会議を進めて決まったこれからの方針は二つ。

一つはすみやかに各生徒の属性を調べ上げ、闇に属するものであるのあらば優先的に守ること。

そしてもう一つは、推測した目的通り魔物が闇属性の魔力を持つ生徒を狙って現れた場合、なるべくなら倒さずに捕らえること。

前者がもっとも優先すべき方針であるが、事件解決に向けて前進するならば後者もより重要といえた。

 

「闇の魔力を持つ者を狙う……ねぇ」

 

「? 何か心当たりがあることでもあるのか?」

 

方針が決まり会議が終わりを見せた後、恭也とミラは部屋を退室して各講義室へと歩いていた。

その最中、先ほど会議で出たフィリスの推測に思うところがあるのか、ミラは独り言のように呟いた。

呟くような声ではあったが、周りにほとんど誰もおらず静まり返っているためそれを聞き取った恭也は呟きに対してそう問うた。

問いに対してミラは少しだけ考えるような仕草をした後、恭也を見上げるように顔を向けて口を開いた。

 

「昨夜のことなんだけど……もしかしたらこれと関係があるんじゃないかしら」

 

「昨夜というと……綾菜のことか?」

 

「ええ。 あくまで私個人の考えなんだけどね……」

 

ミラの考え……つまりそれは昨夜綾菜に起こったことが会議で上げられたことに関係があるのではないかということだ。

ただでさえ昨夜襲われた生徒と綾菜の件はほぼ同時刻に起こっているのに、それに加えて襲われた生徒と以前殺された生徒に共通点が出たとなれば綾菜の件も関係があるのではないかと思うのも当然のこと。

しかし昨夜は綾菜が怪我をしたということで頭に血が上っていたため事情を聞いてはおらず、その考えも確証を得るまでには至らないためミラにしては珍しい若干の自信のなさが窺えた。

 

「ふむ……」

 

語られたミラの言葉に恭也自身も同じ考えを抱き、顎に手を当てて考え込む。

だが、しばし考えた末にその考えを否定するように首を振りつつ口を開いた。

 

「確かに昨夜のことは聞く限りほぼ同時刻に起こっていることになるが……あの共通点に綾菜は当てはまらないんじゃないか?」

 

会議で挙げられた共通点……それは本質とする属性が闇であるということ。

だが、綾菜の魔力の本質は火であると以前聞いた恭也は今回のことと特に関係はないのではと考えてそう口にした。

しかし、その否定を更に否定するようにミラは首を横に振り、若干暗い表情で言いづらそうにそれを口にする。

 

「ごめんなさい、恭也。 今まで嘘をついてたけど……綾菜の本質は火じゃないのよ」

 

「火じゃ……ない?」

 

「……ええ。 綾菜の、本当の本質はね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「闇、なのよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メンアットトライアングル!2〜永久に語り継がれし戦士たち〜

 

第二十二話 平穏の裏で……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、講義が始まっているため静まり返った校内を裂夜は走っていた。

走る裂夜の形相からは必死という一文字が読み取れ、それはあからさまに何かから逃げているといった様子。

そしてその後方にはそんな裂夜を追いかけるが如く走る一人の生徒の姿があった。

 

「待ってくださ〜い! 裂夜様〜!」

 

「誰が待つか! というか追いかけてくるなーーーー!!」

 

「そんな恥ずかしがらなくてもいいじゃないですか〜!」

 

「恥ずかしがってなどないわーーー!!」

 

自分に負けず劣らずの速度で走る生徒の言葉に裂夜は同じく叫ぶように返す。

しかしその叫びはその生徒には意味を成さず、依然として裂夜を追いかけ続ける。

さてはて、一体全体なぜこのような状況に裂夜が陥っているのか?

それは今から一時間前の講義開始前まで遡る……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―回想―

 

 

朝、保健室から去った裂夜はとりあえず腹ごしらえをすべく食堂へと赴いた。

起きた時間が時間なだけにいつもより空いている食堂で食事の乗ったトレイを持ちつつ適当な席へと座る。

ちなみにトレイに乗っている食事は白飯、ワカメの味噌汁、焼き鯖、納豆、たくあんという和風一色のものである。

 

「ふむ……やはり朝の食事はこれに限る」

 

などと呟きつつ左手に持った味噌汁を箸で二、三度かき混ぜつつ音を立てて啜る。

そして軽く啜った後、味噌汁を置いて今度は納豆を手にとって醤油とカラシを軽く入れてかき混ぜる。

ここまで見ると、裂夜にしては実に珍しいのんびりとした朝食風景である。

しかし数分後、その空気は一人の生徒の手によって壊されることとなった。

 

「裂夜様!」

 

と聞こえた瞬間、かき混ぜていた納豆を落としそうになった。

だが、間一髪のところで納豆を落とすという惨事を免れた裂夜は声のしたほうを振り向く。

そこにいたのは、薄い紫色で腰元よりやや上辺りまで伸びる長髪が特徴の少女。

学生服を着ているところを見ると学園の生徒ということは一目瞭然なのだが、生徒だということ以外で裂夜はその少女に見覚えがあった。

 

「お前か……もう体は大丈夫なのか?」

 

その裂夜の問いに少女は元気よく、はい、と返しつつ頷いた。

これで分かったと思うが、つまりこの少女は昨夜裂夜が助け、今朝保健室で別れた少女なのだ。

 

「隣……いいですか、裂夜様」

 

「別に構わんが……なんだ、その裂夜様というのは?」

 

了承を得てパァッと花が咲いたような笑みを浮かべつつ隣に座る少女に裂夜は今だ納豆をかき混ぜながらそう問う。

ちなみに先ほど納豆を落としそうになるほど驚いた理由ではこれが一番だったりする。

 

「えっと、私がそう呼びたかったからなんですけど……駄目、ですか?」

 

駄目と言われたらどうしようと思ったのだろうか、少しだけ不安そうに上目遣いで問い返してくる。

それにさすがの裂夜も無下に駄目だなどとは言えず、好きにしろ、と小さく短い言葉で返して納豆に視線を戻す。

 

「ありがとうございます、裂夜様」

 

「あ、ああ……」

 

さっきと同じく笑みを浮かべて言ってくる少女をちらりと横目で見ながらそう返す。

そしてようやくかき混ぜ終えた納豆を二口ほど口に運んで白飯を手に取りまるで急ぐように早々とかき込む。

かき込み終えた後、茶碗をトレイに置いて味噌汁を手にとって一気に飲み干し、焼き鯖とたくあんも驚きの速度で食べ終える。

先ほどまでゆっくりまったりと食事をしていた裂夜がその少女が隣にきただけでどうしてそんなに急ぐのか?

その理由は、少女が裂夜に向ける笑みにあった。

今まで、その性格故か裂夜は純粋な笑みというものを向けられたことがほとんどない。

まあ大体一緒にいることが多いセリナは犬猿の仲だし、同じく接する機会の多いミラからも制裁を受けるばかりなのだから当然といえば当然である。

とまあそれ故に、裂夜は隣にいる少女が向けてくるような純粋な笑みというものに免疫がまったくないのだ。

そして免疫がない裂夜にとって、そんな笑みを浮かべてくる少女が隣にいるというのは居心地が悪い以外の何者でもない。

そのため、それは早々に朝食を終えて早くこの場を去りたいがための行動なのだ。

 

「ん……では、俺はこれで失礼する」

 

すべて食べ終えた裂夜はそう言って少女が何かを返す暇もなく席を立ち上がる。

そして食器の乗ったトレイを食堂の返却棚に置き、そそくさと食堂を立ち去っていく。

 

「あ、待ってください、裂夜様〜!」

 

しかし、それをただ見ているだけになるほど少女は諦めがよくなかった。

少女にとって好きになった二人目の人である裂夜と少しでも多く話して仲良くなりたい。

そしてあわよくば……などと考えているこの少女はそんな避けるような対応を取られたからといってめげるたまではなかった。

そんなわけで、同じくパッパッと朝食を食べ終えて食器を返却し、少女は裂夜を追いかけるべく食堂から駆け出すのだった。

 

 

 

 

―回想終了―

 

 

 

 

 

 

 

と、そんなことがあって今に至るというわけである。

ちなみに現在は逃げに逃げ回り神速まで使用した末、本館三階にある学園長室にて匿ってもらっていたりする。

いつもの如くノックもせずに部屋に入ってきたことにジャスティンは当然呆れたような表情をしたが、裂夜の切羽詰ったような表情でそれは一転した。

だが、事の事情を聞いていくうちに元の呆れた表情へと徐々に戻っていき、遂には溜め息さえもつくのだった。

それに同じく学園長室にいた蓮也は若干乾いた笑いを浮かべ、綾菜に至っては三つ編みが気になりすぎて聞いてはいなかった。

 

「はぁ……匿うのは構わないんですけど、静かにお願いしますよ? 私もいろいろと仕事がありますから」

 

「俺はいつも静かすぎるほど静かじゃないか」

 

「どこがですか……」

 

何度目かの溜め息を再度ついて、ジャスティンは手元の資料に目を落とす。

それと同時に裂夜はソファーにドカッと腰掛けて机の上にあるお椀に入れてあるお菓子を手に取ろうとする。

しかし、その手は目の前の綾菜が髪を弄りながら向ける視線によって宙で止まることとなった。

 

「……これ、お前らのか?」

 

「……(コクコク)」

 

「……もらっていいか?」

 

「……(フルフル)」

 

「ひ、一つくらいいいだろ?」

 

「……(フルフル)」

 

裂夜の言葉に無言で見続けながら、首を横に振って駄目だと言う。

いつもの裂夜なら相手が拒否しようがしまいが関係ないといった感じなのだが、この二人……特に綾菜に至ってはそうもいかない。

蓮也はお菓子ぐらい取られたところで怒ったりはしないが、綾菜は下手をすると泣き出してしまう可能性がある。

そして綾菜を泣かせてしまったとなれば、例の子煩悩な両親にどんな制裁を受けるかわかったものではない。

 

「むぅ……」

 

しかし、先ほど走り回ったせいか裂夜は腹が減っている。

そして朝食はつい先ほど食べたばかりであるため昼食までにはまだ結構ある。

そのため目の前にあるお菓子で軽く空腹感を満たしたいところだが、それが蓮也と綾菜のものである以上奪うわけにもいかない。

となれば、二人のお菓子を奪わずして空腹を満たす方法は一つしかなかった。

 

「おい、俺の分の――」

 

「お菓子ならもうありませんよ。 お二人の分で最後ですから」

 

その方法さえもジャスティンの放った言葉で打ち砕かれた。

穏便に済ます方法を完全に失った裂夜は若干がっくりとうな垂れながらも目の前の二人に視線を向ける。

視線を向けられた蓮也は少しだけ申し訳なさそうな顔をしており、綾菜に関してはお菓子を食べながらも裂夜に取られないようにめちゃくちゃ警戒したような視線を向けていた。

ちなみにこれだけ見ると裂夜は綾菜に好かれていないように見えるかもしれないが、実際はそうでもない。

むしろ蓮也と綾菜が生まれたときからよく面倒を見ていた(当初は本人曰くかなり不本意だったらしいが)こともあってかかなり懐かれているほうだ。

しかし、綾菜にとって事これに関しては自分が気を許している人であっても譲歩する気はないらしい。

 

(く……こうなったら!)

 

いくら頼んだところで分けてもらえないこと分かっているためか、裂夜はある強行手段に出ることにした。

その手段とは……神速を用いて綾菜に気づかれないように素早く奪うという手段である。

この手段は二人ともまだ神速の領域まで辿り着いていないため可能となる手段なのだが、もちろん欠点もある。

それは、最初のうちは気づかれることはないだろうが、調子に乗って続けると減った量で気づかれる可能性が高いということだ。

もしそれで気づかれでもしたら確実泣かれることに加え、今後この方法が使えなくなる可能性がある。

故に、行う際は慎重に且つ欲張りすぎずに行う必要がある。

 

(すぅ……はぁ……よし!)

 

心中で深呼吸した後、裂夜は神速の領域へと突入する。

あたり風景がモノクロに染まり、裂夜以外の全員の動きがスローになる。

そんな中で裂夜は蓮也と綾菜の前に置かれているお椀にあるお菓子に手を伸ばす。

そしてその手が遂にお菓子へと届こうとしたとき……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆発音と共に学長室の扉が爆砕した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「!!?!?」」」」

 

突然の爆発音と共に爆砕した扉に裂夜は思わず神速のまま飛び退いた。

残りの三人も飛び退きはしなかった……というよりできなかったが、一様に驚き呆然と固まってしまっている。

そんな四人全員が向けている視線を先に広がるのは、爆砕した扉の破片が散らばり煙が上がる光景。

そしてその晴れていく煙の中心に立つ、その爆発の元凶とも言える人物。

その人物とは……

 

「見つけましたよ、裂夜様!」

 

「げっ!」

 

つい先ほどまで裂夜を追いかけていた少女その人だった。

煙が晴れて少女の姿が視認できるほどになり、裂夜はあからさまに嫌そうな声を上げる。

そして声と同じく嫌そうな顔をしながら逃げる隙を見つけるべく視線を密かにめぐらせながらジリジリと横に動いていく。

しかし、少女も今度は逃がさないというように同じくジリジリと裂夜との距離を詰めていっていた。

 

「さあ、裂夜様……もう観念しちゃってください。 そして私と一緒に楽しくお話でも……」

 

「断る!!」

 

「もう、そんなに照れなくてもいいじゃないですかぁ……でも、そんなところも」

 

そこで言葉を切って頬を赤く染め、ちょっとだけトリップするような雰囲気を見せる少女。

そしてその隙を裂夜が見逃すわけもなく、トリップしているほんの数秒の隙に神速を発動して部屋から駆け出ていった。

 

「て、あれ? 裂夜様は?」

 

気づけばいなくなっていたことに少女は室内をキョロキョロと視線を動かして見渡す。

その後、室内のどこにも裂夜の姿が見当たらないことに少女はまたも逃げられたと悟り、すぐさま部屋を跳び出て行った。

嵐のように現れ、そして嵐のように去るという言葉が似合うその行動に残された者たちは呆然とするしかない。

 

「……ぐす」

 

だがそんな中、綾菜だけは泣き顔でテーブルのある一点を見詰めていた。

そこにあったのは、先ほどの爆風でひっくり返ったお椀。

そしてその周りにはお椀に入っていたであろうお菓子が散らばり、綾菜にとってかなり悲惨な状況を作り上げていた。

その悲惨な状況を見詰めつつ、綾菜は結果的に泣き出す羽目になってしまったのだった。

ちなみにその日の夕方、綾菜自身からそのことを聞いたミラによってなぜか裂夜のみが制裁という名の雷撃を受けることになった。

そしてさらに爆砕した学園長室の扉のことで少女とこれまた裂夜が二時間ばかりジャスティンから説教を受ける羽目になったそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――様……」

 

ハンター協会地下施設の一室、そこの扉を叩く音と共にそう声が聞こえる。

その声に部屋の内部で机の前に座って数枚の紙を眺めていた一人の男は目線を扉へと向けて中へ入ることを促す。

許可を得た訪問者はバインダーを片手に部屋の扉をガチャッと開けて中へと入った。

 

「おや、珍しいですね。 あなたが私の部屋に来るなんて……」

 

「私もできれば来たくはありませんでした。 ですが、これは早急に――様のお耳にも入れておくべきだと思いましたので」

 

「ほうほう……でも、それなら別にあなたじゃなくてもよかったのでは?」

 

男は理由が分かってはいるものの、あえて意地悪をするようにそう尋ねる。

そしてその男の予想に反せず、訪問者は若干不機嫌そうな表情でそれを口にした。

 

「ジャンケンで……負けましたので」

 

訪問者のその言葉を予想してはいたが、男は苦笑を禁じえず笑みを浮かべる。

それに訪問者は表情の不機嫌さを更に深めつつ、男へと歩み寄ってバインダーを手渡す。

男はまだ少し笑みを浮かべながらも受け取ったバインダーにとじられている書類に目を通していく。

すると、男の表情からは次第に笑みが消え、真剣なものへと変わっていった。

 

「ふむ……なるほど。 学園側にある賢者の石の所在が掴めましたか」

 

「はい。 いくら魔力探知を行っても学園に反応がありませんでしたので、まさかと思って若干範囲を広げてみたところ……」

 

「石の魔力を探知した、と。 ふふふ……これは盲点でしたね。 てっきり学園のどこかに隠してあるとばかり思っていましたよ」

 

「私も同感です。 それで、どうしますか? すぐに奪いにいくのであれば、私とフェリスタ辺りで向かいますが」

 

「確かに、見つかったのなら早急に確保すべきですね……では、お願いできますか?」

 

「了解しました」

 

そう言って敬礼をする訪問者に男は若干苦笑を漏らしてバインダーのとじられる書類を捲って二枚目に目を通す。

そして二枚目の書類を見ていくうちに、男の表情は驚愕へと染まり、若干呆然としたような様子で口を開く。

 

「この魔力反応は……間違いではないんですか?」

 

「はい。 私たちも最初は機器の故障かと思ったのですが何度調べてみても機器に異常は見られませんでしたので……」

 

「そう、ですか……」

 

その返答を聞いて、男は呟くように返しつつもう一度それに目を通す。

男が目を通したそこに書かれているのは、二つの高濃度な闇魔力を探知したという報告の文。

報告によればその濃度は普通の人間ではありえない……謂わば『教団』の求めている魔女に匹敵するほどのもの。

魔女の魔力濃度といえば常人のおおよそ数十倍のものであり、それをもって生まれる者など百年単位であるかないかだ。

しかもそれは必ず一人だけ、つまりは昔も今も魔女と呼べるものなど一人しかいなかったということ。

だが、その以前から捉えている魔女の魔力加えて更に二つ……普通なら驚くどころか信じられずに目を疑うだろう。

しかし……

 

「は……ははははは」

 

確かにそれもありえないことではあるが、男が驚いたのはそんなことではなかった。

高濃度の闇魔力……それは自分たちが求め、そして狙う魔女以外にあると断定するならば一つしかない。

そんなものがあるなど予想外中の予想外、しかし男にも『教団』にもそれは喜ぶべき予想外だった。

 

「あははははははははは!!!」

 

驚きをまるでおもちゃを手にした子供のような笑みに変え、男は大声で笑う。

一見無邪気に見えるその笑いは、裏を返すと邪悪にも見えた。

 

「……どうかなさいましたか?」

 

「はははは……いや……なんでもありませんよ。 なんでも、ね」

 

今だ湧き上がる笑いを押し殺しながら男はそう返す。

訪問者は明らかになんでもないようには見えず不思議そうな顔をするが、それ以上追求はしなかった。

そして報告することを全て終えた訪問者は今も笑いを堪えるようしている男に小さく敬礼をして部屋を後にした。

 

「くくく……まさか、こんなものがあそこにあるとは……これこそ盲点でしたよ」

 

自分以外誰もいなくなった後、男は再び書類を眺めながら呟いた。

書類を眺める男は先ほどのように声に出して笑うことはしなかったが、表情には狂喜の笑みが張り付いていた。

 

「邪神ロキが遺せし最後の遺産……魔女よりも、賢者の石よりも、我らが真に欲していたもの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今度こそ手に入れましょう……『悪夢を齎す真の闇(ナハト)』を」

 

 


あとがき

 

 

諸事情で遅れながらも二十二話が完成しました。

【咲】 遅れすぎだけよ!!

げばっ!!

【咲】 まったく……前回に引き続き、どれだけ遅れたら気が済むのよ、あんたは。

ん〜……。

【咲】 考えるな!!

げばっ!!

【葉那】 わ〜、前回に引き続いてお姉ちゃんの制裁が激しいね〜♪

【咲】 ふ、これは制裁じゃないわ、葉那。

いたたた……じゃ、じゃあなんだというんだよ?

【咲】 美姫さん曰く、これは愛の鞭なのよ!!

【葉那】 あ、なるほど〜♪

んなわけあるか!

【咲】 んなわけあるのよ。 美姫さんがそう言うんだから間違いないわ。

いや、美姫さんが言うことが必ず正しいとは……イエ、ナンデモナイデス。

【咲】 ふぅ……で、前回言ってた予定とは異なってるわね、今回の話。

まあね。 下手にカールの部分を入れると中途半端になったりするから次回に回したんだ。

【葉那】 へ〜、じゃあ次回はそのお話が中心なの?

だいたいはな。 あと、ようやく裂夜を追い掛け回していたあの少女の名が明かされる。

【咲】 ふ〜ん……ようやくって感じね。

だな。 じゃ、今回はこの辺で!!

【咲&葉那】 また次回会いましょうね(会おうね)〜♪




いやー、珍しくミラ以外から戸惑い逃げる裂夜を見たな。
美姫 「確かにね」
あの少女のバイタリティもさるものだけど。
美姫 「あの少女が今後、どう関係してくるのかしらね」
しかも、最後の謎の二人の会話。
一体何が起ころうとしているのか。
美姫 「次回も待っていますね〜」
ではでは。



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