笑みを浮かべる。
その笑みに、恭也は一体なんなんだと思いつつも、もう一度少女に対して口を開こうとする。
だが、それよりも早く、少女が閉ざしていた口を少しだけ開き、消え入りそうな声で言葉を紡ぐ。
「や……み……」
たった二文字の言葉、だが恭也にとってそれはどこか聞き覚えがあるような気がした。
なぜそんな気がしたのか、恭也がそれを考えようとするよりも早く、視界が暗転する。
そして、暗転した視界と共に、恭也の意識が徐々に遠くなっていき、完全に意識が閉じる寸前……
ガラスが割れるような音が、その耳へと響き渡った。
「……ん。 ……さん」
「ん……んん」
「お、やっと起きはりましたな、兄さん」
声変わり前の少年っぽいようなそうでないような、そんな声で恭也は目を覚ます。
そしてまだ少しぼんやりする意識をはっきりさせるため、首を軽く横に振ってから正面を見る。
すると、そこには……
「おや、どないしました、兄さん」
お世辞にも可愛いとは言いがたい、ボールのように太った黄色い物体が飛んでいた。
パタパタと小さな羽根を広げて飛んでいるところを見ると鳥のようだが、恭也から見たらとてもそうは思えない。
しかしまあ、とりあえず目の前の物体よりも今の現状が気になるため、恭也は周りを軽く見渡す。
「悲しくなるから無視せんといて〜っ!」
目の前の物体が何か言っているが、とりあえず無視してゆっくりと見渡していく。
軽く頭を動かして見渡す風景は、明らかに先ほどまで恭也がいた場所とは異なっていた。
一体何冊あるのかもわからない大量の本がぎっしりと納められた本棚、それがかなりの距離まで並んで置かれている。
これを見る限りでは、どこぞの図書館と想像がつくが、恭也の知る限りでは海鳴にこれほどまでの蔵書を誇る図書館は存在しない。
ならば一体ここはどこだろうか、見渡した後にそう考えた恭也は、とりあえず目の前にいるなぜかシクシクと泣いている黄色い物体に聞くことにした。
「なあ、一つ聞いてもいいだろうか?」
「は、はい、なんでっしゃろ!」
声を掛けると、黄色い物体は激しく嬉しそうに聞き返してくる。
無視されたことが相当堪えたのだろうが、恭也にとってはそれがいきなり元気になったことなど今はどうでもよかった。
それよりも一番頭で混乱を招いている疑問を聞くことが先決だったのだ。
「ここは、一体どこなんだ?」
「あ〜、それってワイがさっき説明しようと思ってたことですがな」
「そうなのか? じゃあ、早速教えてくれ」
「へいへい、任せなはれ」
上機嫌にそう言うと、黄色い物体は今恭也がいる場所について説明を始めようとする。
しかし、それよりも早く、いつの間にか物体の後ろに近づいていた人物が物体をがしっと掴む。
掴まれた物体はぐえっとヒキガエルが潰れたような声を上げ、苦しさ故か若干青褪める。
「ケ〜ンちゃ〜ん? 掃除をサボってこんなところで何してるのかな〜?」
「リ、リリスはん……こ、これには深いわけがあってやな」
「ほ〜う、ならその詳しいわけとやらを説明してもらおうかしら?」
「話します、話しますさかいっ……だからこの手を退けて、ぐえっ!?」
ふん、と鼻を鳴らし、目玉のついているデカイ帽子が印象的な少女―リリスはもう一度強く握ってから黄色い物体―ケンを放す。
するとケンはぜーはーと荒い息をつき、数秒後に整え終わるとリリスに向かって恭也を指?差す。
ちなみに、指差された恭也はというと、突然ケンの背後に現れたリリスを呆然と見続けていた。
「まったく、そっちに何が……って、誰?」
「ま〜、ワイの推測やけど、おそらくはどこかの本の中の住人とちゃいますか?」
「ん〜、でもそれなら、こうして意識をちゃんと持って出てくること事態おかしいでしょ。 前例がないわけじゃないけど」
「前例がないわけじゃないんやったら、今回もその前例と同じことが起こったんとちゃいます?」
「ありえないわよ。 おでこちゃんはもう完全体になってるのよ? だったら前とは別の何かが起こったと考えるのが普通じゃないかしら」
恭也を置いてけぼりにし、リリスとケンは口々に意見を出し合って話し合う。
そしてそれに我へと返った恭也はどうしたものかと考えるが、とりあえずはどうしようもないのでじっとすることにした。
その後、恭也には理解不能の事柄を並べ立てての話し合いを終えたリリスとケンは、恭也のほうを向いて尋ねる。
「あなた、自分のいた場所のことを覚えてる?」
「場所……ですか?」
「そう、場所。 何年のなんて場所なのか、それ以外でも詳しいことがわかるなら教えて」
「えっと、○○年の日本にある海鳴という町で、町の中には臨海公園や風ヶ丘という学校がありますね」
「そ……ケンちゃん、電子辞書」
「ほい、リリスはん」
ケンはそう言うと、どこから取り出したのか折りたたみの電子辞書をリリスに手渡す。
電子辞書を受け取ったリリスは、それを開いてキーを数回叩き、そこに表示された文字を見ると辞書を閉じる。
「こっちね」
「ほいほい……あ、兄さんも一緒についてきなはれ〜」
並んでいる本棚の奥へと進んでいくリリスを飛んでついていきながらケンはそう言う。
それに恭也は慌てて立ち上がり、二人の後を追いかけていく。
そして三人が歩くことしばし、リリスはふと足を止めてすぐ横の本棚を調べて一冊の本を取り出す。
「えっと……わ、何よこれ!」
「どないしたんでっか、リリスはん?」
「これよこれ! コイツの言った世界の本なんだけど、ページが数枚千切られてるのよ!」
そう叫びつつリリスが見せてきた本は、リリスの言うとおりページが何枚か引き千切られた跡があった。
それにケンは、あちゃ〜と驚きつつも困った顔をし、恭也は事情がわかっていないため不思議そうな顔をする。
「あら、あなた、あんまり慌てたりしないのね……自分の世界がこんなになってるのに」
「あ〜、それはしょうがないですわ〜。 兄さんにはこの場所がなんなのかでさえ、まだ説明してへんから」
「はぁ? まだ説明してなかったの? まったく……相変わらず使えない肉団子ね」
「説明しようとしたところをリリスはんが邪魔しはったんやないですか!」
「あら〜、肉団子の分際で私に口答えするっていうのね〜」
思わず反論してしまったケンは怖い笑みを浮かべるリリスに冷や汗をだらだらと流し始める。
そしてすぐさま逃げ出すため飛び立とうとするが、少し飛んだところで先ほどのようにリリスにガシッと掴まれる。
「く、苦しいですがな……」
「オカメインコって、どんな味がするのかしらね〜」
「ひぃぃ!?」
怖い笑みで怖いことを口にするリリスに、ケンは悲鳴を上げてガクッと気を失ってしまう。
気を失ったケンを、リリスは興味を失ったゴミのようにポイッと後ろ放り、恭也のほうへと再び向く。
「じゃ、お馬鹿な肉団子の代わりに、リリスちゃんが説明してあげるわ。 感謝しなさいよ?」
「え、あ、はい」
「ん、素直でよろしい。 じゃあ、とりあえず、この場所が何なのかってところから説明するわね」
そう言うと、リリスはおもむろに棚をポンポンと叩きつつ、説明を始める。
「ここは図書館……あなたの世界にもあるだろうから図書館がなんなのかってのはわかるわよね?」
「ええ、まあ……」
「そ……でね、この図書館は、いろんな世界が本として納められた図書館なのよ」
「えっと……」
リリスの説明に、恭也は思考がついていかず困った顔をする。
それに、リリスは少しだけ溜め息をついておもむろに棚から一冊の本を取り出した。
「まあ簡単に言えば、この中の一冊であるこの本の中には、あなたの知らない別の世界が広がってる。それで、その数々の世界を大量に納めているのが、この図書館ってわけよ」
「はあ……」
「信じられないって顔ね。 でも、事実よ。 あなたの存在した世界も、それ以外の世界も……」
「それは本の中で描かれる、一つの物語でしかないってことなのよ」
あとがき
PAINWESTにも投稿させていただいたこれを、HPにも更新してみました。
【咲】 何ゆえ?
ま〜、あっちにはあっちで好きなのを、こっちではこっちで好きなのをって思ってね。
【咲】 だったら、好きなの全部あっちに投稿すればいいじゃない。
いや〜、もしかしたらこれに対してキリリクが来るかもとかいう淡い期待を……。
【咲】 無理じゃない?
むぅ……まあ、主軸がヤミ帽だから、他とのクロスで誰かとくっつくってないからなぁ。
【咲】 いや、あんた、腕ないし。
ぐ……。
【咲】 ま、淡い期待は期待のまま砕け散るのが運命ってことね。
ひ、酷い……。
【咲】 とまあ、軽く苛めたところで疑問だけど、これに対してもキリリク取るなら後編を完成させないといけないんじゃない?
だな。 まあ、それに関しては大丈夫……ネタも出てるから近々後編ができるさ。
【咲】 で、後編が出来たら何々編って形で進めていくってことね。
そゆこと。 まあ、俺が考えて作るのが先か、淡い期待が叶うのが先か……。
【咲】 十中八九、あんたが考えるほうが先ね。
む……それは喜んでいいのか、悲しむべきなのか。
【咲】 というわけで、これは不特定多数とクロスしていく作品ですので。
これをキリリクにあげる場合は、これこれのゲーム、またはこれこれのアニメ。
【咲】 もしくは、これこれの漫画、という風に作品名でリクエストをお願いします!!
では、今回はこの辺で!!
【咲】 また次回会いましょうね〜♪
ヤミ帽〜、とのクロス。
美姫 「こいつの負担が増える分には問題ないしね」
うおーい!
美姫 「これから、様々な世界へと旅立つのね」
最初は何の世界かな。
美姫 「でも、まずはプロローグ後編ね」
だな。これから、どんな冒険が恭也を待っているのか。
美姫 「続きを待っていますね」