いったい誰だろうか。

 

彼を、この世界から消そうとしているのは。

 

白夢? 外来?

 

ううん、そんなものじゃない。

 

これはもっと違うなにか別のもの。

 

でも、それ以上はわからない。

 

だけど、白夢でも外来でもない何かがこの世界に介入しているのは間違いない。

 

その介入者が彼を消そうとしている。

 

いったい何の目的でかはわからない。

 

でも、目的がなんであれ彼を消すなんてことは絶対にさせない。

 

そう……私がさせない。

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の望んだ世界

 

第十二話 出会いが生んだ謎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リル。

目の前に突如現れた少女はそう名乗った。

膝をついたまま恭也はその少女―リルを見る。

リルはずっと見守っていたと言った。

だが、恭也にはその少女に見覚えがなかった。

ただ、すべてと言うわけではなく一つだけ覚えがあるものがある。

それはリルの声だ。

その声は夢の中でよく自分に話しかけてきた者の声にそっくりだった。

だからか、恭也は初めてという感じがしなかった。

 

「ほんとならもっとちゃんとした形でお話がしたかったけど……」

 

そこで言葉を切り、横目で恵都たちのほうを睨む。

その眼は底知れぬ怒りに満ちていた。

恭也はなぜリルが恵都たちに対してそんな怒りを持っているのかわからなかった。

 

「ぐ、貴様っ!!」

 

そんな静まり返った空気を打ち払うように外来が腕を押さえながら立ち上がる。

リルは外来から寄せられてくる膨大な殺気をまるでないもののように受け流しながら冷めた声で言う。

 

「自分の使命も忘れて……」

 

ゆっくりと凍てつくような視線と声で外来に言う。

 

「利用された怒りにまかせてマスターに危害を加えようなんて……」

 

そして言葉を発しながら立ち上がり……

 

「許せることじゃないわ……」

 

静かにそう言い放った。

 

「黙れ!!」

 

外来は完全に我を忘れているのか鎌を片手で構え、リルに切りかかる。

そして次に見たその光景に皆は驚いた。

あれだけの殺気を受け流したことにも驚いたがこれはそれより驚きが大きかった。

恭也でも灯夜でも受けるだけで精一杯だった一撃を、その力があるようには見えないその片腕で受け止めたのだ。

 

「な、に……」

 

「消えなさい」

 

先ほどと変わらぬ冷たい声でそう言い、リルは開いているもう片方の手を外来の胸に突き刺した。

そして刺さった瞬間その傷口から光が溢れ外来はその光に包まれる。

数秒後、光が消えるとそこには何もいなかったかのように、ただリルの手だけがあった。

 

「……」

 

誰もがそこで起きたことに目を疑った。

 

「君は、いったい」

 

何者なんだ?

そう聞こうとした恵都の声は別の者の声に遮られた。

 

「いやはや、おみごと」

 

それはその場にいた者たちではない、別の者の声。

突然現れたそいつは拍手をするように手を叩きながら入り口の影から現れた。

 

「イフリース……」

 

恵都はそいつの名前を呟くように言った。

イフリースと呼ばれた男は恵都をちらりと横目で見ながらまるで嘲笑うかのように言う。

 

「あれ如きどうにかできないとはな……堕天して羽が重いか?」

 

「っ……」

 

恵都は悔しそうに俯く。

その様子に満足したのかイフリースはユリエルのところに歩み寄る。

 

「可愛そうに……今、治してあげよう」

 

そう言ってユリエルの体にできた傷に手を当てる。

すると小さな光と共にその傷は塞がっていた。

 

「ずいぶんと可愛がってるのね」

 

「ふふふ、そう見えるかい?」

 

「ええ、とっても」

 

会話だけだと普通なのだが二人の間にはなんとも言えない空気が漂っていた。

 

「それにしても、君ともあろうものがまさかただの一人の人間に入れ込むとはね」

 

「何が言いたいの?」

 

「いやいや、君が入れ込むその人間に私も興味が出てきた、というだけのことだよ」

 

「言っておくけど、彼に手を出したら……消すわよ」

 

殺気を灯した目をイフリースに向けながらリルはそう言った。

だがイフリースはそれを受け流しながらおどけたように言う。

 

「そんなことはしないよ。 私も命は惜しいからね」

 

イフリースはそう言うと踵を返して歩き出す。

 

「ユリエル、後で今後のことについて話そう」

 

「はい……」

 

それだけ言うとイフリースはその場から立ち去った。

イフリースが立ち去るとユリエルも力なくと言ったように屋上を後にする。

 

「先生……」

 

「あ〜、いろいろと起こって頭ごっちゃになってると思うけど、少し待ってくれな。 お前の聞きたいことは後で絶対に話すから」

 

「絶対……ですよ?」

 

「ああ・・・・・」

 

恵都は小さく頷くとユリエルと同じように屋上を出て行った。

後に残ったのは恭也と灯夜、そしてリルだけだった。

リルは立ち上がった恭也の前に歩み寄ると先ほどと同じような笑みを浮かべる。

 

「大丈夫?」

 

「え、あ、はい……」

 

「そう……よかった」

 

恭也がそう言うと本当に安心したといった顔をする。

そんな二人の間に灯夜が歩み寄り、話しかける。

 

「あの……君はいったい…」

 

「何者か? それは聞かないほうがいいわ。 聞いてもたぶん理解できないと思うから」

 

「えっと……」

 

「言ってもわからないほどあなたは今何も知らない状態だってこと。 あの白夢たちにいろいろ教えてもらってからまた来なさい」

 

「……」

 

「なんだったら、私が教えてあげてもいいわよ……あなたの知りたいこと、すべてをね」

 

リルがそう言うと灯夜は少し考えるような仕草をしながら顔を若干俯ける。

だがすぐに顔をあげると首を横に振る。

 

「そう……」

 

リルは短くそう言うと二人から若干離れる。

そして足を止めるとリルの体が光に包まれ始める。

 

「待ってくれ! 君は……」

 

「ごめんなさい、恭也。 あなたの疑問にも答えてあげたいけど、今はまだその時ではないの」

 

「それは、どういう…」

 

「そのときが来たら、きっと話すから……私のことも…あなたのことも」

 

そういい残し、リルは屋上から姿を消した。

二人に更なる謎を残して……。

 

 


あとがき

 

 

けっこう遅れたね。

【咲】 遅れすぎよ。

うぐ。

【咲】 あんたがそれしても可愛くないから、逆にきもいから。

ひ、ひどい……。

【咲】 ま、一応十二話が終わったわけね。

そういうことだね。

【咲】 結局、リルが具体的に何者なのかがわからずじまいね。

彼女の正体がわかるのはまだしばらく先でさ〜。

【咲】 先っていつごろよ?

いつだろうね〜♪

【咲】 (ムカッ)……えい♪

ひぎゃあああああ!!

【咲】 ふざけた生命体の排除完了♪じゃ、また次回ね〜♪





まだまだ秘密のまま。
美姫 「全てを知っているかのような口調で恭也たちの元を去ったわね」
彼女が再び現れた時、その時にこそ真実が明らかになるのか!?
美姫 「うーん、一体全体何が起こっているのかしらね」
いやはや、次回も気になりますな〜。
美姫 「そうね。次回も待ってますね」
待ってます。
美姫 「それじゃ〜ね〜」



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