このSSは『メンアットトライアングル!〜対なる心、継承せし二刀の剣〜』の続編です。

前回のお話のほとんどを引き継いでいますのでご覧になってない方はそちらを先にご覧になることをお勧めします。

そして前作をご覧になった方はお分かりになると思いますが、このSSでは王雷(ワン・レイ)が出ません。

前回同様いろいろと違和感が出てくるかもしれませんが、これまた前回同様ご了承の上でお読みください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メンアットトライアングル!2〜永久に語り継がれし戦士たち〜

 

プロローグ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街からかなり離れた静かに風のそよぐ丘の上。

丘の先にある魔法学園を一望できるほどのとても高いその場所に一つの人影が立っていた。

その人影は腰まで伸ばした黒い長髪をしており、顔立ちやらを見る限りでは二十代始めといった感じの女性である。

その女性が纏う衣服は黒いシャツに黒いズボン、さらにその上に黒衣を身に纏っている。

一見すると全身黒尽くめの不審者にしか見えないその格好に加え、腰にある剥き出しの大太刀がさらにそれを深めてしまう。

だが、その女性はそんな自分の格好など気にしてないかのようにじっとある一点を眺めている。

その視線の先にあるのは、魔法学園である古城ウォザーブルクだった。

 

『あの、マスター……いつまで眺めてるんですか?』

 

そんな女性の頭に響き渡るように少し高めの声質をした声が聞こえてくる。

女性は聞こえてきたその声に特に驚く風もなくいつものことというかのように口を開く。

 

「ん〜……あとちょっと」

 

『はぁ……まあいいですけど』

 

声は少し呆れたように女性にそう返し、女性が言った、あとちょっと、という言葉通りちょっとだけ待つ。

そして、声が考えるちょっとという時間が過ぎた頃、声はまた女性に呼びかえるが今度は返事すら返してこない。

もうちょっとかな、と思いまたしばし待ってから声をかけるがやはり女性は返す気配すら見せない。

それにいい加減イライラしてきたのか声は大きな声を上げて意識をこっちに戻そうとするが、それより先に女性が口を開く。

 

「はぁ……行きたいな〜、学園」

 

『っ……行ったらいいじゃないですか。 私の力を使えば気づかれずに入り込むくらい簡単なんですから』

 

上げようとした大きな声を飲み込んで少しだけ苛立ちを現すような感じでそう言う。

女性はその言葉を聞いて目を輝かせながら、じゃあ、と言い、すぐに何かを思い出したかのように首を横に振る。

 

「やっぱりまだ駄目。 こちらの問題をある程度解決しないことには行っても意味ないし」

 

『ある程度って……もうほとんど片付いてるじゃないですか。 古の魔剣の捜索、『教団』の施設破壊と『代行者』の排除……他にあるっていったらもう一つくらいしか残ってないですよ』

 

「そうなんだけどさ……でも、やっぱり」

 

『はぁ……本当は怖いんじゃないですか? マスターの言う『彼』に会うことが』

 

「あぅ……」

 

図星を指されたかのように声を上げ、女性はしゅんとうな垂れる。

そんな女性の様子をほとんど見たことがないのか、声は少し慌てたように励ましの言葉を掛ける。

だが、その励ましにもほとんど耳を傾けず、自己嫌悪にまで陥ってしまうほど事態は悪化してしまう。

それに声は内心で汗をだらだら流しながら今度は話題を変えるべく話しかける。

 

『そ、それにしてもあそこにはずいぶんと訳アリな方たちばかりが舞い込みますね!?』

 

「ん……まあ、そうだね。 たぶん、『教団』の根回しがあるとかじゃないかな」

 

『かもしれませんね。 それに、あそこにはそれらよりも重要な物が眠っているわけですし……一箇所に集めておくのが返って都合がいいのでしょう』

 

なんとか話題を変えることに成功し、内心でほっとしながら声はそう言う。

そんな声の配慮に女性は気づいているのか小さく微笑みを浮かべながら礼を口にする。

 

「ありがとね……」

 

『な、なんですかいきなり……』

 

「私のこと考えて話題を変えようとしてくれたんでしょ? だから、そのお礼」

 

『べ、別に……いつもハイテンションなマスターが暗い顔をするとこっちまで気落ちしてしまうからそうしただけですよ』

 

「も〜、素直じゃないな〜、ランちゃんは」

 

『そんなことないです。 ていうか、いい加減それやめてくれませんか?』

 

「ん〜……でも、ランドグリスって堅苦しいんだもん。ランちゃんのほうが愛着沸くでしょ?」

 

『そんなことで沸く愛着は欲しくないです』

 

「照れちゃって……可愛いな〜、ランちゃん」

 

『照れてないです。 ていうか人の話を聞いてるんですかあなたは!?』

 

ランドグリスと呼ばれた声は抗議の声を上げるがまるで取り合わないかのようにポンポンと腰にある大太刀を叩く。

どうやら声の発生源はその大太刀らしく、その女性の行為にランドグリスは照れたように、やめてください、と言う。

そしてしばしそんな感じの会話が成された後、女性とランドグリスは先ほどとは打って変わって真面目な声で話し出す。

 

「にしても……賢者の石はほんと悪いことしか起こさないよね」

 

『そうですね。 強すぎる力に目が眩む輩が多いのは今の世の中、仕方ないことですが』

 

「まあ賢者の石みたいな物に限らず、強すぎる力を持った人を利用しようとする奴もまた多い……」

 

『そして、いいように利用や実験を繰り返していらなくなったら……消す。 これだけ上げれば最悪の世の中ですよ。 ――様が見放したのもわかる気がします』

 

「だね。 でも、――がこの世界から去ったのは本当にそれだけが原因なのかな……」

 

『それは……わかりません。 なにせ聞こうにも――様はもういませんから』

 

ランドグリスがそう返すと、女性は、う〜ん、と考えるように顎に手を当てて小さく唸る。

だがそれも数秒、すぐに表情を元に戻して話題を更に変える。

 

「で、あれから『教団』の動きは? もちろん把握してるんでしょ?」

 

『ええ。 今のところは目立った動きはなく、なりを潜めていますね。 ただ、『代行者』に関してはいささか不穏な動きがあるようですが』

 

「不穏な動き? どういった?」

 

『どうもあの学園内に進入して『教団』の鍵となる魔女の血を持つ者を狙っているようです』

 

「それって『教団』の動きじゃないの?」

 

『いえ、それはあくまでその『代行者』個人の私的な目的のためと思われます』

 

「う〜ん、魔女の血を狙って目的を果たす『代行者』……私の知る限りでは一人しか心当たりないかな」

 

『私もおそらくはマスターと同じ考えです。 あの者以外でそんなこと考える輩はいませんし』

 

「だよね〜。 にしてもあいつ、馬鹿なんじゃないの? いくら魔女の血で力を取り戻してもこの世界で王として君臨するのは実質不可能ってこといい加減分かればいいのに」

 

『仕方ありませんよ。 自身の力を信じて疑わない者はそういったことにも気づけないんですから。 マスターだって昔はそうだったでしょう?』

 

「あ〜、確かに……あの時は私も青かったな〜」

 

『その一言で済ませられることではないんですけどね』

 

その言葉に女性は、あははは、と乾いた笑いを浮かべる。

そしてこの話題は避けたいと思ったのか無理矢理話題を元に戻す。

それに気づいていたランドグリスもそれ以上は何も言わずただ会話を続ける。

 

「でも、魔女の血を手に入れられたら厄介なのは確かだね。 少なくともあんな学園程度だったら簡単に吹き飛ぶんじゃない?」

 

『そうですね。 しかも、それはあなたの望むことではないのでしょう?』

 

「うん。 『彼』がいるっていうのが一番の理由だけど、それに加えて彼女の残したあれだけ守ってあげたいかな」

 

『でないと、彼女が報われない……ですか?』

 

「そゆことだね♪」

 

『ならやはり学園に侵入しますか? 待ち伏せて狩ったほうが何かといいでしょう?』

 

「う〜ん……やっぱり行きづらいけど、仕方ないか。でも、その前にまずやることがあるよね」

 

『ええ。 最後に残った問題の解決、ですね。 まあ、これに関してもこのこととは関係ないとは言えませんし』

 

それに女性は小さく頷くと黒衣のポケットの中から何かを取り出す。

それは形から見て銃の弾のような形をしているが、本来は何もないはずの底には紋章のようなものが掘り込まれていた。

女性は取り出したそれを腰に携える大太刀を抜いて刃の根元のほうにある少しごつめの弾倉にはめ込んでいく。

そしてはめ込み終わると大太刀を軽く一振りし、ガチャンという音がたったのを聞いてよしという風に頷く。

 

「今入れたのを含めて、魔弾は後何個だっけ?」

 

『六つですね。 ですが、長距離転移を行うわけですから行き帰りを考えて戦闘に使えるのは実質四つといったところでしょう』

 

「四個か〜……ま、十分かな」

 

『そうですね。 もっとも、『代行者』がいれば話は別ですが……』

 

「も〜、どうしてランちゃんはそう悪い方向に考えるかな〜」

 

『マスターが楽観的過ぎるからです。 それと、ランちゃんって呼ばないでください』

 

ぶー、と文句を言うように女性は頬を膨らませつつ大太刀を地面に突き立てる。

すると大太刀を突き立てた地面には少し大掛かりな魔法陣が展開する。

 

『転移術式構成開始……80……90……構成完了。 座標と目的地名を……』

 

「う〜んと、座標はここからおよそ東に300キロ地点……だったかな?」

 

『はぁ……マスターに聞いた私が馬鹿でした』

 

「む……」

 

『では、私が検索いたします』

 

「それなら最初からそうしてよ!」

 

『……検索完了。 ここより東に284,51キロ地点』

 

「お〜い、無視するな〜」

 

その呼びかけにランドグリスは尚も無視を決め込む。

そして、ゲートを開くと同時にその目的地名を静かに告げる。

 

『目的地は……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ハンター協会本部施設』

 

 


あとがき

 

 

プロローグということで伏線張りまくりです。

【咲】 みたいね。

【葉那】 わけわかんなくならない?

まあ、プロローグだしこれぐらいは大丈夫だ……と思いたい。

【咲&葉那】 はぁ……。

ま、まあそんなわけで始まりましたメンアットトライアングル2。 今回は主に謎の女性と彼女が携えている大太刀、ランドグリスが主となる話でした。

【咲】 この女性っていうのはいつ頃正体を明かす予定なの?

う〜ん、あまりここでいうことじゃないけど、あえて言うならまだまだ先ってことだけだな。

【咲】 そ。 ま、別にいいんだけどね。

いいなら聞くなよ。

【葉那】 あ、そういえば、主人公は四人いるって言ってたけど、この人がその一人なの?

そういうことだな。 かなり分かりやすいが今回の事件で一番関わってくる人物だ。

【咲】 で、もう一人は恭也として、あと二人は?

それも近々分かることだしそう難しくもない。 1の頃から出てる人物だしな。

【咲】 ふ〜ん……じゃ、今回はこの辺で♪

あれ? 実験はやんないのか?

【葉那】 う〜んとね〜、あれは一話に一回っていうのは多いからお姉ちゃんと相談した結果、二話もしくは三話に一回ってことになったの。

そうか……。

【咲】 何ほっとしてるのよ。

いや、するだろ。 お前らのあれでどれだけ被害にあってることか。

【葉那】 そんなに被害出してないよ〜?

どこをどう見たらそうなるんだ?!

【咲】 ま、どの道やり続けることには変わりないから被害は続くけどね。 ということで、繰り返すようだけど今回はこの辺でね♪

【葉那】 また次回会おうね〜♪

あ、俺の台詞取るな!!

【咲】 うっさい!

げばっ!!

【咲&葉那】 それじゃ〜ね〜♪




再び新たな幕が上がる。
美姫 「行き成り登場したのは剣と女の子」
一体、彼女は何者なのか。
美姫 「会話の節々に謎の言葉が見え隠れしてるわね」
いよいよ本編は次回から!



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