彼は出会った。

 

死神のような鎌を持った少年と少年と共に何かを成している少女……そんな二人に。

 

その出会いは彼にとって偶然か…それとも必然か。

 

それは私にもわからない。

 

でも彼らの存在は彼に大きな影響を与えるのはわかる。

 

それが彼にとって良いほうに転ぶのか、それとも悪いほうに転ぶのか。

 

今はまだ誰にもわからない。

 

でも、どちらに転んだとしても、私は彼を見捨てることはしない。

 

彼の望みは私の望み。

 

彼の悲しみは私の悲しみ。

 

彼がどんな選択をし、彼がどんな決断をしても、私は彼を見守り続ける。

 

それが私の存在理由であり、私の思いだから……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の望んだ世界

 

第二話 夢の声

 

 

 

 

 

 

 

 

恭也の質問にその二人は答えるのを少し渋っていた。

そして恭也は諦めず問いただそうとすると少年が口を開く。

 

「少し長い話になるんだ。できれば僕のマンションで話したいんだけど……いいかな?」

 

「…ええ、かまいません」

 

「じゃあ、いこう…」

 

そう言って少年は歩き出し、少女もそれに続いた。

恭也は軽く空を見上げ空に浮かぶ満月を見た後、その二人のあとを追った。

しばらく歩くと少し大きめのマンションにたどり着いた。

そこは高町家からさほど離れてはいないマンションだった。

エレベーターで上に上がり、少し歩くとマンションの一室の前で二人は止まった。

 

「ここですか…?」

 

「うん……どうぞ」

 

ドアを開けて恭也に入るように言う。

恭也は言われるままにその部屋に入るとドアを閉める。

するとドアの閉じる音で気づいたのか、奥から声が聞こえてきた。

 

「あ、ご主人様、お帰りなさいませ〜」

 

そう言って駆け寄ってきた人はこのマンションにはちょっと不釣合いなメイド服の少女だった。

少女はご主人様と呼んだ少年とその隣にいる少女を見た後、恭也に視線を向ける。

 

「? …お客様ですか?」

 

「ん? あ、ああ、そうなんだ。 とりあえず中に入って良いかな」

 

「あ、はい、どうぞ〜」

 

そう言って室内用のスリッパを三足分出すと奥のほうへ戻っていった。

恭也はそれを少し呆然とした顔で見ていると少年は苦笑まじりで言う。

 

「驚いた? こんなマンションにメイドがいることに」

 

「ええ、まあ……」

 

「まあ、それが普通の反応かもね。 じゃあ中へどうぞ」

 

そう言って靴を脱いでスリッパを履き中へと入っていく少年と少女。

恭也はそれに続くように靴を脱ぐと出されたスリッパを履いて中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

「どうぞ」

 

「あ、すみません」

 

恭也は出された飲み物を受け取る。

向かいに座っている二人もカップを受け取り口に運ぶ。

口から離し、テーブルに置くと少年は口を開く。

 

「話の前にまず自己紹介をしておこうか。 名前も知らないじゃ不便だからね」

 

「そうですね。 自分は風牙丘学園の三年で高町恭也といいます」

 

「風牙丘……か」

 

「…どうかしましたか?」

 

少し顔を顰めて風牙丘の名前を呟くように少年は言う。

それを不思議に思った恭也は尋ねるが少年は表情を戻して首を横に振る。

 

「なんでもないんだ……三年ってことは僕の先輩になるね」

 

「そうなんですか…?」

 

「うん…僕は新城灯夜。 風牙丘の二年ってことになるかな?」

 

「かな……?」

 

「…いや、気にしないでいい。 先輩ってことは敬語で話したほうがいいかな?」

 

「ああ、気にしなくていいですよ。 新城さんの話しやすいほうで」

 

「わかったよ。 じゃあ先輩もそうしてくれるかな? あと俺は灯夜って呼んでくれればいいから」

 

「……わかった。 これでいいか?」

 

「ん。 それでいいよ。 じゃあ次は…」

 

そう言って隣の少女に視線を向ける。

恭也も視線を灯夜から少女へと移す。

二つの視線を向けられた少女はカップを置いて自己紹介を始める。

 

「ユリエル・アーレンクライン。 ユリエルでいいわ。 私も恭也さんと呼ばせてもらうから」

 

「ええ…かまいませんよ」

 

そう言って二人は軽く頭を下げ合う。

 

「それじゃあ、自己紹介も済んだことだし、そろそろ本題に入ろうか」

 

そう言ってくる灯夜に恭也は視線を向ける。

 

「確か僕たちが何者か…だったね?」

 

「ああ…」

 

「う〜ん……言ってもいいんだけど、なるべく口外はしないでね。 まあ、そんなこと話しても変な目で見られるだけだとは思うけど」

 

「わかった…口外しないと約束しよう」

 

しっかりした声でそう告げる恭也。

灯夜はそれを見た後、ユリエルのほうを見る。

ユリエルが小さく頷くと灯夜は同じく頷いて恭也に視線を戻す。

 

「じゃあ話そう……たぶん言っても信じられないことかもしれないから無理に信じなくてもいい。 それだけ覚えといて」

 

「ああ…」

 

「僕はさっきの鎌で大体想像できるかもしれないけど……死神なんだ」

 

「……」

 

恭也は少しだけ驚いた表情をするがすぐに納得したように頷く。

 

「それで、こっちのユリエルは天使だよ」

 

「ふむ…」

 

「まあ、信じられないかもしれないけどね」

 

「いや、信じるさ。 二人とも嘘を言っているような顔には見えないからな」

 

その言葉に二人は少し驚いた顔をする。

しかしすぐに苦笑したような表情を浮かべる。

 

「か、変わった人だな…先輩って……」

 

「え、ええ…そうね」

 

「そうか…? 確かに周りにはそう言われることもあるが…」

 

「まあ、それが先輩のいいとこなんだろう」

 

灯夜はそう言って微笑する。

 

「そういえば、もう一つ聞きたいのだが」

 

「なにかしら?」

 

「さっき二人があそこを歩いていたのは用事があったと聞いたが、どんな用事だったんだ?」

 

「あ〜、えっと…それは」

 

そこで言葉を詰まらせ灯夜とユリエルは小さな声で話し合う。

 

「なあ、これは言ってもいいのかな?」

「止めたほうがいいと思うわ。 さすがに民間の人を巻き込むわけにはいかないし」

「そうだよな…でもどうやって誤魔化そう?」

「えっと、どうしようかしら…」

「…先生に相談して見ないとわからないっていおうか?」

「でも、あの人は前例があるからOKだしそうなんだけど…」

「それは、まあ、しょうがないってことにしよう……」

「はあ……結局そうなるわけね…」

 

ちなみにその会話は恭也に筒抜けだった。

そんなに近い位置で話されたらいやでも聞こえてしまう。

 

「あ〜…話せないなら無理しなくてもいいぞ?」

 

「え、あ、ああ、そういうわけじゃないんだ。 ただ……」

 

「その先生とやらの了承がないと話せないと?」

 

「「えっ!?」」

 

「そんな位置から小声でひそひそ話しても聞こえてしまう」

 

「あ、ああ、確かにそうだね…」

 

「な、なら、そういうことでいいかしら?」

 

「ああ、かまわない……それで明日またここに来ればいいのか?」

 

「うん。 学校が終わって……そうだね、六時ごろに来てくれるかな?」

 

「ああ、問題ない」

 

「じゃあ、そういうことで……もう遅いしお開きにしましょう」

 

「ん。 では、お暇するとしよう」

 

そう言って恭也は立ち上がる。

 

「送っていこうか?」

 

「いや、大丈夫だ」

 

恭也はそう言うと玄関のほうへ向かう。

玄関で靴を履き替え、その部屋を後にした。

 

「ねえ……」

 

「ん、なに?」

 

「彼…本当に人間かしら?」

 

「どういうこと…?」

 

「あなたと同じ感じがするのよ」

 

「僕と同じ感じ? ってことは死神なの?!」

 

「そこまではわからないわ。 それにそれだけじゃないのよ」

 

「なにがあるの?」

 

「恭也さんからは……いえ、これはまだ知らないほうがいいわ」

 

「気になるんだけど…」

 

「いいから気にしないで……それじゃあ私は帰るから」

 

そう言って靴を履き替えると部屋を出て行く。

エレベーターで下まで降り、マンション入り口の前で満月を見上げながら呟く。

 

「なんで……彼女と同じ感じがするの…?」

 

ユリエルの呟きに返すものは誰もいない。

ユリエルは考えを振り払うように首を横に振るとマンションから離れていった。

 

 

 

 

 

恭也はマンションを出た後、そのまま高町家へと帰った。

まだ鍵が空いておりドアを開けリビングへと行くと桃子がいた。

おかえりという桃子にただいまと返して恭也はシャワーを浴びにいく。

シャワーを浴びた後、どうして遅くなったかを桃子に話した。

大半が嘘であったが、真顔で言われたからか、聞いても話してくれないと踏んだのか追求はなかった。

恭也は桃子と別れた後、自室へともどった。

自室で布団を敷き、布団に横になるとすぐ睡魔がやってきた。

その睡魔に抗ういこと無く恭也の意識は落ちていった。

そして気がつけば恭也は暗い…暗い闇の中に立っていた。

辺りを見渡してもどこからも光が差さないため、自分の姿すら視認できない。

恭也がそれを夢だと判断したとき、どこからか声が聞こえてきた。

 

『ねえ……恭也…』

 

妙に幼さを残し、妙に大人びた少女のような声。

その声に恭也はどこか懐かしさを感じていた。

 

『あなたは…あなたの望んだその世界で……幸せになれる?』

 

「どういう…ことだ?」

 

その質問の意味がわからず恭也は尋ねる。

しかし、その声が言ったのは答えではなかった。

 

『あなたの望んだのはこんな世界?』

 

その声はどこか辛そうな、寂しそうな、そんな悲痛な声で言う。

恭也はそれがなぜなのか何を意味するのかわからない。

 

『あなたがこの世界に留まるという意志があるなら私は反対はしない』

 

『私はあなたがこの世界に留まるなら誰かにこの世界を壊させることはしない』

 

『私はあなたの側にいるし、出来る限り悲しい思いはもう……させない』

 

さっきとは異なり、強い、とても強い意志のこもった声。

 

『眼が覚めたらあなたはここでのことを忘れてると思う』

 

『でも…忘れないで』

 

『この世界がどうなるかは……あなた次第だってことを…』

 

その言葉を最後に恭也の意識は闇に落ちていった。

 

 


あとがき

 

 

なんか灯夜とかの口調が明確に思い出せません。

【咲】 それでどうやって書いてるのよ。

まあ、半分以上想像で……。

【咲】 ゲームをもう一回やればいいじゃない。

いや〜、今手元にないんですよ、はは。

【咲】 はは、じゃないわ!!

へぶしっ!!

【咲】 まったく……では今回はこの辺にしましょう。 では〜ノシ




またまた意味深な言葉が。
美姫 「恭也次第の世界」
死神と天使を名乗る二人組み。
美姫 「その二人が口にした先生ってのも気になるわね」
一体、どうなっているのか。
美姫 「二本立てで送られてきているから」
すぐに続きへGo〜!



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