「時が満ちた……」

 

仮面の男の隣で少女は嬉しそうに呟く。

それに呼応するように闇がざわめく。

 

「私とあなたの舞台が……幕を開ける」

 

嬉しそうに、嬉しそうに、少女は呟き男の腕に抱きつく。

だが、嬉々としていた表情は次第に曇っていく。

 

「でも、きっとあれは私たちの障害になる……」

 

憎々しげに呟くと、少女は指を鳴らす。

すると、その音に答えるように五人の影が二人の後方に現れる。

 

「命は一つ。 鍵の……神剣の消去」

 

「「「「「……」」」」」

 

了解とばかりに五人の影は手に持つ剣を正面に立てるように掲げる。

 

「行きなさい、私の剣たち。 私のために……王のために」

 

「「「「「すべては主君が望む世界のために」」」」」

 

五人の影は音も鳴く消える。

それを最後まで振り向くこともなく少女は抱きつく力をさらに強める。

もう離さないというように、強く……狂いし笑みを浮かべながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メンアットトライアングル!〜対なる心、継承せし二刀の剣〜

 

【二部】第一話 起こる異変

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミラがあの声を聞いてから二日が経った。

あれ以降、声が聞こえることはなかったが、あれを境におかしなことが学園に起こり始めた。

それは夜の冒険に出る生徒から怪我人が続出しているということ。

簡単な怪我ならよくあることなので騒ぐほどでもないが、この二日間で出た怪我人の数、

そしてその負った怪我の具合はどれも異常だった。

その数、なんと二十前後にも及んでいる。

たったの二日、それも夜の冒険だけでその数は明らかに異常としか言いようがなかった。

そして、その怪我を負った生徒の誰もが重症に近いほどの怪我を負っている。

軽いものでも重度の全身打撲、酷いものだと数箇所の骨折といったものである。

しかも怪我を負った誰もが重度のショック状態に陥っている。

これらのこともあり、現在保健室を受け持っているフィリスは二日間休む暇もなくてんてこ舞い状態になっていた。

 

「確かにこれは異常ね……」

 

現在の学園長、ジャスティンは学園長室でミラ、美由希、スレイ、レイとこの異常事態について話し合っていた。

本来なら学園全体の問題になるため職員全員で話し合う。

なら、なぜこの四人とだけ話し合っているのか。

それはスレイとレイから発せられた言葉によるものだった。

 

「闇の魔力を感じた、と言いましたよね?」

 

「「はい(うん)」」

 

「それはいつ頃でしたか? 詳しく覚えているのなら教えてください」

 

「う〜ん……私が感じたのは寝始めてすぐだったから、昨日の十二時くらいかな」

 

「私はその前日の同じく十二時頃でした」

 

二人は聞かれた問いに答えていく。

ジャスティンは二人の答えを聞いて、そうですか、と返すと何かを考え始める。

 

「何か思い当たることでもあるんですか?」

 

「はい……ただ、このことがお二人のおっしゃったことと関係があるのかは定かではありませんが」

 

「何ですか? その思い当たることって」

 

「怪我を負った生徒が全員、ショック状態に陥っているのは知ってますよね?」

 

「「「はい(ええ)」」」

 

「そのため何があったのかが聞き出せなかったんですが、とある生徒が小さな声でぽつりとある言葉を呟いたんです」

 

「なんて言ったんですか?」

 

先を促すように美由希が尋ねる。

他の三人も気になるようでジャスティンの顔を見る。

ジャスティンは少し間を置いてからその言葉を口にした。

 

「『ゲシュペンスト』……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話し合いを終え、四人は学園長室を後にした。

学園長室から食堂へと向かう四人の頭には先ほどジャスティンが述べた謎の単語が浮かんでいる。

 

「『ゲシュペンスト』……ね」

 

「ねえ、ミラお姉ちゃん。 『ゲシュペンスト』って何?」

 

「詳しいことは知らないけど、確かドイツの伝承に出てくる幽霊や妖怪の類の物のはずよ」

 

「それとは別に、恐ろしいものや迫る危険といった類の意味もありますよ」

 

「へ〜、そうなんだ。 でも、それと今回のこれって何か関係あるのかな?」

 

「わからないわ。 でも、確かに引っかかるところはあるわね」

 

「引っかかるところ?」

 

「私たちの言ったことと酷似しているところがあるんですよ」

 

「?」

 

何が酷似しているのかわからないレイは首傾げる。

それを見てスレイは小さく溜め息をつきながら詳しく説明する。

 

「レイ、あなたは闇の魔力を感じたのは何時頃に感じたと言いましたか?」

 

「十二時くらいだけど……」

 

「そう。 そして私はその前の日の十二時半頃です。 つまりは二人とも十二時台に同じ質の魔力を感じていることになります」

 

「そうだね。 でも、それがどうしたの? ただ同じ時間台ってだけじゃん」

 

「確かにレイの言うとおり、それだけならそんなに悩むことではありません。 でも、この時間と先ほどいった『ゲシュペンスト』という単語にはある共通点があるんです」

 

「共通点?」

 

「ええ。 『ゲシュペンスト』の意味はわかりますよね?」

 

「失礼だな〜、さすがの私でもさっき聞いたことばかりのことを忘れるわけないじゃん」

 

若干頬を膨らまして不愉快だと言わんばかりにそう言う。

だが、そんなレイに表情も変えず、言葉も返すこともなくスレイは説明を続ける。

 

「その『ゲシュペンスト』が、つまり幽霊といった類のものが出没する時間がドイツでは夜中の十二時から一時の間とされています」

 

「それがどうしたって……あ」

 

「もうわかりましたね? 私たちが闇の魔力を感じた時間とその『ゲシュペンスト』が出没する時間が偶然にも同じなのです」

 

「でも……それってただの偶然なんじゃ」

 

「それは私にもわかりません。 でも偶然として片付けるにはあまりにも酷似しすぎています」

 

「……う〜ん」

 

レイも二人に加わって悩み始める。

そこで気づくことがある。

先ほどから美由希が会話に加わっていないということを。

それを今更ながらに不思議に思った三人はふと美由希に視線を向ける。

すると、そこには

 

「……」

 

目を閉じて耳を塞いでいる美由希の姿があった。

そんな状態ではぐれずについてきているあたり、さすがというべきか呆れるべきか。

 

「あの……主様?」

 

「……」

 

「お〜い、美由希おね〜ちゃ〜んっ」

 

「……」

 

二人が声をかけても反応はなし。

声がまったく聞こえなくなるほど耳を強く塞いでいるためだろう反応できないのだろう。

それを見てどうしたものかと二人は思い、ミラを見る。

二人に視線を向けられたミラは小さく溜め息をついて小さく魔力を練り、微弱な電撃を美由希に放つ。

すると、ひぎゃ!と悲鳴を上げて塞いでいた手を外し、目を見開いて周りを見渡すようにきょろきょろする。

明らかに何が起こったのかわからないといった顔で。

 

「もう……何やってるのよ、あなたは」

 

「え、え、な、なにが?」

 

「皆で今回の件のことを話し合ってるのに一人だけ加わらず、呼びかけにも反応さえしなかったじゃない」

 

「あ、ご、ごめん」

 

「はぁ……もういいけど。 幽霊とかが怖いのは解るけど、さっきみたいのはやめてね」

 

「ど、努力します……」

 

わかったと言えない辺りまた同じことをしそうだが、ここでそれを言っても仕方ないと思ったのか再度溜め息をつき歩き出す。

その後、案の定話を再開した途端美由希は先ほどと同じことをし始めた。

そしてまた呼びかけにも反応せず、ミラの電撃が美由希に飛ぶという行為が成される。

それは食堂につく間、何回も繰り返されたそうな……。

 

 


あとがき

 

 

第一話はちょっち短いね。

【咲】 ちょっとじゃないわよ。

う……ま、まあそれは置いといて。

【咲】 置くな!!

はべっ!!

【咲】 まったく……こいつは。

いてて……まあ次回はもうちょっと長くなるから許しておくんなせえ。

【咲】 ほんとね?

ほ、ほんとです。

【咲】 そう。 ならいいわ。

ほ……じゃ、今回はこの辺で!!

【咲】 次回も見てくださいね♪




学園でも異常が起こり始める。
美姫 「益々持って、何かが起ころうとしているのね」
いやー、どうなっていくのか楽しみだな〜。
美姫 「本当に。これからの展開が楽しみだわ」
次回はどうなるのかな。
美姫 「次のお話も待ってますね」
ではでは。



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