会議はその後も続き、ヘルの口からは三女神のことについて更に語られた。

三女神が神々の世界の終わるきっかけとなった戦、『力の滅亡と命の終焉(ラグナロク)』すらも見通していたという事実。

そして見通していながらも、神々にそれが起こることを教えず、自分たちが関与することもなく、ただ神々の世界が終わるのを見ていたということ。

それだけでも、ヘルの言ったとおり、三女神というのがある意味性質の悪い神だということがわかった。

だがヘルが語るには、三女神の性質の悪さというのはそれだけではなかった。

未来を見通す力を持っていながら一切関与しない……この事実には、未来を捻じ曲げてはいけないという世界の法則から来るものではなかった。

ならばなぜ関与しないのか、それはとても簡単な理由……ただ、三女神が見通した未来通りに動く世界を楽しんでいるからだ。

未来を知らずして立ち向かって見通した未来を変えるにしても、そのまま見通したままに沈んでいくにしても、構わない。

自分たちが楽しめればいい、自分たちを楽しませてくれればいい、ただそれだけの理由で彼女たちは関与しないのだ。

それは結果的に世界の法則を破っていないのと同時に、三女神がどれくらい性質の悪い存在かがよく分かる事実だった。

しかしまあ、如何に性質が悪かろうとも、如何に世界の法則に反した行いであったとしても、学園側には三女神に頼る他手立てがなかった。

 

「それで、その塔にいる女神に会ってくる人とセイレーンの隠れ里に向かう人は、どうやって分けるわけ?」

 

話を聞き終えた後、ミラはジャスティンに向かってそう尋ねた。

ヘルのお墨付きがあるにしろ、教団がいつ攻めてくるかもわからないこの状況で一つ一つ順々に回っている暇などない。

それはジャスティンも分かっているからか、ミラの発した言葉に対して顎に手を当てつつ考える。

話によれば、塔の女神に会うにはミラの所持するミーマメイズが必須であるとのこと。

ならば、塔に行く中にミラは確定なのだが、問題なのは他の人の割り当てだった。

セイレーンの隠れ里にいくのは本来、人員の中にセイレーンがいたほうが一番いいのだが、生憎講師陣にセイレーンはいない。

ついでに言えば、塔にいく人員にミラは確定だとしても、他に誰を向かわせていいものかがかなり悩みどころだ。

というかそれよりも一番の問題なのが、二つに全員の講師たちを向かわせてしまえば、学園の守りが手薄になってしまうことであった。

 

「はぁ……どうしたものでしょうか」

 

悩みに悩んだ結果、結論が出ずにジャスティンは困ったように溜め息をつく。

講師たちの中でここには自分が行くと名乗り出る者がいればいいが、生憎皆はジャスティンの決定待ち状態。

まあ、最終的な決定権は学園長であるジャスティンにあるので、そうなってしまうのも無理はない話ではある。

それはジャスティンも分かっているため特に文句など言うわけもないのだが、困ってしまうことには変わりない。

そしてジャスティンが悩み始めて十分足らず、今だ編成が決まらないことにとうとう見かねたのか、ミラが再び口を開いた。

 

「人数で悩んでるんなら、いっそのこと生徒の誰かを割り当てればいいんじゃない?」

 

「生徒を、ですか? でもそれは……」

 

「この際守らないといけない対象だからって贅沢は言ってられないでしょ。 それに、生徒の中にも有力な子はいるわけだし」

 

ミラの言うとおり、今の状況は贅沢を言える状況ではない。

それに、確かにミラが言うように、生徒の中で数名を選抜して割り振れば、学園の守りが薄くなる心配は無い。

ただその分、割り振られた生徒に何かしこの危険が出てくる可能性もある。

しかし先も言ったとおり、贅沢を言える状況ではないのも確かなので、ジャスティンはミラのその言葉に同意するように頷く他なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メンアットトライアングル!2〜永久に語り継がれし戦士たち〜

 

【第二部】第十四話 奪いし者と奪われし者

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒を選抜して割り振ると決めてから、選抜するのは誰かというのはすぐに決まった。

それは、この事件に他の生徒たちの誰よりも深く介入してしまっているカールたちである。

カールたちのパーティは数にしても申し分はなく、中にはセイレーンである者も混じっているため言うことはない。

だが、それが決まってカールたちを放送で呼び、会議室に駆けつけたカールたちの面子には思いもよらぬ人物が混じっていた。

その人物とは、カールたちのパーティの中に確かに含まれている、蓮也と綾菜の二人だった。

これを見て、確かにカールたちの中に含まれているにしても、親である二人が……特にミラが許せるだろうか?

答えは否……自分の子供が危険かもしれない場所に赴くなど、過保護なミラが許せるわけがない。

そして今回ばかりは恭也もミラと同じなのか、ミラと共に二人のこれ以上の介入を止めさせようと説得を試みた。

しかしまあ、さすがは二人の子供と言うべきなのだろうが、こうすると決めた蓮也と綾菜の意思は固く、親の自分たちが言っても曲げない。

元来子供を叱るということがあまりないミラはもちろんのこと、恭也ですらもその意思の固さに強く言うことができず困ってしまう。

そしてしばし家族の話し合いが続き、その結果として恭也とミラが折れ、自分たちと同じ場所……つまりは塔に来ることで了承した。

そんなわけで、成り行きとはいえ塔に行くメンバーがミラを含めて四人決まることなり、一同は他のメンバーの割り振りを決める。

 

「では……カールくん、レイナさん、静穂、それとリゼッタさん、講師からはミレーユ先生とフィリス先生。 この六人は、セイレーンの隠れ里に行ってください」

 

ジャスティンの口にした割り振りに、口にされた者たちは小さく頷く。

その頷く中でリゼッタは少しだけ複雑そうな顔を浮かべており、それをなぜかミレーユが少しだけ視線を向けて逸らした。

そんな二人の様子をこの中のいる数名は気づいていたが、特には何も言わずに割り振りの続きに耳を傾ける。

 

「塔には……先ほど決まった四人以外では、リィナさん、ヘルさんで――」

 

「あ、私はパス。 ここに残って学園の守りに当たるわ」

 

「え……あ、でも」

 

「心配しなくてもその面子なら五人だけでも大丈夫でしょ。 彼女たちは相手が仕掛けてこない限り、手を出したりはしないしね」

 

「はあ……では、この五人で塔へと行く、ということでお願いできますか?」

 

ヘルのことを考えて恭也のいる塔側に割り振ったのにあっさりと断ったことに困惑を隠せないながらも、ジャスティンはそう確認を取る。

それに呼ばれた面子が頷いたのを見て、ジャスティンは再び皆へと視線を戻して口を開いた。

 

「では、残った人たちで学園の守りに当たってください。 行動日は、準備も含めて出来るだけ早いほうがいいので……そうですね、明日の昼からということにします」

 

その言葉に今度は全員が頷き、それを合図にジャスティンは解散を告げた。

解散の言葉にその場に集まっていた者が次々と会議室を去っていく中、ミラは出て行こうとしたヘルを呼び止める。

呼び止められたヘルは短く、何と返しつつ顔だけをミラのほうへと向け、顔が向けられると同時にミラはそれを口にした。

 

「なんでさっきの割り振りを断ったわけ? 少し不愉快だけど、恭也が一緒ならあなたに不満なんてないはずでしょ?」

 

「そうね……確かに、不満はないわ」

 

「なら、なんでよ?」

 

短く再度尋ねるミラに、ヘルは小さく溜め息をつきつつ向けた顔を逸らす。

そして、何も持たぬ右手をギュッと強く握り締め、重々しさを感じさせる口調で語った。

 

「許せないから……あの女神たちが許せないから、会いたくないのよ」

 

「許せない?」

 

「ええ。 間違っている、世界の理に反する……それは分かっていても、『力の滅亡と命の終焉(ラグナロク)』が起こりうる事と知っていながら何もせず、私にとっての帰る場所を、家族を見捨てたあいつらが……どうしようもないほどに許せない」

 

全てを失うきっかけとなった事象である『力の滅亡と命の終焉(ラグナロク)』が起こることを敢えて放置した。

更には神々の世界が失われ、神々のほとんどが息絶えた中で、その三人だけは何の危険もなくのうのうと生き続けている。

そのことが、ヘルにはどうしても許せなかった……否、今も許すことなど出来ていなかった。

許せていたのならば十数年前のように歪むことなどなかっただろう、あのような事件を引き起こすことはなかっただろう。

それほどまでに、あのような事件を引き起こすほど歪んでしまうほどに、ヘルは三女神という存在が許せなかった。

 

「だから私が塔に行って、あいつらと会えば……必ず剣を抜いてしまう、殺したいと思ってしまう。 でも、私情でそんなことをしてあなたたちに迷惑は掛けたくない」

 

それが理由よ……ヘルはそう最後に告げて部屋を出て行った。

そしてその理由を聞いていたミラはその後姿に何も言うことができず、ただ立ち尽くしていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘルに話があるから、そう短く言われて先に部屋を出ることとなった恭也と蓮也&綾菜。

しかし、ミラに言われるままに部屋を先に出たはいいが講義がない故に予定がないため、どうするかと悩む。

だがまあ、ただその場で悩んでいても特に意味はないので、とりあえず二人を連れて当てもなく廊下を歩くことにした。

そして歩くこと間もなく、どうするかと悩んでいた恭也はふと下から自分に向けられる視線に気がつき、足を止めて顔を向ける。

そこには、傍目からは見分けはつかないが、親だからこそわかる何かを強請るような目を向ける綾菜がいた。

 

「……どうした、綾菜?」

 

「……抱っこ」

 

それを強請るのが恥ずかしいのだろうか、ちょっとだけ頬を染めて呟く。

まだ十歳とはいえ、抱っこして欲しいと強請ることがやはり恥ずかしくなってくる年頃なのだろう。

しかし、それでも敢えてお願いするのは、おそらく朝方の彩音を見て羨ましいと思ったからであろう。

最近になってあまり抱っこを強請ることがなくなった綾菜のその発言に恭也はすぐにそう考えて苦笑し、綾菜を抱き上げる。

抱き上げられた綾菜は恥ずかしそうだった表情を一転させ、笑みを浮かべつつ擦り寄るように抱きつく。

それに恭也だけでなく、兄である蓮也も微笑ましそうに苦笑を見せていた。

が、その三人を包む微笑ましい空気は、突如響いてきた廊下を掛けてくる音と共に現れた少女によってぶち壊されることとなった。

駆ける音を立てながら一直線に恭也へと向かってくるその少女は、間もなく近場まで駆け寄ると同時に恭也の脚に抱きつく。

 

「っと……彩音?」

 

「ん〜……」

 

抱きついてきた少女―彩音は恭也の声に返事しながら脚に擦り寄る。

そしてしばしそのまま脚の温もりを満喫した彩音は、今度は抱っこをせがもうと上を見上げる。

だが、抱きついたときは満面の笑みだったその表情は、見上げた瞬間に不機嫌さを露にしたものとなった。

それもそのはず、自分の特等席となるべきそこに、すでに綾菜という先客がいたのだ。

 

「む〜……」

 

「……うぅ」

 

そこは自分の場所とでもいうかのように睨む彩音と、視線に怖がり怯える綾菜。

姿がほぼ同じなのに対照的なこの二人の様子に、先ほどとは違う意味でどうしたものかと悩む恭也とオロオロする蓮也。

そして彩音が睨み綾菜が怯えるという状況がしばし続いた後、場所を奪い取ろうと彩音は恭也が抱っこする綾菜の脚を掴んで引っ張る。

それに綾菜は怯えながらもきつく恭也の首に手を回し、譲るまいと必至に抗う。

発展したこの状況に、どうしたものかと悩んでいた恭也は絞められていく首に苦しげな表情を浮かべ、蓮也に至っては更にオロオロするばかり。

 

「っ……ひっく……」

 

睨まれながら引っ張られ続け、遂に綾菜は小さく泣き出してしまう。

それにはさすがの恭也も止めようとするはずなのだが、首が絞まっていてそれどころではない。

それ故、というわけではないが、オロオロしていた蓮也はようやく意を決し、彩音を止めるべく動き出した。

 

「あ、あの……」

 

「……?」

 

少し控え気味に掛けられた声に、彩音は脚を引っ張るのを中断してそちらに目を向ける。

その向けられた視線に蓮也はどこか緊張しつつも、引っ張るのを止めてもらうよう口を開いた。

 

「えっと……綾菜が嫌がってるから、止めてあげてくれないかな?」

 

「……」

 

初めて話す相手だと綾菜でなくとも緊張するというように、蓮也はやはり控え気味にお願いする。

すると、彩音は驚くほどあっさり脚から手を離し、同時に蓮也の顔を見つつズイッと近寄る。

それに蓮也がどうしたのだろうと思い、再び口を開こうとしたときに、彩音は驚きの行動に出た。

 

「ん……」

 

「っ!?」

 

その突然の行動には蓮也だけでなく、咳き込でいた恭也も、泣き顔だった綾菜も、皆一様に呆然とした。

一体どんな行動に出たのか……それは簡単に説明するならば、蓮也の口を自身の口で塞いだという行動だった。

キス、接吻……一言で表せばそういうことだが、呆然としてしまうには十分なほどの行動。

十歳という年齢とはいえ、キスが何を表すのかくらい知っているため、された側である蓮也はもうパニック状態で後ろに下がろうとする。

だが、それをさせないというかのように彩音は両手で蓮也の両腕を掴み、逃げを打とうとするのを阻止する。

それどころか更に――蓮也はその意味まではわからないが――重ねられた口から舌を割り込ませる始末。

正直誰もが呆然、本人に至っては放心状態になるこの状況がしばし続き、ようやく彩音は重ねた口をゆっくりと離した。

 

「……ごちそうさま」

 

「……」

 

口を離して短くそう言う彩音と、放心状態のまま立ち尽くす蓮也。

その二人を前に咳き込むことも忘れ、泣きじゃくることも忘れ、ただ呆然とする恭也と綾菜。

そんな沈黙状態が少し続き、いち早く復活した当事者たる蓮也は林檎のように顔を真っ赤に染め上げる。

そしてそれから一分足らず、次に我へと返った綾菜は先ほどまで泣いていたとは思えないほどに頬を膨らませる。

怒りを露にするようなその表情を浮かべると同時に、綾菜はピョンと恭也から飛び降りて蓮也の腕を取る。

 

「あ、綾菜?」

 

「……」

 

今だ顔を真っ赤にさせたまま綾菜の行動に驚く蓮也。

そんな蓮也に構わず、綾菜にしては珍しく積極的に蓮也の腕をぎゅっと抱きかかえつつ睨む。

人見知りの綾菜が朝会ったばかりで、しかも先ほどまで怯えの対象だった彩音に対して人見知りしない。

この事に、綾菜の人見知りの酷さを知る蓮也と、ようやく復活した恭也は驚く他なかった。

 

「「……」」

 

お兄ちゃんは私の、とでも言うかのように行動で示し、睨んでくる綾菜に彩音もまた負けじと睨み返す。

そしてその間に挟まれるような形となった蓮也は二人の様子に困惑するしかなかった。

そんな三人を、恭也に至っては綾菜が彩音に人見知りを見せないことに成長したのだと感動し、何もせず静かに成り行きを見守っている。

そこから静まる中、再び一、二分程度経ったとき、突如彩音は綾菜へと近づいてその頭をペチッと叩く。

音からしてそこまで強くもなく特に痛くもないだろうが、叩かれたこと自体ムカッときたのだろうか、綾菜も負けじとやり返す。

そしてそこからがもう半泥沼化してしまい、叩いては叩かれ、叩かれては叩き返すの繰り返し。

やり始めた自分から引くことも出来ず、叩かれたのに叩き返さないなどできず、彩音と綾菜は何度も何度も同じ事を繰り返す。

それが繰り返されるうちに、彩音は大丈夫なのだが綾菜が再び涙目になり始め、さすがの蓮也も止めに入ろうとする。

しかし、止めようと声を掛けた蓮也は、彩音と綾菜にキッと同時に睨まれることで情けなくスゴスゴと引き下がってしまうこととなった。

そうして止める者もいないまま、この叩いては叩かれての繰り返しはしばしの間続いていくのだった。

ちなみにだが、彩音と綾菜のこの喧嘩の原因が自分にあるということに蓮也は気づいていなかったりするのはまあ、さすが恭也の子供と言える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あはははは! やっぱり面白いですわ……この学園の人間たちは」

 

真っ白な部屋の真っ白な地面にある泉に映し出される光景を、一人の女性は寝転がりながら見ていた。

このとき寝転がる女性の横に菓子の袋が何個も転がっているのは、まあ突っ込んではいけないことなのだろう。

 

「まだ見ていたのですか、お姉さま。 まだ彼らの運命は始まったばかり……見ていても面白いことなんてないでしょう?」

 

「そんなことはありませんわよ♪ 彼ら人間たちは、私たちが余興として見るものとしては楽しませてくれることが多いんですから」

 

「そうなのですか? では、私も少しだけ……」

 

そう言ってどことも知れぬ場所からふっと現れた女性は、寝転がる女性の横に腰を下ろす。

そしてしばらく泉が映す光景を眺め、寝転がる女性とは違って少しだけ控え気味に笑みを溢す。

 

「あらあら……確かに面白いですね。 敵と分かっているホムンクルスを相手に馴れ合うなんて……ある意味正気の沙汰とは思えません」

 

「でもそれが人間の愚かなところであり、面白いところでもあるのですわ。 私たちが興味を示してしまうほどに、ね」

 

寝転がる女性はそう返して、泉に映し出される先とは別の光景に視線を向ける。

今の泉には三つの光景が映し出されており、その女性が視線を向けたのは泉の左上に映し出される光景。

黒髪の女性と薄い青髪の女性が何やら真剣な顔で何かを話し合っている、そんな光景。

横に座る女性も寝転がる女性が何を見ているのか気になったのかそちらに視線を向け、すぐに苦笑を浮かべる。

 

「私たちが憎い、ですか。 この子はまた、盛大な勘違いをしているようですね」

 

「そうですわね。 確かに私たちは『力の滅亡と命の終焉(ラグナロク)』を予言しても神々にも巨人族にも教えはしなかった……でもそれは、この子の未来を壊さないための配慮でしたのに」

 

「損失に歪み、孤独に苦しみ、心が壊れてしまうという未来……私たちが見たその未来に、導いてあげただけの話。 なのに私たちを憎むだなんて、お門違いもいいところです」

 

クスクス、クスクス……二人は僅かに笑い合う。

 

「それに、憎むべき存在は他にもいるのではないかしらね」

 

「そうですね。 『力の滅亡と命の終焉(ラグナロク)』の起こす切っ掛けを作った主神やら、神々の世界(アスガルド)を沈めた炎剣の使い手やら……」

 

「そして何より、もっとも憎むべき存在が近くにいるということに……この子は気づいていないわ。 まあ、それも当然でしょうけどね……二ヴルヘイムへと投げ込まれたこの子は、父が犯した愚行を知る術などないのですから」

 

クスクス、クスクス……二人は僅かに笑い合う。

 

「父を殺したのも、兄弟を殺したのも、神々の世界(アスガルド)を沈めた『力の滅亡と命の終焉(ラグナロク)』を引き起こした切っ掛けを作る切っ掛けとなったのも……全ては、邪神の残した遺産である『悪夢を齎す真の闇(ナハト)』が原因。 愛した人がそんなものを宿している……目覚めればさぞや、深い絶望を知ることになるでしょうね」

 

「目覚めなければ幸せでしょうけど、いずれは必ず目覚めることになります」

 

「ええ。 なんと言っても、私たちの予知した未来が違えたことなど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一度も、ないのですから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クスクス、クスクス……二人は可笑しそうに、笑い合う。

 

 


あとがき

 

 

まあ、そんなわけで第十四話でした。

【咲】 未来を知ってても変えようとしない、教えようとしない……性質が悪いわね。

まあねぇ……知ってても、ただ面白いことだと笑って見てるだけの女神たちだから。

【葉那】 ヘルが会ったらぶち切れしそうな女神だね。

【咲】 ミラにも言えるかもね……こういったタイプ、嫌いそうだし。

ま、ヘルは会いにいかないけど、ミラは会いに行くからそのときを期待しててくれ。

【咲】 ふ〜ん……で、片や学園側、というか恭也たちの側ではえらいことになってるわね。

うむ……題をつけるなら、「蓮也くん、奪われる!?」だな。

【葉那】 いろいろと勘繰られそうな題だね〜。

だな。

【咲】 でもさ、彩音はなんであんな行動をとったわけ?

むぅ……まあ、行動の深い理由は特にないんだよね、彼女の場合。

【葉那】 どゆこと?

つまりだな、蓮也は恭也によく似た容姿をしてるから、こっちも自分の物にしようとしただけだ。

恭也はすでに自分の物と認識してるからいつでも取り返せると思ってるから、これでどっちも自分の物にと。

【咲】 いい男二人を自分の物にってこと? ほぼ生まれたばかりなのに、よくもまあそんな……。

教団の教育の賜物だな。

【葉那】 明らかに教育方針間違ってるよね〜。

まあなぁ……キスの意味だけじゃなくて、深いキスの仕方まで教えてるし。

【咲】 何を思って教えてるのかしらね、そんなこと。

それは教えた本人……彩音を作った奴のみ知ることだな。

【咲】 ああ、あいつね……って、あいつが教えたんかい!?

そそ。 一体何を考えて教えたのやら……。

【葉那】 自分にしてくれるようにって思ってじゃない?

それは親としてどうよ……。

【咲】 はぁ……まあ、教団にも馬鹿がいるのはもういいとして、次回予告行きましょうか。

ふむ、次回はだな、出発前日……つまり今回の続きだな。

【葉那】 それだけ?

ん〜……まだちゃんと決まったわけじゃないけど、彩音の行動がミラに知れてどうのってのはあるな。

【咲】 お怒りになるんじゃない? ミラは彩音にあんまりいい感情抱いてないし。

さてはて、それはどうなるか……次回をお楽しみに!!

【葉那】 じゃ、今回はこの辺で〜♪

【咲】 また次回も見てね♪

では〜ノシ




いやー、良い性格をしてるな、あの女神たち。
美姫 「本当よね」
どこかの誰かさ……ごほん、げほん、ぶべらっ!
美姫 「それで誤魔化したつもりの馬鹿は放っておいて、意味深な事を言ってたわね」
だな。いやー、これから先の展開がちょっと怖いな。
美姫 「まあ、当分先だと思うけれどね」
かな。まあ、とりあえずは女神に会いに行く所だしな。
どうなるのかな。
美姫 「次回も楽しみにしてます」
待っています。



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