協力する気は一切ない、と話し始めに言われたときにはさすがに恭也たちも呆気に取られた。

だが、そのことはここに来る前にヘルからも聞いていたため、すぐに皆は我に返ることが出来た。

しかしまあ、呆気に取られている最中の恭也たちを楽しげに見る女神たちを見ると、ヘルの言ったことが事実だと分かる。

クセ者、というかこの場合性格が悪いというほうがいいのだろうが、どの道一筋縄ではいかない相手。

そんな相手を前に、恭也たちは改めていろんな意味で警戒しつつ、とりあえず説得を試みることにした。

 

「別にあなた方に表立って味方についてくれと言う気はありません……ですが、せめて何か敵に関する情報をいただけないでしょうか?」

 

「情報、というのはどういったものでしょうか? 教団の頂点に立つ者の素性? それとも教団全体の目的としていること?」

 

「教えてくれるなら何でも構わないわ。 まあ、本音を言うなら全部と言いたいところだけど」

 

「あらあら、なんて欲張りな方々なのでしょう。 私たちが知っていること全てと言えば、それはこの戦いの結末も含まれるというのに……」

 

「仕方のないことですよ、スクルド。 私たちがどう思おうとも、人間とは所詮強欲な種族なのですから」

 

「そうですわね、ヴェル姉さま」

 

ヒソヒソと話している仕草を見せつつも、ミラにちゃんと聞こえる声量でスクルドとヴェルダンディは言いたい放題言っていた。

それにはお世辞にも温厚とは言えないミラもムカッときたのか、青筋を浮かべて眉をピクピクとさせていた。

しかしまあ、怒りやすいとは言ってもミラは大人……状況が状況故にすぐには怒ったりせず、なんとか我慢しながら再び口を開いた。

 

「だ、だからそれはあくまで本音はって言ってるじゃない。 教えてくれるのなら、あなたたちにとって差し当たりないことだけでいいわよ」

 

「ならそれだけ言えばいいだけの話ですわ。 なのに本音も口にしてしまってる……その辺り、私たちから全部の情報を引き出そうという欲が見えたと思ってもおかしくありませんわ」

 

「そうですね……根が正直なのかどうなのかは存じませんが、そんな欲をチラつかせる人には教えられませんね」

 

人の発言を逆手に取り、情報を教えないと言い出す二人の女神。

はっきり言って口にしていることは子供かと思ってしまうことなのだが、先ほども言ったとおりミラはそれだけで済ますほど温厚ではない。

故に先ほどまで抑えていた怒りと更に加えられた怒りが入り交ざり、それらが顕現するかのように紫電を身の回りに発生させる。

しかしまあ、相手は仮にも神……人間の身で異常なほどの力を持つミラのその様子を見ても動じることはない。

それどころか、おどける様に身を寄せ合い、ミラを馬鹿にしているという様子が見え見えの行動すら取っている始末。

正直その光景を見ている者からしたらいつミラの怒りが爆発するかが分からず、だからと言って止めることも出来ずに内心で焦っていた。

しかし、そんな中でウルドのみは唯一焦ってはおらず、最初と変わらぬ静かな声色で……

 

「その辺りにしておきなさい、スクルド、ヴェルダンディ」

 

短くそう言い、悪乗りする妹たちに歯止めを掛けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メンアットトライアングル!2〜永久に語り継がれし戦士たち〜

 

【第二部】第二十話 終焉の真実、告げられし予言

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルドの言葉にスクルドとヴェルダンディはいともあっさりとからかうことを止めて後ろに下がる。

二人が後ろに下がったのをウルドは確認すると、一、二歩ほど前へと出て口を開いた。

 

「先ほどもお聞きしましたが、あなた方はどんな情報をお聞きになりたいのですか? 先ほどの妹たちのご無礼もあります……許容できる範囲までなら、お教えいたしましょう」

 

「……ありがとうございます」

 

ポーカーフェイスで恭也はお礼を口にするが、内心ではそれなりに驚いていた。

それは、スクルドやヴェルダンディはあんな性格なのに、姉であるウルドは全く違うまともな性格であること。

正直なところ、三人揃っての最初の発言も加え、妹がこれなら姉はもっと酷いのだろうと思っていた。

しかし、実際は良識のあるような、そんなまともな性格が言葉より窺える……思い込みもあってか、驚くほかなかった。

だがまあ、驚いてばかりもいられない状況なため、その言葉に甘え、皆を代表して恭也が疑問をウルドにぶつける。

 

「では、お言葉に甘えてお聞きします。 アルナ・ベルツと名乗る敵集団の最終的な目的……それは一体、何ですか?」

 

「……それに関してはお教えできません。 未来に影響を与えすぎる情報は提供出来ませんので……」

 

「そうですか……じゃあ――」

 

「教団の頂点に立つ者の素性、敵施設がどこに存在するのか、以前現れた魔物は一体何なのか……これらについても、残念ですがお答えすることは出来ません」

 

恭也の言葉を遮り口にしたその言葉は、全て恭也が……恭也たちが聞こうと思っていた疑問。

それらをまるで知っていたかのように口にし、教えられないと拒否を示したウルドに三度驚きを浮かべる。

そんな恭也の様子を、そして後ろにいる者たちの様子を見たウルドは、口元に僅かばかりの笑みを浮かべた。

この笑みを見た瞬間、恭也たちは一様に考えを訂正することになった……やはり、ウルドも妹たちと同じく性格が悪い、と。

 

「何が許容できる範囲までなら教えるよ……結局教える気なんてないんじゃない」

 

「あら、私はそうは言っておりませんよ? そもそも本当にお教えする気がないのなら、早々にご退場願いますもの」

 

「なら聞かせてもらうわ。 あなたに取って、許容できる範囲というのは一体どこからどこまでを言うのかしら?」

 

「そうですね……神々の終焉に関してのこと、私たち運命の女神がどういうものかということ、ここがどういう場所であるかということ……そのぐらいでしょうか」

 

「そんなの、私たちにとってどうでもいい情報ばかりじゃないの! やっぱり最初から教えるなんてないんじゃない!」

 

ミラの抗議にも表情一つ変えず、それが当然とでも言うようにのたまうウルド。

それによって再びミラは怒りをふつふつと湧き上がらせ、今にも顔を真っ赤にしそうな勢いで抗議し続ける。

しかしまあ、ウルドは先ほどの二人とは言葉こそ違うが、同じようにミラの怒りを掻き立てるような返答を返すばかり。

故にその両者の様子から恭也は放っておくとやばいと判断し、ミラの抗議の言葉の切れ目に口を開いた。

 

「な、なら、先ほどあなたが言ったことだけでいいので、聞かせていただけますか? もしかしたらそれで何か分かるかもしれないですので」

 

「先ほどの三つのことですね……分かりました」

 

恭也が口を開いた時点で瞬時にからかいモードから切り替えたのか、すでにミラのほうは見ていない。

だがまあ、それによってからかわれていたことが分かったのだろう……ミラの表情には更なる怒りの感情が浮かぶ。

そんなミラを恭也は何とか怒りが爆発しないように宥めつつ、ウルドが口を開き語ることに耳を傾けた。

 

「ではまず、神々の終焉に関してをお話しましょう。 あなた方もご存知の通り、神々の終焉……ラグナロクと呼ばれる大きな戦は、最終的にはスルトという巨人の持つ魔剣、レヴァンテインによって大地そのものを焼き払われ、全てが死に絶えることで終わりを迎えました。 ですが根底的な問題として、ラグナロクとはどうして起こったのか、どうして神々と巨人族が争うことになってしまったのか……あなた方は、ご存知ですか?」

 

「えっと、確か……女神フレイヤとニーベルングの指輪が発端で起こった、と本には書いてあったのですけど」

 

「ふふ、よく勉強しているようですね、古の魔女の血を持つものよ。 その通り……ラグナロクのそもそもの発端はフレイヤとニーベルングの指輪、この二つの存在に巨人族が目をつけたことです。 神々に不老不死を齎す黄金の果実を唯一作ることが出来るフレイヤ、世界すら意のままに出来うるほどの力を秘めるニーベルングの指輪……前者は神々にとってなくてはならない存在、そして後者は巨人族にとって魅力的過ぎる存在でした。 故に巨人族はフレイヤを捕らえ、フレイヤと交換という条件でニーベルングの指輪を手にしようとしたのです」

 

「それに神々が怒って、ラグナロクが起こったということですか?」

 

「いえ、これだけではラグナロクなど起きはしません。 なぜなら、ニーベルングの指輪を渡したとしても、巨人族には神々を攻め入れない大きな理由があったからです」

 

「オーディンの持つ魔槍グングニール……それが理由ね?」

 

「はい。 グングニールは二十四のルーンを刻み込んだ最強の神器……その力は、ニーベルングの持つ力に匹敵します。 それを主神であるオーディンが持っている以上、フレイヤと交換でニーベルングの指輪を手に入れても巨人族は攻め入ることが出来ず、ラグナロクなど起きるはずはありませんでした。 ですが……」

 

そこで一息つくようにウルドは一旦言葉をつき、目を閉じて小さく息を吐く。

そして、閉じた目をゆっくりと開くと共にすぐに続きを口にした。

 

「終末の日が訪れるほんの少しだけ前に、グングニールは破壊されてしまいました。 神々でも、巨人族でもない……ただ一人の、人間の手によって」

 

「そこも知ってるわ……確か、シグルスっていう名前の人間よね?」

 

「ええ、その通りです。 ここの辺りの詳細は省きますが、魔剣グラムを持つシグルスによってグングニールは破壊された……このことを知った巨人族は、これを好機とばかりに戦の準備を整え、数多くのベルセルクを引き連れて神々の国……アスガルドを攻めました。 そして先ほども申しましたとおり、ラグナロクは起こってしまうこととなったのです」

 

「……語ってもらったところ悪いけど、ある程度神話を齧ってる人ならそんなの誰でも知っているわよ」

 

「短気は損気……話は最後まで聞くものです、大樹の守護者よ」

 

クスクスと笑いつつそう言ってくるウルドに、ミラは再び怒りがこみ上げるのを感じる。

おそらくは、今のウルドの笑いで忘れかけていた先ほどのからかわれた記憶が蘇ったのだろう。

しかし、ここで怒りのままに発言したところで話の妨害にしかならず、そうなれば話を聞き入っている恭也たちの邪魔をしてしまうことになる。

故にミラはその怒りを抑えて黙りこくり、それにウルドは更に笑みを深めつつも話を再開する。

 

「ニーベルングの指輪があり、グングニールが破壊されたとはいえ、巨人族と神々では戦力の差は歴然……故にニーベルングの指輪を用いても、結局は五分五分にしかならないはずでした。 しかし、結果としては共に滅びましたが、巨人族が優位に戦を運ぶ形で進むことになった。なぜそんなことになったのか……その最大の理由は、巨人族がニーベルングの指輪を用いて創造した二つの武具によるものでした」

 

「二つの……武具?」

 

「はい。 片方をランドグリス、もう片方をナハトと呼ぶこの二つの武具は、巨人族の間では心器と呼ばれていました。 そしてその名の通り、その武具は使用者の心と同化し、心の在り方が強ければ強いほど脅威と言える力を発揮する武具でした。 その二つの武具を用いることで、巨人族は神々と対等以上に戦うことが出来たのです」

 

「ランドグリス……ナハト……どっちも聞いたことないわね」

 

「それはそうでしょう。 心器は使用者の心と同化する故に本来の形を持たず、また心器そのものに意思があるために使用者すらも選ぶのです。 ですから、心器は世の中に出ることなどあるはずもなく、知っていても実在したという確証など取れるはずもないのです」

 

語られざる神話の中の真実、それに(子供たちを除く)皆は僅かばかりの困惑を浮かべる。

それもそうだろう……本に描かれる事実しか知らなかったとはいえ、神話の裏側などを語られれば誰でも驚く。

そんな皆の困惑振りにウルドはやはり可笑しそうに笑い、一息置いてから次の話を切り出そうとする。

だが、ウルドが口を開くよりも早く、先ほどからずっと黙って後ろにいたヴェルダンディがそれを制するように前へと出た。

 

「多くを語ってお姉さまもお疲れでしょう……続きは、私がお話いたします」

 

その言葉に恭也たちは特に意義なく頷き、ウルドも了承を示すように一歩後ろに下がった。

そして、ウルドが後ろに下がったのを合図にしたかのようにヴェルダンディは口を開き、二番目の話を語りだした。

 

「二つ目……私たち運命の女神がどういうものかですが、運命とはそもそも過去、未来、現在という三つの要素の総称です。 そして私たちは運命の三女神と呼ばれる理由は、私たちの存在そのものが三つの要素を意味しているからです。 運命を司るお姉さまは現在、必然を司る私は過去……そして、存在を司るスクルドは未来というように」

 

「ふぅん……つまり、生き物の一生を個々で司ってるから、総称して運命の三女神というわけね」

 

「そういうことです。 さて、ここで三つ目の説明も交えますが、私たちが今立っているここは……今は失われた地と呼ばれる、知識と神託(フウェルゲルミル)の泉の一角に位置します。 そしてフウェルゲルミルの泉は私たちの力と共鳴し、泉そのものに先ほど言った三つの要素を映し出すことが出来るのです。 故に私たちはこの地へと住まい、生きるもの全ての一生を見続けている存在であるというわけです」

 

一つ目の神々の終焉についての話に比べると二つ目と三つ目の説明は短く終わった。

といっても、二つ目に属する自分たちのことと三つ目に属するこの地のことは、一つ目に比べるとそこまで説明することがない。

それは恭也たちも分かっているため、二つの話を終えて再び後ろに下がるヴェルダンディに対して不満は抱かなかった。

そして後ろに下がったヴェルダンディに代わり、再びウルドが前へと出ると共にその口を開いた。

 

「以上が、私たちのお教えできる全てに関してです……ご質問は、ありませんか?」

 

尋ねられた言葉に恭也たちが首を横に振ると、ウルドはそうですかと言って頷く。

そして頷いた後、下ろされていた腕を扉の方向に差し出すことで、お帰りくださいという意思を示した。

するとその行動に合わせるように、示された方向にある扉が僅かな音を立ててゆっくりと開いた。

それに対して僅かばかりの不満がありつつも(特にミラが)、皆はこれ以上聞いても答えないと判断して扉へと歩いていく。

だが、皆が開かれた扉を潜る直前、最初にミラをからかってから今まで黙していたスクルドが不意に皆を呼び止めた。

 

「あ、ちょっとお待ちくださいませ、皆様」

 

「……何よ? まだ何かあるわけ?」

 

「お言葉ですわね……折角あなたたちの知りたがっていた未来を多少なりと教えて差し上げようと思いましたのに」

 

その言葉が発せられた瞬間、ミラだけでなく子供たち以外のほとんどが驚きを浮かべる。

まあ、あれだけ頑なに未来を話すことは出来ないと言われたのだ……驚いてしまうのも当然のことだろう。

しかし、皆が驚きを浮かべてすぐに向き直るも、スクルドは何も語らずに不機嫌そうな顔を浮かべていた。

そしてその顔が向けられているのは、主にミラ……そのことから、先ほどのミラの態度が気に食わなかったというのが容易に分かる。

故にスクルドの視線が自分にまっすぐ向けられていることに気づいたミラは、かなり不満そうながらも謝罪を口にした。

するとそれにスクルドは不機嫌そうなものから満足そうな笑みへと変え、仕方ないなという言うかのように息をついて語りだした。

 

「未来と言いましても、明確に何時、何があるのかということをお教えするわけではありません。 私が皆様にお教えするのは、見通した未来を詩のような形で表したもの……言うなれば、予言のようなものですわ。 ですので、何時、どこで、誰に、何があるのかということは皆様でお考え頂くことになります」

 

……普通に教えない辺り、あなたの性格がよく見えるわね

 

「何かおっしゃいましたか?」

 

「……いいえ、別に何も」

 

「……まあ、いいですわ。 では、一度しか言いませんので、よくお聞きくださいませ」

 

そう言うとスクルドは先ほどまでの表情とは打って変わり、無表情となる。

そして一切の感情を消したその表情のまま、両手を翼のように広げて言葉を紡ぎ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人にして人ならざる異端の者よ。

 

邪なる情を抱き、闇と魔に魅入られし愚かなる者よ。

 

其の秘めし力は深淵の影を生み、汝が望まざるも選択を強いられることとなるだろう。

 

一つは全てを捨て、汝の災いが齎す終焉を受け入れ、業火が世界を包む虚無の未来。

 

一つは悪しき力と影を受け入れ、人としての道を外れ、死よりも深い苦痛の未来。

 

どちらを選択しようとも道の先には幸福あらず、深き眠りにつくその日まで汝に安息は訪れぬであろう。

 

どちらの未来が訪れようとも汝は人あらず、抱きし想いが叶うときは永久に訪れぬであろう。

 

其れが魔の瞳に魅入られた汝の宿命であり、異端の力を持って現世へと生を受けた汝の罪なのだから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無表情のまま、無感情に語られた予言……にも関わらず、皆の頭には語られたことが深く刻まれた。

別段先ほどまでとは違うスクルドが印象的だったわけでもなく、予言に心当たりがあったわけでもない。

だというのに、意味のわからないその予言は頭の中で繰り返されるように流れ、自然と皆を呆然とした様子にさせてしまう。

子供たちでさえも聞き入り、一様にそういった様子になってしまっているそんな恭也たちを見た後、スクルドは再び先ほどのような満足そうな笑みを浮かべる。

 

「これが、私があなた方の誰かに向けた予言ですわ。 先ほども申しましたが、誰に対する予言かは皆様でお考えくださいませ」

 

スクルドの表情の変化と、その言葉によって恭也たちは我に返る。

そして一度だけ軽く頭を下げた後、開かれた扉を潜ってその場を去っていった。

 

「やはり、人間というものは面白い生き物ですね」

 

恭也たちがその地より去り、開かれた扉がバタンと音を立ててしまったのに合わせるように、ウルドはそう呟いた。

その呟きにヴェルダンディもスクルドも同意するように頷き、クスクスと笑みを浮かべ合う。

 

「そうですわね……あれほどまでに予想していたとおりの発言、反応をしていただけるとは思っていませんでしたわ」

 

「しかも気づいた節がありませんでしたね……私たちが述べたことが、彼らの知りたがっていた真実を含んでいることに」

 

「ええ。 悪い言い方をすればお馬鹿というのでしょうけど……こういう点は人間の美点と言えるのでしょうね」

 

三人はそう言い合って笑い合い、後ろにある鏡のような泉の前に揃って歩み寄る。

そして、身を寄せ合うようにして泉の前に座り込み、何も映されていない水面を眺める。

 

「それにしても、スクルド……どうして彼らに未来を語ろうと思ったのですか?」

 

「そうですわねぇ……特に理由はないのですけど、如いて言うなら興味があったからでしょうか」

 

「興味?」

 

「はい。 私の語る予言を聞いたことで彼らの未来がどう動くのか……光、闇、どちらに染まるのか。 それが見てみたくなったのです」

 

「ふふふ、その興味を削ぐようで悪いけど、あんな意地悪な予言では彼らの未来が変わるとは思えないわ」

 

「そうですね。 現に彼らは予言が誰に向けてのものかでさえ理解していなかったみたいですし」

 

二人からそう否定の言葉が挙げられるが、スクルドは気を悪くした風も無く笑みを浮べる。

それに二人も釣られるように笑い合い、より一層身を寄せ合って意味もなく泉を眺め続けた。

 

「まあ、彼らの運命が変わるにしても変わらないにしても……私たちは見続けるだけです。 今までも、これからも……」

 

「「そうですね(わね)、お姉さま(ウルド姉さま)」

 

 


あとがき

 

 

謎を増やしつつも判明する事実……というのが今回のお話でした〜。

【咲】 ふ〜ん……ランドグリスとヘルの心が繋がってるっていうのはこういうわけだったのね。

【葉那】 ついでに言えば、ランドグリスとナハトって同時期に作られたものだったんだぁ。

そゆこと……心器っつうのは心の強さで左右される武具、つまりは心の在り方が強ければ強いほど凄まじい力を発揮するんだ。

そして心の在り方次第ではどんな神器よりも強い武具となる……ニーベルングの指輪を使って創造されたというのは伊達ではないのだよ。

【咲】 へ〜……ということはさ、ヘルの今の強さの大半は心の在り方が強いからってことなわけ?

まあな。 本来の強さっていうのもあるけど、だいたいの部分はそれが占めている。

【葉那】 そうなんだ〜……あ、ところでさ、現在のランドグリスの形状は大太刀や銃って感じだけど、心器は決まった形を持たないんじゃないの?

ふむ、説明不足だったな……心器が形を持たないのは使用者が何を使うかに左右されるからだ。

例えば、カールみたいに長棍を使う者が大太刀を持ってもまともに使えるはずがないだろ?

だから、心器は形を持たず、使用者によって形状を自在に変える……ヘルが大太刀から銃に変えることができたのもそういう理由だ。

【咲】 ふ〜ん。 というか、そこの辺も含めて、いずれ設定資料とか書いたほうがいいかもね。

だな。 とまあ、心器についてはここまでにして……今回挙げられたことで多くの謎が解けるわけだが、わかった人はいるかな?

【咲】 さあ? そればっかりは読者に聞いてみないと分からないわよ。

まあ、そうだな。 あ、ちなみにだが……今回の予言に関しても、よくよく見れば誰に向けられたものか分かったりする。

【葉那】 そうなの?

そうなんだ。 そこまで難しいものでもない……はずだからな。

【咲】 自信なさげねぇ……まあいいけど。 じゃ、次回予告いきましょうか。

ふむ、次回はだな……場面が戻ってセイレーンの隠れ里側だな。

母親と同じ形をした賢者の石、それの秘める真実を目の当たりにしたリゼッタは失意に沈む。

そんなリゼッタを気遣ってか、族長であるイリサは今日は里に泊まっていくといいと勧め、皆もその好意に甘えた。

そしてその夜に多くのことが語られた……ラウエルの娘というだけで関係者と認めた理由、過去に里を追放された二人の民。

語られた事実は皆に驚きと悲しみを招きよせ、それらを抱いたまま夜は更けていく……というのが一連の流れだ。

【咲】 前も言ったけどさ、一連の流れを言っちゃっていいわけ?

ふむ、流れを知ってても詳細までは分からんだろうからな……流れくらいなら言ってもいいさね。

【咲】 ……ま、あんたがそう言うならいいけどね。 じゃ、今回はこの辺でね♪

【葉那】 また次回会おうね〜♪

では〜ノシ




おおう、折角足を運んだのに殆ど収穫なし?
美姫 「うーん、いい性格しているわね、この女神たち」
本当に誰かさんとは気が合いそうな……ぶべらっ!
美姫 「しかし、予言の所だけ見ていると明るい未来を想像できないんだけれど」
予言とは違う行動を取れれば何とかなるって事じゃないか?
美姫 「その考え方はかなりポジティブ過ぎるような」
ともあれ、この予言が今後に影響する事になるのかどうか。
美姫 「楽しみよね」
次回も待っています。
美姫 「待ってますね〜」



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