海底の塔でいろいろと起こっていた最中、セイレーンの里へ向かう班にも困ったことが起こっていた。

というのも出発して早々、何を思ったのか、髪から服まで真っ白な少女がバレバレの尾行を繰り広げているのだ。

この容姿から、その少女がアーティだということが分かるのだが、分かるからこそなぜ尾行してくるのか皆には分からない。

こちらの班の中では親しい者だと静穂やフィリスくらいしかおらず、それ以前にアーティがそんな行動を取ること自体珍しい。

故にカールたちも、講師であるフィリスやミレーユも不思議に思いとりあえず声を掛けようしたのだが、そうすると必ず木に身を隠してしまう。

正直木に隠れても隠れ切れていないためバレバレなのだが、本人は気づかれていないと思っているのか出ては来ない。

双子であってどちらが姉とか妹とかないのだが、これを見るとはっきり言ってあの妹にしてこの姉あり、としか言えなかった。

 

「ほんと、一体どうしたんだろうね?」

 

「さぁ……さすがの僕もわかんないです。 あんなアーティさんは初めて見ましたし」

 

「そうねぇ……アーティさんはセリナさんと違ってしっかりしたところがあるから、あんな行動をする子じゃないんだけど」

 

アーティと付き合いの長いはずの静穂やフィリスでも首を捻ることであるため、カールたちには理由を想像することすら出来ない。

しかしまあ、理由が分からないからと言ってずっとそのままにしておくわけにもいかず、カールたちはもう一度声を掛けてみることにした。

だが、どれほど声を大きくして呼びかけても、どれほど呼び続けてもアーティは隠れたまま姿を出さず、呼びかけにも答えない。

それにさすがのカールたちも呼ぶだけは無駄かと考え、ゆっくりとアーティの隠れる木の傍まで歩み寄る。

そして、バッとアーティの隠れる部分に姿を表しつつ、少し大きめな声でアーティの名を呼んだ。

 

「アーティさん!」

 

「きゃあっ!!」

 

それほどまで近づかれてもばれていないと思っていたのか、それにアーティは悲鳴を上げつつへたりこむ。

そしてなぜか恐る恐るといった様子で顔を上げ、カールたちの顔を見た途端に若干の動揺を浮かべる。

だが、それもほんの数秒だけで、すぐにいつもの表情に戻ってパンパンと汚れを払いつつ立ち上がり……

 

「み、皆様……こんな場所で会うなんて奇遇ですね」

 

そんな言葉を口にすることでしらばっくれていた。

それにはもう、その場にいる全員が呆れる羽目になったのは言うまでも無いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メンアットトライアングル!2〜永久に語り継がれし戦士たち〜

 

【第二部】第十八話 追放されし水の民

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員が一様に呆れを浮かべた後、不思議そうにしているアーティに気づいていたことを説明した。

その説明にはアーティもかなり驚いていたのだが、そもそも何度も呼びかけたのにどうして気づかないのか皆は不思議だった。

まあそんなこともあった後、ついてきたアーティをどうするべきかということをカールたちは悩んだ結果、アーティも同行してもらうことになった。

というか、本当は学園に戻したほうがいいのではという意見が強かったのだが、アーティが頑なについていくと言ったため皆が折れたのだ。

そんなわけで、アーティも加えた一同はセイレーンの里へと向かうため、再び森の中を歩みだした。

 

「ところでさ、アーティさんはどうして僕たちについていこうと思ったの? ついていくにしてもあっちの班のほうが顔見知り多いのに」

 

「え、えっと……その、カール様がこちらの班でしたので」

 

静穂が聞いた疑問の答えがアーティの口より出た瞬間、場の空気が凍った。

歩みだした足を皆は一斉に止め、場の流れる空気以上に冷たい視線をレイナたちはカールに向ける。

そしてそんな視線を向けられたカールはというと、アーティの発言とその視線に嫌な汗をだらだらと流す。

ちなみに、爆弾発言をかましたアーティは空気が読めずに疑問符を浮かべえており、講師二人はあらあらと傍観者に徹していた。

 

「へ〜……カールってば、こんな小さな子に手を出したんだ〜」

 

「手を出したってなんだよ!? 僕は断じて何もしてないぞ!!」

 

「本当に何もしてないならアーティさんはこんなこと言ったりしないですよ……」

 

「ほ、本当に何もしてないってば! 少しは僕を信じろよ!!」

 

「……後ろめたいことがある男の人は誤魔化すときだいたいそう言うって、講義でミラ先生が言ってましたよ?」

 

黒魔法の講義であるはずなのに、一体何を教えているのか問い詰めたくなる発言である。

しかしまあ、今のカールにはそんなことを思う余裕は無く、如何にその三人を説得するかで頭が一杯であった。

だが、先ほどのやり取りで分かるとおり、カールの言い分はまるで受け入れられず、ほぼ確定状態で三人は詰め寄ってくる。

故にカールは嫌な汗を流しながら後ろへ後退していくしかなくなったのだが、それも背中が木にぶつかったところで出来なくなる。

 

「「「さあ、どういうことか説明しなさい(してください)……カール(さん)!!」」」

 

逃げ場も無くなり、いつの間に手に持ったのか各々の得物をカールに向けてくる三人。

そんな三人を前にカールはもうどうしていいのか分からず、本当に泣きたい気分になった。

 

「あの、これは一体……どういう状況なんでしょうか?」

 

「う〜ん……一言で言うと、カール君がどれだけ皆に好かれているかが分かる状況かしら?」

 

「そうですね〜……まあ、カール君からしたら大変な状況なのでしょうけどね」

 

「はあ……そうなんですか。 カール様も苦労なさってるんですね」

 

この状況を作り出した張本人のその無自覚さには、フィリスとミレーユも苦笑を浮かべざるを得ない。

そして三人が傍観者に徹しながらそんなことを話している最中も、カールの状況はどんどん深刻化していっていた。

その後しばらくして、時間も時間だし急ごうという講師二人の言葉によって、この状況は終わりを告げることになった。

だが終わりを告げてた後も、レイナと静穂、リゼッタの三人がカールへと向ける冷たい目線は、しばらくの間止むことはなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いろいろとゴタゴタが起きつつも森を進んでいき、ようやく一同は里らしき場所が見える位置までやってきた。

遠くから見るだけでもその里は大きいものではないということが分かり、セイレーンの数もあまり見かけることは無い。

しかしまあ、それはあくまで遠くからであるため、里の大きさはともかくとしてもセイレーンがどれだけいるかは計りかねる。

故に、一同はゆっくりゆっくりと目の先にある里へと進んでいき、数分足らずで里の入り口へと辿り着いた。

だが、辿り着いた里の入り口から見渡しても遠くから見たときと変わらず、セイレーンと思わしき人の数は二、三人程度しか見えない。

更に言うなれば、そのセイレーンたちもカールたちが入り口にやってきたのを見ると、どう見ても友好的とは言えない視線を向ける始末。

それを見る限りではやはりというか、カールたちの突然の来訪は歓迎されていないということが手に取るように分かった。

 

「この里に人族の方が訪れるとは……ずいぶんと珍しいですね」

 

そんな視線を受けながらも入っていいものかと迷う一同に近づいてきた一人の老婆。

老婆はカールたちから若干間を空けた位置まで歩み寄ると、言葉と共に他のセイレーンたちとは違う視線を向ける。

その視線を言葉にするならば……そう、誰も訪れるはずのない里に来たカールたちに不信感を抱くような、そんな視線だ。

本来セイレーンという種族は人間との交流を極力避けるため、人間が訪れることの無い場所に村を設ける。

それが理由で人里から隔離されたこの森の中に里が存在しているわけなのだが、にも関わらずカールたちがこの里にやってきた。

故にその老婆が不信感を抱くのはもっともであり、それは話を聞いていたカールたちとて納得できるため驚くことは無かった。

 

「私たちは魔法学園から来た者なのですけど……えっと、あなたは?」

 

「セイレーンの族長、イリサと申します。 して、魔法学園の方々がこの里に何の御用でしょうか?」

 

この里の族長を名乗る老婆―イリサは別段歓迎するような言葉を口にすることもなく、単刀直入に用件を尋ねる。

人間が突然来訪してきたのだからその反応は当然であるため、不快にも不思議にも思うことなくカールたちは事情を簡潔に説明した。

すると、説明を聞き終えたイリサは少しだけ考え込むような仕草を見せ、小さくため息をつくと共に再び口を開いた。

 

「確かにあなた方のおっしゃる通り、この里に賢者の石は存在します」

 

「じゃ、じゃあ――」

 

「ですが、あなた方に賢者の石をお貸しすることは出来ません」

 

カールの言葉を遮り、イリサは短くそう言い切ってしまう。

簡潔にとはいえ、理由を話したにも関わらずそう言い切るイリサにカールたちは驚かざるを得なかった。

現状で賢者の石を持ち続けること……それは、下手をすれば教団に狙われかねないということだ。

いや、狙われかねないというより、確実に狙われるというほうがいいだろう。

それなのに賢者の石を渡すことは出来ないというイリサの言葉には、驚きを浮かべる他なかった。

 

「……なぜ、と聞いてもよろしいですか?」

 

「理由を聞かなければあなた方は納得しないのは承知しております……ですが、これは部外者に語るべきことではありません」

 

「で、でも、それを持ってたらあなたたちも――っ!」

 

「そのアルナ・ベルツと名乗る方々に狙われる、ですか? もしそうだとしても、私の決断が変わることはありません……どうか、お引取りを」

 

頑として意見を変えようとはせず、正直どうするべきか困り果ててしまう。

賢者の石がなければ現状で教団の思惑を打ち崩すことは出来ず、故にどうにかして賢者の石を貸してもらわなければならない。

しかし、イリサの言動と様子を見る限りではどう言っても意見を変えることはないと分かるため、困惑する以外にないのだ。

だが、そんな一同が困り果てている中、ただ一人だけいつもの表情と変わらぬアーティがズイッとイリサの前に出て口を開いた。

 

「失礼を承知でお聞きしますが……つまりは部外者でなければお貸しいただける、ということですか?」

 

「ええ……ですから、あなた方には――」

 

「でしたら、問題はないと思います。 少なくとも私は部外者ではありませんから」

 

イリサに負けず劣らず、キッパリとそう言い切るアーティ。

それには告げられたイリサはもちろん、カールたちでさえもどういうことかと疑問に思ってしまう。

しかし、その後に続けて告げられた言葉にて、イリサの疑問は簡単に解けることとなった。

 

「ラウエル、と言えば分かりますか?」

 

「!? ……なるほど……あなたは彼の関係者、ということですか」

 

「正確に言うならば、その娘です。 これで……私が部外者ではないということが、お分かりになられましたか?」

 

「……ええ。 彼に娘がいたことには驚きましたが、それが事実なら部外者ではありませんね」

 

初めて表情を変えて驚きを見せた後、アーティの言葉に頷きながら納得を示す。

そのときを表情は先ほどまでの無感情なものとは違い、老婆特有の穏やかさを醸し出す……そんな表情。

ラウエルという人物を知らないカールたちは、イリサのその変わりように別の意味で困惑するしかなかった。

そんな皆の様子を読み取ったのか、イリサは若干の穏やかさを残しながらも元の表情になり、話が長くなるからと里の中へ皆を招きいれた。

そして里の中の奥にあるイリサの家へとまっすぐに向かい、家内へと入って更に奥にある絨毯の上に腰掛け、イリサが全員分のお茶を用意したところで先ほどの話へと戻った。

 

「それでは、お教えいたします……私たちがなぜ、賢者の石をあなた方にお渡しできないのかを」

 

そう言ったところで口元にお茶の入ったコップを運ぶ。

そして一口だけお茶を飲むと膝元へとコップを下ろして一息つき、それを語りだした。

 

「私たちセイレーンの一族は昔から、『水の民』と呼ばれ続けています。 これは私たちが生まれながらにして持つ白い翼、そして水を操ることができる能力の二点から呼ばれるようになったのですが、それともう一つ……賢者の石を守り続けるということもそう呼ばれる由縁となっています」

 

「あれ? 賢者の石って確か、魔力を増幅してくれる石なんですよね? だったら、『水の民』という呼称とは全くの別物じゃないんですか?」

 

「確かに……あなたのおっしゃる通り、賢者の石は魔力を増幅するもの……ですが、賢者の石にはそれとは別に、もう一つの使い方があるのです」

 

「もう一つの、使い方……?」

 

「ええ。 まあ、これは私たちもラウエルさんに教えてもらう形で知ったのですが……賢者の石は魔力だけでなく、マナをも増幅させる力があります。 そしてマナというのは大気中だけでなく、至る所に存在します。 燃え盛る火の中にも、私たちが普段歩いている地の中にも、そしてもちろん……海や川などの、水の中にも」

 

「えっと、つまり……どういうこと?」

 

お世辞にもあまり学業の成績が良いとは言えないレイナは、そこまで説明されても分からなかった。

というか、ミラが講師ということで黒魔法の講義を故意的に避けているのだから、成績が良くとも分からないだろうが……。

そんなわけで、一人分からず首を傾げるレイナに皆は苦笑しつつ、代表して学園の講師であるフィリスが説明する。

 

「つまりね、レイナさん……世界の至るところに存在するマナは同時に、世界の至るものを形成する元素の一つでもあるの。 火の中には火属性のマナ、土の中には土属性のマナ、というようにね。 そしてマナを増やすことが出来るってことは、その属性のマナを含むものを増幅出来ると言うことでもあるのよ」

 

「えっと、じゃあ例えば火のマナが増幅したとしたら、火は更に燃え盛ったりする……そういうことですか?」

 

「うん、正解よ」

 

よく出来ましたと言うように頭を撫でてくるフィリスに、レイナは照れくさそうな表情をする。

そして一頻り褒められた後、二人は再びイリサへと向き直り、それを合図にイリサは話を再開する。

 

「先ほどの例えでお分かりになったとは思いますが、私たちは賢者の石で水のマナを増幅し、水が不足していたずっと昔から水源を豊かにしてきました。 そしてそれを理由の半分として、私たちは『水の民』と今も呼ばれ続けています」

 

「つまるところ……水を豊かにする元である賢者の石を、貸し出すだけとはいえ手放すわけにはいかない、ということですか?」

 

「それもあります……ですが、お渡しできない最大の理由は別にあるのです」

 

カールにとって若干自信のあった発言だったのか、否定されたときには少しだけ驚きを浮かべた。

だが、その驚きはすぐに収められ、同時にその否定に対して納得するような表情へと変わった。

というのも、水の不足していた時期のある昔ならともかく、今の時代は水が不足するということはほとんどない。

故にカールの述べたことが貸し出せない理由だと、呼ばれ続けてきた『水の民』という呼称に執着しているだけにしか見えないのだ。

しかしイリサの拒み様からはそんな様子は見えず、否定されたときには素直に納得する他なかったのだが、同時に疑問が出てくる。

これが理由でないのならば、一体なぜ賢者の石を自分たちに貸し出すことが出来ないのかという疑問が。

そしてそれを抱いたのはカールだけではなくその場にいる全員も同じで、一様に疑問を抱いているといった顔を浮かべていた。

そんな皆の心情を読み取ったイリサはお茶で喉を軽く潤した後、続きを語り始めた。

 

「もうそれが起こってから十三、四年になりますが……当時、この里に一人の少女がいました。 その子が私の目から見てもいい子で、賢くて、それ以上に優しい子でした。 そんな子がある日、この里を出て行って、外の世界にて一人の人間の男性と恋をしたのです」

 

「ですが、元々セイレーンは女しか生まれない種族ですよね? なら外の世界で人間と結ばれても珍しいことではないのでは?」

 

「あなたのおっしゃる通り、別段珍しいことではないので、私たち里の者たちもその子を祝福しました。 ですが、問題はここからなのです。 その子が里を出てから二年ほど経ったある日、その子はこの里に突然帰郷してきました。 そのときはただその子の久しぶりの帰郷ということで皆も喜びましたが……その日の夜、その子はこの里の奥にある洞窟にある賢者の石を、あろうことか盗み出そうとしたのです」

 

「……でも、賢者の石が手元にないと言わないところを見ると、それは未遂で終わったんですよね?」

 

「ええ。 あれを未遂、というのかどうかは分かりませんが……結果として、賢者の石は盗まれることはありませんでした」

 

「……じゃあ、なぜ貸し出すことは出来ないのですか? 盗まれていないのならその洞窟に今もあるのでしょう?」

 

「……」

 

聞かれたその言葉にイリサはすぐには答えず、お茶をもう一度だけ口にして絨毯の上に置く。

そして絨毯からゆっくりと腰を上げ、全員を見渡すように見ながら告げた。

 

「これ以上は語るよりも、見るほうが早いでしょう……」

 

その言葉と口にすると共に、イリサは出入り口方面へと歩き出した。

そのイリサに皆も慌ててコップを置いて立ち上がり、後をついていくようにして彼女の家を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

イリサの家を後にした一同は、里の奥にある木々に囲まれた一本道を歩いていた。

その間、誰も言葉を発することがないためか、僅かに吹いた風が木々をざわつかせる音のみが周りに響く。

そんな自然の音を静かに聴きつつ一同は歩き続け、十分程度歩いたところで皆は洞窟の入り口を視界に捉える。

そしてそこまで来たときと変わらぬ歩調で洞窟入り口まで辿り着き、そのまま内部へと足を進めていく。

洞窟の中は先ほどまでの森の中とは違い、水滴がピチャピチャと落ちる音のみが洞窟全体に響き渡る。

 

「なんか洞窟ってジメジメしてるイメージがありますけど、ここってそうでもないですね」

 

「そうね……どっちかっていうとこう、神秘的って感じがするわね、ここ」

 

小さな声で言い合う静穂とレイナの声も、この洞窟の中では皆に聞こえるほど響く。

その後は二人も含め、森のときと同じく皆も特に何かを話すことなく、イリサの後に続いて洞窟の奥へと向かっていく。

そして数分後、遂に洞窟の奥へと辿り着いた一同は、目の前に広がった光景に言葉を無くす。

洞窟の奥にある小さな泉、その前に置かれる一見して女神の像かと思ってしまうような銅像。

相当な濃度があるのか、本来は人の目に見えることの無いマナが泉より立ち上って銅像の周りを漂っては消えていく。

神秘的、というのは正にこのことを言うのだと思ってしまうほど、綺麗な光景がそこには広がっていた。

 

「これがあなたたちの求めている、賢者の石です……」

 

言葉を失って呆然とその光景を見続ける皆に、イリサは短くそう告げた。

その言葉に皆は我に返り、今度は一様に驚きを浮かべてその言葉の示した物に目を向ける。

それは、泉の前に立つ銅像……背中に羽を生やして何かを抱くように両手を胸に当てている、そんな銅像。

大きさにして海底の塔にあった賢者の石と同等の大きさがあり、尚且つ銅像といった形を取っていることには再び呆然とするしかない。

だがそんな中で、皆とは違った理由で呆然としている者がいた。

 

「これって、そんな……」

 

「……」

 

その者とは……自身もセイレーンであるリゼッタと、講師であるミレーユの二人だった。

マナの光で輝く銅像を前に、リゼッタは両手を口元に当てて呟き、ミレーユは悲痛な表情で俯いていた。

なぜ二人がそんな表情をしているのか、リゼッタの事情を知るカールでさえも分からなかった。

だがそんな誰にも分からぬ疑問は、悲痛に洞窟内に響くリゼッタの呟きで解かれることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お母、さん……」

 

 


あとがき

 

 

セイレーンの里へ向かった班もいろいろと起こっております!!

【咲】 ていうかこれって、メンアット4のリゼッタルートの話よね?

だな。 まあ、メンアットトライアングル1では話を急ぎすぎた感があったから、2では全ルートを通ろうというわけだよ。

【葉那】 へ〜……珍しくちゃんと考えてるんだね〜。

珍しくは余計だ。 しかしまあ、考えてると言ってもいろいろと問題点もあるわけだけど……

【咲】 ふ〜ん……どんな?

ふむ、まずは俺がリゼッタシナリオを曖昧にしか覚えていないことだな。

まあこれは結構物語進行上で改変してるから問題でないと言えばそれまでなんだが。

【葉那】 でも、それだとメンアット4を知ってる人が見たらアレ?って思うんじゃないかなぁ?

思うだろうねぇ……だがまあ、その場合はパラレルとでも思ってもらうほか無いな、もう変えられないし。

【咲】 で、いろいろってことは他にもあるんでしょ?

あるにはある……だけど、さっき言ったのと比べると些細なものだから、ここで上げるようなものではないかな。

【咲】 そ……まあ結局のところ、ちゃんと覚えてないあんたが悪いってことよね。

そ、そうなるな……ほんと申し訳ない。

【葉那】 と、その話題はこの辺にして〜、次回はどんな話になるの?

む、次回はだな……視点が変わって古の塔側……といきたいところだが。

【咲】 だが?

次回は古の塔側でもなく、学園側の視点を描こうと思う……というか、ほとんど登場人物はほとんどヘルだけどな。

【咲】 学園に残ったヘルが何かするの?

するね……というか、次回は事態が一変する可能性があるのだよ。

【葉那】 それって良い方向に? それとも悪い方向に?

さあ? それは次回のお楽しみ、としか言えないな。

【咲】 そう。 じゃあまあ、頑張って執筆しなさいな。

承知! では、今回はこの辺で〜ノシ

【咲&葉那】 また次回ね〜♪




こちらはこちらで一筋縄ではいきそうもないな。
美姫 「やっぱり、それなりの苦労は付き物ね」
さーて、最後に驚きの展開があったんだけれども。
美姫 「次回はどうなるのかしらね」
とても気になる所。しかし、次回は学園側。
学園では何があるのかな。
美姫 「それじゃあ、また次回を待っています」
ではでは。



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