メンアットトライアングル!〜対なる心、継承せし二刀の剣〜

 

【第二部】外伝之参 すべてが始まったとき

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日の夜、僕は自分の研究室の椅子に凭れて物思いに耽っていた。

それは研究のことでもなく、最近起こった魔剣の騒動に関してのことでもない。

僕がそのとき考えていたのは……スレイとレイ、この二人のこと。

 

「はぁ……二人を見てると思い出してしまうよ…君の事を」

 

どうしてあの二人はあそこまで似ているのだろうか。

君の時折見せた冷静な部分はスレイ、僕の前だけで見せてくれた無邪気な笑顔はレイ。

君が二つに分かれてしまったかのように、二人は君に似すぎている。

ほんとに…二人を見ていると思い出してしまうよ。

君と初めて会ったときのことを、君が僕の前からいなくなった日のことを……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ……今にして思えば、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれが僕の運命の始まりだったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―過去回想―

 

 

僕はそのとき何の当てもなく研究施設の周りに広がる山の中を散策していた。

本当に何か目的があったわけでもなく、如いて言えば研究で疲れたための気分転換。

静かな吹く風を感じつつ木々に囲まれる山中を歩きながら自然の空気を吸うと疲れが少し抜ける気がする。

できれば毎日でも散歩したいけど研究が忙しいからあまりできることじゃない。

今も忙しい中で何とか時間を作って散歩しているのだからあまり時間があるわけじゃない。

 

「さて……そろそろ戻らないと」

 

ある程度歩いてから僕は施設へと戻るために来た道を戻ろうとした。

そのときだった。

 

「え……」

 

振り返った僕の前に眩くも大きな光がゆっくりと舞い降りてきた。

それに驚いて呆然とする僕の前で光は完全に地面に降り立ち、そして消える。

光が消えたそこにはまたも驚くことに、一人の女性が立っていた。

 

「……」

 

その女性は閉じていた目を静かに開けると僕に視線を向けてくる。

その視線は驚いているようで、少しだけ警戒しているような、そんな視線。

そんな視線を向けられた僕は不謹慎と思いつつも、綺麗な人だな、と思ってしまった。

 

「あなたは……?」

 

女性のその言葉に僕は我に返る。

そして言葉に対して答えを返そうとしたとき、女性は力を失ったかのように倒れる。

それを僕は慌てて受け止めて、女性の顔を間近で見る。

先ほども思ったとおり綺麗だな、と思ったがそれ以上に女性に顔色は目に見えて悪かった。

だから僕は少し考えた後、女性を腕に抱えて施設へと急いで戻っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その女性を抱えて施設に戻った僕は開いている部屋に向かい女性をベッドに寝かせる。

そしてすぐにタオルと水の入った洗面器を用意し、うっすらと浮かぶ女性の汗を拭って濡らしたタオルを絞って額におく。

ただ顔色が少し悪いだけだからおそらくは疲労から来るものだと思い、タオルを濡らして絞り再度額に置く以外のことは何もしなかった。

そうしてしばらくし、徐々に女性の顔色は良くなったことに安著の溜め息をつき、後は研究員の誰かに任せて研究に戻るため部屋を出ようとする。

でも、部屋を出ようとしたとき、女性が目を覚ましてしまったことで部屋を出るということはできなくなった。

 

「ん……」

 

「気が付かれましたか?」

 

「え、あ……あなたは、先ほどの」

 

状況が理解できなかった上に突然声を掛けられたことに女性は少しオロオロした後、僕を見てそう呟く。

最初の警戒していたときとは違い、慌てている様子を見て可愛いなと内心で思いつつ僕はとりあえず現状の説明をした。

すると女性は話を聞いているうちに落ち着きを取り戻したのか、少しだけ微笑んで僕にお礼を言ってきた。

 

「ありがとうございます……えっと」

 

「あ、僕はラウエル、ラウエル・バルセルトです。 それとお礼は言わなくていいですよ。 当然のことをしただけですから」

 

僕がそういって微笑を浮かべると女性は少しきょとんとした後、もう一度微笑んだ。

その微笑みにやっぱり綺麗な人だと思い、思わず僕は見惚れてしまった。

見惚れ固まった僕を見て女性は小首を傾げて不思議そうに見てくる。

 

「あの……どうかなさいましたか?」

 

「あ、いえ……えっと、そうだ! お腹空いてませんか!? そうなら僕がすぐに何か用意してきますけど」

 

「え……でも、そこまでご迷惑を掛けるわけには」

 

いきません、と言おうとした女性の言葉はきゅ〜という可愛らしい音で遮られた。

何の音だ、と僕が思っていると女性はお腹を押さえて頬を赤く染めていた。

それに僕は、そういうことか、と思って苦笑し食べ物を持ってくるために一度部屋を出るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

簡単な食事を用意して僕は部屋へと戻り、女性へと差し出す。

食事を差し出された女性は少し申し訳なさそうな顔をしていたけど、食欲のほうが勝ったのかそれを受け取って食べ始める。

女性がゆっくりと食事を取っているのを僕は椅子に座りながらただ見ているだけだった。

 

「あの……」

 

「はい?」

 

「そんなに見られると…その……恥ずかしいのですけど」

 

「あ、す、すみません!」

 

頬を染めて言う女性に僕は慌てて謝り視線を逸らす。

それに女性に少しだけ苦笑して食事の手を再度動かし始める。

その後、女性が食事を終えたのを見て僕は食器などを片付けて部屋を出る。

そして片付け終わった後、再度部屋へと戻って椅子へと座り話を再開した。

 

「それでいろいろと尋ねたいことがあるんですが……えっと」

 

「あ、すみません、まだ名乗っていませんでしたね。 私はミーミルと言います」

 

「ミーミルさん……ですか」

 

そのとき僕はその名前をどこか聞いたことがあるような気がした。

でも、すぐに気のせいかなと思い、その疑問を頭の隅に追いやる。

そして他の疑問を尋ねるために僕は再度口を開いた。

 

「ではミーミルさん、あなたはどうしてあのような場所に?」

 

「えっと……」

 

その質問にミーミルさんは困ったような顔をする。

答えづらいことなのかな、とその表情から僕は読み取り別の疑問を口にする。

しかしそれにもミーミルさんは困ったように口ごもるだけだった。

それに僕自身も少しだけ困ってしまったけど、別に急いで聞くことでもなかったから質問をやめて別のことを口にした。

 

「つかぬ事を聞くようですが、ミーミルさんはこの後どうなさるんですか?」

 

「え……?」

 

「あ、すみません、質問が曖昧でした。 この後、家に帰られたりするんですかということだったんですが」

 

「あ、そういうことですか……」

 

納得したような顔をした後、ミーミルさんはまたもどこか困ったような顔をする。

僕はそれにどうしたのかと思い首を傾げて尋ねる。

 

「どうかしましたか?」

 

「あ、いえ……その、申し上げにくいのですけど……家、ないんです」

 

「え……」

 

「……」

 

本当に言いにくそうな顔でそう言ってミーミルさんは俯いてしまう。

僕はミーミルさんの言ったことをすぐに理解して、悪いことを聞いたなと思ってすぐに頭を下げ謝罪をする。

そんな僕にミーミルさんは、気にしないでください、と慌てたような様子で言った。

気にしないでください、と言われてもやはり罪悪感というのがあった。

それに家がないと言っている人を追い出すのも良しとは思えない僕は頭を上げそれを提案することにした。

 

「じゃあ、ミーミルさんがよろしければ、しばらくの間ここに住みませんか?」

 

「え……そ、それはさすがにラウエルさんのご迷惑になります!」

 

「そんなことありませんよ。 幸い、といっていいのかはわかりませんが、研究員の人もこの施設には少ないので部屋が余ってますし」

 

「で、でも……なら、私も何かお手伝いをさせてください。 何もしないでただ居座るだけというのはその……申し訳ないので」

 

「う〜ん、僕は別に構わないんですけど……じゃあ、こうしましょう。 研究の合間に取る休憩で僕の話し相手になってもらえませんか? なにぶん研究員が少ない上に誰もが忙しくて話す相手がいないので」

 

「そ、そんなことでいいのですか? 他にもっと言ってもらっても」

 

「いえいえ、それだけで十分ですよ」

 

微笑を浮かべて僕がそう言うとミーミルさんは少し戸惑いがちな表情ではあったけど小さく頷いて承諾した。

こうして、ミーミルさんはこの研究施設に住み込むことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミーミルさんが住み込むようになって、施設にはどこか明るさが灯ったような感じがした。

当初は僕の話し相手というだけだったのだけど、ミーミルさんはさすがに悪いと思ったのか積極的に他の人の手伝いや雑務などもしていた。

そんなことをしてもらっては申し訳ないと思って止めようとしたが、それらをするときのミーミルさんのどこか嬉しそうな表情を見ると止められなかった。

僕と話をするときも、僕や研究員の人たちの手伝いをするときも、施設の掃除やらをするときも、ミーミルさんは笑顔を絶やさなかった。

そんなミーミルさんの笑顔に釣られるように研究に没頭しがちで暗い感じのあった僕たちも自然と明るさが出てきた。

そんなある日、もう日課というべきものになった休憩でのミーミルさんとの談笑の場でミーミルさんはふと笑顔を崩して真剣な表情で僕に尋ねてきた。

 

「ラウエルさんは何のために魔法について研究しようと思ったのですか?」

 

「何のため……ですか。 う〜ん…少し恥ずかしいのであまり言いたくはないんですが」

 

実際に僕が考えていることは所詮夢物語のようなことでしかない。

だから僕はあまり言いたくはなかったのだけど、ミーミルさんの真剣な表情に折れて照れ隠しに頬を掻きつつ話すことにした。

僕がなんで魔法について研究をしようとしたのか、研究した先に何を望んでいるのかを。

 

「魔法を、もっと別の使い方で役立てる方法を探すためなんですよ」

 

「別の使い方で……役立てる?」

 

「はい。ほら、魔法と聞くと誰もが戦いを想像してしまうじゃないですか。 まあ、攻撃系の魔法が多いのでしょうがないんでしょうけど」

 

「……」

 

「でも魔法だっていろいろな種類があります。 治癒系の魔法や空間転移系の魔法、他にもいろいろありますが、それを一括りしても戦いしか想像できない今というのがとても悲しいものに思えてしまって。 だから僕はもっと魔法を戦い以外の別の使い方で人の役に立てる方法を探すために研究しているんですよ」

 

「もし……もしそれが見つかったら、ラウエルさんはどうなさるのですか?」

 

「そうですね……それを人々の間に広めること、でしょうか。 最初は少しでも、少しずつゆっくりと広めていって……最終的には、人々の中での魔法というものの認識を変えてみせる。 それが僕の魔法を研究する理由と僕自身が願う夢ですね」

 

「そう……ですか」

 

僕が説明し終わると、ミーミルさんは小さく呟いて少しだけ俯く。

そしてすぐに顔を上げてそっと優しげな微笑みを浮かべてこう言った。

 

「ラウエルさんの夢……叶うといいですね」

 

なぜだろうか。

今まで他の人にも言われてきた言葉だったのに、ミーミルさんに言われると嬉しさが込み上げてくる。

今までは言われてきてこんな気持ちになったことはなかったから、僕は正直戸惑った。

でも、すぐにその答えは見つかった。

僕の中で、ミーミルさんという存在がとても大きいものになっていたんだ。

それが恋なのか、それとも別の何かなのか、それはまだわからない。

でも、これだけは分かる。

僕は、僕が思っている以上に、ミーミルさんを必要としているということを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミーミルさんが住み込んでからの日々は楽しく、とても穏やかに過ぎていった。

日々を過ごす中で、僕があの時感じたものが恋だったのだと気づくのにそう時間は掛からなかった。

でも、気づいたからといって僕は告白する勇気を持てなかった。

迷惑になるのではないか、拒まれるのではないか、そういった考えが頭の中で渦を巻いてしまい足が竦んでしまう。

だから、この気持ちを伝えられないまま、知らぬうちにミーミルさんを避けるような仕草を取るようになってしまった。

それをミーミルさんも感じ取ったみたいで時折見せる悲しそうな表情を見ると僕は胸が痛くなる。

そんな痛みを忙しさで誤魔化すように僕は研究に没頭し続けた。

そして、そんな日々が続いたある日、その日の研究を切り上げて休むために戻った僕をミーミルさんは部屋の前で待っていた。

ミーミルさんは部屋に僕が戻ってきたのを見て、少しだけ気まずそうな顔をしつつも声を掛けてきた。

 

「あの、ラウエルさん……少し、よろしいですか?」

 

「……すみません、疲れているので用事なら明日にしてもらえますか」

 

僕はそっけない風を装ってミーミルさんの横を通り部屋へ入ろうとする。

でも、ミーミルさんは僕の言葉に引き下がることなく部屋に入ろうとした僕の袖を掴む。

 

「少し……少しだけ、ですから」

 

そう乞うように言うミーミルさんの目からは涙がうっすらと浮かんでいた。

それを見て僕は若干驚くと共に泣かせてしまったことへの申し訳なさからか話を聞くことを承諾の意を返した。

 

「わかりました……じゃあ、ここではなんですからとりあえず部屋に入ってください」

 

僕がそう言うとミーミルさんはまだ涙を浮かべつつも頷いて僕の後に続いて部屋に入る。

部屋に入った僕は椅子が一つしかないため僕が椅子、ミーミルさんがベッド、というふうに腰掛けて向かい合う。

そして向かい合ってからしばらく沈黙が流れて、ミーミルさんは俯いていた顔を上げて僕に尋ねてくる。

 

「単刀直入に聞きます……どうして私を避けるんですか?」

 

当然だがやっぱり話というのはそれに関してだった。

でも、分かっていたからといって答えられるわけじゃない。

だからか、僕は何も言えずに俯いてしまった。

 

「やっぱり私はここにいるのは……迷惑でしたか?」

 

「そ、そんなことはありません!」

 

俯いていた顔を上げて思わず叫ぶように僕は否定する。

そのとき、顔を上げた僕の目に映ったのはやはり彼女の泣いている顔だった。

 

「だったら……なんでですか? なんで、避けるんですか?」

 

「それは……」

 

「教えてください。 不手際があったのなら謝りますから……気に入らない部分があったのなら直すように努力しますから」

 

そう言ってミーミルさんは再度俯いてしまう。

そして膝に置かれている手で服をぎゅっと握るようにして涙を流している。

 

「あなたに避けられるのは……もう、耐えられないんです」

 

流す涙は止まることなく彼女の手の上に落ちる。

僕は僕の行動に彼女がそれほどまで傷ついていたという事実を目の当たりにして自分を恥じる。

そして僕は今更だけど、彼女の悲しむ顔を見たくなくて椅子から立ち上がりそっと抱きしめた。

僕のその行動にミーミルさんは少しだけ驚いた表情をしたけど、拒むことはなかった。

そのまましばらく、ミーミルさんが落ち着いた頃に僕はミーミルさんから体を離して自分の気持ちを告げた。

僕の告白を聞いたミーミルさんはやっぱり驚いた顔をしてたけど、すぐに微笑んで小さな声で返してくれた。

 

「私も……ラウエルさんが、好きです」

 

そのときのミーミルさんの微笑みを、僕は生涯忘れることはないとさえ思った。

そう思ってしまうほど、綺麗な笑顔だったのだから…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから数年の月日が経った。

気持ちを伝え合った僕らは半年後に結婚し、さらに一年後には二人の子供が僕らの間に生まれた。

孕んだ子供が双子だったことにはちょっと驚いたけど、無事生まれてきたことには喜びを隠せなかった。

そして子供が出来てから数年、僕は研究をしつつも愛する妻と子供たちとの幸せな日々を過ごしていた。

でも、そんな幸せな日々は長くは続かなかった。

 

「ミーミル? ……あれ、おかしいな。 どこに行ったんだろ」

 

僕は研究に一段落付け、ミーミルを探すために施設内を歩いて回っていた。

最近少しミーミルは元気がなかったから、気分転換に子供たちも連れて街にでも出かけようと思ったからだ。

でも、いくら探そうとも、ミーミルの姿は見つかることはなかった。

 

「どうかなさったのですか、お父様」

 

「どうしたの、お父さん」

 

「ん? ああ、ちょっとお母さんを探しててね。 二人とも、どこかで見かけなかったかい?」

 

「お母様ですか? いえ、私は見かけませんでした」

 

「私も見てないよ〜」

 

「そっか。 う〜ん……ほんとにどこ行ったんだろ」

 

腕を組んで悩みつつ僕らの子供である二人と別れて研究室へと戻った。

もしかしたら行き違いになっただけでそこにいるのかもという淡い期待を抱いてたんだけど、やっぱりそこにもミーミルの姿はない。

それに少しだけ落胆の溜め息をつき、ふと机の上に置いてある便箋に目がいく。

 

「あれ? こんなもの机の上に置いたかな……?」

 

僕はその便箋に首を傾げつつ手にとって見る。

その便箋には表に何も書かれていなかったため裏を返してみた。

するとそこには驚くべき名前が書かれていた。

 

「ミーミル……から?」

 

僕は書いてあったその名前に嫌な予感を感じて便箋の中身を取り出す。

そして中に入っていた手紙の内容に僕は愕然とし地面に膝をついた。

 

「 こんな手紙でしか伝えられない臆病な私をどうか許してください。

  本当なら面と向かって伝えるべきなのでしょうけど、あなたを前にするときっと私はあなたの元を離れたくなくなってしまう。

  でもそれは私には許されないことだから、私がいることであなたをきっと不幸にしてしまうから。

  だから、私はあなたの元を去ります。

  できれば、私がいなくても悲しまずに私のことなどは忘れて、子供たちと幸せに過ごしてください。

  それが私の願いであると共に、私からあなたへの最後のわがままです。

  最後になりますが、あなたと過ごした日々はとても幸せでした。

  もう会えることはないですけど、あなたのことはこれからもずっと愛していますよ。

  願わくば、あなたと子供たちがいつまでも元気でありますように。        ミーミル」

    

その内容が信じられず僕は何度も何度も読み返したけれど、内容はまったく変わらない。

だから、僕はすぐに立ち上がってミーミルを探すために施設の外へと駆け出した。

でも、どんなに探しても……ミーミルが見つかることはなかった。

 

 

 

 

 

 

―過去回想終了―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女と会って、彼女と過ごして、彼女と別たれたあのときを思い出して僕は少しだけ涙を流した。

そして、すぐに涙を拭って立ち上がり、研究室を出てスレイとレイのところに向かった。

二人の寝室に入ると、そこは電気が消されていてベッドの上からは二人の寝息が聞こえてきた。

僕は寝息を立てる二人を起こさぬようにそっと近づき、その寝顔を覗き見る。

穏やかな寝顔をする二人はやっぱり彼女のことを思い出す。

 

「本当に……よく似てるな」

 

小さくそう呟いた僕にスレイとレイは反応するかのように寝返りを打つ。

それに僕は起こしてしまったかなと思ったけど、二人はまた穏やかな寝息を立て始めた。

そのことに僕はほっと息をついて腰を上げ、部屋の扉へと歩いていく。

そして部屋を出る手前で僕は立ち止まり、寝ている二人のほうへ振り向いて呟く。

 

「おやすみ…スレイ、レイ……いや――」

 

そこで小さく首を振って、僕は再度呟くように言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――、―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人の、本当の名前を……。

 

 


あとがき

 

 

はい、外伝之参は二刀の魔剣が生まれる前のラウエルの過去でした〜。

【咲】 ずいぶんと書くのに時間が掛かったわね。

まあ、ね。 構想とかは出来てたんだけど、いろいろと改変していくうちに。

【咲】 遅くなったと?

その通り!

【咲】 威張って言うな!!

ぶへっ!!

【咲】 まったく……で、外伝はこれで最後なわけ?

まあそうだね。 書こうと思えば書けるけど、あまり外伝を増やしてもな。

【咲】 ふ〜ん……あ、でも魔剣が生まれた経緯とかがこれじゃあわからないんじゃない?

それに関しては一本に纏めるほどでもないから本編で出す予定。

【咲】 そ。 なら、今度は本編の執筆、いってみよ〜♪

す、少し休ませてけろ……。

【咲】 だ〜め。 じゃ、今回はこの辺でね♪

また本編のほうで会いましょう!!




という事は、ラウエルの目的って…。
美姫 「それに、スレイやレイも…」
おおう、外伝で分かる意外な事実。
美姫 「真相は本編で語られるのかしら」
いやいや、とっても楽しみです。
美姫 「本編も楽しみにしてますね〜」



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