『An unexpected excuse』

  〜ペイオース編〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺が、好きなのは……」

 

恭也が答えを言おうとした瞬間、恭也の真横に光が集まり眩く光る。

その輝く光に皆が唖然としている中、恭也や美由希、レンや晶の言うなれば高町家の面々は何事か理解する。

というよりも、それはここ最近頻繁に見る光景なため理解せざるを得ないのだ。

 

「……」

 

四人が思ったとおり、収束した光が晴れたそこには見覚えのある少女の姿があった。

だが、その少女の姿はいつも見慣れている姿ではなく、言うなればかなり際どい姿。

そしてその姿は恭也だけが知っている、その少女本来のものと言える姿でもある。

そんな少女は現れたと同時に閉じていた目をゆっくりと開き、そして不機嫌な表情を浮かべて恭也を見上げる。

 

「浮気は駄目だと思います、キョーヤ」

 

「いや、そんなつもりはないんだが……というかなんでその姿なんだ、ペイオース」

 

恭也は少女―ペイオースの言葉に困ったようにそう返すと共にもっともな疑問をぶつける。

その疑問にペイオースは不機嫌な表情を変えぬまま、というか更に深めて答えを口にする。

 

「この姿ならソルたちが来たときにすぐに逃げるなり撃退なりできるからです」

 

「逃げるはともかく撃退って……って、ソルたちもここに向かってるのか?!」

 

「まだ気づいてないみたいですからすぐには来ないと思います。 時間の問題だと思いますけど」

 

時間の問題、という言葉に恭也は疲れたように溜め息をつく。

ペイオースが転移でここに来たということは遅かれ早かれソルたちがそれに気づく。

そしてソルたちが気づけば言うまでもなく力を使ってここへ駆けつけ、下手をすれば人外戦争勃発だ。

しかもその力というのが恭也の寿命を元としているのだから余計に性質が悪い。

 

「どうにかならないのか?」

 

「どうにもならないと思います。 そもそもキョーヤが優柔不断なのが悪いのです。 キョーヤがきっぱりと言ってくれればソルたちだって諦める……と思います」

 

「確定じゃないのか……」

 

恭也は二度目の溜め息をつき、そこで周りに今までいたはずのFC+αたちがいないことに気づく。

おそらくは恭也とペイオースの会話からよからぬことが起きるということが予測できたため避難したのだろう。

まあそれ以外にも恭也の答えがわかったというのもあるかもしれないが。

 

(俺とペイオース以外いなくなっていたことに気づかないとは……俺もまだまだだな)

 

「どうしたんですか、キョーヤ?」

 

恭也が内心でそう思っているとペイオースがどう聞いてくる。

それに恭也はなんでもないと首を横に振ってもう一つ浮かんだ疑問を口にする。

 

「で、ペイオースはなんでここに?」

 

「何かただならぬ予感を感じたからです。 それでいてもたってもいられなくて、ギューフのルーンでここに駆けつけました。 そしたら案の定……」

 

「いや、だからあれは……」

 

「なんでもないと言いますか? じゃあ、なんであんな状況になってたのか詳しく教えてください」

 

詰め寄ってくるペイオースに恭也はやましいことはないにしてもたじたじになってしまう。

なんというか、今真実を言ってもペイオースが信じて納得するとは到底思えないのだ。

それほどにペイオースからは不機嫌な、というかもう殺気といっていいものが漂っている。

 

「あ……」

 

だから、恭也は詰め寄ってきたペイオースの背中に手を回して抱き寄せる。

別に誤魔化すためではなく、ただペイオースを落ち着かせるために抱きしめる。

 

「キョーヤはずるいのです……」

 

抱きしめられたペイオースは不機嫌そうにそう呟くも、表情はとても嬉しそうだった。

それからしばらくして、落ち着いたペイオースに事情を説明するとペイオースは小さく、ごめんなさい、と謝罪する。

その謝罪に恭也は気にしてないというように優しく頭を撫で、ペイオースと共に地面に腰を下ろす。

そして、腰を下ろし胡坐をかく恭也の膝にペイオースは頭を乗せて横になり気持ち良さそうな表情をする。

 

「温かいです……れんにゅーと同じくらい」

 

「蓮十郎か……確かに、俺の中にはあいつの魂があるからな」

 

「でも、キョーヤはキョーヤでれんにゅーはれんにゅーです。 もうペーコはれんにゅーに囚われないって決めたのです」

 

「そう、蓮十郎が言ったのか?」

 

「はい……「俺に囚われるな。ペーコは俺の分まで今を生きていけ」って。 だかられんにゅーのことは忘れませんけど、れんにゅーにもう囚われないと決めました。 それが、れんにゅーの最後の願いだから」

 

「そうか……」

 

そう言い切るペイオースの目から流れていた一筋の涙を恭也はそっと拭う。

そして手をペイオースの頭に乗せて、優しく優しく撫でる。

 

「ペイオース……今、幸せか?」

 

「はい。 れんにゅーはいないけど……キョーヤやキョーヤの家族、ソルやハガル……その他にもいっぱいいっぱい、優しい人たちがいますから。 キョーヤをペーコから盗ろうとするのはいただけないですけど」

 

「心配するな。 俺はもうペイオースのものだ……それはこれからも、変わりはしない」

 

「はい……私のすべてもキョーヤの、キョーヤだけのものです」

 

そう言い合い、恭也は身をゆっくりと屈めて、ペイオースは少しだけ状態を起こす。

徐々に接近していく二人の唇は、二人以外誰もいない静けさの中でゆっくりと重なる。

そして、二人は唇を離すことを名残惜しむようにしばらくそのまま抱き合い、互いの温もりを感じ合っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――れんにゅー……ペーコはやっと、れんにゅー以外で好きな人を見つけることができたよ―――

 

 

 

 

 

 

―――もちろんれんにゅーのことは今でも好きだけど、それに負けないくらい好きな人を見つけたよ―――

 

 

 

 

 

 

―――今なら、れんにゅーがいない世界でも生きているって胸を張って言えるよ―――

 

 

 

 

 

 

 

―――だから……だからいつか、私やキョーヤがれんにゅーの傍に行くまで、ずっと見守っててね―――

 

 

 

 

 

 

 

―――遠いけど、近い未来……ペーコと、キョーヤと、れんにゅーで、ずっと笑って過ごせるそのときまで―――

 

 

 

 

 

 

 

 

―――そのときまで、見守っててね―――

 

 

 

 

 

 

 

 

―――だから、今は……―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ばいばい……れんにゅー―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜おまけ〜

 

 

 

二人がいちゃいちゃ?している中、その様子を近くの茂みから覗く複数の人影があった。

一般的な服を着た少女やドレスのような服を着た少女、さらにはペイオースと同じような格好をした少女と女性。

その四人は一様に怖い笑みを浮かべながら恭也とペイオースを睨むように見続けている。

 

「ううぅ……ルーンの反応があったから何かと思って来てみれば」

 

「ペイオース……抜け駆けとはいただけませんね」

 

「まったくですわ」

 

『あの小僧と戦乙女は好きあっておるのだから別によいのではないか、宿主よ?』

 

「それとこれとは話が別です!」

 

「ちょっと黙ってくださいますか、ドリ子さん。 マスターたちに気づかれてしまいます」

 

「ドリ子じゃありませんわよ! というか一文字も合ってませんでしょ!」

 

「お、お姉さま……落ち着いてください」

 

「そ、そうでしたわね……にしてもあのまな板娘二号、どうしてくれましょうか」

 

「二号って……一号は私とか言うわけ!? 私はまな板じゃ、むぐ!?」

 

「ソルも静かに。 マスターに気づかれたら元も子もないでしょ」

 

「……(コクコク)」

 

「でも、どうするんですの? とりあえず一斉に奇襲をかけます?」

 

「そんなことをしたらマスターに嫌われてしまいます。 ここはマスターを奪って逃走するのがいい思います」

 

「なるほど……一人が恭也さんを捕えて他の人がペイオースちゃんの足止め……って、その一人は誰がするんですの?」

 

「それはもちろん……」

 

「「「「私!」」」」

 

四人が同時にそう言った後、四人の間に不穏な空気が漂う。

 

「恭也は私と契約してるんだから、その役は私がやるべきなの!」

 

「契約をしていると言うのなら私も同じことですよ、ソル? それに私ならマスターを満足させれますし」

 

「そ、それを言うなら婚約者たる私だってそうですわ!」

 

「詩帆は……お兄ちゃんの妹だから、詩帆と一緒のほうがいい……と思います」

 

「「「「むぅぅぅ!」」」」

 

もう気づかれることお構いなしに言い合い睨み合う四人。

だが、そんな四人に気づかないほど自分たちの世界に入っている恭也とペイオース。

そして誰が先に気づいたのか、恭也とペイオースが唇を重ねているのを捉え叫びにも近い声を一斉に上げる。

 

「「「「ああーーーー!!!!」」」」

 

だが、完全に自分たちの世界に入っている二人はその叫びさえ聞こえない。

そして四人がこれでもかと言うくらいどす黒いオーラを漂わせ始めていることも。

 

「これはもう……」

 

口を開きながら鎧の形態を変えて両手の甲に幾多もの刃を顕現するソル。

 

「私たちで言い合っている場合ではありませんね……」

 

同じくそう言いながら右手に氷のような光を纏う剣を取り出し握るハガル。

 

「ですわね……」

 

同意するように短く言って光に包まれると共にドレスのような服から露出しまくりの戦闘服に纏い、右手の手甲から大きな剣を抜き放つ澪璃。

ちなみに澪璃の中でファゾルトが何か言っているがそこは無視を決め込んでいる。

 

「……」

 

三人のように何か言うわけでもなく、澪璃と同じように戦闘服へと変わって怖い笑みのまま恭也たちを見る詩帆。

やろうと思えば世界さえ滅ぼせるような力を持った四人は、凄まじいほどの殺気を纏わせ、声を大にして同じ事を口にして駆け出した。

 

「「「「ペイオース(ちゃん)、覚悟!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局その後、中庭にて人外戦争が勃発することになり、恭也の寿命が(いろんな意味で)更に減った。

更にその日の午後、高町家にていつも以上に恭也にアプローチしてくる四人の姿があったのだが、まあそれは別の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

<おわり>

 

 

 

 


あとがき

 

 

リィナ編が書けぬままなぜかこっちが出来てしまった。

【咲】 なんで後から書き始めたこっちが先にできるのよ。

いや、リィナ編の構想が纏まらないから息抜きに、っていうかゲームやってて気に入ったから書いてたら……。

【咲】 できてしまったと?

はい……。

【咲】 はぁ……ま、いいけど。 で、これってどういう設定なわけ?

う〜ん、まあ簡単に言うとすべてが終わった後に実はペイオースがソルの中にいて、そこから理由は不明だけどソル、ハガル、ペイオースの体が別々になって今に至るっていう話。

【咲】 ふ〜ん……でも、ペイオースの蓮十郎に対する依存性は相当なものだったのに、こんなにあっさりしてていいわけ?

まあ、ご都合ストーリーだからその辺もご都合ということで……。

【咲】 ……まあいいけど。 にしても、あの四人、というか五人が本気で戦闘したら学校が消し飛ぶんじゃ……?

ああ、そこの辺は大丈夫。 校舎には被害を与えていないって設定だし、最後のほうにあったと思うけど中庭がめちゃくちゃになっても。

【咲】 ああ、恭也の寿命を使って元に戻したってわけね。

そゆこと。 じゃ、今回は「白銀のソレイユ」から!!

【咲】 神託と予言の女神、ペイオースをお届けしました!!

では、次はメンアット4ならリィナ、白銀なら……誰だろうか?

【咲】 知らないわよ。 ソルでもハガルでも好きなのやればいいじゃない。

それもそうだな。

【咲】 じゃ、今回はこの辺でね♪

また会いましょう〜ノシ





これは初のジャンルじゃないかな。
美姫 「白銀の〜、よね」
ああ。俺は詳しくは知らないけれど。
美姫 「おまけのドタバタした感じが楽しそうよね」
うんうん。次が誰になるのか楽しみにしてます。
美姫 「待ってますね〜」



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