地下水路での騒動があってから一夜明けた翌日。

カールはまだ落ち込んでいるであろうレイナに新しいリボンをプレゼントするために部屋の前で待っていた。

待つこと数分してレイナに部屋から現れ、カールに落ち込んだ様子など見えないような笑みを浮かべて朝の挨拶をした。

その様子にもう立ち直ったのかとカールが聞くと、レイナは落ち込んでいても仕方がないと笑みを浮かべたまま返す。

その笑みを見て確かに表面上は立ち直っているが、長い付き合いのカールから見たら無理をしているのが見え見えだった。

だが、カールはそれを分かっていても口に出したりはせず、用意していたものを少しだけ遠慮がちに渡す。

 

「これ……新しいリボン?」

 

「うん……あのリボンの代わりにはならないかもしれないけど」

 

少しだけ驚きを浮かべていたレイナはすぐに微笑を浮かべ、ありがとう、と言って受け取る。

受け取ってもらえたことにカールは内心でほっとし、レイナと共に食堂に向けて歩き出した。

そして赴いた食堂の一角にてまるで待っていたというように手招きをする人物、静穂を見つける。

手招きをされた二人は首を傾げながら近寄ると、静穂は先ほどのカールと同じように遠慮がちに懐からある物を取り出す。

 

「リボン……?」

 

「は、はい……無くしたリボンの代わりにはならないと思うんですけど」

 

と、カールのときと似たり寄ったりなことを言いながらそのリボンを差し出した。

それにカールとレイナは顔を見合わせてクスっと笑い合い、レイナはカールのときと同じように礼を言って受け取る。

そして更に、二度あることは三度あるとでも言うかのように今しがた食堂へやってきたリゼッタが三人に近寄って遠慮がちにそれを差し出す。

 

「あの……無くした物の代わりにはならないと思いますけど」

 

と、やはりカールや静穂のときと同じような言葉を口にしながら。

そのことに今度はカールとレイナと静穂が顔を見合わせ、さすがにもう堪えられないのか笑い合う。

突然笑い出した三人にリゼッタは不思議そうに首を傾げ、三人の笑いが収まった後に説明を受けて自身も小さく笑う。

 

「まさか、三人とも同じことを考えていたなんてね」

 

「あはは……にしてもそれ、どうします? 三つともつけちゃいます?」

 

「ふふふ、それもいいかもね」

 

そう言い合って四人は再度笑い合った後、各自の食事と取りに行って席に着く。

そして先ほどのことがまだ冷めやらぬのか食事を取りつつする四人の会話はそのことばかりだった。

ちなみに、四人のすぐ近場でラブラブモード全開で食事をする恭也とミラがいたのだが、気にしてない辺りもう慣れたようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メンアットトライアングル!2〜永久に語り継がれし戦士たち〜

 

第十一話 絆を繋ぐリボン 後編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午前の講義、その時間の戦闘術が行われる修練場にリィナの姿はあった。

リィナは主に黒魔法をよく受講しているのだが、時折白魔法や戦闘術の講義にも参加するためこれは不思議なことではない。

だが、今日のリィナはどこかいつもと様子が違っていた。

どの講義に参加してもリィナは優秀でとても真面目な生徒なのだが、今日のリィナはミスばかりをしてしまっている。

しかも、それは講義内容の聞き逃しなどといった普段はないようなミスばかり。

ミラからも授業態度については聞いており、自分から見ても優秀だと思っているリィナのそんな様子に恭也はどうしたのかと思い声を掛ける。

 

「どうした? 体調でも悪いのか?」

 

「え……あ、いえ」

 

声を掛けられてから数秒空いて、リィナは少しだけ慌てたように首を横に振る。

 

「そうか……なら何か悩み事でもあるのか?」

 

「い、いえ……別に、何も」

 

その様子は明らかに何かありますと言っているようなものであり、恭也もそれはわかっていた。

だがそれ以上聞いたところで話しはしないだろうと思ったのか追求はしなかった。

 

「ないならいいが……だがもし何かあるようなら俺でも、他の誰かにでも遠慮せず相談しに来るといい」

 

恭也はそう言ってリィナの頭を軽く撫でるが、リィナはそれを振り払おうとはしなかった。

他人に冷たくすることで拒絶するリィナがなぜ今、恭也のその手を払わないのかはリィナ自身にもわからなかった。

わからないのだが、唯一つわかることがあった。

それは、恭也の手から伝わってくる温もりをとても心地よいと感じている自分がいるということ。

なぜそう感じているのかもわからないが、それだけはリィナにはわかったのだ。

その後、撫でる手を引っ込めて元の位置に去っていく恭也をリィナはしばし見続け、少しだけ楽になった気分で講義に戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、学園長室にてジャスティンは書類の整理やらをしていた。

といってもハンター教会やらに関する書類がほとんどであるためか、整理といってもそこまで掛かるものではない。

故に整理すべき書類ももうほとんど残ってはおらず、ジャスティンは少しだけ休憩というように手を止めて小さく息をつく。

と、そんなジャスティンの耳に部屋のドアから小さな音が聞こえてくる。

それは誰かが訪問してきた際にするノックの音とは違い、何かがドアを引っ掻いているような、カリカリ、といった音。

それにジャスティンはその時間が講義の時間であるため、必然的に誰がドアの前にいるのかが分かり苦笑しながらドアへと歩み寄って開ける。

すると、開けられたドアから先ほどまでドアを引っ掻いていたであろう二匹の黒い子猫が部屋に入りジャスティンを見上げる。

 

「どうしたの、二人とも?」

 

微笑を浮かべながら二匹にそう聞くと、答えるように一匹が鳴く。

猫語がわかるわけではないが、それで大体がわかったかのようにジャスティンは机へと戻り引き出しを開ける。

そしてそこからクッキーやらのお菓子を取り出し、後ろについてきた二匹にその封を開けて差し出す。

すると二匹は差し出されたそれを食べ始め、その光景をジャスティンは微笑ましそうに見ていた。

 

「邪魔するぞ」

 

と、そんな空気をぶち壊しにするように一人の男性が入ってくる。

ジャスティンは入ってきた男性が誰なのか顔を向けずともわかるのか、疲れたように小さく溜め息を漏らす。

というよりも、この学園長室にそんな一言だけでノックもせずに堂々と入ってくる輩などこの学園には一人しかいない。

 

「裂夜さん……何度も言ってますが、入るときはノックぐらいしてください」

 

「なぜそんな面倒なことをせねばならん」

 

「面倒って……ドアを叩くだけじゃないですか。 それと仮にも私は学園長でここは学園長室なんですから、入る際にノックをするのは最低限の礼儀なんです」

 

「ふむ……なら次からは気をつけよう」

 

その言葉にジャスティンはまた小さく諦めたような溜め息をつく。

裂夜がこう言ってちゃんと言われたとおりにしたことなど今まで一度もないからだ。

そんなジャスティンに構わず裂夜はドカッとソファーに腰掛ける。

 

「腹が減った……何か食べる物はないか?」

 

「お腹が空いたのでしたら食堂に行けばいいんじゃないですか?」

 

「あそこは……駄目だ。 昼食前ということで、今は番人がいる」

 

裂夜は昼食前や夜中などに空腹を感じることが多く、そのため空腹を感じたら迷わず食堂へと行く。

それがまだ何も出来てないときでも何か出せとせがみ、夜中で誰もいないのであれば調理場に進入して漁る。

そのためか、裂夜は食堂ではブラックリストに入っているのだが本人はまったく意に介しておらずそれを止めない。

故に、どうにかしてくれと食堂の人たちから泣きつかれた裂夜専用お仕置き係のミラは対裂夜用に番人を配置することにした。

ちなみにその人物とはアーティとセリナなのだが、裂夜が番人を恐れているのは別に二人だからというわけではない。

問題なのは、裂夜が進入を試みた際に片方が結界を張って進入を妨害し、そして片方が即座に転移してミラを呼びに行く。

そして呼ばれたミラは講義中であっても食堂へと駆けつけ裂夜に制裁をし、ぐるぐる巻きに拘束して食堂の片隅に放置する。

つまりは、裂夜が真に恐れているのはミラということである。

まあそんなわけで、食堂に食べ物をたかりに行くこともできない裂夜が空腹を感じた際に行くところとして目をつけたのがここだったというわけだ。

 

「はぁ……食べ物といってもお菓子くらいしかありませんよ?」

 

「構わん」

 

元々来客用にお菓子を少しばかり置いてはいたのだが、ここ最近は裂夜のせいでお菓子の減りが早い。

そのため最近はいつもより多めにお菓子を置いているのだが、それでも減りが変わらないことにジャスティンは溜め息をつくしかない。

そんなジャスティンの足元に歩み寄った二匹の子猫は前足でポンポンとまるで慰めるように叩く。

二匹のそんな慰めの仕草にジャスティンはちょっとだけ癒されると同時にかなり悲しくなった。

 

「……どうぞ」

 

そう言いつつ器に入れたお菓子を裂夜の前に置くと裂夜は凄まじい勢いで食べ始める。

朝食からまだ一、二時間程度しか経っていないのにどうしてそこまで腹が減るのだろうかとジャスティンは思いながら目の前の光景に呆れたと言うような溜め息をつく。

 

「それで……他に何か用事があったんじゃないですか?」

 

「んぐ……ひょふはふぁっふぁな」

 

「なんとなくですけどね……それと、急ぎませんから口の中のものを飲み込んでから喋ってください」

 

呆れつつそう言うジャスティンに裂夜は肯定するように声を漏らして口の中の物を飲み込む。

 

「ふぅ……で、ここに来たもう一つの用件だが、例の件についてわかったことがあったぞ」

 

「例の件……この間のことですね?」

 

「ああ。 白チビに聞いてみたところ、あれの封印が解かれているという反応はないそうだ。 まあ実際に見てみんとわからんがな」

 

「そうですか……でも、もし封印が解かれていないのだとすると、一体誰があんなことを」

 

「さあな。 だが、封印が解かれていてもいなくてもあれの仕業ではないとは断言できん。 なにせ、あれには不明な点が多すぎるからな」

 

そう言いつつ裂夜は器からお菓子を手にとって口に放り、ソファーの背に身を預けて息をつく。

 

「まあ今夜辺りにでも恭也の奴が確認に言ってみるそうだ。 封印が解かれているかいないのかをな」

 

「わかりました……」

 

「それと、もう一つ報告しとかないといけないことがあるんだが……」

 

「なんですか?」

 

「ん〜……いや、この話は後にしておこう。こいつらがいるところで話すのも難だ」

 

裂夜はそう言って自身の隣にいる者に少しだけ視線を向ける。

その視線をジャスティンは追うと、そこにいるのは先ほどからここにいる二匹の子猫。

実のところ、その子猫たちは裂夜とジャスティンが真剣な話をしている合間も裂夜に構ってというようにじゃれついてきていたりする。

性格などはともかく、こういった動物などに好かれてしまうところを見るとさすがは元恭也の半身といったところだろう。

 

「そうですね……」

 

そんな二匹を見つつジャスティンは苦笑しながら頷く。

その後、しきりにじゃれついてくる二匹を裂夜は仕方なくといったような感じで相手をする。

だが、そんな感じではあるのに裂夜の口元には若干の笑みが浮かんでいた。

そしてそんな一人と二匹に視線を向けていたジャスティンも微笑ましそうな表情で見ているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間が流れてその日の夜、生徒たちが冒険に出かけるそんな時刻に恭也とミラ、そしてセリナは地下水路を歩いていた。

 

「ねえねえ、お兄ちゃんは今回のことについてどう思う? やっぱりあれのせいだと思う?」

 

「ふむ……遺体には刃物による傷はなかったところを見ると違うのではないかと思うが、あれのことは現状ではほとんどわかっていないからなんとも言えんな」

 

「ミラお姉ちゃんは?」

 

「私も恭也と同じよ。 あれのせいとは思えないけど、かといって人の手によるものとも思えない」

 

二人の答えにセリナは、そっか、と歩きながら頷く。

三人がこんな時間に地下水路を歩いている理由、それはある物の封印が解かれていないのかを確認するため。

そのために地下水路の生徒たちには見つからないようにしてあるその場所三人は向かっているのだ。

もっともその封印というのはアーティとセリナによる二重の封印であり、その封印の性質上、破られれば二人は感知できる。

それ故に本来ならば直に見て確認など行わなくてもいいのだが、物が物だけに念には念をといったところである。

 

「ん?」

 

と、あれやこれやと会話をしながら歩いていた中、恭也は前方にて何かを発見したのか足を止める。

それにミラとセリナはどうしたのかと思い恭也の顔を見た後、その視線が向かっている先を見る。

するとそこにいたのは、最近カールたちがどうしたものかとお悩みになっている対象であるリィナだった。

 

「……」

 

リィナは三人が近くにいることも視線を向けていることにも気づかずに水路を見ている。

それに一体何をしているのかとミラとセリナは疑問に思い首を傾げるが、恭也はなんとなく頭に浮かんだ予感のためリィナへと歩み寄る。

だが集中しているためかやはり恭也が近づいてきていることに気づかないリィナは小さく呼吸をして水路へと飛び込もうとする。

しかし、それは近づいてきた恭也が肩を掴むことで止められることとなった。

 

「何をする気だ?」

 

突然肩を掴まれたことと聞こえたその声にリィナは驚きを浮かべつつ驚く。

そしてすぐに表情を元に戻して恭也の言葉に答えるために口を開く。

 

「リボンを……取り戻そうと思って」

 

「リボン?」

 

「はい。 レイナさんが……姉さんが大切にしているリボンを、私のせいで失わせるわけにはいきませんから」

 

そう言ってある場所に向けるリィナの視線を辿ると、そこには排水口があった。

そしてその排水口の柵にかろうじて引っかかっているピンク色のリボンも同時に発見する。

 

「ふむ……だが、この流れでは君が飛び込んでも取れるかはわからんぞ? むしろ溺れてしまう可能性のほうが高い」

 

「わかっています。 でも……それでもあれは、姉さんには必要なものだから。 私がこれを大事にしているのと同じように……」

 

リィナはそう言いながら恭也に自身の髪を束ねる青色のリボンを見せる。

ずいぶんと長い間使っているのか少しだけ色あせてはいるが、その分だけ大事だということが伝わってくる。

だからか、恭也は止めたとしてもリィナは聞かないだろうなと思い溜め息をつく。

 

「はぁ……しょうがないな。 ……これを持っててくれ」

 

「え……?」

 

いきなり上着を脱いで渡されたことにリィナは小さく声を漏らす。

その声と同時に恭也は水路へと飛び込み、そのリボンのある場所を目指して泳ぐ。

突然の恭也の行動にリィナは驚きを隠せず浮かべ、そんなリィナの視線の先で恭也は泳ぎ続けリボンの引っかかっている場所へと到達する。

そして、すぐにそのリボンを手に取り、恭也は水路の中から上がって息をつきつつリィナのところへと歩み寄る。

 

「これでいいか?」

 

「え、あ、はい」

 

差し出されるリボンを手に取りつつリィナは戸惑いながら肯定するように頷く。

リィナがリボンを受け取ったのを見て、恭也は預けていた上着を手に取りリィナに背を向けて歩き出す。

 

「ま、待ってください」

 

「ん? なんだ?」

 

「どうして、私の代わりにリボンを取ってくださったんですか?」

 

「ふむ……君がこんな流れの中を飛び込むなんてほとんど自殺行為だ。 だが、君は俺が止めたとしても飛び込んでそれを取りに行こうとする。 だから、俺が代わりに取りに行ったというわけだ」

 

すでに息を整えたのか先ほどと変わらぬ感じで恭也は言う。

だが、リィナは恭也の言葉に納得できるも疑問が浮かんでしまう。

それは、一生徒のためにどうしてそこまでしてくれるのかということだ。

危険な目に合わせないため、と言われればそれまでだがリィナにはどうしてもそれがわからない。

おそらくは、施設での事で人を信用できなくなったため余計に人の善意による行動というものが理解できないのだろう。

そんなリィナの納得できるが納得できかねるといった思考を表情から読み取った恭也は再度リィナに近づいて頭に手を置いて撫でる。

 

「君の事情は学園長から聞いたから大体知っているつもりだ。 故に人を信じることが出来ない、というのも理解できる。 だがな、いつまでも過去に囚われていては前に進むことはできないぞ?」

 

「前に、進む……?」

 

「ああ。 確かに君の過去は悲しく酷いものだし、俺自身も許せないことだ。 だが、その過去に囚われて人を信じないまま生きていくことは他人だけでなく、自身を傷つけることになる。 だから無理に前向きに生きろとは言わないが、もう少し努力してみてもいいんじゃないか?」

 

「……」

 

「すぐに過去を吹っ切れるわけではないが、そうしなければ君はこの先ずっと前に進むことは出来ない。 ずっと過去に囚われたくはないだろう?」

 

「はい……」

 

「だったら、そうならないために努力をするんだ。 信じるというのは難しいが、君自身が努力をすればきっとできる。 幸い、ここには君が信じるに値する生徒たちが大勢いるしな」

 

そう言って恭也は撫でる手を下ろしてある一点に視線を向ける。

その視線を追うようにリィナも向けると、その先からは複数の足音と話し声が聞こえてくる。

 

「あの声……」

 

「カールたちだな。 ふむ……ちょうどいいじゃないか。 そのリボンを返してくるといい。 そして、その後どうするかは君次第だ」

 

「はい」

 

「ん、いい返事だ。 では俺はこれで失礼しよう。 がんばるんだぞ」

 

恭也はそう言って微笑みを浮かべると、それを見たリィナは少しだけ頬を赤くする。

そして頬を赤くしたまま少しだけ笑みを浮かべて小さく頷き、リィナはカールたちのところへ歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、リィナを見送った恭也はミラとセリナと合流してその場所を目指す。

その間、ミラが少しだけ不機嫌な表情で恭也に文句を言っていた。

 

「もう……甘すぎるわよ、恭也は」

 

「そうでもないと思うが……」

 

「生徒の代わりに水路に飛び込んで挙句の果てに助言までする。 これを甘いと言わないでなんて言うのよ」

 

「だがな……」

 

「はぁ……わかってるわよ。 あの子に関してはああでもしないと良くないことが起こるって事ぐらい。 でもそれはいいとしても、不用意に愛想を振りまくのは駄目よ。 前から言ってるけど」

 

「愛想……俺とは無縁な単語だと思うんだが?」

 

「はぁ……」

 

「無理だよ、ミラお姉ちゃん。 お兄ちゃんのこれは簡単に直るものじゃないし」

 

セリナの言葉に恭也は貶されたと思ったのか憮然とした表情をする。

まあそんな会話をしつつ三人は地下水路を歩き続け、目的の場所へと辿り着く。

魔法による隠蔽がされているためそこは傍目から見ればただの壁だが、三人にはそこが目的の場所だとわかる。

 

「じゃ、とりあえず魔法を解いて入ろっか?」

 

「そうだな」

 

「そうね」

 

二人がほぼ同時に返して頷くのを見ると同時にセリナは隠蔽魔法を解除する。

すると、ただの壁にしか見えなかったそこに一つの扉が出現する。

恭也は出現した扉に手を掛け開き、三人は扉を潜ってその部屋の中へと入る。

 

「ふむ……一応あるみたいだな」

 

「そうね。 封印が解けてるようにも見えないし……やっぱり先日の件は別の者によるものってことかしら?」

 

「たぶん、な」

 

そう言い合いつつ三人が視線を向ける先にある物。

それは部屋の中央にある台座の上で宙に浮くようにして佇む一振りの剣。

刃、柄、すべてが黒で統一された見ただけでも禍々しいと感じてしまう形と雰囲気を持った剣。

その剣の台座には剣を名前を現すように小さく文字が掘り込まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Dainsleif(ダーインスレイヴ)、と……。

 

 


あとがき

 

 

やっと書けた〜。

【咲】 前回に引き続き遅いわ!!

げばっ!!

【葉那】 しかも今回は難産とかじゃないみたいだしね。

う、うう……仕方ないだろ。 俺は熱中すると他がおろそかになる奴なんだから。

【咲】 だからってほぼ休日徹夜でゲームやる馬鹿はあんたくらいなもんよ。

いやいや、きっと他にもいるって。 俺なんかまだまだなほうだよ。

【葉那】 自慢にならないことだけどね〜。

【咲】 そうね。

う……ま、まあともかく、書けたわけだからいいじゃないか。

【咲】 良くないけど……まあ話が進まないからいいということにしとくわ。

ほ……にしても、ちょっと今回のは自信なかったりするんだよね。

【葉那】 なんで?

う〜ん……うまく言えんが、これでいいんだろうかとなんとなく思ってしまうのだよ。

【咲】 じゃあ見直しすればいいじゃない。

してますよ。 何回もしてますよ。 でも、いくら修正しても思っちゃうんだよ。

【葉那】 じゃあいっぺん消して書き直しちゃえ♪

そ、それはさすがに……。

【咲】 わがままな奴ね。

わがままって……ま、いっか。 これでできちゃったものは仕方ないということにしとこう。

【咲】 別に私はどっちでもいいけどね。 で、次回はどんなお話なの?

ふむ、次回はリィナ加入の行程が終わったということで今度は例の彼女だ。

【咲】 彼女? ……ああ。

【葉那】 それだけなの?

う〜ん、だいたいはな。 ヴァルにも動きがあるけど、これは彼女のことに関係するし。

【咲】 ふ〜ん。

というわけで、今回はこの辺で!!

【咲】 また次回!

【葉那】 会おうね〜♪




うーん、地下水路にまさかあの魔剣が封印されていたとは。
美姫 「もしかして、あの謎の女性の狙いもこれだったのかしら」
それはどうだろう。封印されている場所までは知らないだろうから、偶然だったという可能性も。
美姫 「益々謎が深まっていくわね」
ああ。これから先、どんな展開を見せてくれるんだろうか。
美姫 「期待しながら次回を待ってますね〜」
楽しみにしてます。



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