この世界の存在を糧として生きている者たちがいる。

 

それは白夢と呼ばれる存在。

 

彼らにとってこの世界は格好の食事とも言える。

 

私はそんな彼らが嫌いだ。

 

その一人である彼女を見ると私は虫唾が走る。

 

彼女はその行為が余り好きではないようだけどそんなことは私には関係ない。

 

私が与えた彼の世界を糧にすることは私の怒りを買うことだ。

 

でも、私は怒りがあっても彼らに直接的には何もしない。

 

それは私の存在が彼らに知られたら彼の身が危うくなるかもしれないから。

 

この世界を糧にしている彼らが彼をどうこうするとは思えない。

 

でも、万が一ということも考えられる。

 

だから私は直接は何もしない。

 

そう……直接は…。

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の望んだ世界

 

第四話 謎の少女

 

 

 

 

 

 

 

 

 

騒動の後、病院からまっすぐマンションへと向かった。

昨日と同じ階の同じ部屋を前まで来ると灯夜はドアを開く。

するとパタパタと音をさせて人が近寄ってくる。

 

「おかえりなさいませ、ご主人様」

 

「ああ、ただいま、リン」

 

リンと呼ばれたその少女は灯夜の後ろにいる二人を見るとにこっと微笑み人数分のスリッパを出す。

そして、軽く頭を下げながらいらっしゃいませと言って奥のほうへと戻っていく。

恭也とユリエルはスリッパを履くと灯夜の後ろへと続く。

 

「じゃあ座ってて。 先生呼んでくるから」

 

そう言ってその場を去っていく灯夜。

灯夜が去っていったのと同時にリンがお茶を持ってくる。

 

「どうぞ」

 

「あ、すみません」

 

そう言って頭を下げるとお茶を受け取る。

それを一口飲んでテーブルの上に置く。

しばらくすると灯夜が帰ってきた。

その後ろには少し寝ぼけ顔の女性がついてきていた。

 

「もう……まさか寝てるなんて思いませんでしたよ」

 

「そんなこと言ったって、言ってた時間より遅いから仕方ないだろ〜」

 

不平を口にしながら欠伸をする女性。

灯夜はそれに溜め息をつくと昨日と同じ席へとつく。

そしてその隣の席に女性は座ると恭也に視線を向けてくる。

 

「え〜と、二人が言ってたのは君の事?」

 

「え、ええ…たぶんそうかと」

 

「ふ〜ん……」

 

じろじろといった視線で見た後、リンから出されたお茶を一口飲む。

 

「ん〜と、用件はなんだっけ?」

 

「はぁ…」

 

内容をド忘れしている彼女に灯夜は再度溜め息をつく。

 

「僕たちのしていることについてですよ…」

 

「あ〜、そうだったな」

 

そう言ってポンッと手を打ちながら笑う。

そして少し笑みを張り付かせたままで再度恭也のほうへ向く。

 

「ま〜、なんだ……結構常識から外れたようなことだから信じるかどうかは君に任せる」

 

「は、はあ…」

 

「で、こいつらが何をしてるのか…だったな。 ん〜、簡単に言えば狩り…かな」

 

「狩り…ですか?」

 

「そう、狩り」

 

本当に簡単に説明されたため恭也の頭の中ではなぞが深まる。

それを見ていたユリエルはさすがに呆れた表情をしていた。

 

「さすがにそれじゃあわからないんじゃないかしら…?」

 

「あ〜、そうか……もう少し詳しく話すと普通はこの世にいるはずの無い者を見つけて狩るってこと」

 

「この世にいるはずのない者?」

 

オウム返しのように聞き返す恭也。

それに女性は頷くと説明を続ける。

 

「そう。 まあ一般的に言えば幽霊ってやつかな。 その幽霊が負の力を吸収したもの……それを私たちはクリープって呼んでる」

 

「クリープ…」

 

「それで負の力を吸収したそのクリープは人を襲うんだよ。 さらに普通の人には見えないから性質が悪い」

 

「それを早期で発見して狩るのが私たちの仕事なのよ」

 

「はあ…」

 

「ま、普通じゃ信じられないことだとは思うけどね」

 

「いや、信じられないわけじゃないんですが…」

 

その発言に台所で調理をしているリン以外の面々は驚く。

さすがにこんな話をいきなりして信じるやつはいないだろうと思ってたからだ。

しかし、ここでその例外が頭に浮かんだ。

 

「まさか、あの子みたいにこんなに簡単に信じる人がいたなんて…」

 

「そんなに珍しいことですか?」

 

「まあ、そりゃ…ね」

 

恭也からすれば幽霊という存在は前から知っているし今話されたクリープというのがいても別段不思議には感じない。

それほど彼の周りは人外だらけだということだが……。

 

「ま、信じるなら信じるで別段悪くはないんだけどね。 で、他に聞きたいこととかある?」

 

「では一つだけ……」

 

「なに?」

 

「クリープというのはあの犬みたいなやつですよね?」

 

恭也の言葉に女性はわからずといった顔をするが、その隣の灯夜とユリエルが頷く。

 

「そう。 あれがさっき言ったクリープだよ」

 

「なんだ、もう見たことがあったのか」

 

「ええ。 といってもついさっきのことなんですが…」

 

「ふ〜ん…」

 

「それで質問の続きですが……あれは人が倒せるものなんですか?」

 

「ん〜、見える人はいるけど……倒せる人は見たこと無いからいないんじゃないかな」

 

「え……でも、俺には倒せましたが…?」

 

「へっ? どういうこと?」

 

そう聞き返す女性に灯夜とユリエルがさっきの出来事について話す。

それを聞いた女性は興味深そうに恭也を見る。

 

「ふ〜ん…確かに君にはこいつと同じ力を感じるね」

 

「っていうことは彼は死神なんですか?!」

 

「いや、たぶん違う。 黒の力ではあるけど、それとはまた別の何かだね。 でも純粋な力だけなら匹敵するかもしれないな」

 

「それほど…ですか」

 

「あの…その黒の力っていうのは?」

 

「ああ、黒の力っていうのは死神とかが持つ属性みたいなもんだよ。 反対に天使と呼ばれるユリエルは白の力がある」

 

そこで恭也は思い返してみる。

確かにさっきの戦いでユリエルは背中に白い翼があり白い閃光を放っていた。

それはどちらも白の力といえば納得できる。

 

「そしてこの属性っていうのはクリープにも存在するんだよ」

 

「…ちなみに同じ属性同士がぶつかるとどうなるんですか?」

 

「白に白がぶつかればクリープの装甲は再生するね。 そして黒同士だと互いにダメージを受けあう」

 

「……確かに俺が攻撃したときは体に痛みが走りましたね」

 

「だろ? だから黒の属性である君は攻撃するなら白い部分を狙ったほうが良いね」

 

「はあ……わかりました」

 

「で、他に質問はあるかい?」

 

「いえ、もう大丈夫です」

 

「そう。 なら逆にこっちから質問するけど、構わない?」

 

「ええ…俺に答えれることなら」

 

そう言って恭也は頷く。

 

「それじゃあ私から質問しますね。 さっきのクリープとの戦闘で恭也さんはまるで瞬間移動でもしたような動きをしましたけど、なんですかあれは?」

 

「あ、それは僕も気になってた」

 

そう言って二人、いや三人は興味津々の目で恭也を見る。

恭也はそれに少したじろぎながら答える。

 

「えっと…あれは俺のしている古流剣術の奥義の一つです」

 

「あんな奥義があるなんて……ずいぶんすごい流派ですね。 名前を聞いても?」

 

「その…できれば遠慮したいんですが」

 

「なぜ……と聞いてもいいかしら?」

 

「うちの流派はいろいろと物騒なんですよ。 だから名前を聞いただけで命を狙われる危険があるので」

 

「そ、そうなの…」

 

「ええ……」

 

「じゃあ、聞かないほうがいいわね…」

 

「そのほうがいいですね」

 

「じゃあ次はあたしからの質問だよ」

 

そう言う女性に皆の視線が注目する。

そんな注目の中、女性は質問を口にする。

 

「君……恭也っていったね。 恭也は最近身の回りで不思議なこととか起きてない?」

 

「なぜですか…?」

 

「いや、どうも恭也には不思議な感じがするんだ」

 

彼女みたいなね、と小さく言うがその部分は恭也には聞こえなかった。

 

「で、どうなんだい?」

 

女性は真剣な眼で聞いてくる。

女性のその様子に灯夜とユリエルも興味が出たのか恭也の答えを待つ。

 

「えっと、不思議言われても答えかねるんですが……」

 

「じゃあ、質問を変えよう」

 

そこで一息ついて変えた質問の内容を口にする。

 

「家族に何か事故のようなものがあったとか……」

 

「っ?!」

 

「知り合い、または友達の身に何かあったとか……」

 

「あ……」

 

「そんなことがなかったかい?」

 

そこで恭也はしばし呆然とする。

そして頭を抱えるようにして何かに苦しみ始める。

 

「あ、あぁあぁぁ…」

 

その変貌にいままで厨房にいたリンですら何事かと近寄る。

灯夜たちはその光景を前に呆気に取られていた。

 

「俺は……俺は…」

 

恭也の頭の中に何かしらのイメージが浮かんでくる。

それはやがて鮮明になりかけていた。

 

「かあさん……美由希……なのは…」

 

何かに怯えるように家族の名前を口にする。

そして周りの大気に変化が現れる。

 

「なっ?! これは……」

 

「いけない!! 灯夜、恭也さんを落ち着かせて!!」

 

「わ、わかった!!」

 

その変化に皆は慌てる。

灯夜は恭也を落ち着かせようと声をかけるが恭也の耳には届かない。

そして大気の震えは徐々に世界に侵食しようとしていた。

 

「まずい!! このままだと…」

 

「先輩、しっかりするんだ!!」

 

だんだんと異常が発生する中、恭也はただ家族の、友達の名前を呟く。

 

「忍……那美さん…」

 

恭也のイメージがだんだんと鮮明になろうとしたとき、恭也の後ろから光が放たれる。

それに慌てていた面々は驚き視線を向ける。

光の止んだそこには一人の少女が立っていた。

真っ白な長髪に真っ白な肌、そして真っ白なドレスのような服を着たまるで妖精のような少女。

少女は閉じていた眼をゆっくりと開け、後ろから恭也へと近づき抱きしめる。

 

「大丈夫……大丈夫だから」

 

そう子供をあやすようにしながら呟く。

すると恭也は次第に落ち着いていき、完全に落ち着いたとき恭也は気を失っていた。

そして気を失った恭也を愛おしそうに撫でた後、少女は睨むように他の面々を睨む。

 

「まったく……だから白夢の人たちは嫌いなのよ」

 

そう吐き捨てる言う。

そう言われる中、灯夜たちはただ呆然としているしかなかった。

 

 


あとがき

 

 

なんかすごい展開になってしまった。

【咲】 勢いだけで書くからそうなるのよ。

作者には勢いというのも大事だと思うな。

【咲】 時と場合によるわ。 それにあんたはそれだけじゃない。

ぐ…返せないじゃないか。

【咲】 もう少し考えて書くことを心がけなさい。

は〜い…。

【咲】 にしても女性女性と書く割には名前が出てないわね。

いや〜、書くつもりだったんだけどこうなってしまった。

【咲】 それで次回に回したわけ?

そうなるね〜。

【咲】 これで次回も名前が出なかったら何時書くのよって感じね。

まあ、そんなことないようにちゃんと書きますて。

【咲】 ならいいけど……では今回はこの辺で。

次回も見てくださいね!! では〜ノシ




突如現れた謎の女性。
美姫 「彼女が、今まで恭也を見ていた人なのかしら」
一体、どうなるのか、どんな展開をするのか。
美姫 「全く予想が付かないわね」
ああー、次回が待ち遠しいよ。
美姫 「次回も待ってますね」
ではでは。



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