リィナが加わってから二日目の冒険のとき、カールは皆と保健室に立ち寄った際に突然体調を崩した。

フィリスによると突然の体調不良を原因はカールの精気が異常に低下しているのが原因だったらしい。

そのため、詳細は省くがフィリスの治療を受けたカールは治療が終わると同時にペンダントを渡された。

そしてそれを身に付けたカールはフィリスの言葉に従い、一夜を保健室で過ごすことになった。

それが、カールの周りに起こった不可解な出来事の始まりだった。

 

「どうしたの、カール?」

 

「ん? あ、いや、なんでもないよ」

 

カールは首を振って目の前で不思議そうに自分を見る赤髪の女性にそう返す。

なんでもないと返したものの、実際はなんでもないわけではなく現在の状況について少し考えていたのだ。

二人が現在いるところ、それは今までカールがいた学園とは似ているようでまったく異なる荒れ果てた建物の一室。

そして今は夜を差す時間であるためか外は暗く、部屋の中も明かりが灯っていないため明かりが月明かりぐらいしかない。

ここがどこなのか、ということは現時点ではカール本人にもわからないのだが、少なくとも自分の元いた場所ではないことくらい分かる。

しかしそれ以上のことは分からず、目の前の女性の言葉などで推測はいろいろと立てては見るがどれもピンと来ない。

現在分かることといえば先ほど言ったここが元いた場所ではないということと、ここに来ることができるのは決まって夜、しかも保健室で寝たときのみ来ることが出来るということだけだった。

まあつまるところそれ以外、カールはなぜこんな場所に来ることができるのかなどのことに関してはまるでわからないのだ。

とまあそんな思考をカールはしていたのだが、返事を返すも考え込むような表情をしているカールを深くは追求せず、そう、とその女性は小さく呟くとカールの手を取って歩き出す。

 

「じゃあ行きましょうか、カール」

 

「そうだね、キャサリン」

 

笑みを浮かべながら自分の手を引っ張る女性―キャサリンにカールは同じく笑みを浮かべてそう返し歩き出す。

ここに初めて来たときに出会った彼女はここをハンターアカデミーと呼び、そして自分がここの学園長だと言った。

ハンターアカデミーという名も、キャサリンがここの学園長だということも、カールには良くわからないと同時に信じられないこと。

だが、キャサリンが嘘を言っているようにも思えないためとりあえずカールはそれを信じ、そしてここに来たときは決まってキャサリンと共にいる。

キャサリン自身も最初こそは正体不明の訪問者であるカールを警戒はしていたが、接していくうちにそれはなくなり今のように笑みを浮かべてくれるようになった。

 

(でもほんと、どういうことなんだろ?)

 

キャサリンと共に部屋を出て歩きながらカールは心中でそう呟く。

だが、呟けど先ほどのように思考したりはせず、今はキャサリンとの時間を楽しもうと思い思考を止める。

最初こそ困惑やらはしたが今はここでキャサリンと会い、時間を共有することを純粋に楽しめるようになった。

だからこそ、ここがどこであっても、キャサリンが何者であっても、今のカールにとってはどうでもよかった。

それほどまでに、この数日でキャサリンという存在はカールの中で大きなものへとなっていたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メンアットトライアングル!2〜永久に語り継がれし戦士たち〜

 

第十二話 歴史を改変せし者

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『マスター』

 

「何?」

 

その日の夜も学園内を徘徊する女性ことヴァルは声を掛けてきたランドグリスに短く聞き返す。

それにランドグリスはいつもと変わらぬような声色で驚愕極まりないことを言ってのける。

 

『先ほど、学園の一室にて時間転移魔法の行使を確認しました』

 

「……はあ!?」

 

少しだけ反応が遅れてから、ヴァルは素っ頓狂な声を上げる。

その声にランドグリスは聞き取れなかったのかと勘違いしもう一度述べようとする。

 

『ですから、学園の一室で』

 

「いや、ちゃんと聞いてたけどさ……時間転移なんて、この学園で使える人いないでしょ」

 

『まあそうですけど……ですが、実際に確認してしまったわけですから』

 

「う〜ん……じゃあ仮に使える人がいたとして、時間転移なんてして何をしようっていうのよ?」

 

『いや、そんなこと私に聞かれても知りませんよ』

 

「そりゃそっか。 あ、もしかして……でもあれは時期が」

 

『何か心当たりがあるんですか?』

 

「ちょっとね。で、時間転移した奴が行ったのは過去?未来?」

 

『ちょっと待ってください……えっと、過去ですね。 行き先は今から数百年前、中世と呼ばれる時代のこの学園です』

 

「はぁ……予感的中だね。 その時代の学園って言ったらちょうど彼女のいる時代じゃん」

 

『彼女? ……ああ、キャサリン・サイフォンですか』

 

「うん。 あ〜……でもどうしよっか?」

 

『どうするとは?』

 

「だから〜、そいつが誰かは知らないけど、その時代に飛んだってことは歴史通りにことが進んでるってことになるのよ」

 

『そうですね。 それがどうかしましたか? 歴史通りなら問題ないはずですが』

 

「まあ確かにそうなんだけど……でも、私としては彼女にあんな悲しみを背負わせたくないかな」

 

『同情ですか? まあマスターは彼女に会っているからそれもわかりますけど、それが彼女の運命である以上どうしようもないですよ』

 

「う〜ん……やっぱりそうなのかな」

 

納得できないという表情でヴァルは顎に手を当てて考え込む。

そしてすぐに何かを閃いたというように手を下ろしてにっこりと笑みを浮かべる。

ランドグリスはその笑みに凄まじく嫌な予感を感じ、ヴァルは口を開いて告げた言葉でそれは当たることとなった。

 

「よし、私たちも飛んじゃおう」

 

『はあ!? な、何を言ってるんですか、マスター!?』

 

「何って……私たちも時間転移しようってことだけど?」

 

『そんなこと聞いてるんじゃありません!! なんでこの忙しいときに私たちも飛ばないといけないのかを聞いてるんです!!』

 

「そんなの決まってるじゃん。 彼女を救うために、だよ」

 

『ま、まさか……そのためだけに歴史を捻じ曲げる気ですか!?』

 

「捻じ曲げるなんて人聞きの悪い……ちょこっと変えるだけじゃん」

 

『それだけで大きく変わってしまうんですよ! 歴史というのは!』

 

「ああもう、いいからつべこべ言わず時間転移の準備しなさい! これは命令です!」

 

『いくらマスターの命令でもそればっかりは聞けません! 断固拒否です!!』

 

いつになくヴァルの言葉に反対し拒否の姿勢を見せるランドグリス。

それにヴァルは笑みから一転して無表情になり、ぞくっとしそうな感情の篭らない声で言う。

 

「へ〜……私の頼みが聞けないんだ、ランちゃんは」

 

『そ、そんな脅しめいた感じで言っても駄目なものは駄目なんです……』

 

さすがのランドグリスもヴァルが怖いのか先ほどとは打って変わって低姿勢で返す。

その言葉にヴァルは短く、そう、と呟いて、ランドグリスの両端を持つ。

 

「じゃあ……覚悟はいいね?」

 

『か、覚悟って……いたっ! 痛いです!! 私はその方向には曲がらないですぅぅぅ!!』

 

いつもならランドグリスが叫びを上げたところで止めるのだが、拒否されたことに腹が立ってるのか徐々に力を込めていく。

込められていく力に同調するようにランドグリスの叫びもマジでやばいというようなものへと変わっていく。

その叫びにヴァルは込めていく力をある一定の場所で止めて口を開いた。

 

「これが最後のチャンスだよ、ランちゃん。 私の頼みを聞く? 聞かない?」

 

『き、聞かないと答えたらどうなるんでしょうか?』

 

「言わなくても分かるでしょ? ちなみに本気だから」

 

そう言うヴァルの声や自身を強く握る手から拒否したら本気で折られると判断したランドグリスの答えはもう一つしかなかった。

 

『わ、わかりましたよ。 聞けばいいんでしょ、聞けば』

 

ランドグリスが観念してそう言うとヴァルは再度先ほどの笑みを浮かべてランドグリスを解放する。

 

『はぁ……ほんとはいけないんですけどね』

 

「ぶつくさ言わないでさっさと転移の準備する!」

 

『わかりましたよ……でも、どうしてマスターはそこまで彼女に入れ込むんですか?』

 

「どうしてか? う〜ん……特別な理由はないけど如いて言うなら可哀想だから、かな」

 

『可哀想……それはマスターの過去と似ているから、ということですか?』

 

「そんな感じかな。 まあ違うところはいろいろあるけどね」

 

『そうですね。 と、準備のほうが整いましたよ』

 

「そう。 じゃあ、ゲート展開」

 

『イエス、マスター。 時粒子収束、時空ゲート展開』

 

ランドグリスがそう言葉を放つと同時にヴァルの足元に複数の魔法陣が展開する。

そしてその魔法陣のすべてから光の粒子が立ち上がり、ヴァルの目の前へと収束して渦上になる。

その目の前に現れた渦にランドグリスを腰に収めたヴァルはゆっくりと歩み、渦の中へと姿を消していくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして一方、過去の世界の学園にてカールとキャサリンは学園内を歩いていた。

何をしているのかというと、現代の学園同様この学園にも至る所に魔物が徘徊しており、それを二人は駆除して回っているのだ。

ただ現代と違うところといえば、今のこの学園では時間関係なく魔物が学園内を徘徊しているということだろう。

そのためカールがいないときにはキャサリンが一人で駆除しているのだが、カールの数倍も強いといえる彼女からしたら苦でもなんでもない。

だが、一人で魔物を駆除して回るよりもカールと一緒に回ったほうが効率はいいし何より彼女は楽しいと思えていた。

というよりも、カールといるときは魔物の駆除は二の次で、純粋にカールといる時間を楽しんでいるといった感じだが。

まあそんなこんなで二人は魔物を駆除して回り、学園長室に帰ってきたと同時に学園長室前でキャサリンに別れを告げてカールは消える。

それはまるで本当はいない存在だったというような消え方だったが、別れるときはいつもこうなのでキャサリンはすでに気にしてはいない。

それよりもカールと次に会えるのはいつだろうかと楽しみにしているような笑みを浮かべて学園長室へと入る。

だが、そんな気分は学園長室に入ったと同時に聞こえてきた声と目の前にいた人物によってかき消された。

 

「お帰り〜。 遅かったじゃない」

 

聞こえた声と目の前の机に腰掛けていた女性を認識した瞬間、キャサリンは一瞬だけ驚きを浮かべてすぐに女性へと攻撃を仕掛ける。

だが、キャサリン自身当たったと思った攻撃は空しくも空を切り、後方から先ほどの女性の声が再度聞こえてくる。

 

「いきなり飛び掛ってくるなんて、積極的だね〜」

 

後方から聞こえてきたその声にキャサリンがすぐさま振り向くと、女性は先ほどと変わらず笑みを浮かべていた。

初撃を避けられたこともあり、それにますますキャサリンは警戒を強めて女性に対し口を開く。

 

「あなた……何者?」

 

「さあ、何者でしょうね〜」

 

「ふざけないで答えて。 私の攻撃を避けるどころか、私でさえ捉えられない動きをするなんて……正直人間とは思えないわ」

 

「そりゃそうでしょ。 だって人間じゃないし」

 

「人間じゃ、ない……?」

 

「そそ。 ま、それも含めていろいろと話があるから……とりあえず、警戒を解いてくれないかな〜?」

 

「解くわけないじゃない。 あなたが私を討ちに来た以上、私はあなたを殺さないといけないんだから」

 

「あ〜……まずそこ誤解してるようだから言っとくけど、私は別にあなたを討ちに来たわけじゃないよ?」

 

「そんな言葉に騙されるとでも思う?」

 

「う〜ん……嘘じゃないんだけどな〜。 じゃあこれとか折ったら信用してくれる?」

 

そう言って女性は腰に携えた大太刀を手に持って両端を掴む。

 

『ちょ、ちょっと、何する気ですか!? 痛いっ!! 痛い痛い!!』

 

両端を掴んだ手に力を込めていくと大太刀は声を上げて叫ぶ。

そしてどういうわけかそれが聞こえたキャサリンは驚いたような顔で大太刀に視線を向け口を開く。

 

「それは……まさか、魔導器?」

 

「ん? ああ、これ? う〜ん……似てるけど魔導器ではないかな」

 

「でも、その形……それに意思があるところを見ると」

 

「魔導器しか考えられない、だね。 まあ魔剣は意思はあるけどこんな変な形はしてないからね〜」

 

『変な形とは失礼な……にしても、あなたは私の声が聞こえているのですか?』

 

「え、ええ」

 

『そうですか……なら、自己紹介いたしましょう。 私はランドグリス。 厳密には違いますが、まあ魔導器のようなものです』

 

「で、私がこの子の主で……ヴァル、とでも名乗っとこうかな。 よろしくね♪」

 

女性―ヴァルと大太刀―ランドグリスがそう自己紹介するとキャサリンはつられるように頷く。

そしてまだ警戒はしているのものの、名乗られたら名乗り返すのが礼儀であると思っているのか自己紹介をしようとする。

 

「私はこのハンターアカデミーの学園長をしている――」

 

「キャサリン・サイフォン、でしょ?」

 

「……やっぱりあなたはハンター教会の」

 

「だから違うってば。 そこんとこもちゃんと説明するから、ともかく警戒を解いてって」

 

「このままでも話くらいはできるけど?」

 

「……あくまで警戒を解くつもりはないってわけね。 はぁ……ま、いっか。 じゃあ説明するからよく聞いてよ?」

 

ヴァルがそう言うとキャサリンは小さく頷き、それを確認してからヴァルは説明を始める。

といっても自分たちがどこから来たのかくらいしか説明することがないためそれは話し始めて数分で終わる。

 

「――ってこと。 わかった?」

 

「大体は、ね。 でも、信じられないわね……あなたたちが未来から来た人だなんて」

 

「まあ普通はそうだよね。 でも、現実に私たちは未来の世界からやってきた。 これは変わりようのない事実だよ」

 

「そう、ね……あなたたちと似たような子もこの間からよくここに来てるのだし、何よりあなたたちが嘘を言っているようにも見えないわ」

 

「じゃあ、信じてくれるってことだね?」

 

「ええ。 でも、少し疑問が残るわ。 なんであなたたちはこんな時代に転移してきたの? それに、そもそも時間転移を可能にする魔法なんて」

 

「あ〜、待った待った。 いっぺんに聞かれても困るって」

 

「そ、そうね……ごめんなさい」

 

キャサリンはそう言って謝罪を口にし、ヴァルはそれに少しだけ苦笑をする。

実際時間転移などという芸当をしたと言われても信じれないことがほとんどで、信じたとしてもすぐに落ち着くことは難しい。

故にそれがわかっているからヴァルはキャサリンのそれに苦笑したのだ。

そしてその後、キャサリンが小さく深呼吸をして気を落ち着けたのを見てからヴァルは先ほどの疑問の答えを一つ一つ口にする。

 

「まず、どうしてこの時代に私たちが時間転移をしてきたのかについてだけど……これは私たちの時代で時間転移の反応をランちゃんが確認したみたいだから、私たちはその時間転移をした人を追ってこの時代にきた、というわけね。」

 

「なるほど……でも、この時代に時間転移をしてきた理由はわかりましたけど、なぜこの時代のここなの?」

 

「それはもちろん……」

 

『転移をした人物の行き先がここだったからです』

 

ヴァルに繋げるように言ったランドグリスの言葉にキャサリンは驚きを浮かべる。

時間転移を行った人物の行き先がここだったということにもそうだが、それよりもキャサリンが驚いていることがある。

それは何かというと、キャサリンはその時間転移を行ったと思しき人物に心当たりがあるということだった。

 

「その顔だともう会ってるみたいだね……」

 

「え、ええ……たぶん、だけど」

 

少しだけ浮かべていた笑みを崩して真剣な顔でそう言い、キャサリンはそれにそう返して頷く。

ヴァルはその答えに少しだけ悲しそうな表情を見せるがすぐに消して元の笑みを浮かべる。

 

「じゃあ、次の疑問に対しての答えだけど……時間転移っていうのは究極の領域と言える魔法なの。 だから知っている人はほんの一握りだし、知っていても使える人なんてほとんどいない……あなたが知らなくても不思議な話じゃないわけなのよ」

 

「……ならここに転移してきた人やあなたたちはそれを使える、ということなのかしら?」

 

「あっちはどうか知らないけど、少なくとも私は使えないかな」

 

「え……でも、現にここに」

 

「うん、確かに私は時間転移でここに来た。 でも、だからと言って私が使えるというわけじゃないのよ」

 

「じゃあ、どうやって……?」

 

「つまり〜、私が時間転移を行えるのはこの子のおかげってことかな」

 

そう言ってヴァルは腰に差しているランドグリスをポンと叩く。

 

「ランドグリス……?」

 

「そ。 ランちゃんの力は神器以上だから、こういったことも可能ってわけ」

 

『そういうことですね。 あと……いい加減その呼び方はやめてくださいね、マスター』

 

「これのほうが呼びやすいんだからいいじゃん。 それに、こっちのほうが愛着沸くし可愛いよね?」

 

「え、ええ……」

 

『愛着沸かなくても可愛くなくてもいいですから普通に呼んでください……というか、あなたも頷かないでくださいよ』

 

「ご、ごめんなさい」

 

「ああ、謝らなくてもいいよ。 単に照れてるだけだから、ランちゃんは」

 

『照れてません。 それと人の話を聞いてるんですか、あなたは!?』

 

その後、真面目な話から一転して二人のじゃれあいのような言い合いが響く。

それに先ほどまで警戒していたキャサリンも少しだけ苦笑を浮かべてその二人を見続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言い合いが始まってから約二十分、言い合いを終えた二人はキャサリンの言葉で古びたソファーに腰を下ろす。

といっても座ったのはヴァルだけでランドグリスは腰から外されて横に立て掛けられており、キャサリンはお茶を用意すると言って奥へと行った。

そして更に数分後、キャサリンは紅茶を淹れたカップを持って部屋に戻り、ヴァルの前にそれを置くと向かいのソファーに腰を下ろす。

 

「ふ〜ん……建物はぼろぼろなのによく紅茶なんてあるね」

 

「ずっとこのアカデミーに閉じこもってるわけじゃないわよ。 ちゃんとこういったものの買出しに出たりもするわ」

 

「それはそっか。 サキュバスって言っても力や能力以外はほとんど人間と変わらないんだしね」

 

「そうね。 それにしても、ヴァルはなんでも知ってるのね」

 

「まあね〜」

 

『伊達に長く生きてないですしね。 確か今は……』

 

と、ヴァルの年齢を口にしようとしたところでランドグリスはヴァルの肘を受けてガチャッと倒れる。

 

「あ、ごめ〜ん、肘が当たっちゃった♪」

 

『いくら言われたくないからってこれはあんまりかと……』

 

その言葉をヴァルはさらっと流して倒れたランドグリスを起こして立て掛ける。

それにキャサリンはまたも苦笑してカップに口をつけて紅茶を喉に通す。

そして口から離したカップを目の前のテーブルに置き、キャサリンはその言葉を口にする。

 

「じゃあ、私がこれから先どうなるのかも、あなたにはわかるの?」

 

キャサリンの口から放たれたその言葉は場の空気を一転させる。

ヴァルも、ランドグリスも、その言葉で表情の明るさが消え、暗めな空気が周りを覆う。

その空気の変化に、キャサリンはなんとなく自身の運命が予想できたのか少しだけ俯く。

 

「やっぱり……私は、討たれるのね」

 

「歴史上では……そうなるね」

 

「そう……」

 

「でも、歴史は変わる。 ううん、私たちの手で変えてみせる」

 

「え……?」

 

ヴァルの言葉にキャサリンは顔を上げてその表情を見る。

視線を向けたそのときのヴァルの表情は、どこか決意に満ちた表情だった。

そんな表情で、ヴァルは表情と同じく決意に満ちた声でそれを告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私たちが、あなたを守ってみせるから……」

 

 


あとがき

 

 

うう、非常にやばい状況の中執筆をしたT.Sです。

【咲】 その非常にやばい状況のT.Sを執筆させた咲です。

【葉那】 同じく葉那です♪

【咲】 で、実際どういう風にやばいのかというと。

【葉那】 バイクでこけたらしいのです。

【咲】 病院送りにこそならなかったけど、左半身が痛むらしいわね。

そげそげ。 キーボードもほとんど片手で打ってたからな。

【葉那】 そんな状態でも執筆は続けさせる辺り、さすがお姉ちゃんだね!

【咲】 ふふ、まあね。

いや、そこは俺を褒めようよ。

【咲】 じゃ、恒例の次回予告を。

無視ですか……まあいいけど。 で、次回は視点が変わってカールが抜けた後のレイナたちの冒険風景だな。 そして、カールの代わりというわけではないが、新たな仲間が入る予定。

【葉那】 でもメンアット4に出てくる仲間は全員入ってるよね?

そうだな。 だから次に入るのは一体誰かというのは原作知っててもわからないというわけだよ。

【咲】 ふ〜ん……まあ、私はだいたい予想つくけどね。

君は変なところで勘が鋭いからね。

【咲】 変なところは余計よ。 じゃ、今回はこの辺でね♪

【葉那】 次回もまた見てね〜♪

それでは〜ノシ




まさか、過去にまで行っていたとは。
美姫 「しかし、こんな軽いノリで歴史を変えてしまっても良いのかしら」
どうだろう。でも、討たれた時間から未来へと飛べば、歴史的には影響がないような気もするけれど。
美姫 「その辺りは時間を扱う以上、難しい所よね」
一体、どんな展開になるのかな?
美姫 「次回の新しい仲間って誰!?」
彼、彼女かな? それとも他の人かな。
美姫 「次回も待ってますね〜」
ではでは。



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