カール、レイナ、静穂の三人と別れた裂夜はまっすぐに学園長室を目指した。

本来ならば夜も遅いと言うことで講師たちのだいたいは就寝についているのだが、学園長であるジャスティンは例外としてこの時間も学園長室にて仕事をしていることがほとんどだった。

それを知っているが故に裂夜は迷うことなく学園長室へと向かい、その扉の前に立つとドアノブに手を掛けてゆっくりと開き中に入る。

 

「失礼するぞ……」

 

入ってから言ってもあまり意味のないことを言って裂夜はジャスティンのところに歩み寄る。

突然の裂夜の訪問にジャスティンは驚きを浮かべつつも呆れ顔で溜め息をつき口を開く。

 

「裂夜さん……いつも言ってますけど、入るときはノックくらいしてから入ってください。 突然入られるとびっくりするんですから」

 

溜め息混じりにジャスティンはそう言うが裂夜はそれに何も返さず歩み寄りジャスティン前で立ち止まる。

そして服のポケットから布で包まれた何かを取り出し言葉を発することなく、見ろ、と言うようにそれを机の上に置く。

そんな裂夜の行動にジャスティンは、一体なんなんですか、とやはり溜め息混じりで呟きそれを手にとって開き、その中身を見て絶句する。

だがすぐに我に返り、内心では動揺を浮かべながらも表面上はいつも通りの冷静さを見せたまま口を開く。

 

「これは……どこにありましたか?」

 

「学生寮前の草むらだ。 妙な匂いがするなと思いはしたが……まさかそんなものだとは考えもつかなかったぞ」

 

裂夜は見た目無表情に見えても若干の険しさを見せながらそう言う。

その言葉にジャスティンは何も返すことなくそれを再度布で包んで机の上に置く。

 

「また、何か起ころうとしているのでしょうか?」

 

「これだけではなんとも言えんが……少なくともただ事ではないのは確かだ」

 

「そうですね……ではとりあえず、これはフィリス先生に渡しておくことにしましょう」

 

「ああ。 それだけで何かが分かるとは思えないが……そうしたほうがいいだろうな。 それと……」

 

「それと?」

 

「生徒たちの数を調べておけ。 もしかしたら、生徒のものではないかもしれんしな」

 

「わかりました……」

 

ジャスティンが頷いたのを見ると、裂夜は踵を返して歩んでいき扉を開けて部屋を出て行った。

裂夜が出て行った後、ジャスティンは深く溜め息をついてもう一度確認というように布を開き中身を見る。

だが、やはりもう一度開けて見てもそれは変わらずそこにあった。

時間が経っているためか少し固くなっており、若干の血の匂いを発する……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人間の……指が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メンアットトライアングル!2〜永久に語り継がれし戦士たち〜

 

第八話 偶然知った彼女の秘密

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜の冒険からしばしの時間が流れ、今は翌日のお昼。

なんとかその日はミラの魔の手を避けて違う講義に参加したカールの足取りは昨日とはまったく異なり軽快なもの。

まあその別の講義(自然魔法)が中々に良かったというのもあるだろうが、一番はおそらくミラの雷撃を今日は受けなくて済んだということだろう。

そんなわけでカールはその軽快な足取りで食堂へと足を運ぼうとしていたのだが、途中で少し調べ事があったのを思い出し図書室へと赴いた。

赴いた図書室にていつもながら凄まじい書物の量に若干圧倒されながらカールは目当ての本を探すために図書室内を歩き回る。

 

「ん? あそこにいるのは……」

 

歩き回っている際にカールは見覚えのある人がいることに気づき近づいていく。

その人はカールの接近に気づくこともなく真剣な顔で机の上に置いている本をゆっくりと捲っていた。

 

「こんにちは、リゼッタさん」

 

「えっ!? か、カールさん!?」

 

自分が近づいても気づかないその人物―リゼッタにカールは声を掛けるとあからさまに動揺した表情を浮かべる。

そして読んでいた本を勢いよく閉じてまるで隠すように持ち、少しぎこちない笑みを浮かべながら挨拶を返す。

ただ声を掛けただけであるはずなのに焦りを見せるリゼッタにカールは少し不思議そうな顔をしながらも何を見ていたのかが気になり尋ねる。

 

「リゼッタさんは何を調べてたんだ?」

 

「え……あ、いえ、特に何かを調べていたというわけじゃ」

 

「そうなんだ……何か読んでたみたいだからてっきり調べ事かと思ったよ」

 

「そ、そうですか。 じゃ、じゃあ私はこれで……」

 

カールと話しながらも動揺を消すことはなく、リゼッタはそそくさと本を棚に戻して図書室を出て行った。

どこかカールから逃げるような感じで去っていったリゼッタにカールはやはり不思議な感じを拭えず、一体何を読んでいたのかと思い棚に戻された本を探し出して手にとって見る。

 

「学園の卒業年鑑?」

 

リゼッタの読んでいた本、卒業年鑑と書いてあるそれにカールはやはり不思議そうな顔をする。

学園の歴史を調べることはいけないことではないし特に恥ずかしいことでもない。

なのにリゼッタはまるでこの本を読んでいたということを隠すように棚に戻して足早に去っていった。

そのことがカールには不思議でならず、一体何か変わったことでも書いてあるのかと思い年鑑をパラパラと捲ってみる。

だがやはりカールから見てもおかしなところはなく、パタンと年鑑を閉じ棚に戻して首を傾げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図書館での出来事から午後の授業、夕食と時間が流れてもうすぐ深夜の冒険に指しかかろうとしている時間。

カールは冒険の前にお風呂に入っておこうと思い、深夜前ということで静まり返っている廊下を大浴場目指して歩いていた。

本来ならば大浴場は女性専用であり男子は入ってはいけないという決まりになっているのだが、部屋の風呂が小さいためにたまには大きな風呂で足を伸ばしたいと思うのは仕方のないことであることからカールは女子が全員が入り終わったであろうその時間を狙って入ろうと思い立ったのだ。

そんなわけで大浴場へと赴いたカールは明かりが消してあることから誰もいないと考え、衣服を脱いで籠の中へと入れて中へと入る。

 

「う〜ん、やっぱり広いな〜」

 

部屋の風呂とは違ってかなり広い大浴場にカールは開放感を感じながらお湯の中に入ろうとする。

と、そこで少し奥のほうに気配があることに気づき、誰かいたのかな、と内心で焦りながら目を凝らして見てみる。

そしてそこにあった光景に言葉を失い、まるで夢でも見ているような気にさえなってしまった。

 

(天使……)

 

呆然とその光景を見つめるカールの頭ではその一言が自然と浮かんだ。

目の前にある光景、それは暗い大浴場を照らす月明かりの下に一人立つ白い翼を広げた少女の姿。

その姿はカールの思い浮かんだ言葉通り、天使と見えても不思議はなかった。

そんな少女をカールが呆然と見つめる中、少女は閉じていた目をゆっくりと開け、そして驚きの表情を浮かべる。

 

「か、カールさん!?」

 

「え……リゼッタさん!?」

 

少女が自分の名前を叫んだことにカールは我に返り、その少女がリゼッタであることに気づく。

そして気づいたと同時にカールは足を滑らせておもいっきりお湯の中にダイブしてしまう。

カールがお湯にダイブした音で驚きに固まっていたリゼッタも我に返り、ごめんなさい、と叫び駆け出して大浴場を出て行った。

リゼッタが大浴場を出て行ってからすぐにカールは沈んでいた体を起こしてリゼッタの出て行った方向を見る。

 

「あれは……リゼッタさん、だよな? でも、あの羽は……」

 

図書館でのこともあり、不思議が不思議を呼んだということにカールは頭を悩ませる。

と、カールがお湯にに浸かりながら考え込んでいると突然大浴場に明かりが灯る。

それにカールはバッと顔を上げると、明かりが灯ると同時に入ってきた二人の人物と目が合う。

 

「あら……」

 

「あ、カールだ」

 

「……」

 

入ってきたのは最近よくよく縁のあるミラとその助手をしているセリナだった。

ちなみに当然のことであるが、大浴場に入ってきた二人は衣服を纏ってはおらず、言うなれば全裸の状態だ。

そんな状態の二人に出くわしたカールは言葉を発することができず徐々に顔を赤くしながら口をパクパクさせている。

視線を向けたまま固まってしまったカールにミラもセリナも恥じらいすら浮かべず、それどころか手に持ったタオルで体を隠すこともしないで少し冷めた口調でカールへと口を開く。

 

「いつまで見てる気?」

 

「っ! す、すみませんでしたーーー!!」

 

ミラの一言にカールは分かりやすいほどにビクッとし脱兎の如く大浴場から逃げ出て行った。

そんなカールを一目だけ見た後にミラはお湯へと浸かり、セリナに至ってはカールの様子に大爆笑していた。

そしてセリナの笑い声が聞こえる中、ミラは小さく息をつきながら……

 

「あとで、恭也に言っておかないとね」

 

小さな笑みを浮かべながらそう呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなことがあった翌日、カールはレイナと静穂に会うなり怒られた。

カールはあの後、リゼッタのこととミラ&セリナとの遭遇でかなり動揺してしまったのか冒険のことを忘れて寝てしまったのだ。

そしてカールがそんな状況に陥って眠りについてしまっているとは露知らず、二人は待ち合わせの場所で待っていた。

そんなわけで理由を知らずいくら待っても来ないカールに二人はすっぽかしと取って次の日の早朝に、なんで来なかったのか、と怒ったのだ。

まあそんな二人にまさか大浴場でリゼッタやミラたちと遭遇してテンパってて忘れましたとは言えず、カールはとりあえずもっともらしい理由をでっち上げて二人をなんとか納得させ事なきを得た。

そんなこんなで今はお昼、現在カールはリゼッタに昨夜のことを謝ろうと学園内を探し回っていた。

本来ならミラとセリナにも改めて謝るべきなのだが、はっきり言って昨日の今日だけに会うこと自体が怖く後に回したのだ。

しかしいくら探し回ってもリゼッタは見つからず、放課後に回そうかなと考え始めたときにもしかしたらあそこかもしれないという場所が浮かぶ。

その場所は昨日もリゼッタと遭遇した場所である図書室。

昨日いたのであれば今日もそこにいるかもしれないとカールは考えつき、少し駆け足気味で図書室へと赴いた。

そして図書室内を見回しながら探し回っていると、思ったとおりリゼッタは昨日とほぼ同じところに座って書物を読んでいた。

 

「リゼッタさん……」

 

「え……あ、カールさん」

 

呼ばれたと同時にリゼッタは昨日と同じく本をパタンと閉めて隠すようにする。

そして自分を呼んだのがカールであると分かるとちょっとだけ気まずそうな顔で俯いてしまう。

そんなリゼッタにカールは謝ろうと思ってきたにも関わらず言葉が出ないままただ頬を掻く。

それからしばしの沈黙が流れて、俯いていたリゼッタはその状態のまま静かに口を開いた。

 

「あの……見ました、よね?」

 

「え、あ、うん……その、ごめん。 見る気はなかったんだけど、まさかリゼッタさんが入ってるなんて思わなかったから」

 

「そう、ですか……変に思われましたよね。 私に、羽があること」

 

「え、羽?」

 

「? 見られたんじゃないんですか?」

 

「あ、いや、見たことには見たけど……てっきりリゼッタさんの裸を見たことを言ってるのかと思ったから」

 

カールがそう言うとリゼッタは今気づいたかのように頬を赤くする。

そんなリゼッタにカールも同じく頬を赤くしながら気まずそうながらも口を開く。

 

「あ〜、それで羽のことだけど、僕は別に変だとは思わなかったよ。 むしろ天使じゃないかって思ったくらいだし」

 

「天使? 私が、ですか?」

 

「うん。 それほど綺麗な羽だったしね」

 

「あ、ありがとうございます。 でも、天使だとしたら頭上のリングが足りないと思いません?」

 

「あ、そういえばそうだね」

 

そう言って二人は先ほどまでの空気とは変わり、小さく笑い合う。

そしてひとしきり笑い合うとリゼッタは見られたからということで自分のことについて話し出した。

セイレーンという一族のこと、自分がその一族の一人であること、自分が母親の手がかりを捜すためにこの学園に来たこと。

そのすべてを話し終わった後、最後まで真剣に聞いていたカールはその説明で疑問が解けたというような顔していた。

 

「じゃあリゼッタさんが学園の卒業年鑑を読んでいたのは、お母さんのことが載っていないかを見るためってこと?」

 

「はい。 卒業年鑑なら卒業生のことも載っていますので、この学園の卒業生の母のことも載っているかと思ったんですけど……」

 

「見つからなかったの?」

 

「はい……母が在学していたと思われる時期とその前後数年分がこの年鑑からぽっかりと抜けてるんです。 それ以外にもその時期のことが記されていると思われる書物の一切が消失してるみたいで……」

 

「その時期に何かあったのかな……?」

 

「知りたいかしら?」

 

「「っ?!」」

 

突然会話に割り込んできたその声にカールとリゼッタはバッと勢いよく振り向く。

そこにはどこか意味深な笑みを浮かべたミラと恭也が椅子に座る二人を見下ろすように立っていた。

 

「み、ミラ先生に恭也先生……驚かせないでくださいよ」

 

「これくらいで驚くなんて気が抜けてる証拠よ。 それよりも、その時期のことについて知りたいんじゃないの?」

 

「先生方は知ってるんですか? この時期に何があったのか」

 

「ああ。 まあ知ってるというよりも、その時期の書物が消失している原因は俺たちなんだがな」

 

「「え?」」

 

「その時期はね、とある侵入者たちと学園側との少し大きな戦いがあった時期なのよ」

 

「じゃあ、その戦いの際に書物の大半が……ということですか?」

 

「そういうことね。 ちなみに、その侵入者というのが誰か……わかる?」

 

「この学園にいる人なんですか?」

 

「ああ。 今、お前たちの最も近くにいる人物たちだな」

 

「最も近くって……まさか」

 

「ご想像の通り、その侵入者というのは私と恭也のことよ。 あ、あとセリナもね」

 

あっけらかんと告げるその驚愕の事実にカールとリゼッタは言葉を失う。

その際にカールは、ミラ先生って一体何歳なんだろう、などと若干失礼なことを思っていたがミラが怖くて口にすることはなかった。

 

「で、なんでその時期のことを調べてるのかしら?」

 

「え……あ、えっと、そのですね」

 

「言いにくいことか? なら、無理して言わなくてもいいが」

 

「えっと……すみません」

 

「気にすることはない。 人には知られたくないことの一つや二つあるものだからな」

 

そう言って苦笑する恭也に申し訳なさそうな顔をしていたリゼッタは少しだけ微笑む。

 

「だが、だからといって一人で抱え込むなよ? 君には頼れる人が大勢いるんだからな」

 

「はい」

 

「ん、いい返事だ。 ときにカールくん……」

 

いい顔で返事をするリゼッタに恭也はそう言って頷き、表情を一転させてカールの肩に手を置く。

呼ばれたカールは恭也の表情の変わりぶりとなぜか君付けで呼んだことに嫌な予感を抱いてしまう。

そして、次に放たれた恭也の言葉でその予感は当たっていたと知ることになった。

 

「昨日、大浴場で、ミラの裸を見たそうだね?」

 

「え、あ、えっと、あれは……」

 

「見たそうだね?」

 

「はい……」

 

言い訳をしようとしたカールはもう一度放たれた言葉と同時に肩を掴む力が強められたことで言い訳できずに頷いた。

カールがそれを認めたことに恭也はいつもは見せないような笑みを浮かべて口を開く。

 

「そうか……なら、この後の講義は戦闘術に来なさい。 たっぷりと歓迎してあげよう」

 

「い、いえ、できれば遠慮したいん……ですが」

 

「はははは、そう遠慮することはないぞ。 というか、むしろ来い」

 

「きょ、強制ですか!?」

 

「ああ。 そして拒否権もない。 すっぽかしたら……わかるな?」

 

「はい……行かせて頂きます」

 

掴む力を更に強められたことと妙にドスの利いた言葉にカールはそう言う他なかった。

その横でリゼッタは困ったような表情でオロオロしており、ミラはクスクスと小さく笑みを浮かべていた。

その後、午後の戦闘術の講義にていつもとどこか違う空気を纏う恭也とその恭也にあからさまにしごかれているカールの姿があったそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、生徒たちが冒険に出始める時間から三時間程度経った深夜十二時、三階の廊下にて一人の生徒と思われる少女が走っていた。

その少女の廊下を走る姿はまるで何かから逃げているようで、その必死に見えるその表情はわかりやすいくらい恐怖に歪んでいた。

 

「はぁ、はぁ……」

 

時折後ろを見ながら走り続け、少女はここまで来ればと思った地点で足を止める。

そして膝に手をつきながら荒い息をついて後ろを見て、誰もいないことに安心したように溜め息をつく。

だが、それと同時に少女を再度恐怖に沈めるように足音が少女の前方から聞こえてくる。

 

「……」

 

足音と共に見えてきたその姿は、人ではないということが一目で分かる姿。

まるで周りの色に溶け込むように真っ黒なその体は、言うなれば人の影。

ゆらゆらと揺らめきながら少女へと歩む様子はまるで幽霊と言える姿。

そして何より恐ろしく感じてしまうのはその黒き体で唯一異なる朱色をした、目。

 

「ひ……」

 

その人とは言えないあまりにも異形な姿をしたそれが近づいてくることに少女は小さく悲鳴を上げて逃げ出す。

しかし、その少女の逃げ道を塞ぐように反対側からも足音が聞こえ始め、そしてその姿を現す。

現れたその姿は後ろにいる異形なものとは違って正真正銘、人と呼べる姿をした女性。

本来ならば、現れたその女性に助けを求めてもおかしくはないが、少女は女性の姿を見た瞬間に後ずさる。

なぜなら、その女性こそが先ほどまで少女を追いかけていた人物だからなのだ。

 

「あ……ああ……」

 

おぼつかない足取りでゆっくりと後ずさっていく少女に女性は無表情で腰にある大太刀を抜く。

そして切っ先を少女のほうへと向けて、感情の篭らない声で小さく呟く。

 

「ランドグリス……」

 

『イエス、マスター。 ブレードモードからガンズモードへの移行を開始します』

 

ランドグリスがそう告げると大太刀は光を放ちながらその形状を変えていく。

放つ光は粘土のようにグニャリと歪み、二つに分かれて女性の大太刀を持っていた手ともう片方の手で光を収める。

光が収まった女性の両手には、先ほどの大太刀とは違う二丁の銃が握られていた。

 

『移行完了。 続いて、聖弾(セイクリッド)の生成を開始します……80……90……完了』

 

その言葉に続いてランドグリスは小さく、装填、と呟くと銃からガチャリと音が聞こえる。

音が聞こえると共に女性は少女へと照準を合わせて引き金に指を掛ける。

自身へと向けられる銃口に少女の表情は恐怖に歪んでいた表情をさらに歪めて震えながら逃げることも出来ずに立ちすくむ。

そんな少女に、女性は無表情のまま引き金に掛けている指に力を加えて銃弾を放つ。

銃撃音と共に放たれた弾は少女の心臓を正確に捉え、そして当たる。

撃たれた少女は一歩、また一歩と後ずさり、そして膝から崩れ落ちて地面に倒れる。

そして、胸から伝わる痛みに自身が死ぬことに一筋の涙を流しながら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉を最後に、短いその生涯を終えた。

 

 


あとがき

 

 

さてはて、物語が進んでいく中で謎はさらに深まってきました!!

【咲】 女性の目的がなんなのかほんとに分からなくなる話ね。

【葉那】 だね〜。

まあこの行動にも目的に関わる理由があるんだけどね。

【咲】 でもそれはまだ明かされないんでしょ?

そげそげ。

【葉那】 でもさ、メンアト4のシナリオが終わってないのに学生が一人死んだらいろいろと進行上困ってくるんじゃないの?

そこに関しては次回語られるよ。 このことに学園側がどういった対処を取るのかってね。

【咲】 ふ〜ん。 でも、あんたの書く話は必ず誰かが死ぬわね。

暗い話が好きだから……書いてると自然にそうなるんです。

【葉那】 だからハッピーエンドを書くのが下手くそなんだね〜♪

そ、そんなはっきり言わなくても……まあその通りだけどさ。

【咲】 それもどうかと思うけどね。 で、次回はどんなお話なの?

次回か? 次回はだな、さっき言った学園側がどう対処するのかと猫々騒動かな。あとまだ未定だけどリィナに関することがあるかも。

【咲】 そう……って、猫々騒動って何よ?

言葉の通りですよ。 まあ騒動ってほどのことでもないけどな。 どっちかっていうとほのぼのみたいな。

【葉那】 猫って言ったらあの二人だよね〜?

まあな。 だが、ほんとにそれだけかな?

【咲】 他に誰かいたかしら?

ふふふ、まあ次回分かるからお楽しみに。

【葉那】 うわ〜、意味深な笑みがムカつくね。

【咲】 そうね。 やっちゃう?

【葉那】 やっちゃおう♪

え? な、なぜにそんな方向に話が進むんでしょうか?

【咲】 問答……。

【葉那】 無用!!

げばっ!! ぐべっ!! ぴぎゃっ!!

【咲】 ふぅ……じゃ、今回はこの辺でね♪

【葉那】 あ、実験コーナーは長くなったから次回に回しま〜す♪

【咲】 次回は必ずするからお楽しみに〜。

【咲&葉那】 じゃ、また次回ね〜♪




うーん、裂夜が拾ったものに対する予想は外れか。
美姫 「まさか指とは思わなかったわ」
だな。にしても、何故、女生徒が。
美姫 「入学式からそう日も経っていないというのに、いきなりの大事件」
一体どうなるんだ!?
美姫 「次回もお待ちしてますね」
待っています。



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