メンアットトライアングル!〜対なる心、継承せし二刀の剣〜

 

外伝之弐 闇の者達

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある場所に立つ古びた城。

ウォザーブルクとは違うがどこか似たような感じのある城。

城の周りには何もない。

建物はもちろん、木や草ですら生えてはいない。

そして周りは夜でもないのに何も見えないほど暗い。

これはこのときに限ったことではない。

朝だろうが、昼だろうが、常にそれは変わらない。

それはまるで荒野に聳え立つ闇の城である。

 

「……」

 

城の中の奥には玉座がある。

その部屋も外ほどではないが、暗い。

それは明かりの一つも灯されてはいないから。

 

「……」

 

玉座の周りには数にして六人の人影がある。

そして玉座の前には少女の姿があった。

その光景はまるで玉座に座る王とその家来たちといった風である。

だが、玉座には誰も座ってはいない。

少女が見つめる玉座には誰も座ってはいない。

 

「―――様」

 

誰かが少女の名を呼ぶ。

少女は誰が自分を呼んだのかが解るかのようにそちらを向く。

 

「何……?」

 

「王が彼の地へと向かいました」

 

「そう……目覚めが近いのね」

 

「はい」

 

少女はその返事に笑みを浮かべる。

嬉しそうな、とても喜びに満ちた笑み。

 

「待ち望んだ日はもうすぐ……来る」

 

「はい……ですが、いいのですか? 彼の者を放置しても」

 

「構わないわ。 闇に魅入られた時点であれの運命は決まってるもの」

 

「わかりました」

 

「そもそも人間が魔法の真髄を極めるのは不可能なのよ。 それがたとえ賢者の石を用いたとしても……」

 

少女は浮かべていた笑みから一転し、つまらなそうな表情を浮かべる。

 

「あれとて所詮は物にすぎない。 物にはいずれ終わりが来る。 故に永遠の命なんて手には入らないのよ、あれでは」

 

「はい」

 

「それを理解できない時点で魔法の真髄を極めるなどできるわけがない」

 

まるで知っているかのように少女は言う。

それも当然だ。

少女は知っているのだから。

 

「魔法を極めし者が最後に行き着くのは……時を操る魔法」

 

「時……ですか?」

 

声は知らなかったかのように少女の言葉を繰り返す。

それに少女は嘲笑うでもなく馬鹿にするでもなくただ言葉を続ける。

 

「過去へも、未来へも……そして次元さえも超えることのできる究極の魔法。 それが人間の言う魔法の真髄」

 

「そのような魔法、―――様は扱えるのですか?」

 

「無理よ。 いえ、使えなくはないけど……私が使えば、世界が壊れかねないから」

 

「それは―――様の望むことではないのですか?」

 

「ええ。別に世界を壊したいわけじゃない。 かといって世界を征服したいわけでもない。 私はただ……」

 

少女の視線は玉座へと向かう。

その視線だけで少女が何を言いたいのかが解る。

 

「左様でございますか」

 

「ええ。 それで……他に報告はある?」

 

「いえ、ございません」

 

「そう。 なら下がっていいわ」

 

「はい」

 

それ以降、声は聞こえなくなった。

少女はその後、何をするでもなくただ玉座を見ている。

先ほど浮かべていた笑みをまた浮かべながら。

 

「真の闇が目覚めれば……やっとあなたと一つになれる」

 

待ち遠しい。

それが滲み出るように自らを抱きしめながら少女は呟く。

 

「狂って、狂って、狂い、壊れても……狂う」

 

肩を震わせる。

顔にはぞっとするような笑みを浮かべている。

この姿を見れば、誰もがこの少女に対してこう思うだろう。

狂っている……と。

 

「永遠に私と踊り狂いましょう……恭也」

 

呟きと同時に抑えきれなくなったかのように笑う。

城全体に響き渡るように、笑う。

狂いし姫君はそのままずっと笑い続けていた……。

 

 


あとがき

 

 

ほとんどオリジナルで構成される外伝第二弾でした〜。

【咲】 しかも謎だらけね。

そういうのを意識して書いてるからね。

【咲】 さらに短いし。

それはしょうがないよ。

【咲】 何がよ?

あんまり長いと謎をそのまま明かしちゃいそうだし……。

【咲】 腕がない証拠ね。

うぅ……。

【咲】 で、外伝はこれで最後なの?

さあね。 書けたら書くかもしれんから最後とはここでは言えないかな。

【咲】 でも本編がもうそろそろ終わるじゃない。 終わってからだと書けないでしょ。

それについてはまた今度だね。 ということで今回はこの辺で〜。

【咲】 逃げたわね……と、またね〜♪




佳境に入った本編の前に、これまた謎となる外伝。
美姫 「全てが明らかになる時、そこには何が」
うわー、楽しみでもあり、怖くもある。
一体、何が待っているのだろうか。
美姫 「本編の方も待っていますね」
待ってます。



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