このSSは『メンアットトライアングル!〜対なる心、継承せし二刀の剣〜』の続編です。

前回のお話のほとんどを引き継いでいますのでご覧になってない方はそちらを先にご覧になることをお勧めします。

そして前作をご覧になった方はお分かりになると思いますが、このSSでは王雷(ワン・レイ)が出ません。

前回同様いろいろと違和感が出てくるかもしれませんが、これまた前回同様ご了承の上でお読みください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メンアットトライアングル!2〜永久に語り継がれし戦士たち〜

 

【第二部】プロローグ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

カチャカチャ、コポコポ。

そんな音が現在、『研究&実験室』内に響き渡っていた。

一体何の音かというと、それは部屋の主が机に向かって何か製作をしている音だ。

基本的に部屋の名前どおり、この部屋では研究や実験が行われるのは日常茶飯事。

むしろ、この音が聞こえてこないときは誰もが違和感を持ってしまうくらいだ。

 

「……」

 

集中しているのか、部屋の主―クローズは無言で手を動かしている。

そしてその後ろには、椅子に座りながら同じく無言でクローズの後姿を見続ける少女の姿があった。

歳は十歳前後、青みがかった腰元より少し上ほどの長髪に真っ白なワンピースを身に纏い、片目に眼帯をつけた少女。

そんな見た目幼い少女は、小さめのコップを両手で持ち、何度か口元に運びながらただクローズを見続ける。

そんな状態がしばし続いた後、突然クローズの向かい合う机の方面からドカンッという音が響き渡る。

 

「……ふぅ。 やっと完成だ」

 

音がした後、クローズはそう呟いて椅子を回転させ、少女のほうへと向く。

それと同時に、少女は椅子から立ち上がって彼の近場へと寄っていき、手に持ったコップを差し出し告げる。

 

「お代わり……」

 

「……もう終わりにしとけ。 さすがに飲みすぎだぞ」

 

呆れたようにそう言うと、少女は嫌だというように首を横に振る。

それにクローズは小さく溜め息をつき、しょうがねえなぁ、と言って机にあるビンを一つ手に取る。

そしてビンの封を開け、少女の手に持っているコップに並々と液体を注ぐ。

 

「いいか? これで最後だからな?」

 

「……ん」

 

少女は小さく頷くと、液体の注がれたコップを口に運ぶ。

ちなみに先ほどからこのやり取りは何度か行われているのだが、少女が言うことを聞いた試しは無い。

故に、少女が頷いてもクローズはただ溜め息をつくしかなかった。

 

「はぁ……ほんと、よく飲むなぁ。 これじゃ、いくらあっても足りねえよ」

 

ビンを軽く振り、若干残った液体をチャプチャプいわせながらそう言う。

そしてもう一度溜め息をついた後、ビンを机に置いたのと同時に部屋の扉が開かれる。

開かれた扉にクローズが視線を向けると、そこには見慣れた人物の姿があった。

 

「研究は捗ってますか、クローズ君」

 

「ほんとよく来るな、おめえさん。 『断罪者』っつうのはそんなに暇なのか?」

 

皮肉交じりに言うと、部屋に入ってきた男―ルラは小さく苦笑を漏らす。

 

「別に暇というわけではありませんよ。 ただ、あなたに任せている研究のほとんどが我々にとって重要極まりないことばかりですから」

 

「なるほどな……ようは、監視しているってことか」

 

「まあ、そう考えてもらっても構いませんよ」

 

ルラがそう言うと、クローズはふんっと鼻を鳴らして背中を向ける。

そして、再び机の上で何かを弄り始めた。

 

「それで今日の用件なんですが……あれのほうはどうなってますか?」

 

「あれ? あれっつうのは、どれのことだ?」

 

「SR計画の第二段階のことですよ」

 

「第二段階……ああ、『GUN』のことか」

 

背を向けたまま視線を向けることなく、クローズは試験管を手に持ち揺らしながら呟く。

そして揺らしていた試験管を机の上の試験管立てに戻し、頭を掻きながら言葉を続ける。

 

「まあ、試作品のほうはもう大体出来てるな。 だが、あれを量産するのは現状では無理だな」

 

「ほう……それはなぜですか?」

 

「材料が決定的に不足してんだよ。 あれだって一応はホムンクルスだからな……それ相応の材料がなけりゃ作れねえ」

 

「なるほど……なら、相応の材料さえ集まれば、量産は出来るということですね?」

 

「できるが……そう簡単に集まる材料じゃねえぞ?」

 

そこでようやく椅子を回転させ、ルラと向き合うと同時にそう口にする。

すると、ルラは妖しげな笑みを薄っすらと浮かべ、自身に満ちた声で告げた。

 

「手に入れてみせますよ……それがどんなものであれ、我々にとって必要ならばね」

 

明確な自信に満ちたその一言に、クローズは少しだけ呆気に取られる。

だが、突然横から服を引っ張られることで、すぐに我に返ることへとなった。

我に返ったクローズが引っ張られたほうに目を向けると、そこにはコップを差し出す少女の姿があった。

 

「パパ……お代わり」

 

少女の口から発せられた言葉に、クローズは深い溜め息をつく。

 

「駄目だ。 言っただろ、あれで最後だって」

 

きっぱりと言うが、少女は先ほどと同じく首を横に振る。

しかし、今度ばかりはクローズも譲歩はせず、尚も駄目だという意を示す。

少女の飲んでいる物はクローズにとって……いや、教団全体にとって貴重なもの。

それを少女はここにいる間、常に飲み続けているのだから、さすがに在庫が心配になる。

故に、少女がどんなにせがもうとも、クローズは拒否し続ける次第だった。

だが……

 

「っ……」

 

お願いを拒否された少女が涙を目に浮かべたことで、クローズの決意は揺らぐ。

女に涙を流されるのは男からしたら正直辛い……それは、少女という年齢の子であっても同様。

クローズからしたら、なまじ父と呼ばれ慕われているだけあって目の前の少女が流す涙は辛さ倍増だった。

しかし、かといってここで自分が折れたら、目の前の少女は同じ事を繰り返すばかり。

ここは躾のために我慢というものを覚えさせるべきか……それとも、まだ子供のだからと自分が折れ、甘やかすべきか。

その二つの葛藤が、クローズの頭の中で巻き起こっていた。

 

「はい、お代わりをどうぞ」

 

と、葛藤に頭を悩ませている横から少女のコップに液体を注ぐ手が現れた。

この手の主が誰かというのはその場にいる人物を考えれば、ルラであるとすぐにわかるだろう。

コップに再び液体が注がれたことで、少女は泣きそうだった表情をすぐに一転させて椅子のほうへと戻っていった。

その一連の流れを見た後、クローズは少し慌てたような表情を珍しく作り、ルラへと口を開いた。

 

「おいおい、勝手にあれを与えるんじゃねえよ。 ただでさえ、あいつが飲みすぎるせいで残量が少ねえってのに」

 

「ですが、与えなければ絶対に泣いてましたよ?」

 

「う……いや、ここは我慢というのを覚えさせるためにだなぁ」

 

言葉に詰まりながらも自分の考えを言うが、ルラは苦笑をただ浮かべるばかり。

その様子に何を言っても無駄だと悟ったクローズは、不機嫌な表情を浮かべつつ溜め息をついた。

 

「まあまあ……彼女にとってこれは必要なものですし、あげたところで特に問題はないんですから」

 

「問題なくねえだろ……さっきの話を聞いてたか? もう残量がだなぁ……」

 

「だから、それも問題ではないんですよ。 もう時期、これは大量に手に入る予定ですから」

 

「ほう……そうだとありがてえが、あんなもん纏まった量なんぞ早々手に入るもんなのか?」

 

空のビンを片手に持ちながら言うルラの言葉に、クローズはそう言って首を傾げる。

すると、ルラはビンを机の上に置き、少女に視線を向けつつ妖しげな笑みを浮かべる。

その視線に、少女は不思議そうな目をしつつ首を傾げる中、ルラは口を開きそれを告げた。

 

「手に入りますよ……彼にとって、その程度は造作もないことですしね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吸血鬼事件後、学園はまだ少しだけ噂が飛び交っているものの、表向きは平穏だった。

というのも、ワイザーの遺体を見た生徒の記憶をセリナが操作し、消したためである。

故に生徒間でそのことが飛び交うことはなく、ただいきなり吸血鬼が出なくなったことを不思議に思うだけだった。

しかし、それはあくまで表向きの平穏……裏では、吸血鬼事件の幕引きと共に訪れた謎と問題に講師陣は頭を悩ませていた。

ワイザーを殺害したのは誰か、遺体の失われた部分はどこにいったのか。

そして、中でも一番の謎であり問題であるのは……魔剣、ダーインスレイヴはどこに消えたのかということだった。

封印の解かれたのをセリナが感知し、裂夜と共に駆けつけたときにはすでに姿の見えなかった魔剣。

あの後も、封印場の付近をある程度探し回ったが、魔剣の姿がまったく見つかることはなかった。

 

「ここは、調査を中断して魔剣の捜索を最優先にすべきでしょうか……」

 

「いえ、あくまで調査を優先するほうが今はいいと思うわ。 魔剣を誰かが持ち出したとして、そいつがこの学園にまだ潜んでいるとは思えないし」

 

「そうだな。 ミラの言うとおり、魔剣のことを頭に置きつつ、残っている事件の謎を調査すること優先するほうがいいでしょう」

 

ジャスティンの言葉に、恭也とミラは揃ってそう返す。

確かに、十数年前も、それ以前も恐ろしい事態を引き起こした魔剣が損失したとなれば、捜索に力を入れるべきだ。

だがそれは、あくまで盗んだ犯人に検討がついている、もしくは盗んだ犯人の逃走範囲が特定できる場合のみだ。

そうでなければ、消えた魔剣の捜索を情報もなしにするなど、正直雲を掴むような話に乗るということにしかならない。

故に、結果としてこの日の会議は、魔剣の捜索を視野に入れつつ、事件調査を優先するという形で幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし……一つ問題が解決したと思えば、また問題が増えるとはな」

 

「もう、この状況じゃ誰かが問題を呼んでるとしか……思えないわよね」

 

「……おい。 そこでなぜ俺を見る」

 

恭也、ミラ、裂夜、セリナの四人は朝の会議を終えた後、食堂へと向かっていた。

その間、話題になることと言えば、当然の如く昨夜の事件や増えた謎に関してのことだった。

 

「別に……ただ、あなたの日頃の行いが悪いからこんなことが頻繁に起きるんじゃないかしらって思っただけよ」

 

「なっ……そ、それを言うならこいつだって同じだろ!?」

 

そう反論しつつ、裂夜はなぜかセリナの頭を掴む。

それにセリナはかなりうざったそうな顔をして手を解こうとするが、正直掴む手の力が強くて解けない。

解こうとするその間も、裂夜はミラと口論しつつ掴んだセリナの頭をぐいぐいと振るように動かす。

それのことに頭にきて、とうとう我慢できなくなったセリナは……

 

「いい加減……離しなさい、よっ!!」

 

よ、と言ったと同時に足を上げ、裂夜の足をかなり強く踏みつける。

すると、痛みに裂夜は顔を顰め、声をあげると共にセリナの頭から手をバッと離す。

 

「ぐっ……な、何しやがる! このくそチビ!」

 

「あんたが勝手に人の頭を掴むからでしょ!! お陰で髪がめちゃくちゃになっちゃったじゃない!!」

 

「ふん、こんなドチビが色気づくなど……百年早いわ」

 

「な、なんで百年なのよ!! ていうか、百年も経ったら本気でお婆ちゃんなっちゃうでしょ!!」

 

「はっ……今でも年齢はお婆ちゃんだけどな」

 

「む、むっきーーーーーーー!!!」

 

最近はあまりなかったが、顔を合わせれば喧嘩をするというのは今だ健在だ。

故に、今も口だけでの喧嘩が本格的なものへと発展しようとしていた。

しかし、二人がいつも喧嘩を始める前に必ず実力行使で止める人物が隣にいることを、二人は忘れていた。

 

「二人とも……喧嘩しちゃ駄目よ」

 

言葉は諭すようなものなのに、体にはバチバチと紫電を纏っている。

言葉を聞き、それに気づいた二人は一筋の汗を流し、言い訳を口にしようとした。

だが、その前に二人へと降り注いだ雷撃を見る限り……甘んじて言い訳を聞くほど、ミラは優しくないということだろう。

お仕置きという名の雷撃を落とした後、黒コゲ状態になった二人をどこからか取り出した縄でぐるぐる巻きにする。

そして、裂夜を縛った縄の端を恭也に渡し、共にそれを引き摺りながら再び歩き始めた。

 

「ところで、前から聞きたかったんだが……」

 

「なに、恭也?」

 

「この縄は一体どこから出してるんだ?」

 

正直、恭也にとってそれはかなりの疑問だった。

二人をボンレスハム状態にまでぐるぐる巻きに出来るほどの長さの縄。

そんなもの、一体この小柄な体でどこから出しているのだろう、と。

しかし、その質問を口にした後、ミラは少しだけ意地悪な表情を浮かべ……

 

「乙女の秘密よ♪」

 

と、のたまった。

その答えに恭也はなぜか納得したように頷き、再び前へと向き直る。

そして二人は、黒コゲの物体を引き摺りながら、食堂へと向けて歩き続けるのだった。

 

 


あとがき

 

 

さてさて、一部が終わって早々、二部がスタートでございます!!

【咲&葉那】 ございま〜す!!(パチパチパチ

しっかし、始まって早々思うのだが、裂夜とセリナを絡ませるとどうしてこんな風になるんだろ?

【咲】 書いたあんたが疑問に思うのも私はどうかと思うけどね。

【葉那】 だね〜。

む……まあ、この二人は犬猿の仲だからということで納得しておこう。

【咲】 そのほうが賢明ね。

さて、今回は前半部を教団側、後半部を学園側ということで進めたわけだが。

【葉那】 後半はともかく、前半はわかんないことがあるよね〜。

【咲】 そうねぇ。 あの少女はなんなのかってこととか。 ルラとクローズの話に出てた、『GUN』のこととか。

ん〜、少女に関しては一部の最後で出てきたあれなんだけど、詳細はまだ明かされないかな。

まあ、あえて言うなら、教団の計画にとってかなり重要になる人物だということだけ言っておこう。

【葉那】 ふ〜ん。 じゃあ、『GUN』っていうのは〜?

それはだな、分かるとは思うがある名称の略なんだ。 まあ、これに関しては近いうちに分かると思う。

【咲】 そう……じゃ、一部から恒例のということで、次回はどんな話なの?

次回はだな〜、アーティが学園に帰ってくるってのが主な部分になるな。

【葉那】 そういえば、一部ではほとんど出てなかったよね、アーティ。

海鳴に行ってたからなぁ、あの子は。 まあ、そんなわけで、彼女が帰ってきていろいろとあるわけだよ。

【咲】 そのいろいろって言うのが気になるけど……まあいいわ。

じゃ、今回はこの辺で!!

【咲&葉那】 また次回ね〜♪




二部スタート〜。
美姫 「早速始まったわね」
まだ始まったばかりだから、前回の後みたいな感じだな。
美姫 「一部では出番の殆どなかったアーティも戻ってくるみたいだし」
二部ではどんな展開が待っているのかな〜。
美姫 「そろそろ教団が本格的に動くのかしら」
どうなるのかなー。
美姫 「次回も待ってますね」
ではでは。



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