作戦開始五分前、突入メンバーの全員は準備を終え、転送装置前へと集まっていた。

服装は集合前と変わっており、全員がバリアジャケット着用済み。加えて手には各々デバイスを持っている。

五分前という事でもうする事は特に無く、その場にいるほとんどはデバイスの軽い点検をしていたりする。

ただ、その中でなのはとフェイトの二人だけは違い、点検も何もせずにこれからの作戦の事を考えていた。

これから恭也とリースを取り戻す。失敗は許されない……もし失敗などすれば、彼らも自分たちも、命はないだろう。

だからこそ若干の不安がある。民間協力者と嘱託魔導師と言えど、まだ十歳程度の子供には変わりないのだ。

今までもそうだが、こんな危険度の高い作戦はやはり怖い。だけど、怖くて堪らないけど、逃げるつもりなんて二人には無い。

犯罪者を捕まえたいからじゃない。大切な人を助けたい……ただそれだけの理由が二人を奮い立たせ、恐怖の中でもしっかりと立たせていた。

 

『こちらエイミィ。現在、前方の艦を覆うシールドの解除を確認。間もなく転送装置の接続がされると思いますので、突入の用意をしてください』

 

突如開かれた通信モニタ。そこに映し出されたエイミィは作戦開始直前の知らせを告げる。

その知らせに各々行っていた事を止め、全員の身体は転送装置へと向き、視線が注がれる。

 

「絶対、連れ戻そう……恭也さんと、リースを」

 

「……うん」

 

必ず二人を助け出すのだと互いの決意をここにきて再び確かめ合うなのはとフェイト。

他の者にしてもやる事は同じでその意思はある。だから、なのはのように返事は返さぬも表情を引き締めていた。

そして、シールド解除から一分程度が経とうとした瞬間――――

 

 

 

『前方艦との転送装置接続を確認、突入可能です。皆さん、お気を付けて……』

 

――二度目となるエイミィの通信が入り、作戦開始の時間を告げた。

 

 

 

一人一人、知らせと同時に転送装置を介し、敵艦内へと突入していった。

そして遂に残すはなのはとフェイトだけとなり、二人も意図せず共に歩み出し、作動した転送装置内へと進んでいく。

その間でやはり不安があったのか、なのはは隣を歩くフェイトの手を握る。反対にフェイトも、分かっていたかのように握り返す。

手と手を握り合ったまま、二人は装置内で足を止める。それと同時に装置から光が発生し、二人の身体を包み込んだ。

短いはずなのに長くも思える時間の中、やがて完全に身体を包み込んでいた光は晴れる。そして光が晴れた瞬間、二人の目に映ったのは――――

 

 

 

 

 

――同じく転送装置はあるも、先ほどとは異なる一室だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのはB.N

 

【第二章】第三十四話 封じられしは忌まわしき力

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《これでよしっと。後は二人を合流して転送装置までの道のりの護衛をするだけ……》

 

動力室近くの操作室。そこのパネル前にてカルラは一人呟き、パネルから手を放す。

先ほどまで彼女はこの操作室にてシールドへのエネルギー供給回路の遮断と転送装置同士の接続を行っていた。

アドルファほど手際は良くないが、それでも出来る限り早く行った。それによって脱出経路は確保出来ただろう。

たぶん反対にあちら――アースラからの侵入者も来てしまっただろうが、彼女らにとってはもうそれは問題ではなかった。

 

《どの道、この艦はもう持たない……》

 

シールドで守っていても戦闘に突入した時点で艦が持たない事は分かっていた。

それを解除してしまった今、ブリッジではおそらく多少の時間を稼ぐため、エネルギーのほとんどを攻撃に回しているはず。

もしそれで敵艦を撃墜したとしてもその間での損傷は致命的。何年も前から整備もまともに行っていないのだから尚更。

だから先ほどアドルファから通達があった。この艦を放棄して脱出艇にて脱出、この空域を離脱して『あの場所』へと一旦戻ると。

脱出ようの艇だから乗れる人数に限界がある。でも、この艦に乗っている人数はおよそ四〜五十人。無理矢理詰めれば、ギリギリ乗れるだろう。

本当の悪人ならそこまでして全員を乗せようとは思わないかもしれない。だけど彼女らは違う。無駄に人の命を散らせようとは思わない。

少なくともカルラやアドルファはそうだ。だから定員オーバーギリギリであっても、全員を脱出させるよう今現在事を運んでいる。

 

《……私も、急がないと》

 

アドルファが時間を稼いでいるのは半分カルラのため。それを先ほどの知らせと共に暴露された。

恭也とリースを脱出させようとしていたのに気づいていたと。そして敢えて、それを止めようとはしなかったのだと。

時間が無いらしく詳しく理由は聞いていない。だけど、自分勝手と言われても仕方ないこの行動を許してくれた事には感謝した。

だからこそ急がなければならない。自分の我儘を許してくれた人をこれ以上困らせないよう、少しでも早く。

そう考え、自然と彼女は駆け足気味で部屋を出る。そして他に視線を向ける事無く、一直線に二人がいるはずの場所へと向かおうとする。

 

 

 

「見つけたぁ……」

 

――その瞬間、背を向けた自身の後ろから声が聞こえた。

 

 

 

嫌なくらい、聞き覚えがある声。何年も、何年も前からずっと自分たちの前に立ちはだかる奴の声。

そもそもまるで自分たちの艦の位置を知っているかの攻撃と侵入者の二つの知らせを聞いた時点で嫌な予感はしていた。

そんな事が出来る奴ら、そんな事をする奴らには一つしか心当たりがない。だけどよりによって最悪なタイミングだから、信じたくなかった。

しかし今、聞こえた声と後ろから聞こえてくる足音が嫌でも信じさせる。そして振り向きたくなくても、振り向かざるを得なくさせた。

 

「見つけたぞぉ、蒼夜の守護者……こんなところで貴様らに会えるとは、今日の俺はツイているなぁ」

 

《私は出来るなら、二度と会いたくなかった……》

 

「かっかっか……相変わらずつれねえぁ、テメエはよぉ」

 

赤と黒が入り混じった短髪、ベルトのようなものが三本ずつ両腕に巻かれた黒の長袖と同色の長ズボン。

両手にも同色のグローブを嵌め、何より特徴的なのが奇妙な模様が描かれた右目を覆う眼帯。

ほとんど黒一色の物を身に纏い、暗闇なら同化してしまいそうなものなのに圧倒的な存在感が自分はここに存在すると主張する。

おそらく視線の先にある曲がり角から来たのだろうその男はカルラとある程度の間合いを置き、嫌悪感しか抱かせない笑みを張り付けている。

相対するカルラも例に漏れず嫌悪感を抱いてしまう。だけど、それは表情に出さず、睨むような視線を向け、僅かな毒を含めた言葉を放つ。

しかし男はそれに対しても愉快そうに笑うだけ。それが嫌悪感と同時に不愉快としか言いようがない感じを抱かせる。

 

《貴方と仲良くしようなんて思わない、思いたくもない。むしろ私たちの邪魔をするなら、排除するだけ……》

 

「おもしれぇ……やってみなぁ。テメエ一人で出来るもんならよぉ」

 

男はカルラの言葉に反応して構えを取り、同時にカルラもデバイスを展開してバリアジャケットを構築する。

それと共にカルラはリースへと念話を送った。申し訳ないけど、急用が出来たから脱出まで付き添うのは出来なくなったと。

文句を言ったはいたが、何度も謝罪をすると彼女もしぶしぶ納得した。そしてそれに礼を告げ、念話を切って目の前の事に集中する。

 

《――っ》

 

隙が出来たわけじゃない。でもただ向かい合うだけでは意味がない……だから彼女は先手を打った。

以前恭也と模擬戦をしたときと同じ補助魔法を掛け、驚異と言えるスピードで相手との間合いを詰め、爪で一閃する。

だが、男はまるで動きが見えているかのように上半身を僅かの反らす事で避け、同時に右足を蹴り上げる。

避けるとは予想していたが反撃までは予想していなかったのか、その蹴り上げは見事なまでに彼女の腹を捉え、直撃する。

威力のままに彼女の身体は天井へと飛ぶも、反転して天井に足を付き、同時に天井を蹴って爪による高速の突きを放つ。

 

「はっ!」

 

しかし男は一笑してその突きを後方に下がる事で避け、またも同時に回し蹴りを放った。

だけど今度のそれは予想した攻撃だったのか、地面に着地すると同時にしゃがんで避け、下から斬り上げる。

爪の軌道は完全に男を捉え、回し蹴りを放った体勢からでは避けられない。避けようとすれば余計にバランスを崩す。

当たった……全ての要素からカルラはそう考える。だが、現実はまたも彼女の予想を大きく裏切った。

 

「甘えんだよっ!」

 

回し蹴りをした体勢から器用に蹴り下ろし、足を手首辺りに打ち据えて彼女の斬り上げを払う。

そしてそこから連続して右手で握り拳を作り、逆に体勢を崩した彼女の腹へと向けて打ち出した。

先ほどの蹴りによるダメージも抜け切っていないのに同じ場所へとまた直撃。それにより酷い嘔吐感を抱きながら後方へ吹き飛ぶ。

更にはまともな受け身を今度は取れず、背中を地面に打ち付け、強い痛みが背中から全身へと伝わった。

 

《あ……ぐっ……》

 

彼女のバリアジャケットは元々防御面では優れていない。完全に速度重視の作りをしている。

だから物理面にしても魔法面にしてもダメージをほとんど遮断しない。ほとんどのダメージが彼女の体に通ってしまう。

故にこそ、二度の直撃による痛みと地面に打ち付けた背中の痛みで表情は歪められ、すぐに立つ事が出来ない。

 

「おいおい、もう終わりかぁ? 違うよなぁ、そんなわけねえよなぁ!」

 

地面で痛みに悶えるカルラへ向け、今度は男のほうが攻めてくる。

それに彼女は痛みに耐えながらも反応し、地面に横たわる自分に向けて放たれる拳を身を反らす事で避ける。

と同時に蹴りを放ち、男の脇腹へと直撃させて体勢を崩させる。そしてそれを機として起き上がり、二度ほど後方に飛んで距離を取る。

自身の身体を襲うダメージの回復を図るために。だが、それをさせてくれるほど彼は甘くなく、即座に間合いを詰めてくる。

故に痛みを堪えながらも応戦しようとするが、痛みのせいで集中出来ない。そのため、放たれる攻撃のほとんどが彼女の身体を打ち据える。

ほとんどが胴体を狙っての攻撃……それは顔を傷つけたくないからとかではない。ただ綺麗な状態で痛みに歪む顔を見たいだけ。

ただそれだけの理由で打ち出される拳と蹴りが直撃するたび、彼の望む表情が表に出てしまい、オマケに軽く血まで唇の隙間から流れる。

 

《――っ!》

 

痛みが限界を超えて麻痺してきた。それと同時に渾身の力を以て彼女は打撃を合間を縫い、爪を突き出した。

だが空しくもそれは避けられ、同時に腕を掴まれて背負い投げをされる。そして再び、地面に背中を打ちつける羽目となった。

二度目のその痛みは呼吸さえ一時的に止めてしまうほどもの。しかし呼吸を再開させる暇も与えず、彼はカルラの首を掴む。

そこから持ち上げて壁へと叩きつけ、死なない程度の力でまるで弄ぶかのように彼女の首を絞め上げる。

 

「しばらく見ねえ内に腑抜けになりやがって……興冷めだぜ、おい!」

 

《う……ぐぅ……っ》

 

首を絞められる圧迫感、何より全身に走る痛みのせいでカルラの意識は落ちかけている。

しかしそれでも意識を保たせているのは、皮肉にも自身の首を絞める男の手によってだった。

僅かに保つ意識の中で彼女は腕を動かそうとするも、その意思に反して腕は一切動いてはくれない。

だから視線だけ動かして精一杯相手を睨み、諦めか望みか、その言葉を憎々しげに告げた。

 

《遊んで、ないで……一思いに、殺せば、いい。そうすれ、ば……貴方たちに、とっての……障害も減る、でしょ!》

 

「殺す宣言の次は殺してくれってかぁ? 諦めの早いこった……が、それも悪くはねえ」

 

《なら、さっさと――》

 

「ただ、面白くもねえな。ここでテメエを殺して他のが怒り狂うのも見てみてえが、絶望するテメエのほうが俺は見てえ」

 

カルラが言葉を言い切るより早く自分の言い分を告げ、掴んでいた首を放した。

それによって彼女の身体は壁伝いに地面へと落ち、身体は動かせずとも視線だけは彼を捉える。

そしてその視線だけで問う……貴方は一体、何をする気なのかと。

その視線に対して男は最初から変わらぬ笑みを浮かべ、彼女を見下しながら返答を口にした。

 

「なぁに、簡単な事だ。テメエが大事に思ってそうな奴を殺して、その死体をテメエの前にぶちまけてやるってだけだ」

 

《そんな、こと……出来るわけない。他の皆は、私みたいに、簡単にやられるような人じゃ……》

 

「確かに、そうかもしれねえなぁ。スピードだけしか能がないテメエと比べたら、他の奴のほうがつええってのは明白だ。けどよぉ……テメエが大事に思ってんのは、アイツらだけじゃねえだろ」

 

アドルファたち以外でカルラが大事に思っている人。男の口からそう聞いた瞬間、嫌な予感が過る。

でも、それをこの男が知っているはずはない。大々的に動いているようで、この計画は外部にしれないよう行っているのだから。

知るはずがない、知られているはずがない。だというのに男の浮かべる笑みが嫌な予感を増幅させる。

そして彼女を見据えながらゆっくりと開かれた口より告げられた言葉が、その予感を現実のものへと変えた。

 

 

 

「『剣』と『盾』の事、俺らが知らねえとでも思ってんのかぁ?」

 

 

 

言葉が放たれた瞬間、痛みさえ忘れさせるほどの衝撃が走り、彼女の瞳は見開かれる。

その反応に満足したのか、男はカルラに背を向け歩き出す。おそらく、今言った対象を探すために。

いくら彼らでもこの男には勝てない。戦うにも時期が早すぎる。だから、無理をしてでも止めないといけない。

だが彼女の身体はもう無理を通り越してしまっている。止めたくても、己の意思では動かす事さえ出来ない。

 

《駄目……止め、て。あの人は……あの人たちだけはっ……》

 

この男が相手でも勝てる見込みは十分あると信じてる仲間とは違う。あの二人は、まだ発展途上の段階だ。

戦わせてはならない。だから止めたい。でも、精一杯動かそうとした身体は横に倒れ、地面を這うような恰好となってしまう。

それでも激しい痛みが襲う身体で這い、彼を追う。しかし無情にも速度が違い、彼の身体はどんどん先へと進んでいく。

 

《いや……いや……》

 

襲う痛みの中で無理をしているせいか、再び意識が落ちようとする感覚に襲われる。

でも、ここで気を失うわけにはいかない。そうなれば、下手をしたら彼の思惑通り、あの二人が彼の手に掛かってしまう。

声が出せない事への同情もしなかった。敵ではなく、一人の女の子として接してくれた優しい青年と少女が殺されてしまう。

嫌だ。それだけは嫌だ。初めて友達になりたいと思えた人たちが自分のせいで殺されてしまうなんて、そんなの嫌だ。

しかし彼女の意思と反して視界が黒く染まっていき、前に進んでいるのかどうかすら自分でも分からなくなってくる。

そんな中で目の前を歩いて行く男は一度だけ振り向き、暗くなる視界の中でもはっきり認識できるほど歪んだ笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

――そしてそれを最後として彼女の意識は耐えきれず、闇へと落ちた。

 

 

 

 

 

カルラの意識が途切れたのを確認した男は一転して詰まらなそうな顔をすると背を向け、再び歩き出す。

彼にとって、『蒼き夜』の面子というのは天敵。それはもちろん、後ろに倒れているカルラも含まれている。

だというのに久しぶりに戦ってみれば、期待外れもいいところ。男にとってはあまりにも呆気ない幕引きという他なかった。

確かに彼女は自分らと戦うとき、必ず誰かと組んでいた。だけど曲りなりにも『蒼き夜』の一人なのだから、単独でも十分強いだろうと思っていた。

その認識が甘かったのかもしれない。常に誰かと組んでしか戦えない奴は、一人で戦ってもたかが知れていると思うべきだったのかもしれない。

だが結局、後の祭りだ。だからこそせめてもの楽しみのために生かしておいた……先ほど言った、絶望を味わわせるために。

そうすれば少しくらい満足できるだろう。そう考え、男は背を向けたまま歩き続け、彼女から離れていこうとした。

 

 

 

――その瞬間、後方からバチッという電流が流れるような音が聞こえた。

 

 

 

この状況でそんな音が立つ可能性は一つしかない。ただ、だとすると少しばかり彼女を甘く見た事になる。

先ほどのあれは自分を油断させるためのフラグか。それとも最後の力を振り絞って立っているだけなのか。

どちらかは分からないが、甘く見ていた事には変わりない。それ故に再び笑みを浮かべ、ゆっくりと振り返った。

 

《…………》

 

だが、振り返った瞬間に彼の表情から笑みが消える。そして驚きとも言えない微妙な表情を浮かべる。

確かに彼女は、カルラは立っていた。左手に備わるデバイスの爪に紫電を纏わせ、立っていた。

しかし先ほどまでとは明らかに異なるものが二つある。一つは目の前に立つ彼女の雰囲気。

一言で言ってしまえば、生気が感じられない。先ほどまでは物静かではあったけど、生きているという感じはあった。

だけど現在目の前に立っている彼女は生きている感じがしないのだ。分かりやすく言えば、まるで機械のような状態。

そして二つ目が表情。ここからも生気が感じられず、それどころか瞳の焦点すら合っていないように見える。

それら全てを総合して言えば、今の彼女はまるで人形のよう。心も命も持たない、人の形をしただけの人形のようにしか見えなかった。

 

(意識のない状態で動いている? いいや、確かにそれもあるんだろうが、それだけが理由とは思えねえ)

 

目の焦点が合っておらず、生気も感じられない理由。それはただ無意識の状態で立っているからというのも考えられる。

だが、それならば左手の紫電が不可解だ。あの紫電は魔法によるもの……意識が無いなら、魔法を使っているのが可笑しい。

これも無意識の内だと言うのならば相当なものだが、そんな簡単な理由で片付けられるほど男は馬鹿ではなかった。

 

「……まあ、どうでもいいか。そんなもん」

 

結局のところ理由なんてどうでもいい。確かに気にはなるが、彼が最優先するのは相手が戦えるか戦えないかだ。

それ以外は気になっても二の次。それ故に脳内を再び戦闘モードに切り替え、構えを取り直す。

 

「さあ、来なぁ……またボコボコにしてや――――」

 

 

 

 

 

――だが、言葉が言い切られるよりも早く、彼の後頭部を衝撃が襲った。

 

 

 

 

 

不意を突かれた完全なる直撃。しかも後頭部だったため、一瞬頭がクラッとしてしまう。

しかしそれが完全に覚めるよりも早く男は振り返り、それと同時に後ろにいるであろう彼女に右拳を振るう。

だけどそこのは予想した者の姿は無く、拳は空振り。それを不思議に思う間もなく、今度は背中に衝撃が走る。

 

「がっ!?」

 

引き裂かれるような痛みと電撃による痺れ。それと同時に襲う衝撃は彼の身体を容易に吹き飛ばす。

何が起こったのか分からない。辛うじて分かるのは自分が二度に渡って彼女から攻撃を受けたという事。

しかも自分でも視認出来ないほどの速度で。確かに彼女はスピードを誇る戦い方だが、今までは眼で追えない事もなかった。

何より自身の反応速度だけでも十分に対応できた。なのに今のはどうだ……視認どころか、反応すら出来ない。

それはあまりにも突然の変わり様だった。そしてだからこそ、彼にとっては楽しくもあった。

故にその楽しみを尚味わうため、彼は痛みなど無視して立とうとする。だが、彼女はそれをさせなかった。

 

「ぐっ――!」

 

斬り付けた背中の傷を踏みつけ、起き上がる事を遮る。そして辛うじて振り向く彼の顔を生気の感じられない顔で見下ろす。

たかが少女の踏み付け。ならば撥ね退けて起き上がるのも簡単なはず。なのに彼は起き上がる事が出来なかった。

それほどまでに踏み付ける力が強すぎる。一体その小さな体のどこからそこまでの力が出せるのか知りたくなるくらい。

だから踏み付けられ、動けない彼は彼女を見返すしかない。もちろん睨むようなものではなく、変わらぬ歪んだ笑みで。

しかしそれを見てももうカルラは表情を変えない。まるで一切の感情が欠落したかのような、そんな表情を向けられるだけ。

そして無表情のまま、動きを封じたまま彼女は左手を振り上げる。先ほどまでとは比べ物にならないほどの紫電を纏わせた爪を振り上げる。

 

「――ちっ……早くも、チェックメイトかよ」

 

先ほどの一撃で分かる。彼女のデバイスは現在、非殺傷ではなく殺傷設定になっている。

つまり、完全に殺す事を前提としてる。ならば、振り上げたそれを受ければ間違いなく命はないだろう。

しかし、諦めとも取れるその言葉を発したにも関わらず、男の表情からは決して笑みが消える事はなかった。

対してカルラの表情にも再び感情が灯る事は無く、振り上げられた紫電を纏う爪は――――

 

 

 

――慈悲も無く、見下ろす彼の身体へと向けて振り下ろされた。

 

 

 

爪は肉を裂き、身体全体を覆うほどの電撃を裂いた部分を中心として放つ。

そして数秒と経たずして原形すら分からなくなるほど男の身体を焼き、黒焦げになった所でようやく爪と足を退けた。

肉を裂いただけなら生きていただろうが、そこまで黒焦げに焼かれれば確実に生きてはいない。

つまりは殺した。何の躊躇もなく。これが今までの彼女なら、少なくとも躊躇の少しくらいは表情に浮かべたのかもしれない。

でも、今の彼女は無表情のまま。怒りも、悲しみも、喜びも……何の感情も浮かべる事無く、屍となった男を見下ろす。

 

《…………》

 

遂には興味も無くなったように視線を外す。そしてどこを目指すでもなく、ゆっくりと通路を歩きだす。

生気の感じられない機械的な動きで。コツコツと規則正しいリズムの足音を刻みながら通路を進み、やがてその姿は見えなくなっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――つまり、この艦はもう持たないから、保ってる内に逃げろという事だな?」

 

「まあ、簡単に言ってしまえばそういう事になるっスね」

 

シールド解除が為されてから十分程度経った現在、アドルファはブリッジでの指揮をラーレに任せ、ジェドの部屋へ来ていた。

デバイスと化したシェリスを安置しているのとは別の部屋。本当の意味で彼の私室と呼べる場所。

こんな騒動が起こればさすがにある程度パニックに陥っているかと思い来てみれば、予想を裏切って冷静な様子。

というか外の騒動に興味ないとでもいうかのように机に向い、何か作業をしている。その様子にはさすがのアドルファも呆れる他なかった。

とまあそんな事がありつつもアドルファはジェドに現在何が起こっているのかを詳しく説明、避難するように告げたという事だ。

 

「ふむ……確かに動力室から直接シールドの回路を遮断されれば、再接続して張り直してもどの道、艦は墜ちるだろうな。だが一つ、不可解な点がある……あれだけ動力室のセキュリティを万全にしておきながら、どうしてそんな事になったんだ?」

 

「それはまあ、今話した侵入者っていうのが――」

 

「……そうだとしても、それもそれで妙な事だな。話によれば君たちは何者かが侵入した段階ですでに動き出したと聞く……そして同時に外にはこちらを攻撃してくる所属不明の艦がいる。この二点から推測すれば君たちが行うであろう最初の行動は最低で二つ。一つは侵入者を迎撃する事、もう一つは艦の心臓部とも言える動力部を守る事……この二つの行動が行われていたのならまず、こんな短時間でシールドの回路が遮断されるわけがない。反対にこの行動が行われていないのだとしたら、君たちは元々この艦を放棄するつもりだったという意思が見える。もっとも、それ以前に侵入者がやったことだとしたら動力の破壊ではなくシールドの回路遮断のみを行ったというのも可笑しい点だがな」

 

彼の言い分は簡単。つまり侵入者が行ったにしろそうでないにしろ、元からこの艦を守る気などなかったのではないかという事だ。

しかもその言い分は全て彼女らの事をそれなりに知っているが故の推測。そのため、筋が通っているから反論の隙間がほとんどない。

 

「……はぁ」

 

事実を教えずに済めば一番良かった。だが、ここまで言われれば隠し通す事は無理に近い。

そもそも彼は子煩悩だが頭は良い上、それなりに長く付き合っている。隠そうとする事自体が無謀だったのかもしれない。

それを改めて再確認したアドルファは溜息をつき、仕方がないとばかりに事実を彼に打ち明けた。

シールドを解除したのが誰か、元からこの艦を守ろうとしなかったのはなぜか。そして今、イレギュラーとして侵入を許してしまった相手の素性。

この騒動に関する詳しい事は全て。それでも最後の一つは話さなくても問題はなかった。むしろ頭の良い彼なら、これを話せば計画の概要を察するかもしれない。

その可能性があるというのに敢えて話したのは、彼の取れる選択肢を二つに絞らせ、決断させるためだった。

 

「単刀直入に聞くっス、ジェド・アグエイアス博士。ウチらに付いてくるか、それともこの艦と共に心中するか……どっちを選ぶかを今ここで決断して欲しいんスよ、貴方には」

 

今までのアドルファたちとジェドの関係は協力者同士か、はたまた共犯者かというものだった。

だけどこの艦を放棄する事は計画の一部の完了を意味し、その時点で彼の望みも達成され、協力関係は崩れてしまう。

故にこその二つの選択。一つ目は明確に言うなれば、彼女らの組織に正式に所属する事で生き、最後まで彼女らに付き合うか。

一つ目の選択をしなかった場合は二つ目、つまりこの艦が沈むのと共に死を迎える事になる。これは彼女らの事を知る彼を野放しにしないための処置だ。

もし野放しにして管理局に捕縛でもされた場合、彼女らの計画の一端が知れてしまう。そうなればいろいろと不都合が出るため、それだけは避けねばならない。

だからといって無理矢理連れて行っても意味があるわけじゃない。あくまで本人にその意思がなければならない……だから、時間が無くもこの場で聞いたのだ。

 

「…………」

 

脅しとも取れる選択を掲げられてもジェドは考えるような仕草を見せるだけで焦りも驚きもしなかった。

想定していたのか、それとも表面上は冷静を装っているだけか。どちらかは知らないが、ある意味大したものだと言える。

 

「一つ聞くが……現状、君たちから見てもう私は用済みのはずなのに、そんな選択肢を用意するのはなぜだ?」

 

彼に協力を求めた最大の理由は『剣』と『盾』を製作出来る技術を持ち、適任者を保持するという二点だ。

そのどちらも満たされた今、彼の利用価値は無いと言ってもいい。だからこそ、この疑問は当然と言えば当然。

そして当然の疑問だからこそ、適当な答えは意味を成さない。したところで見破られ、余計に不信感を持たせるだけだ。

 

「貴方の持つ技術力はウチらとしても失うに惜しいんスよ。ですから貴方にその意思があるのなら、これからもウチらに協力して欲しい……理由を挙げるなら、そんな所っスかね」

 

今を生きる人間の技術力では計画を達成する事は出来ない。でも、彼ほどの技術力なら使い道はいくらでもある。

だからここで失うのは惜しい。しかし、実際のところその答えは嘘ではないにしても、あくまで理由の半分でしかない。

 

(貴方は生きなくてはいけない。あの双子のために……ウチらが殺してしまった、あの人のために)

 

きっと彼という存在はリースとシェリスにとって無くてはならない存在。人でなくなったとはいえ、二人にとって唯一の親なのだから。

ファザコン気味のシェリスはもちろん、今は突っぱねてるリースについても、彼という存在が損失すればどうなるかは目に見えている。

そして十三年前に奪ってしまった二人の母親――エティーナはきっと彼が死に、自分の後を追ってくる事を良しとはしないだろう。

頻繁に会ったわけじゃない、間柄だって敵同士だった。しかしそれでも、自分の危機よりも危害を加えようとする他人を救おうとした彼女はきっとそう考える。

前者は組織の計画に支障が出ないようにするための理由。後者は組織ではなく、アドルファ個人の罪悪感から来る理由だ。

結局、どちらも身勝手や偽善と言われる理由ではある。だが、組織としても個人としても死んで欲しくない存在には変わりないという事だ。

 

「なるほど……まあ、そんなところだろうとは思ったがな」

 

もう半分の理由を言っていないとはいえ、語った事が本当であるというのは正真正銘の事実。

それ故かジェドも疑う事もなく、納得したように頷きながら再び考えるような仕草を見せる。

そして再度考え始めてから一分と経たずして彼はアドルファへと向き直り、口元に僅かな笑みを浮かべた。

 

「先ほどの問いに対する答えだが……私としては君たちに協力しても構わん。私自身の望みが達成された今、特にする事もないしな」

 

「へぇ……エティーナさんの後を追うとか、言わないんスね」

 

エティーナは今でも彼にとってかけがえのない存在だ。時折、昔の写真などを眺めてるぐらいなのだから。

だから可能性としてそれは十分あった。そして個人的にも組織的にも生きて欲しいとは思っても、本人が望めば止めようとも思わなかった。

しかし彼はその選択を選ばず、付いてくる事を選んだ。そこが少しだけ気になり、軽口を叩くような感じで尋ねてみたのだ。

それに彼は何を言っているんだと言うような呆れの表情を浮かべ、小さく溜息をつくと共に彼女の疑問に対する答えを口にした。

 

「そんな事をしたところで、彼女に会えるわけでもないだろ。それにもしも会えたとしても、彼女なら怒るだろうという事ぐらい目に見えている」

 

死後の世界なんて信じない。例えそんな世界があり、エティーナに会えたとしても、なぜ後を追うなんて馬鹿な真似をしたのかと怒るのは確実。

特にリースやシェリス、アイラの三人を残して後を追うなど以ての外。だから生を全うして死を迎えなければ、絶対的に怒られるだろう。

死者の世界など信じるつもりもないが、信じた所で自ら死ぬ気はない。娘にあんな事をしてしまった分、せめて二人が幸せを掴むまで見届けたい。

何を今更と言われるかもしれないが、親である事を捨てる気はない。二人の娘が自分を父と呼ばなくなったとしても、放棄する気はない。

だから親として、娘が幸せを掴むまでは出来るだけ生きたいのだ。それまで生きていられるかは分からなくも、可能性があるのなら。

 

「あはは、貴方らしい答えっスね……でも、本当にいいんスか? ウチらとの協力関係を維持するという事はつまり――――」

 

「娘とも敵対関係になる可能性が極めて高い、と言いたいのだろう? 私はそれも仕方ないと納得できるが、確かにシェリスには少し酷かもしれんな。リースは若干親離れが始まっているから大丈夫だとは思うが」

 

「なら、どうするんスか? 言っとくっスけど計画上、まだまだ発展途上のあの子たちを連れていくのは現状では出来ないっスよ?」

 

「それは分かっている。だから君に一つ、お願いしたい事がある……親として、あまり使いたくない手ではあるんだが」

 

そう前置きをして語った彼のお願いとは、確かに親としてするべきではない手段という他なかった。

だが、確かに姉と同じくらい父に懐くシェリスの事を考えるなら、それしか現状で手段がないというのも確かであった。

親である事を捨てたくはないが、取れる手段は親としてあるまじき手段。だけどその手段を取らなければ、シェリスがどうなるか分からない。

それ故に敢えてその矛盾を受け入れるしかない。それが原因で二度と彼女が父と呼んでくれなくなったとしても。

その覚悟というものが語った後の彼の表情から見えたからか、アドルファはそれ以上追及はせずにただ頷き、彼に背を向けた。

 

「では、早速ウチはそれを実行してくるんで、博士はここで待っててください。もうちょっと掛かるとは思うっスけど、ギーゼが迎えにくるんで」

 

「迎えに来る、とは?」

 

「んっと、ギーゼには今、他の研究員の方々を脱出艇に避難させてるんスよ。侵入者がいる以上、放送で避難を促して個別で行動させるわけにもいかないっスからね」

 

必要価値のあるのはジェドだけだからといって他の者を見捨てる気というのはアドルファにはない。

だからここに来る前に通信でギーゼに伝えたのだ。当初の予定を少し早め、脱出艇へ研究員たちを避難させてくれと。

もちろんジェドも迎えに来るようには言っているが、彼に関しては変更の可能性も考えて研究員たちを避難させた後という事にしている。

故に来るとしてもおそらく早くて後十分、遅くても二十分後くらい。だから不用意に出ず、迎えが来るまでここで待っててくれという事だ。

簡単ではあるがその説明を聞き、納得したように頷き椅子へと座った彼を見届けた後、アドルファは顔を正面へと戻して歩き出し、部屋を出ていった。

 

 


あとがき

 

 

【咲】 ……カルラが酷いぐらいやられてたわね。

ま、仕方ないよ。もう片方のデバイス、ファーティマが使えないし、ベルセルクだけでどうにかなる相手でもないし。

【咲】 じゃあ、ファーティマが使えてたら多少は違ってたって事?

だろうね。もっとも、ファーティマが使えてたとしても勝率は限りなく低いが。

【咲】 つまり、結局勝てる見込みなんてなかったってわけね。

そゆこと。彼女のスピードなら逃げる事も出来たんだが、それでも逃げず戦ったのは他の人たちに危害が及ばないようにするためだ。

【咲】 他の者っていうと避難させてる人たちとか恭也たちとか、侵入してきたなのはたちの事よね?

うむ。『蒼き夜』の面子でも苦戦を強いられるような相手だから、現状の彼らでは勝てる訳がないからね。

【咲】 でも結局負けちゃったのよね。しかも恭也とリースに危害が及びそうになってカルラが凄い事になってるし。

あれねぇ……ずばり言うと、アレがアドルファの危惧したカルラの力なのだよ。

【咲】 多少油断してたとはいえ、『蒼き夜』の面子でも苦戦するような相手を瞬殺してたわよね……。

ん〜、実を言うとね、ああなったカルラは面子の中でも最強クラスなんだよ。ただその分、リスクがあるんだけど。

【咲】 まあ、あそこまで強くなるんだから少なからずありそうよね。で、リスクって何があるの?

まあ、言ってもいいけど……リスクは二つあるんだが、ここでは一つしか言えんのでそこんとこよろしく。

【咲】 はいはい……で、何よ?

んっと、ああなったカルラは全ての感覚(視覚や聴覚など)、及び理性が無くなり、完全な殺戮人形になり果てる。

この状態になると身体能力は爆発的に向上、相手に情けをかける事が無くなる分、如何にして相手を素早く殺すかを追及するようになる。

しかしその反面、味方と識別出来るのは『蒼き夜』の者だけ。それ以外は全て敵、殺害対象になっちゃうんだよね。

【咲】 それってつまり、恭也たちとかなのはたちとか、その他の非戦闘員たちとかも関係無くって事?

そういう事。皮肉なもんだよねぇ……大切な人を守りたいと願い引き出してしまった力が、下手したら彼らに危害が及ぶ可能性のあるものなんだから。

【咲】 確かにねぇ……でもさ、全ての感覚がなくなったのにどうやって味方を識別してんの?

あの状態の彼女は魔力探査魔法も常に掛けてるようなものだから、範囲内に入った魔力の質で判断してるんだよ。

【咲】 ふ〜ん……味方と判断したら攻撃しない辺り、少しは理性が残ってるようにも見えるわね。

そうでもない。味方と酷似した魔力を発見したら攻撃しないようにとインプットされてる機械みたいなものだし、今の彼女。

【咲】 まあ、どっちにしても現状で危険要素が増えたのには変わりないわよね。

だな。身体能力が爆発的に向上した彼女の速さは視認出来るような物じゃないから。神速の領域に入ってやっと対応出来るくらいじゃないか?

【咲】 もう怪物ね、ほとんど。でも、アドルファが危惧してるのはそこじゃない気がするのは気のせいかしら?

気のせいじゃないね。彼女が危惧してるのはこれではなく、もう一つのリスクのほうだから。

【咲】 それはここでは語らないのよね?

うむ。まあ、一つだけヒントを言うなら、カルラは過去に一度だけこの力を使ってしまった事がある……って事かな。

【咲】 微妙なヒントよねぇ……。

ま、これ以上は言えんので各自で考えてくださいな。いずれ本編で答えは出るんで。

【咲】 はいはい……じゃ、そろそろ次回予告を……って、次回はすぐだから必要ないわね。

まあ、確かにな。では次回のあとがきでという事で、一旦のお別れをば。

【咲】 それじゃ、ばいば〜い♪




カルラの変貌ぶりにびっくり。
美姫 「もう一つのリスクというのが気になるわね」
ああ。だが、他のメンバーが気にするぐらいだから、相当大きなリスクなんだろうな。
美姫 「気になるわね」
ああ。もし、今のカルラと恭也たちが会ったら……。
美姫 「無事に恭也たちは脱出できるのかしら」
気になる次回は……。
美姫 「この後すぐ!」



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