深夜の学園、西の塔二階。

普段から人気のないのに加え、深夜なためさらに人気のなくなったそこに恭也はいた。

溜め息をつきながら周りを見渡しつつ歩く。

その動作の理由はあるものを探しているからだ。

いや、この場合物ではなく人と言ったほうがいいだろう。

 

「まったく……どこいったんだ」

 

二度目の溜め息と共に愚痴をこぼす。

恭也がその人物を探し始めてからすでに三十分が経過してる。

そりゃ溜め息に愚痴がついてもおかしくはないだろう。

 

「ん?」

 

そこで恭也は気づく。

一階のほうから複数の気配が近づいてることに。

そしてそれと同時に話し声らしきものがだんだんと大きくなってくる。

恭也は咄嗟に近くの物陰に隠れる。

隠れてからすぐにその気配たちは姿を現した。

 

「確かにそんなの今まで聞いたことないね」

 

「私もです。 錬金術でもさすがにそんなものはできませんから」

 

姿を現したのはこの学園の制服であろうものを着た少年少女たちだった。

おそらくはこの学園の生徒なのだろう。

そう恭也は認識したが同時に疑問が出てきた。

 

(なぜこんな時間、しかもこんな場所に生徒がいる)

 

深夜とも言えるこの時間に生徒がうろつくにしてはそこは人気がなさすぎた。

だから疑問に思う。

だが考えたところで答えなど見つかるわけはない。

そう思った恭也は思考を止め、視線をその生徒たちに移す。

すると一人の……他の者たちとは異なった服を着た生徒が恭也のほうを見ていた。

偶然かとも思ったが次に放たれた言葉でその考えは打ち消された。

 

「そこにいる方、出てきてはどうですか」

 

凛とした声でその少女は言う。

少女が言葉を発したと同時に他の者たちも視線を恭也のほうへ向ける。

見つかったのか。

若干の驚きを表情に浮かべ恭也はそう思った。

 

(ふむ……見つかったのなら隠れても意味はないか)

 

そう判断した恭也は少女の言葉通り姿を出すことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メンアットトライアングル!〜対なる心、継承せし二刀の剣〜

 

第四話 闇を纏った青年

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか見つかるとはな……」

 

姿を出した恭也はそう言う。

そして恭也の言葉が放たれた瞬間、そこにいた者―ライルたちは警戒する。

 

「だ、誰だ、お前は」

 

「ああ……怪しいものじゃないぞ?」

 

「この状況下でそんなこと信じると思います?」

 

「無理だな」

 

自分で言って自分で否定した。

まあそうだろう…人気のない西塔、しかも深夜というこの時間にそんな全身真っ黒な服装の男がいれば誰だって不信に思う。

 

「だが、信じてもらうしかない。 俺は君たちに危害を加える気はないし、そもそも見つかるとは思ってなかったしな」

 

「確かに気配の消し方は見事でした」

 

「まあそれなりに自身があるからな。 だが、ならなぜわかったんだ?」

 

「たまたまです」

 

「たまたまで見つかるとは思えないんだが……まあいいか。とりあえずその武器を収めてくれないか? さっきも言ったとおり君たちに危害を加える気はない」

 

「ああ、わかった」

 

そう言ってライルはあっさり剣を納める。

それに恭也を含む全員が驚きの表情を浮かべる。

 

「やけにあっさりしてるな。 そんなに簡単に信じていいのか?」

 

「いや、完全に信じてるわけじゃないけど、なんとなくあんたは大丈夫そうだって思ったからな」

 

「くっく……面白い奴だ。 名前は?」

 

「ライルだ。 ライル・エインズワース」

 

「俺は恭也だ」

 

自己紹介を始める二人に呆れの表情を浮かべながら皆は各々の武器を納める。

 

「それで、ライルたちはどうしてこんな場所に?」

 

「ああ、探検してるんだよ、学園を」

 

「探検……そういうことか」

 

「で、恭也はどうしてこんなとこにいるんだ? 見たところ生徒じゃないにしろ学園の関係者なのはわかるけど、こんなとこにくる理由がわからん」

 

「関係者?」

 

「違うのか? この学園は警備とか厳重そうだし生徒や関係者以外は簡単に出入りできないはずだからそう思ったんだけど」

 

「あ、ああ、関係者……になるのかな一応」

 

「一応?」

 

「ま、まあそこはいいとして、どうしてここにいるのかだったな?」

 

「あ、ああ」

 

強引に話題をすり替える恭也に若干ライルは不信感を持ったがとりあえずここにいる理由が気になったため気にしないことにした。

 

「ちょっと人を探しててな……」

 

「人?」

 

「ああ。 このぐらいの背丈で俺と同じく黒い服を着た女の子なんだが」

 

説明しながら手で背丈を表す。

その説明を聞いてライルは腕を組んで考え出す。

 

「う〜ん……俺は見なかったな。 皆は?」

 

ライルは皆のほうへ振り返りながらそう聞く。

皆はライルの問いに首を横に振った。

 

「見てないか……」

 

「みたいだな。 すまん、役に立たなくて」

 

「いや、謝らなくていい。 もともと逸れてしまったこちらに責任があるんだしな」

 

恭也はそう言ってライルたちに背を向ける。

 

「もう行くのか?」

 

「ああ、夜が明ける前に見つけたいしな」

 

「そうか。 じゃあな、恭也」

 

ライルの言葉に恭也は背中を向けながら軽く手を振ってその場を後にした。

 

「不思議な人ですね」

 

「うん。 周りに同化してるような服装なのに圧倒的な存在感を感じたね」

 

「よほど腕の立つお人なのでしょう」

 

恭也が去ってから皆はそう言い合う。

 

「戦ってみたいっすね」

 

「今度もし会ったら、そのときに言ってみたらどうだ?」

 

「そうするっす!」

 

皆とは別にライルとリサはそんなことを話していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜明け前のバルコニー。

夜明け前ということで人気のないそこに恭也たちはいた。

 

「まさかミラと一緒にいたとはな……」

 

「私も驚いたわよ。 学園を探索してたらいきなり奥から泣き声が聞こえてくるんだもの」

 

「うう……」

 

そう言い合う二人の間にいたレイは居心地悪そうにうな垂れる。

 

「それで収穫は……ないよな」

 

「ええ……恭也のほうは?」

 

「ないな。 だが代わりに面白い奴と会ったな」

 

「面白い奴?」

 

「ああ」

 

「恭也が気に入るってことは強いのね、その子」

 

「そうでもない。 だが、そうだな……あれは強くなる」

 

「嬉しそうね」

 

「そう見えるか?」

 

「ええ、とっても……」

 

呆れ顔でミラは恭也を見る。

 

「さて、昼間はどうする?」

 

「そうね……私は園内を見て回るわ。 だから恭也はそれ以外、地下とかをお願い」

 

「ああ……レイはどうする?」

 

「私はお兄ちゃんと一緒に行くよ〜。 お姉ちゃんみたいに変化とかできないし」

 

「ということはまた迷子にならないように見張ってないといけないな」

 

「う〜……」

 

「いっそのこと首に縄でもつけるか……」

 

「え〜、お兄ちゃんってそういうのが趣味なの!?」

 

「そんなわけないだろう……というか趣味ってなんだ趣味って」

 

レイの頭に拳で軽くぐりぐりしながらそう言う。

グリグリが終わった後、レイは特に痛そうな表情もせずミラの耳元に口を寄せる。

 

「よかったね、ミラお姉ちゃん。 お兄ちゃんノーマルだって」

 

「レイ!!」

 

レイの発言にミラは若干大きな声を出す。

その頬はわかりやすいくらい赤くなっていた。

 

「どうしたんだ、いきなり大声出して」

 

「え、な、なんでもないわよ」

 

「……顔が赤いが大丈夫か?」

 

「え、ええ、大丈夫。 大丈夫だから心配しないで」

 

「そうか……」

 

レイのさっきの発言もあり恭也の顔を直視できず俯き気味でミラは答える。

その様子に恭也はなんなんだと首を傾げる。

そしてそんな二人をレイは悪戯が成功した子供のような表情で見ている。

三人の間をそんな和やかな雰囲気が漂い、そして……夜明けを迎えた。

 

 


あとがき

 

 

今回は完全恭也サイドです。

【咲】 戦いはないのね。

恭也の場合自分から仕掛けるとかしそうにないからこうなった。

【咲】 ふ〜ん……で、前回言ってたクイズの答えは?

ああ、そういえば今回発表するんだったな。

【咲】 ……忘れてたわけ?

そ、そんなことないぞ?!

【咲】 ……。

ま、まあとりあえず答えといこうじゃないか。

【咲】 はぁ……で、答えは?

答えは……1番です!!

【咲】 普通ね〜……。

まあ浩さんの言ってた標準装備というのもあながち間違いじゃないんだけどね〜。

だってあの子はいっつも迷子になる子だし。

【咲】 迷子が標準装備……なんかダメダメな子って感じね。

いいじゃないか、そういうのも可愛くて。

【咲】 はぁ……ま、いいけど。

では魔剣の説明!!……といきたいところだが問題発生だ。

【咲】 なによ?

いや、レイはいいんだけどスレイがまだ完全にできてない。

【咲】 じゃあレイだけ書けばいいじゃない。

いや、同時に書きたいし……ということで魔剣説明は次回のあとがきで!!

【咲】 ……ま、いいんだけどね。 じゃ今回はこの辺で。

また次回会いましょう!!




そっか〜。標準装備じゃないのか。
美姫 「何で残念そうなのよ」
いやいや、そんな事はないって。
美姫 「特に戦闘が行われる事もなく、無事(?)に初邂逅はお終いね」
だな。さてさて、恭也たちが求めているものとは。
美姫 「そして、今回の話が美由希へと伝わるのかどうか」
一体、どうなる!?
美姫 「また次回を待ってます」



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