これはメンアットトライアングル2の設定の元で書かれたコメディ?です。

ですので、本編とはまったく関係ないお話ですので、読む際はあっちとは離れて読むことをお勧めします。

でないとあっちのお話でシリアスしてるキャラ像がいろいろと崩壊していく可能性がありますので……。

あと、若干のネタバレを含んだり含まなかったりしますので、その当たりもご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゴ、ゴスロリデー……ですか?」

 

「ええ、ゴスロリデーよ」

 

とある日の学園長室にて、ゴスロリ着用がデフォの黒魔術講師、ミラが突如そんなことをのたまった。

当然、理由も告げられずそんなことを言われれば、如何にミラをよく知っているジャスティンとて戸惑うというもの。

しかし、戸惑いを見せるジャスティンに関係なく、ミラは半一方的に開いた口から言葉を吐き続ける。

 

「期間は二日、開始日は今から三日後。すべての生徒は開始日からゴスロリ着用を義務化……あ、これは女性限定ね」

 

「……」

 

「あと、ただゴスロリ着るだけというのもつまらないから、ゴスロリメイドということで必ず一人には奉仕することも義務ね」

 

正直、なぜゴスロリだからとゴスロリメイドが義務化されるのかは理解に苦しむ。

だがまあ、そんなことを聞いても半分暴走している現在のミラがそれを聞くとは到底思えない。

それは、学園長と講師という長年同じ職場にいる者という間柄以上に相手を理解しているからこそ出てくる結論である。

まあ、その結論がすぐに出るからといって、目の前の事態が解決するわけではないが……。

 

「じゃ、ロビーの掲示板への張り出し頼んだわよ、ジャスティン」

 

「え……あ、ちょっと、ミラ先生!?」

 

結局、急な展開で呆然としている間に、ミラはさっさと言うだけ言って出て行ってしまった。

それにジャスティンは止めようと伸ばした手を溜め息と共に下ろし、椅子の背凭れに背中を凭れる。

 

「今度は一体……何があったというんですか、ミラ先生」

 

すでにいもしない者に尋ねるように、ジャスティンは天井を仰いで呟く。

まあ実際、口にせずにはいられないだろう……ミラがこんな暴走に走るのは、大抵恭也絡みなのは明白だ。

前回も、そのまた前回も、そのまたまた前回も……全部が全部、嫉妬したミラの暴走による騒動ばかり。

そしてその被害に合うのはいつも自分たちやカールたちだけならず、他の生徒まで巻き込むのだ。

それらを思い出して毎回ジャスティンは思うことがある、そして今もミラが出て行った扉に視線を向けて思っている。

ミラを講師として学園に置いたのは、間違いだったのではないかと……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メンアットトライアングル!2〜永久に語り継がれし戦士たち〜

 

第X話 ゴスロリパラダイスin学園 前編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずは説明しておこう……今回、ミラがなぜこんな案をジャスティンに持ちかけたのかを。

それは、いつものようにとても簡単で、ごくありふれた嫉妬から起こった出来事。

正直、どこをどう間違えればそうなってしまうのか、誰もが理解に苦しむ意味不明な嫉妬。

その理解できない嫉妬の炎がミラを包み込んだのは……案が出される数時間前、ちょうど早朝といえる時間のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―回想―

 

 

 

恭也とその子供たちと同じベッドで眠る彼女の起床は、いつも三人が鍛錬に行っているときである。

そしてその日もいつもと変わりなく、ミラは恭也たちが出た後で温もりの冷め始めたときに目を覚ました。

 

「ん、んん……」

 

ベッドから上半身を起こして両腕を上げ軽く伸びをすると、ミラはゆっくりとベッドから床へと降りる。

早朝、目を覚ましたミラが初めにすることと言えば、当然といえば当然の如くまずは着替えである。

ベッド横にあるタンスの自分に割り当てられている箇所、そこを引いていくつもある中からゴスロリ服を一着取り出す。

見た目結構複雑なため着るのは本来時間が掛かる服ではあるが、そこは毎日着ている故に着替えるのは普通より早い。

そんなわけでゴスロリ服へと着替えたミラは、脱いだ寝巻きを脱衣所の洗濯機に放り込み、次いで鏡の前へと移動して髪を整える。

地面につくほどの凄まじく長い髪を整えるのはさすがにゴスロリを着るようにはいかず、少しだけ時間をかけつつも丹念に整える。

そしてそれが終わった後は、そろそろ鍛錬から帰ってくるであろう恭也たちをいつものように笑顔で迎えるのだ。

 

――ガチャ

 

部屋の扉が開く音、それにミラはいつもより少し早いと思いながらも笑顔で振り向く。

しかし、入り口に立っていた恭也たちではなく、自分の天敵の内の一人であることに笑顔がサッと消える。

 

「あからさまねぇ、その反応。 そんなに恭也じゃなかったのが残念だったかしら?」

 

「そうね。 ついでに言えば、朝一番で初めに見た顔があなただってことが不愉快でしょうがないわ」

 

軽口を叩き合うその相手というのは、もう言わなくても分かると思うが、ヘルである。

ここの学園に居つくようになって変わった服装は誰を真似たのか一目瞭然なほど上下共に真っ黒。

次いで言えば、軽口を叩きながら浮かべる表情がどこか余裕っぽく感じて、ミラの不愉快度は更に増す。

 

「それで恭也は……って、いないわね」

 

「蓮也と綾菜を連れて鍛錬に出てるわよ。 というか、許可もしてないのに勝手に入らないで欲しいわね」

 

「固いこと言わないでよ。 私とあなたの仲じゃない」

 

「そんな風に言われるほど親しい仲になった覚えはないわよ」

 

軽口に軽口で返す、そんなことを繰り返しながらもヘルは部屋の内部を興味深げに見渡す。

というのも、ヘルが高町一家の部屋を訪ねてきたのは、今日が初めてのことだったりするのだ。

自分の好きな人が、自分のライバルが、その二人の子供が住む部屋には、やはり興味が出てしまうのも当然。

そして興味深く部屋を見渡していくうちにタンスへと目がいき、興味本位で歩み寄って開けてしまうのもヘルならば当然とも言えた。

 

「はぁ〜……ものの見事にゴスロリばかりねぇ」

 

「ちょ、なに勝手に開けてるのよ!!」

 

部屋を見られるだけなら構わないが、さすがにタンスにまで手がいけばミラも黙ってはいられない。

即座にヘルを押しのけ、タンスの開かれた箇所――なぜかミラのところばかり――をささっと閉じ、タンスを背にヘルを睨む。

しかし、生徒たちならば恐怖を抱くミラの睨みもヘルには通用するはずもなく、恐怖どころか悪戯っ子の笑みを浮かべてベッドに腰掛けた。

 

「ミラってさぁ……いっつもゴスロリばかり着てるわよね?」

 

「え、ええ、そうだけど……それがどうしたっていうのよ」

 

「いえね〜、たまには違う服を着てみたいとか着てみようとか思わないのかなってね。 ほら、好きな人がいつもと違う服を着ただけでときめいちゃったりっていうのはよくある話じゃない」

 

「……別の服を着る必要なんてないわよ。 恭也はこの服が一番好きなんだから」

 

自信満々に言ってはいるが、実際恭也に聞いたわけではない。

というか、聞いたところで困った顔をされるか、はぐらかされるというのが目に見えている。

それもそうだろう……ゴスロリは好きかと直球で聞かれているようなものなのだから、恭也のその性格上、はっきり答えるとは誰も思わない。

だがまあ、長年恭也と夫婦という関係で一緒にいるミラとしては、聞かずともそうであると信じて疑わない。

 

「へぇ……恭也はゴスロリが好き、ねぇ」

 

しかし、他の誰でもなく、この発言をヘルにしてしまったのは間違いだったと言えよう。

人の思惑とか考えとか、それらを逆手に取ることが得意の元死の女神からしたら、この発言は格好の的でしかない。

 

「つまり、恭也はミラ本人じゃなくて、ゴスロリに惹かれたってことね」

 

「なっ、なんでそんな結論になるのよ!?」

 

「だってその発言だとそうなるでしょ? この学園でゴスロリ着てるのなんてミラぐらいしかいないんだから、ゴスロリ好きの恭也がそこに惹かれても不思議じゃないわよねぇ?」

 

「ぐ……」

 

言った言葉が言葉だけに、ミラは反論ができない。

実際それを発言したミラも、こう言っているヘルも、恭也がそんな人じゃないことぐらい知っている。

しかしまあ、ミラからしたらそうかもという不安が若干でも出てしまうわけで、その不安を煽るのがヘルの今現在の楽しみなのだ。

まあ、あわよくばここで二人の仲を裂いて、恭也を我が物にと思っていたりするのはヘルだけの秘密だ。

 

「そんなこと……そんなことあるわけ、ない」

 

ブツブツと自分に言い聞かせるように呟き続けるミラ、それを見て内心で爆笑中のヘル。

そんな様子がしばらく続いた後、再びガチャッと扉の開く音がし、二人は入り口へと振り向く。

振り向いたそこには、鍛錬帰りでちょっと疲れ気味の蓮也と綾菜、そしてその二人に挟まれるように恭也が立っていた。

恭也が帰ってきたのを見てなぜかビクッと身を震わせ、自分の抱いた嫌な考えを恐る恐る尋ねようとミラは口を開いた。

 

「ね、ねえ、きょ「恭也〜、一つ聞きたいんだけど」」

 

それを遮るように、ヘルが恭也へと歩み寄りつつ声を掛ける。

そのときのヘルは先ほどのような笑みを浮かべており、右手にはいつの間に出したのかゴスロリを持っていた。

声を掛けたヘルは恭也がなんだ?と返してきたのを合図にゴスロリを自身の身体に当て、笑みを浮かべたまま尋ねる。

 

「どう? 私も似合うかしら、これ?」

 

「ふむ……似合うと思うぞ?」

 

事情を知らぬ恭也がそう返した瞬間、ミラの嫌な予感が強くなり、恭也に視線を向けようとする。

だが、恭也に向けたはずの視線が捉えたのは、自分に向けてニヤリと勝ち誇った笑みを浮かべるヘル。

そしてその次に見えたのは、ゴスロリを身体に当てたヘルを見て若干頬を赤くしている(ミラにはそう見えた)恭也。

その二つが見えた途端、ミラは不安以上に頭の何かがプッツンと来てしまい、わき目も振らず部屋を飛び出ていってしまった。

突然のそれに事情を知らぬ恭也と子供たちは呆然としてしまい、発端であるヘルはというと……

 

(あ〜……少しやりすぎたかしら?)

 

『やりすぎですよ……』

 

相方にも言われて、ちょこっとだけ反省をするのだった。

 

 

 

 

―回想終了―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが、ミラがゴスロリデーなどという奇行に走った理由である。

まあこれを簡単に言ってしまえば、ゴスロリを着ても自分が一番であると証明するための提案だったというわけだ。

ヘルの悪戯と、それにより生まれたミラの嫉妬によるゴスロリデー……その被害を受ける生徒たちはいい迷惑である。

しかしまあ、迷惑だからといってミラに文句を言える人物などヘル以外いるわけもなく、そのヘルもこれに知ったときにはノリノリであった。

そしてそのことがロビーの掲示板にて張り出され、それを見た恭也&ミラ&ヘルととても関わりの深いカールたちはというと……

 

「……何、これ?」

 

「えっと……今日から三日後に、第一回ゴスロリデーを開催します。 女子生徒、講師問わず前日に支給されるゴスロリ着用を義務化。 更にはその日の講義をすべて中止にし、すべての女子生徒及び講師は誰かしこに奉仕することを義務化します。 質問、意見がある場合は黒魔法講師、ミラ・高町まで……だって」

 

「あ〜……ミラ姉のいつもの暴走がまた出ましたねぇ」

 

「私たちが入学してから、もう何度目ですか……」

 

乾いた笑いを浮かべる者、内容に唖然とする者、溜め息をつく者、様子は様々だった。

だが、質問や意見(文句とも言う)があっても言い出す者などいない……誰しも雷撃の餌食になどなりたくないから。

つまり、甘んじてこのゴスロリデーとやらを受け入れるしかないのだが、同時に疑問というか問題が発生する。

それは、ゴスロリを着るのはいいが……奉仕するというのは具体的に何をするのか、そもそも誰に奉仕しろというのかということだった。

こういったただの質問程度ならば雷撃の脅威に晒される危険もなく、ミラへと聞くことも可能だろう。

そんなわけで、掲示板を見てそう考えた一同はミラがいるであろう黒魔法講義室へと揃って赴いた。

 

「奉仕の内容と対象?」

 

「は、はい……」

 

黒魔法講師だけあってやはり黒魔法講義室にいたミラに、相談の結果生贄となったカールが尋ねた。

ちなみに、他の者は万が一に備えて講義室の入り口の外側から、その様子を内心ハラハラしながら覗き見ていた。

 

「そうねぇ……奉仕の内容は、一般的にメイドと呼ばれる職業と同じこと、と考えてくれればいいわ。 それと対象は、その子がこの人に奉仕したい、尽くしたいと思う人……あ、これは男性限定よ?」

 

「は、はあ……でも、この学園で男性って、かなり少なくないですか?」

 

「そうね。 でもだからこそ、奉仕する女子生徒にとってはいい機会とも言えるのよ」

 

「そ、そうなんですか?」

 

「そうよ」

 

そう言いつつ、扉の隙間から覗いている者たちにチラッと視線を向ける。

覗き見ながらミラが話す内容を聞いていた者たちも、その視線に内容の意図を読み取った。

 

(つまり、自分が好意を持っている人が、如何に他の人からも好意を抱かれているかがわかるってことね)

 

(えっと、この学園に男性は、恭也先生、裂夜さん、兄さん、蓮也くんですから……)

 

(四人しかいないってことだねぇ……で、数が少ないからこそ)

 

(その人がどれだけ好かれているか、どれだけ自分にライバルがいるかがわかるというわけですね)

 

ゴスロリデーにて奉仕する対象を選ぶこと、それは対象にある程度好意があると取れる。

故に、その対象に好意がある者ならば、どれだけ自分に恋のライバルがいるかがわかるというものだ。

しかし、これはそんな良いことばかりではない……なぜなら、これが切っ掛けで気持ちを自覚する者が出てくるかもしれないのだ。

言わば、ライバルを確認できると同時に、ライバルが増えてしまうかもしれない行事だということだった。

そんなところまでちゃんと読み取った一同は各自戦慄をしながらも、講義を忘れて想い人に奉仕しつつ過ごせる一日を思い描く。

 

((((はぁ……))))

 

想像(妄想とも言う)しながらついた溜め息は、各自とても幸せそうなものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カールを除いた一同が幸せ一杯になっている頃、掲示板前には不機嫌そうな顔の裂夜が立っていた。

そしてその両サイドを挟むようにセリナ、アーティも立っており、この二人は裂夜とは違った表情をしている。

セリナは掲示板に書かれる内容を楽しげに、アーティは困ったような顔で見ているのだ。

さて、裂夜がなぜ不機嫌なのかという疑問は……もう分かると思うが、掲示板に書かれる内容である。

 

「何だこれは……俺に対する嫌がらせか?」

 

「ミラ様のことですから、また嫉妬か何かで暴走したための行動ではないでしょうか?」

 

「十中八九、それで間違いないね〜。 ていうか、どんな嫉妬の仕方したらゴスロリデー開催ってことになるんだろ」

 

ミラをとてもよく知っているこの三人は、知っているからこそ理由がすぐに浮かぶ。

しかしまあ、分かっても事態が好転するわけもなく、裂夜とアーティは揃って深い溜め息をついた。

だが、それとは違ってセリナは掲示板を今だ眺め続け、とても楽しそうに鼻歌まで歌い始めていた。

 

「……おい、そこの黒チビ。 なんでお前はそんなに嬉しそうなんだ?」

 

「チビ言うな……まあ、簡単に言っちゃえば、ミラお姉ちゃんのゴスロリが着れるからかな」

 

「どういうこと、セリナ?」

 

「んっとね〜、ミラお姉ちゃんってね、ゴスロリ一杯持ってるのに貸してって言っても貸してくれないの。 理由は聞いてないけど……たぶん全部が全部想い入れのある物だからだと思うから、無理は言ってないけどね。 だからこれってさ、それをミラお姉ちゃんのほうから貸してくれるって言ってるようなものだから、やっぱり嬉しいじゃん♪」

 

「「……」」

 

理由としてはかなりまともなのだが、一つだけ訂正すべきところがあった。

それは、ミラがゴスロリを貸し出さない理由……これはセリナが言っている理由もあるだろうが、おそらく貸さないのはセリナだけだろう。

その理由として、前回起こったこと(一部第十七話参照)を思い出していただければ、容易に想像ができるというものである。

まあそれを考えると裂夜もだろうが、裂夜がゴスロリなど借りるわけもないし、貸してくれと言えばただの変態である。

しかしまあ、そこを本来は訂正すべきなのだが、現在のセリナの喜びように水を差すのは裂夜とて憚られるというものだった。

そのため、とりあえず突っ込みはなしの方面でいき、二人は再び掲示板の頭が痛くなる内容に目を向けた。

 

「しかし……ゴスロリを女どもが着るのは、この際いいとしよう。 だが、この最低一人には奉仕しなければならないというのはなんだ?」

 

「おそらく、ですけど……ミラ様が人前で恭也様とイチャイチャする口実、ではないでしょうか?」

 

「……口実を作らずとも、あいつらは普段からそんな感じだと思うのは俺の気のせいか?」

 

「……えっと」

 

それに関してはどう答えていいのやらとアーティは言葉に詰まってしまう。

事実、二人は人目を気にせずに(恭也はある程度気にしているが)食事を食べさせあったり、腕を組んで歩いていたり。

酷いときには、抱き合ってキスをしたりすることもあったりするのだ……当然生徒が注目する中で。

そんな新婚夫婦ばりの様子をいつも見ている裂夜からしたら口実そのものが無意味だと思っても不思議ではないだろう。

そして同じくそんな様子をよく見ているアーティとしても、裂夜の発言に対して二人をフォローできる術などなかった。

 

「まあ、どうでもいいか……こちとら、あいつらの起こす騒動には慣れているし、俺に奉仕しようなどという輩などおらんだろうしな」

 

「……前者は同感ですが、後者に関しては頷きかねますね」

 

「は? どういうことだ、それは?」

 

「裂夜様に奉仕する人がいないというのはありえないということです。 現に、そちらの方とかがいるわけですし……」

 

そう言いつつ指し示す場所に、裂夜は疑問符を浮かべながら顔を向ける。

するとそこには驚くことに、裂夜一筋として有名になりつつある女子生徒、リエルの姿があった。

裂夜にすら気配を感じさせることなくそこに立つリエルに戦慄しつつ、笑顔を向けながら背中に炎さえ見えるリエルにゾクッとした感覚を覚える。

 

「ふふふふ……楽しみにしててくださいね、裂夜様。 私、当日は精一杯尽くさせていただきますから!」

 

「いらん! というか貴様、一体いつの間に寄ってきた!?」

 

「そんなこと気にしちゃ駄目ですよ〜……裂夜様あるところにリエルあり、というのは世界の理なんですから」

 

「なんだ、その俺限定で迷惑極まりない理は!?」

 

「迷惑だなんて、相変わらずつれないですねぇ。 でも、そんなところがまた……」

 

しまいにはいろいろと妄想に走りつつクネクネし始めるリエル。

それに裂夜はまたもやゾクッとした感覚を抱き、即座にリエルに背を向けて駆けてだし逃走する。

そして裂夜逃走から若干遅れて、リエルも妄想から抜けて裂夜の名を叫びつつ追いかけていった。

 

「……この様子だと、無自覚に落としてる人は多そうですね。 さすが、元恭也様の半身です」

 

去っていく二人を見つつ、アーティは褒めているのか貶しているのか判断しにくい言葉を漏らす。

しかし、それに返す者はこの場にはもう誰もおらず(セリナはいつの間にか消えていた)、発した言葉は空しく周りの声に埋もれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、またまた場面が変わって、掲示板に紙が張り出される数時間前の高町一家のお部屋にて。

呆然としていた恭也が我に返ってミラを追いかけていき、ヘルがそれに続くように退出した後、部屋に残されたのは蓮也と綾菜のみ。

二人は恭也とヘルが去っていった後にどうしようかと悩んだ結果、まずは朝食を食べようと食堂へと赴いた。

そしてそこで、いつも通り定食を注文して食べた後、これまたいつも通りジャスティンがいる学園長室へと向かう。

が、その途中、いつも通りに進むはずだった一日は、辿り着いた学園長室にて疲れた顔をしているジャスティンの見ていた一枚の紙によって打ち砕かれた。

 

「? どうしたんですか、ジャスティン小母さん?」

 

「え……あ、蓮也くんに綾菜ちゃん」

 

二人が入ってきたことにも気づかなかったジャスティンは、声を掛けられ驚きながらも笑顔を浮かべる。

だが、笑顔を浮かべながらも先ほどあった疲れの表情は拭えてはおらず、二人はより一層心配になる。

しかしその心配の表情は、チラッとジャスティンの見ている紙に書かれる内容が見えたことで変わった。

 

「ゴスロリ、デー?」

 

「ゴスロリ……お母さん?」

 

「……」

 

蓮也は見えた内容に不思議そうな顔で首を傾げ、綾菜はゴスロリという単語から母親を思い浮かべる。

あまり知らせたくはなかった――まあどの道知られるだろうが――ことが二人に知られ、ジャスティンの表情の疲れたという部分が増す。

だがまあ、知られてしまったのならばもう仕方ないので、ゴスロリデーの詳細について詳しく話そうとする。

しかし、話そうとした矢先、二人が入ってきたときとは激しく異なる豪快な音を立てて扉が開き、一人の少女が駆け入ってくる。

 

「蓮也〜♪」

 

「う……」

 

駆け入ってきた少女―彩音に、蓮也は苦手なのか思わず声を漏らしてたじろいでしまう。

だがまあ、彩音には蓮也が苦手だろうが何だろうが関係ないため、駆け入ってきた勢いのまま飛びつく。

そして、振り向き様だったために胸へと抱きつかれる格好となり、蓮也はそれに若干顔が赤くなってしまう。

 

「ん〜……蓮也はあったかい」

 

「あ、う、えっと、その……」

 

学園の生徒や講師のような、自分より年齢の離れたものにはある程度免疫がある。

だが、同年代(見た目)の女の子というのは今まで綾菜以外接したことがないため、蓮也の動揺っぷりは見事なものだった。

そんな蓮也にやはり構うことなく、彩音は抱きついた状態のまま頬を蓮也の胸に摺り寄せる。

それにまた更に顔を赤くする蓮也、そんな光景を見てブラコンである綾菜が許せるか……否、許せるわけがない。

 

「お兄ちゃん……デレデレしちゃ駄目」

 

「デレデレなんてして、おわっ!?」

 

言い返そうとする言葉を遮るように、綾菜はグイッと強引に蓮也の腕を引いて彩音と引き剥がす。

いつもの綾菜とは違う積極的な行動に驚きつつ体勢を崩され、綾菜に寄りかかる格好となる蓮也。

そしてそれに、今度は彩音がムッとした顔になり、同じく蓮也の腕を引いて自分に引き寄せようとする。

だがまあ、それを許す綾菜ではなく、自分も負けじと蓮也の腕を力一杯自分に引き寄せようとする。

 

「「むーーー!!」」

 

「痛い痛い! 二人とも痛いって!!」

 

「「お兄ちゃん(蓮也)は私の!!」」

 

「腕が、腕が千切れるーーー!!」

 

一人の男の子を取り合う二人、間に挟まれる蓮也は災難としか言いようがなかった。

そんな光景を見てジャスティンは親も親なら子も子ねぇなどと思いつつ、とりあえず放置することにした。

というか、止めに入って止められる状況ではないので、諦めたというほうが正しいだろう。

 

(この二人なら、蓮也くんのためにゴスロリ着そうですね……)

 

痛いと叫ぶ蓮也の声を耳にしつつ、ジャスティンは紙に目を落として実に的を得た考えを抱く。

ゴスロリ服を身に纏ってよくわからないながらも一生懸命奉仕する綾菜と彩音、そしてそれに表面困惑、内面げっそりの蓮也。

とてもはっきりと想像できる目の前の子供たちのとても近いうち起こるであろう未来。

ただの傍観者ならば哀れと思いつつ苦笑しながら見れるが、ゴスロリデーの対象は自分も何気に入っているためジャスティンは笑うに笑えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

そして、掲示板にこのことが張り出されてから早三日後。

ある者は戦慄し、ある者は嬉々とし、ある者はやはり困惑する、ゴスロリデーが訪れることとなった。

 

 


あとがき

 

 

導入部で前編取っちゃった……てへ。

【咲】 てへ、じゃない!!

げばっ!!

【葉那】 感謝企画ってことでゴスロリメイド話を書こうってことなのに、全然ゴスロリメイド出てないね〜。

だ、だってさ……導入をちゃんとしないとこの後の話が意味不明になるだろ?

【咲】 それでも、折角の感謝企画なんだからちょこっとでも載せないさいよね。

むぅ……で、でもさ、これはこれで、浩さんを焦らしてるってことで?

【葉那】 向こうが焦らされなくちゃ意味ないけどね〜。

うぅ……それを言うなよぉ。

【咲】 はぁ……まったく。 で、話を切り替えるけど、本編とは全然雰囲気違うわね。

まあなぁ。 本編だとこんな話はまず書けない……わけじゃないけど、書きにくい。

【咲】 だからX話ってことにして、本編とはある程度関係なくしたわけね?

そういうことだ。 まあ、本当ならメンアットの世界でメイドをってだけだったんだけど……。

【葉那】 だけど?

いやね、俺ってメイド服の知識が皆無だからさ、だったら俺の大好きなゴスロリでメイドをってことで。

【咲】 ふ〜ん……でもさ、あんたが大好きなだけで、それをこの企画に持ってくるっていうのは正直どうよ?

……まあ、ゴスロリメイドが奉仕する場面と、主要メンバーが繰り広げるギャグを楽しんでいただければなぁ、と。

【葉那】 それで楽しんでもらえるかは、浩さん次第だね〜。

【咲】 そうねぇ……まあ、出来るだけキャラを可愛く、萌えるように書くよう努力させないと。

うぅ……がんばります。

【咲】 頑張んなさい。 さて、FLANKERさんの提案で始まったこの感謝企画であるリレーメイドSS!!

【葉那】 お分かりの通り、まだまだ続きます!!

お次はまたもやFLANKERさんの描くメイド話……俺とは違う純粋なメイド話をお楽しみに!!

【咲&葉那】 じゃ、まったね〜♪




……メイド、メイドはどこ?
あれれ、ここかな〜。
美姫 「って、現実に戻ってきなさい!」
ぶべらっ! じょ、冗談だっての!
美姫 「いや、あの目はかなり本気っぽかったわよ」
ったく、いちいち殴りやがって。にしても、焦らされるな〜。
いやいや、その分後の楽しみが増すと思えば。
美姫 「メイドが絡むと、途端にポジティブになる奴ね」
いやはや、次回が待ち遠しいですな。
美姫 「それにしても、とんでもないはねミラ」
いやいや、俺的に素晴らしいと叫ぼう!
美姫 「叫ぶな!」
ぶべらっ!
美姫 「にしても、T.Sさんまでもが感謝企画として送ってくれるなんてね」
感謝、感激でございます。
しかし、これは、あれだな。本家としてはやはりメイドものを書かねばいけないとか?
美姫 「誰が本家よ、誰が。と言うか、何の本家よ」
いや、それは勿論メイ……。
美姫 「言わなくても良いわ。分かったから」
それはどうも。さてさて、次回がとっても楽しみでございます。
美姫 「次回も待ってますね〜」
ではでは。



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