彼は彼女と接触した。

 

彼女と会い続けることで彼にどんな影響が出るのか。

 

それは現状ではわからない。

 

でも、出たとしてもあまりいい影響ではないと思う。

 

それは私の勘。

 

そして私の勘は良くあたる。

 

だからできるだけ彼には彼女と接触して欲しくない。

 

白夢のあの人がそうはさせないようにするとは思う。

 

今の彼に記憶が戻ることはこの世界の崩壊に繋がる。

 

それは自分の立ち位置を理解していない彼女も同じ。

 

でも、彼女と彼では危険の度合いが違う。

 

彼が望んで世界を壊すなら私は何も言わない。

 

でも、それが彼の望んだことでないのなら止めないといけない。

 

今、白夢の二人の会話と彼女との接触で彼の記憶の枷に綻びが生じてしまっている。

 

このまま接触し続けて何時彼の記憶が戻ってもおかしくは無い。

 

つまり、もう時間はそんなに残されてない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の望んだ世界

 

第七話 敵の狙い 前編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

病院前でユリエルに言われたことを灯夜は悩んでいた。

なぜ自分と恭也はひいろに会ってはダメなのか。

ユリエルの隠している事情とはなんなのか。

その二つを悩んでいるが答えなど出るわけがなかった。

 

「ねえ……」

 

「……」

 

「ねえってば!」

 

「っ!? な、なに?」

 

考え事をしていたためかいきなり呼ばれたことに驚きながら聞く。

夏希は呆れた表情で灯夜を見ていた。

 

「なにって…さっきからずっと呼んでたんだけど」

 

「そ、そうなんだ、ごめん…で、なに?」

 

「ううん、特になにかあるわけじゃないけど……なんかさっきから様子がおかしいから」

 

「そ、そう? 普通だと思うけど」

 

「そうは見えないって……ま、言いたくないなら別にいいけど」

 

そう言ってまた歩き出す。

 

「ちょっといいか…」

 

公園前に差し掛かったところで急に声が掛けられる。

灯夜は声の掛けられたほうへ向くと見たことのある顔だった。

 

「御堂さん?」

 

「少し…話したいことがある」

 

灯夜を少し睨むような視線でその少女―御堂愛は言ってくる。

灯夜は少し悩んだ後、夏希を先に行かせて話を聞くことにした。

 

「それで…話って何?」

 

「話は簡単だ……これ以上彼女、ひいろさんに近づくな」

 

「え……」

 

 

 

 

 

 

その頃、恭也は通学路にある公園前にさしかかろうとしていた。

美由希は日直、晶とレンは恭也より先に出たため今は一人である。

そして公園前にさしかかると目の前で見知った人物が誰かと話していた。

 

「灯夜、どうしたんだこんなところで?」

 

「あ、先輩……」

 

恭也が声をかけると灯夜はそう言う。

そして恭也は今灯夜と話していた愛を見ると軽く頭を下げる。

それに対して愛は恭也を一瞥すると

 

「話はそれだけだ…」

 

といって去ってしまった。

恭也は何の話をしていたのか気になり灯夜に聞く。

 

「彼女と何を話してたんだ?」

 

「え、あ、いや…なんでもないよ」

 

「そうか……」

 

気にはなったがそれ以上詮索しても話さないだろうと思ってそう言う。

灯夜も追求してこないのに気づかれないように息を撫で下ろす。

 

「じゃあ、どうせだから一緒に行こうか」

 

「そうだな…」

 

灯夜の言葉にそう言って同意すると二人は学校に向けて歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

時間が流れて今はお昼。

恭也はたまには屋上で食べようと思い弁当片手に教室を出る。

階段を上がり屋上へ出ると隅の目立たぬ場所で弁当を開き食べ始める。

季節のせいか屋上には結構多い数に生徒がいた。

あまり騒がしいのを好まない恭也は教室で食べるべきだったかと考える。

そう思いながら早い速さで弁当を食べ、弁当箱を片付けると恭也は屋上を後にする。

階段を下りて教室に向かっていると恭也は今朝遭遇した人物に会った。

 

(む……あの人は確か今朝灯夜と話してた…)

 

そう考えながら恭也はその人物、愛のとすれ違う。

すれ違いざまに恭也は今朝と同じく軽く頭を下げる。

が、やっぱり一瞥するだけで愛はそこから去っていった。

 

(ふむ…あまりいい印象はもたれていないようだな)

 

恭也はそう考えながら教室の扉を開けて中に入っていった。

 

 

 

 

ホームルームが終わり、今は放課後。

恭也は鞄を持って忍に声を掛けてから教室を後にする。

そして下駄箱で靴を履き替え、学校の門を出る。

恭也はそのまま家に帰ろうかと思ったが盆栽の雑誌が今日発売日なのを思い出す。

手持ち金を確認すると恭也は本屋へと向かった。

本屋につくとすぐに雑誌を発見しそれを立ち読みする。

しばらく呼んでから雑誌を閉じ、それをレジへ持っていこうとする。

が、通りがかりに気になる盆栽誌を発見しまた立ち読みに入る。

 

「む……この松、なかなかだな」

 

そんなことを呟きながら立ち読みを続ける。

気づくとほとんど読んでしまい、買うべきかどうか悩む。

そして結局それも買うことに決め二冊をレジに持っていき購入する。

そして店から外に出ると長い時間立ち読みをしていたせいか日が傾き始めていた。

恭也は少し近道をして帰ろうと思い、来た道とは違う道を通る。

そしてその道の途中に見覚えの無い空き地を発見した。

 

「こんなとこに空き地なんてあったか……?」

 

そう呟く。

恭也もあまりこの道は通らないためなかったという確証はない。

なら自分が通らない間に出来たんだろうと考え恭也は歩き出す。

 

「っ!?」

 

歩き出してから数歩歩いたとき妙な気配を感じる。

恭也はその気配を探るため足を止め周りを見渡す。

しかし、気配はするもののそれらしい影は見えない。

 

「気のせい……ではないな」

 

一瞬気のせいかと考えそうになるがそれを否定する。

気配が消えたのならそうも考えるがまだそれは存在しているのだ。

恭也は慎重に気配の出所を探りながら空き地の中に入る。

 

「この辺りからだな…」

 

そう言って立ち止まり周りを見渡す。

恭也ほどの腕なら気配の出所を探るのは造作も無いことだ。

しかし、今回はまったく出所がつかめない。

それに恭也は不信感を抱く。

そして一歩歩き出そうとしたとき

 

「なっ!?」

 

それは現れた。

恭也の目の前に突如としてそれは出現したのだ。

それは前の犬のクリープと同じように白い装甲を身に纏ったゴリラのようなもの。

そしてそれは明らかに恭也に対して敵意を持っていた。

それはその体に似合わず素早い動きで恭也との間合いを詰め腕を振るってくる。

 

「くっ」

 

恭也は軽く呻いてそれをバックステップで避ける。

そして背中に隠し持っている小太刀を抜くと鞄を放る。

 

「これがクリープというやつか…」

 

前にも一度見たことあるが恭也は敵を見ながら言う。

 

「確か白い部分なら切っても大丈夫だったな…」

 

恵都に説明されたことを思い出しながらそう呟く。

そして敵は再度恭也に襲い掛かってくる。

それを迎撃するように恭也も敵に向けて駆けだした。

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、灯夜とユリエルはクリープの反応を感じてその場所へ走る。

 

「まさかクリープが同時に二体現れるなんて…」

 

予想だにしなかったことにユリエルはそう呟く。

灯夜はそれに何も返すことなくただ走る。

そしてしばらく走り、その反応があった場所へたどり着く。

そこにいたのは

 

「「恭也(さん)!?」」

 

クリープと対峙している恭也だった。

自分の名前を呼んだ二人に恭也は注意を向ける。

そしてその隙を狙ったかのようにクリープは拳を繰り出す。

 

「ぐうっ!」

 

不意を疲れた恭也はそれを咄嗟に小太刀で受け吹き飛ばされる。

二人は再度恭也の名前を叫ぶと吹き飛ばされた恭也へと近づいた。

 

 


あとがき

 

 

けっこう中途いですが前編終了です。

【咲】 確かに中途半端ね。

これ以上書いちゃうと次回のネタが…ねぇ。

【咲】 まあ、それはいいとして、確かクリープの出る順序って空き地が先じゃなかった?

まあ、確かに本来はそうだね。

【咲】 じゃあなんで逆なの?

この後のストーリーに恭也を関わらせるにはそのほうがしやすいかなと。

【咲】 へ〜、めずらしく考えて書いてるのね。

めずらしくは余計じゃ。 まあ、ノリがなかったといえば嘘になるけどね。

【咲】 ま、今回はノリだけじゃないみたいだからいいでしょう。

…なんかえらそうだな。

【咲】 まあ、実際あんたよりえらいしね。 では今回はこの辺で。

なんか聞き捨てならないような気がするけど…ま、いっか。 ではまた次回も見てくださいね〜ノシ





クリープの出現。
美姫 「そして、灯夜に忠告をする愛という少女」
一体、何者?
美姫 「益々気になる所で、これまた次回〜」
うぅぅ。気になるな。一体、これからどうなるんだろうか。
美姫 「次回も待ってますね〜」
待ってます。



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