私は少し驚いた。

 

白夢にもあんな人たちがいるということに。

 

だからといって白夢が全部良い人ばかりだとは思えない。

 

でも、あの人たちなら彼を任せてもいいかもしれない。

 

私は少しだけそう思った。

 

でも、それは少しだけ。

 

完全にあの人たちを信じたわけじゃない。

 

だってどう言おうとあの人たちが白夢であることには変わりないから。

 

だから私はもうしばらくあの人たちを監視する。

 

彼に危害を加えようとしたら私はあの人たちを殺す。

 

でも、信用できる人たちなら私が見ることが出来ない間、彼を支えることを任せられる。

 

どっちになるかはあの人たち次第。

 

私は後者であってほしいと思う。

 

今の彼には一人でもそんな人たちが必要だと思うから…。

 

 

 

 

 

 

 

彼の望んだ世界

 

第六話 同じ境遇の少女

 

 

 

 

 

 

 

授業の終わりのチャイムが学校に鳴り響く。

恭也はそのチャイムで眼を覚ます。

軽く伸びをして隣の忍に声を掛ける。

恭也の声で忍は眠たそうな瞼をゆっくり上げる。

 

「ん……おはよう、恭也」

 

「ああ…おはよう」

 

忍を起こすと恭也は弁当を広げる。

今日の弁当は晶が作ったようだった。

恭也は焼き魚に箸をつけつつご飯をかきこむ。

隣では忍がアセロラジュースを飲んでいた。

 

「それ、好きだな…」

 

「うん。 美味しいからね〜」

 

そんな他愛も無い会話をしつつ昼食を食べる。

昼食が終わり軽く談笑をしているとお昼の終わりを告げるチャイムが鳴る。

そして午後の授業。

恭也は午前と違い一応起きてはいた。

ただ内容は右から入って左から抜けていたが。

その隣の忍は理系の授業ではないため午前と同じく寝ていた。

そんな風に午後の授業が終わり、ホームルームに入る。

担任は特に連絡はなしといって簡単にホームルームは終わった。

恭也は鞄を持って忍にじゃあなというと教室出て行った。

教室を出て階段に差し掛かるところで見覚えのある人物を二人発見した。

 

「灯夜に神楽さん…どうしたんですか、こんなところで」

 

「あ、高町先輩、ちょうどよかったです」

 

「はい? 何か用でもあったんですか」

 

「ええっと、実はですね…」

 

そう言って夏希は話し出す。

夏希の話は簡単だった。

なんでもこの間、夏希が真実を伝えに言った少女に会ってほしいというのだ。

 

「だめ……ですか?」

 

灯夜はすでに了承しているらしくあとは恭也のみということである。

恭也は少し考えた後、首を縦に振った。

その瞬間夏希はぱっと笑顔になった。

 

「ありがとうございます! じゃ、さっそく行きましょう」

 

そう言って歩き出す夏希。

それに恭也と灯夜は苦笑しながらついていった。

 

 

 

 

 

 

学校を出てしばらく歩くと目的の病院についた。

三人は病院の中に入り、エレベーターでその少女のいる階に上がる。

そしてその病室を前にして夏希は扉をノックして返事が返ってくると扉を開ける。

 

「こんにちは、ひーちゃん」

 

「あ、夏希ちゃん……それと」

 

少女はそこで夏希の後ろにいる恭也と灯夜に視線を向ける。

その視線はちょっと戸惑っているような視線だった。

人見知りをするのかそれとも気弱なのか少しびくびくした感じである。

恭也と灯夜はそれを見てなるべく優しく自己紹介をする。

 

「初めまして、高町恭也といいます」

 

「同じく初めまして、新城灯夜っていうんだ。 よろしくね」

 

「あ、はい……初めまして、榎本ひいろです…」

 

恭也と灯夜の微笑と優しい物言いに少し安心したのか自分も自己紹介を返す。

そしてその後四人は夏希とひいろの会話を静かに聞いたり、自らも加わって談笑をしたりした。

ひいろも最初こそびくびくしていたが今では夏希と同じように接するようになった。

そんなこんなで二時間程度が過ぎた頃、そろそろお暇すると言うことになった。

 

「それじゃまたね、ひーちゃん」

 

「うん…ばいばい、夏希ちゃん。 それから恭也さんと灯夜さんも…」

 

「ああ…」

 

「じゃあね、ひいろちゃん」

 

そう言い合って三人は病室を出るとエレベーターへと乗り込む。

そして扉を閉めようとするとひいろが病室から出てこちらへと駆け寄ってくる。

 

「あ、あの……」

 

「ん? どうかしたの?」

 

灯夜が聞き返すと少し下を向きながら小さな声で言ってくる。

 

「また、来てくれますか…?」

 

それを聞いて恭也と灯夜は少しきょとんとしてしまうがすぐに微笑を浮かべて言う。

 

「ああ…来ていいならまた来させてもらうよ」

 

「僕も、暇が出来たらまたくるよ」

 

「はい…お待ちしてますね」

 

そう言って微笑むと再度さよならと言って病室へと戻っていった。

ひいろが戻ったのを見てから三人はエレベーターのドアを閉めて下へと降りていった。

そして、病院から出ると三人はその場で解散した。

 

「灯夜…」

 

恭也と夏希がいなくなったところで灯夜に声をかけてくる者がいた。

灯夜は声のかけられたほうへ振り向く。

 

「ユリエル…」

 

声をかけてきたのはユリエルだった。

ユリエルは少し怒ったような表情で灯夜を見ていた。

 

「あの子が近づいてきてから、いつかはこうなると思ってたけど……」

 

そう言ってユリエルは片手で額を押さえる。

そしてもう一度灯夜のほうを見るとしっかりとした声で言う。

 

「灯夜、あなたはあの子に会ってはだめ……」

 

「あの子って、ひいろちゃんのこと?」

 

「そうよ……それと恭也さんにも同じことを伝えて」

 

「先輩もって……なんで会っちゃだめなの?」

 

理由も知らずにそう言われるのは納得できない灯夜は聞き返す。

ユリエルはその疑問に顔を暗くする。

 

「今は言えない……ごめんなさい」

 

「それじゃあ納得してっていうほうが無理じゃないかな?」

 

「でも現状から灯夜があの子に接触するのはよくないの。 恭也さんに至ってはもっと……ね」

 

そう言って顔を伏せてしまう。

だがすぐに顔をあげると最初のような感じで言う。

 

「お願いだから、もう病院には近づかないで……」

 

そう言ってユリエルはその場を後にした。

後には困惑した様子の灯夜のみが残されていた。

 

 

 

 

 

そんなとき、その状況少女は見ていた。

どことも言えぬ真っ暗な世界で少女は見ていた。

 

「恭也があの子に接触しちゃった……か」

 

少女はそう呟く。

その声には恭也を心配したような感じが見られる。

 

「今のところ特に何もないみたい……でも」

 

少女は視点を恭也へと移す。

恭也を見ながら少女は溜め息をつく。

 

「今後、どんな影響があるかわからない…」

 

少女は呟きながら視線の先にある恭也を見続ける。

 

「もうほとんど時間はないわよ……恭也」

 

そんな少女の呟きがその世界に響き渡った。

 

 


あとがき

 

 

D→A:BLACKの細かいところを覚えていないため結構オリジナルな台詞が入ってますね。

【咲】 ま、自業自得だけどね。

ぐっ……でも話自体の大まかな内容は掴んでるから大丈夫さ。

【咲】 そうならいいけど……。

しかし、D→A:BLACKのシナリオも中盤にはいってますね。

【咲】 これ終わったらどうするわけ?

題名変えて続けるか変えずに続けるか今お悩み中。

【咲】 まあ終わるまでに決めなさいよ。

わかってますよ。

【咲】 どうだか。 では今回はこの辺で。

また次回見てくださいね〜ノシ





またしても謎めいた言葉が。
美姫 「何故、ひいろと会ってはいけないのかしら」
その辺りの謎もいずれは分かるんだろうな〜。
美姫 「これからどうなるのかしらね〜」
うんうん。また次回を待ってます。
美姫 「待ってますね〜」



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