ミリアムに言われた場所にたどり着いた美由希は部屋のドアを開け中に入る。

中は誰も使っていなかったにしては良く片付いており汚れらしい汚れと言えば多少の埃がある程度だった。

突然この世界に来たため多少の装備以外何も持っていない美由希は特に部屋に置くものもない。

そのため、とりあえず掃除をしようと近くにあった雑巾を取ろうとする。

が、手が雑巾に届く前に部屋のドアがノックされ声が聞こえた。

突然の誰かの来訪に驚く美由希だったがミリアムが学園の案内をよこすと言っていたのを思い出しすぐにドアの前に行き開ける。

すると、そこに立っていたのは学園の制服を着た男性だった。

 

「先生に言われて案内に来た者なんですけど」

 

「あ、はい、話は聞いてます。 とりあえず、少し待っててもらえますか? 準備をしてきますので」

 

美由希はそう言ってドアから見えない部屋の奥に行く。

準備というほど何かをするわけではない。

ただ、装備の確認をするだけだ。

いざというときに装備がないなんていうことにならないようにというための確認である。

それは師匠である恭也に言われて習慣づけた癖のようなもの。

 

「うん、大丈夫かな」

 

装備を確認して再びドアの前にもどる。

するとそこにはさっきまで男性しかいなかったのにもう一人制服を着たポニーテールの女性がいた。

その二人は何やら口論らしきものをしているのか美由希が戻ってきたことに気づいていない。

 

「あんた一人に任せてるといやな予感しかしないのよ!」

 

「なんだよいやな予感って! 俺だって時と場合を考えてナンパするさ!」

 

「威張って言えることか!!」

 

女性はそう怒鳴るように言って男性の頭をグーで殴る。

男性はヒキガエルが潰れたような声を出して頭を抑える。

そこで、二人は美由希に気づいたのか同時にあっと声を漏らす。

 

「ら、ライルのせいで恥ずかしいところ見られちゃったじゃない!」

 

「俺だけのせいかよ! この場合モニカも同罪だろ!」

 

気づいてもまたそれを題材に口論しそうになる。

とりあえずこのままだと遅くなると考えた美由希は二人を止めることにした。

 

「あの……」

 

「あ、ごめんごめん。じゃあとりあえずどこから案内しようか?」

 

「教室からがいいんじゃないかな? 明日から授業受けるだよね?」

 

「あ、はい」

 

「じゃあ決まりだな…っと自己紹介を忘れるところだった。 俺はライル、ライル・エインズワース。 よろしくね」

 

「私はモニカ、モニカ・オルブライトっていうの。 ライルとは幼馴染なのよ」

 

「あ、そうなんですか。 私は高町美由希と言います。 よろしくお願いします、ライルさん、モニカさん」

 

「えっと、美由希、でいいかな?」

 

「はい」

 

「じゃあよろしくね、美由希」

 

「それじゃ、自己紹介も終わったところで行こうか」

 

ライルがそう言い二人も頷く。

こうして美由希はライルとモニカに案内されながら学園を見て回るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メンアットトライアングル!〜対なる心、継承せし二刀の剣〜

 

第二話 主と精霊の出会い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

案内が始まってからいろんな場所を美由希たちは回った。

教室を始め、ラウンジ、テラス、ロビー、食堂、中庭、大浴場。

中でも美由希が一番興味を示したのは図書館だった。

かなり広い室内に広がる数え切れないほどの蔵書。

読書好きの美由希にとっては天国のような空間だった。

すぐにでも読書を始めたかったが今は時間を割いてまで案内をしてくれている二人がいるため諦めた。

そして案内をされながら歩いていた美由希は二人にいろんな質問をされた。

それはほとんどミリアムに聞かれたことと同じことだったが、別のことも聞かれた。

別のこととは美由希が武道か何かをしているかどうかだった。

どう答えていいものか迷った美由希はとりあえず少しだけ剣術を嗜んでいるとだけ言った。

この世界ではあまり関係ないかもしれないがあまり言うことでもないだろうと思ったからだ。

そして、その質問の後にライルが言ったことに美由希はまたどう答えていいのか迷った。

それは……

 

「消灯の後に皆で学園を探検してるんだけど、よかったら一緒に行かない?」

 

ということだった。

聞くところによるとこの学園では夜更かし防止のためなのか消灯後に学園に疑似的な魔物を放つらしいのだ。

だが、夜更かし防止というのも建前に近いらしく鍛錬のために好んで夜更かしするのもOKらしい。

つまりライルたちはその好んで夜更かしをする人たちということなのだ。

そして美由希が剣術をしてるなら一緒にどうかと聞いてきたというわけである。

疑似とはいえ、自分の世界には存在しなかった魔物を相手にするのは少々怖いと言うのもあった。

だが、それよりも自分の剣術を人目に晒さないほうがいいのではという考えのほうが強い。

だから美由希は

 

「お誘いは嬉しいですけど……ちょっと、遠慮します」

 

と言い誘いを断った。

断ったことで気を悪くしないかと心配もあったが二人はそっかとだけ言うだけで気分を悪くした様子はなかった。

それに二人に見えないようにほっと息をつく。

 

「それじゃあそろそろ時間もいい頃だし、案内をここまでにして夕食にでも行こう」

 

「そうね。 美由希も一緒にどう?」

 

「えっと、一緒してもいいんですか?」

 

「うん。ご飯は人が多いほうが美味しいからね。 それに私たちもう友達なんだから変な遠慮しなくていいわよ」

 

「モニカは人が多かろうが少なかろうが変わらない気がするけどな…っと、こいつの言ってるとおり遠慮なんかしなくていいよ」

 

「じゃ、じゃあ、ご一緒します……」

 

「よし。 じゃあ食堂へ急ごう」

 

こうして美由希は二人と夕食を共にすることになり食堂へと足を向ける。

 

 

 

 

 

 

食堂へ向かう途中のロビーで後ろのほうから美由希を呼び止める声が聞こえ三人は足を止める。

美由希を呼び止めたのは美由希を学園長の部屋に案内した体育会系の男性だった。

 

「どうしたんですか龍道先生、こんな時間に」

 

「ああ、彼女にちょっと用事があってね」

 

「用、ですか? えっと……」

 

「武田龍道先生、戦闘術を教えてる先生よ」

 

「よろしくな。 君のことについては学園長から聞いたよ。 授業も途中からで大変だろうけど、がんばるんだぞ」

 

「あ、はい」

 

「それで、美由希に何か用事があるんじゃないんですか?」

 

「おっと、そうだった。 用事というのはこれなんだけど」

 

「刀?」

 

龍道が出したものは一振りの刀だった。

刀と言っても大きさ的には美由希の扱う小太刀というほうがいい。

 

「これがどうしたんですか?」

 

「君がいた場所に落ちてたんだが、君のじゃないのか?」

 

「えっと……見覚えがないんですけど」

 

「そうか……じゃあどうしようか」

 

龍道が悩んでいると突然美由希の頭に声が聞こえてきた。

 

『見つけました……主様』

 

それはこの世界にくる前に白い石を目の前にしたとき聞こえた声。

声が聞こえると同時に刀は光を放ち始める。

そして光は美由希の前に収束し、一人の人間の姿を形作る。

 

「な、なんだ!?」

 

ライルは驚いて声をあげる。

モニカも同じく驚きその光景に絶句していた。

ただ一人、龍道はそれを怪訝そうな表情で見る。

 

「……」

 

「こうして会うのは初めてですね、主様」

 

その光景を呆然と見ていた美由希に光が形作った一人の少女がそう言う。

美由希は少女の声に我に帰り、そして尋ねる。

 

「あなたが……あの声の?」

 

「はい、主様。 私が主様が仰る声の主であり、主様をこの世界に連れてきた張本人です」

 

「あなたは・・・・・いったい」

 

「私は、シャインスレイ。 光の理を知るもののみが継承を許される魔剣の精霊。 私は……いえ、私たちはあなたを、主様をお待ちしておりました。長い……果てしなく長い時を……永遠と」

 

少女は……シャインスレイと名乗った少女は無表情のままそう言った。

それはまるで、自分の兄を思わせる。

そんな表情で……。

 

 

 

 

 

 

 

時間が変わってその日の夜のこと。

自分たちの目的のものを見つけるために二手に分かれて探索を開始した恭也たち。

だが、早くも問題が発生した。

それは恭也自身もなんとなく危惧していたことだ。

危惧していたからこそ注意していたのだが、如何せん相手を侮ってしまった。

その結果が現在の状況である。

恭也は頭を抱えたくなるのを我慢して状況の解決を図る。

その起こった問題と言うのは

 

「まったく……あれほど迷子になるなと言っておいたのに」

 

そういうことである。

本当なら近くを歩いているはずのレイの姿が今はない。

つまるところ、レイは迷子になってしまったのだ。

上記でも述べたとおり、恭也自身注意はしていた。

でも、相手は見知った場所でもほんの数秒目を離すといなくなってる強者なのだ。

完全に自分のミスだと思うもレイに対して愚痴がこぼれるのも仕方の無いことだろう。

 

 

 

 

 

一方、レイはというと

 

「ぐす……ここはどこ〜……お兄ちゃ〜ん!」

 

隠密行動ということも忘れて半泣き状態で叫びながら恭也を探し回っているのだった。

 

 


あとがき

 

 

【咲】 最後ほうがコメディチックね。

まあ、もともとこれは決めてたネタだからしょうがないよ。

【咲】 でも前の文とシリアス度が違いすぎるわ。

そのギャップが笑いを呼ぶ……ということでどうだろうか?

【咲】 私に聞いてもね〜。判断するのは読者の人たちだし。

う……だ、大丈夫さ、きっと。

【咲】 と言う割には自信なさげね。

と、ともかく第二話をお送りしました〜。

【咲】 今回で光のほうと美由希が接触したわね。

それに剣が人に変わるところを見られてるね。

【咲】 いくら魔法学園だからってあれはあまりにも異質よね。

さてはてこれからどうなるのか。次回を待て!!

【咲】 と、予告めいたことをしたところで。

今回はこの辺で!!

【咲】 また次回会いましょう♪




早速、大きな謎めいたものが。
美姫 「シャインスレイと名乗った少女は何者?」
目的は何なのか。
美姫 「そして、迷子になってしまったレイはどうなるの?」
いやいや、次回が楽しみだね〜。
美姫 「本当に。次回も待ってますね」
ではでは。



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