両手でさえ扱うのが難しいほどの巨大な剣。

それを二本手に持ち斬りかかってくる恭也。

斬りつける剣速は美由希と同等かそれ以上。

だがいくら速かろうとその剣を受けることはできない。

そんなことをすれば威力を殺しきれず吹き飛ばされるのは目に見えているからだ。

だから受けることなく避けることに専念する、いや、専念せざるを得ない。

 

「くっ」

 

剣速が速い上に絶え間なく続く斬撃は美由希に反撃の隙を与えない。

避ける美由希を通り過ぎ空を斬る時の音ですら凄まじいものがある。

直撃すれば確実は死は免れない上に受けただけでもただではすまないだろう。

 

「オォォォ!!」

 

雄叫びのような声を上げながら連撃を繰り出す。

右がくれば次は左、左を振れば次は右。

その中に時折フェイントも混ぜながら不規則な軌道の斬撃を絶えず繰り出してくる。

その動きは美由希もよく知る恭也の戦い方そのもの。

やはりこの人は恭也なのだろうか、とさえ思わせる動きなのだ。

 

(でも、違う。 動きや戦い方は恭ちゃんと同じでも、恭ちゃんはそんな目をする人じゃない!!)

 

人を憎み、睨み殺すのではないかというほどの憎悪の目。

恭也を知っている者ならば誰もが美由希と同じことを思うだろう。

こんな目をする人が恭也であるわけない、と。

その考えに至ったと同時に今まで避けるだけだった美由希は自分から仕掛ける。

 

御神流奥義之伍 花菱

 

繰り出される無数斬撃は恭也を襲う。

だが、恭也はそのすべての軌道を読んでいるかのように受け避ける。

そして奥義の切れ目に恭也は剣を振るう。

それを美由希は避けるが奥義の切れ目ということもあり若干の隙が生まれる。

 

御神流奥義之弐 虎乱

 

恭也から繰り出されるそれは御神の奥義。

もしかしたら、とは思っていたが御神の奥義を使ってきたことに若干の驚きを浮かべる。

だが、その驚きをすぐに消し美由希はそのままでは回避不能のそれを避けるために本日四回目のそれに入る。

 

御神流奥義之歩法 神速

 

すでに三度も使っていることから体が疲労と痛みを訴える。

だが、それを耐えながら美由希はモノクロの中を動き、虎乱を避けるように後方へと下がる。

 

「はぁ…はぁ……」

 

神速が解け、肩で息をする美由希。

体は節々が悲鳴を上げており、もう立っているのもやっとの状態。

その状態にも関わらず、美由希は戦う意志を見せるように構える。

 

「その状態で尚戦うというのか……愚かな」

 

美由希の今の状態がすべて分かっているかのようにそう言う。

そして同時に二刀の剣を背中に隠すように持つ。

その構えに美由希は驚きと同時に焦りが生じる。

その構えは恭也が最も得意としていた奥義の構え。

 

御神流奥義之六 薙旋 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メンアットトライアングル!〜対なる心、継承せし二刀の剣〜

 

【第二部】第十話 目覚める心

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高速四連撃の斬撃が美由希を襲う。

焦りつつも一撃目、二撃目となんとか避ける。

だが、三撃目が美由希の剣、スレイを弾き飛ばし、四撃目が美由希自身を襲う。

 

『主様っ!!』

 

「っ!」

 

迫りくる剣を前に美由希はそれを使わざるを得ない。

五度目であることから体が壊れるかもしれない。

だが、使わなければ確実にその剣を見に受け死ぬこととなる。

だから、体が壊れるかもしれないがそれを使わざるを得ないのだ。

 

御神流奥義之歩法 神速

 

モノクロの世界の中、斬撃を避けるために美由希は動く。

体が先ほどより強い悲鳴を上げ、美由希の顔は痛みに歪む。

痛みに耐えながら美由希は四撃目を避け、弾き飛ばされたスレイの元へ向かう。

スレイの元にたどり着いたとき神速は解け、強い脱力感と美由希を襲う。

 

「はぁ…はぁ…はぁ」

 

いつ倒れてもおかしくない状態。

その状態にも関わらず、美由希は脱力感が来る体に鞭を打ちながらスレイを拾い上げる。

そして構える・・・・・まだ戦うことができるということを示すように。

 

『だ、大丈夫ですか、主様! 待っていてください…今癒しを』

 

光に属する魔剣であるスレイは当然治癒魔法も使える。

治癒系の魔法は白魔法であるが、属性的に言えば光に属している魔法。

だから、スレイならばだいたいの治癒魔法は使えるのだが……。

 

『え……治癒魔法が…使えない?』

 

治癒魔法を行使することができない。

それがなぜかわからないスレイは内心で困惑しつつ考える。

だが、次々となぜかの仮説は立つが仮説だけで解決には至らない。

わからぬまま困惑し続けるスレイに思わぬところから答えが返ってくる。

 

「ここは光の存在を許さぬ闇の世界。 この世界で貴様が光の魔法を行使できないのは当然のことだ」

 

『空間魔法……そういうこと、ですか』

 

恭也の言うことを理解したスレイは苦々しく呟く。

 

「はぁ…はぁ……空間、魔法?」

 

『魔力を練り上げて独自の空間を作り上げる魔法です。 おそらく、あの者の作り上げたのは光のマナを対象とした遮断系の空間……』

 

どんな魔法を使うにしても必要となるものがある。

それは技術であったり、魔力であったりするのだが、ある物がなければそれらがあっても魔法が使えない。

そのある物というのは、世界中に存在するマナ。

マナがなければ如何に魔力があろうと、如何に技術があろうと魔法を練り上げることは出来ない。

今、恭也が作り上げたこの空間はその内の光のマナを遮断する闇の空間。

だからスレイはこの空間にいる限り、治癒魔法は愚か魔法自体使うことができない。

 

『これを見越して……空間を張ったということですかっ』

 

「そうだ」

 

短く返しながら恭也は剣を構え、ゆっくりと近づいていく。

近づいてくる恭也に荒く息をつきながら美由希は身構える。

それを見てか、それともまた別の理由か。

恭也は美由希と若干の距離を空けた位置で立ち止まる。

 

「その満身創痍の状態ではもう満足に戦えまい。諦めよ」

 

「私が、諦めたら…退くと……いうのなら…」

 

「それはない。 貴様以外の全員にはここで死んでもらう」

 

「なら…諦めません」

 

美由希の答えに失望したかのように溜め息をつく。

それと同時に美由希との間合いを瞬時につめ蹴りを放つ。

その動きに反応できなかった美由希は甘んじてその蹴りを身に受け横に吹き飛ぶ。

 

「この程度の攻撃に反応できない貴様に何ができる。 何も出来はしない…おとなしく諦め、こやつらが死ぬのを見ているがいい」

 

「けほっ…諦め、ない」

 

蹴りを受けた痛みと神速を多く使用したための痛みと脱力感に耐えながら、尚も美由希は立ち上がる。

だが、立ち上がると同時にまた距離をつめられ蹴りを受ける。

 

「なぜ諦めない。 自身の命が惜しくないのか」

 

「それ…よりも、皆の命のほうが……大事、だから」

 

「愚かな……他人の命のために自身の命を捨てると言うか」

 

「あなたに、とって…愚かなこと、でも……私は皆を、絶対に守る!」

 

尚も立ち上がり斬りかかってくる美由希に恭也は落胆の表情を見せ剣を受ける。

受けると同時に美由希の腹に剣の柄を叩きつける。

 

「かはっ」

 

その一撃に若干後方に下がる美由希に追い討ちをかけるように蹴りを放ち吹き飛ばす。

先ほどよりも威力の込められた蹴りに美由希の肋骨は何本か折れ、吹き飛ばされた位置で倒れたまま動かなくなる。

 

『主様!! しっかりしてください!! 主様!!』

 

気を失ったのかスレイの声にも反応しない。

それを恭也は一瞥しミラとレイのところへと歩み寄っていく。

 

「こ、こないで!!」

 

恐怖からか、声を若干震わせながら魔法を放つ。

だが、その魔法は恭也に届くことなく黙散する。

 

「無駄だ……闇の魔法は我には効かん」

 

その言葉に抗うようにレイは魔法を放ち続ける。

そしてその魔法はやはり届くことなく消える。

歩み続け、レイの近くまで来た恭也は美由希と同じようにレイを蹴り飛ばす。

 

「あぐっ」

 

かなりの距離をレイが自らの蹴りで吹き飛んだのを見ると恭也は横たわるミラに剣を振り上げる。

 

「いや……やめてぇぇぇ!!」

 

蹴りの痛みに耐えながらレイはすぐに立ち上がりミラへと駆け寄る。

だが、そのレイの手は届かず、恭也はミラへと剣を振り下ろす。

 

「いやあああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

剣が振り下ろされる瞬間、レイは目の前の光景を拒絶するように目を閉じる。

そしてそれと同時にレイの悲鳴が響き渡る。

誰もが、ミラが殺される、と思った瞬間だった。

ザシュッと生々しい音が聞こえ、レイはゆっくりと目を開ける。

信じたくない目の前の惨劇を見るために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、そこにあったのはレイの思い描いたものとは異なる現実だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「が、がぁぁぁぁぁぁ!!」

 

音を立て、斬られたのはミラの体ではなく、恭也の振り下ろした腕。

剣を握ったままその腕はゴトッと音を立て地面へと落ちる。

先ほどとは違う意味で目の前の光景がレイには信じられなかった。

 

「……殺らせん」

 

恭也の腕を斬り落とした人物は低い声でそう言う。

片手にはその人物が腕を斬り落とすのに使ったであろう剣が握られていた。

その剣はレイも、スレイも、美由希もよく知る剣。

そしてミラがいつも大事に持っている剣。

その剣の名は……八景。

 

「なぜ…なぜだ!」

 

腕を切り落とされた恭也はその人物へと叫ぶ。

その人物はそれに答えることなく立ち上がり剣を構える。

剣を構えるその容姿は剣を構えるものとしてはとても不釣合いの容姿。

地面につくのではと思うほどの青の長髪。

身に纏うは、ゴスロリと呼ばれる黒い服。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、その人物とは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミラだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だからこそか、レイは目の前の光景が信じられない。

ミラは八景を持っているだけでほとんど扱うことが出来ない。

だが、今のミラの構えは剣が使えない者の構えではない。

明らかに熟練した剣士の構え。

そしてもう一つおかしな点があった。

それは先ほどのミラの話し方と身に纏う雰囲気。

今までミラを見てきたレイからしてもミラがあんな口調で話すところは見たことがない。

そしてなぜかはわからないが、剣を構えるミラからはどことなく暖かさと言うものが感じられる。

 

「え……」

 

レイはそれらを知っていた。

その構えを、その話し方を、その雰囲気を。

そのすべてがある人に酷似している。

だが、もしかして、と言う考えからは出ることはない。

しかし、剣を構えたミラの口から放たれた言葉がレイに確証を与えることとなった。

それはレイの知るその人が一番に考えていたこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミラを……傷つけさせはせん!!」

 

 


あとがき

 

 

栄養ドリンクの名を借りた産業廃棄物のせいで体がぼろぼろです。

【咲】 ふむふむ。疲労は回復するが他の部分にがたが来る、と。

いや、疲労も回復してないから。

【咲】 またまた、冗談言っちゃって♪

冗談じゃねえよ。

【咲】 ま、それはさておき。

置くな!!

【咲】 うっさい。

はべっ!!

【咲】 ふぅ……実験の結果、目薬は浩には効かないということがわかったわけだけど。

さ、さすがは浩さんだな。

【咲】 でも、同時に辛いものは苦手、という有力情報を得たわ。

そっちで攻めようってか?

【咲】 まあね。 問題はどうやって口にさせるか、だけど。

無理じゃないか? 苦手なものが入ってるとわかったら絶対に口にしないだろうし。

【咲】 なら美姫さんのお力を借りて無理矢理……。

いや、さすがにそれは……。

【咲】 よし、そうしましょう。

人の話聞けよ。

【咲】 じゃ、美姫さんに次の試作品が出来ましたらお願いしますね〜♪って手紙書かなきゃ。

じゃあ俺は浩さんに試作品が届いたら逃げることをお勧めいたしますって手紙を…。

【咲】 余計なことしない♪

ひぎゃ!!

【咲】 じゃ、今回はこの辺でね♪

浩さん、試作品が届いたら…(カリカリ

【咲】 えい♪

へぶしっ!!

【咲】 まったね〜♪




今回はさしもの美由希も連戦では辛いって感じかな。
しかも、光の魔法による援護まで封じられて。
それでも立ち塞がる美由希には感動だよ。
しかし、遂に恭也の剣がミラへと。
もう駄目かなと思ったところで! うおー! 良い所で続くですか!?
無茶苦茶気になる!
でも我慢して次回を待ちます、待つ時、待てば!
そんな訳で、次回も楽しみにしてますね! それじゃあ、また!
美姫 「って、一人で何をやってたのかな〜?」
ぎゃおーーす!! 食べん、食べんぞー!
美姫 「何のこと?」
白を切るか! 俺には強い味方がいるんだ! お前たちの企みなどお見通しよ!
美姫 「ふーん。咲ちゃんに報告しないとね。内通者あり」
って、いつの間にそんな仲良し♪ って感じの呼び方に!?
美姫 「とりあえず、食べて」
嫌じゃぼけ−! さらば!
美姫 「ご主人様、食べてくださらないのですか。そうですよね、私の作った物なんて、とてもお口には合わないでしょうし。………クスン」
いただきま〜す。
美姫 「きゃっ♪ ありがとうございます。さあ、どうぞ〜」
…………辛いんですが。
美姫 「美味しくないですか(ウルル)」
あ、あはははは〜。いやー、美味しいな〜。み、水、水が。
美姫 「ミミズですか?」
いや、そんなベタなギャクは…。うぅぅ、辛いよ、辛いよ。
美姫 「……えっと、辛いだけですか? 身体に異常とか?」
いや、全くないな。とはいえ、辛い〜〜〜!
美姫 「……報告。辛さによるためか、はたまた従来の愚鈍さ故か、他の効果は全く見られないと」
何か言ったか?
美姫 「いえいえ、な〜〜んにも♪ 次回を楽しみに待ってますと」
そうだよな。次回も待ってます。
美姫 「はい、あ〜ん♪」
あ〜ん。……やっぱり、辛い!
美姫 「本当に何も変化がないわね、面白くないな…」



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