鍵を持参で部屋の前に戻ってきた。だけど、彼女はそれで開ける事をしない。

確かにこのままノックして声を掛けても、先ほどと同様に無視されてしまう可能性が高い。

でも、だからといって鍵で開けて無理矢理中に入っても、結果は同じなような気がしたから。

だからエティーナは鍵を持っていても使う事はせず、扉前に立つと再び扉をノックした。

 

「……アイラ」

 

ノックの後に声も掛ける。しかし結果は先と変わらず、何の反応も返ってこない。

その変わらぬ結果に彼女は反して落ち込みもせず、扉の先にいるアイラに向けて言葉を紡いだ。

 

「グレアムさんから全部聞いたよ。アイラのご両親の事も、アイラが抱えてる傷も、全部……」

 

一切隠す事はなく、全て聞いてきたのだと扉越しに彼女へと伝える。

だけど扉の奥からは声一つ聞こえてくる事はなく、静寂が周りを包み込む。

だが反応が返らなくてもエティーナは口調を緩めず、ただ彼女へと言葉を発し続ける。

 

「私ね……アイラのご両親が亡くなってたって聞いて、だったら自分が引き取っちゃえばいいって簡単に思ってた。家族がいないなら、私たちがアイラの家族になってあげればいいって……でも、今日グレアムさんにこの事を聞いて、簡単に考えてた自分が恥ずかしくなっちゃったよ」

 

「…………」

 

「アイラが心に抱えてる傷の事を知ろうともしないで、ただ家族になろうとだけ考えて……それでアイラが傷ついてるなんて、思いもしなかった。笑ってくれないのはまだ心を開いてないからだって、もっと根気良く接したら笑ってくれるって思って、考えもしなかった」

 

まるで懺悔するように言葉を紡ぎ、言葉の最後に一息置いてごめんねと続けた。

謝罪にしては軽い一言にも思える言葉。だけど、その一言に彼女は精一杯の気持ちを込めていた。

アイラ自身の事を知ろうとしなかった事、無用に彼女を傷つけ続けていた事。その全てに対する、謝罪の気持ちを。

そしてごめんねの言葉からまた少しだけ間を置いて、でもと続けて彼女は更なる言葉へと繋げる。

 

「アイラを家族にしたいっていうのは、私の本当の気持ち。一緒にご飯を食べてたり、一緒にお買い物に行ったり、一緒に遊んだり……ただ純粋にアイラとずっと一緒に過ごしていきたいって、私は思ってるから」

 

彼女が続けて告げたのは、虫の良い話と言われればそれまでの言葉。

だが謝罪のときと同様にそう思う気持ちも本物。それが語る声からも容易に窺えた。

そしてそれを告げた後、尚も反応が返ってこないのを確認し、エティーナは部屋に背を向ける。

自分の気持ちだけ言って去るのは自分勝手。だけど、これ以上話し続けてアイラを無用に傷つけたくはない。

だから自分勝手と分かっていながらも扉に背を向けた彼女は、部屋から遠ざかるべく歩き出そうとした。

 

 

 

――だがその瞬間、後ろから扉の開く音が聞こえてきた。

 

 

 

驚き後ろを振り向けば、そこには開いた扉から顔だけを少し覗かせるアイラの姿。

そのとき彼女がエティーナを見る目は少しだけ怯えを抱いているような、そんな目だった。

今まで怒った所や恥ずかしがっている所は見た事があるが、そんな表情は見た事がない。

それ故に更なる驚きに襲われ、呆然と立ち尽くす彼女に――――

 

 

 

「……入って」

 

――ただ一言、そう告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのはB.N

 

【第二章】第五話 傷の癒えしとき、交わされる約束

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋へと招かれたエティーナは、驚きを納めた後に周りを見渡した。

何度も来た事がある部屋ではあるが、こうして来て見ると一つだけ違和感があった。

アイラが住むようになってから約二ヶ月も経つのに、部屋は少しも汚れた様子がない。

それは掃除してるからというのとは少し違う。言ってしまえば、生活観がまるでない部屋であった。

そしてそこを意識してみて初めて気づく。彼女は少しも、この施設での生活に馴染んではいなかったという事に。

表面上は馴染んでいても心の内までは開かず、部屋が綺麗なのもおそらくはいつか出て行くときを考えてだろう。

部屋の様子でアイラの今までを思うエティーナの目の前、ベッドの上にてアイラは現在、抱きしめる枕に顔を埋めていた。

ずっとエティーナの顔を見ている事が出来ないから、目を合わさぬよう顔を埋めてただ座っていた。

そんな彼女に対して、エティーナはベッド横の椅子へと腰掛けて彼女の頭に手を伸ばすが、すぐに引っ込める。

自分にはアイラを撫でてあげる資格はない。頭に置く寸ででそう思い、伸ばした手を引っ込めて彼女が口を開くのを待つ。

そうして数分が経過した後、アイラは枕に埋めていた顔を僅かに上げ、だけど目は逸らしたまま語る。

 

「アタシさ……父さんや母さんと出会う前の事って、あんまり覚えてないんだ。だから、少し思い起こせば二人と過ごしてた日々の事しか思い出せない……でも、それでいいんだって思ってた。幸せなときだけ覚えてれば、アタシはずっと幸せに過ごせるからって、思ってたから」

 

「…………」

 

「だけど、今となってはそれを思い出すのが辛いんだよ。父さんや母さんと一緒にいたときを思い起こせば思い起こすほど、あの日の事が鮮明に浮かんでくるから……」

 

「それって……アイラのお父さんとお母さんが亡くなった日の、こと?」

 

恐る恐る尋ねた彼女の言葉に、アイラは目を伏せ頷く事で肯定した。

そして目を伏せたまま、開いた口を閉じる事なく彼女はそのときの事をエティーナに語った。

それによるとアイラの両親が亡くなった日は、アイラの誕生日とされていた日であったらしい。

引き取られる前は孤児だった故、明確な誕生日は分からない。だからそれは、引き取った両親が決めた誕生日。

だけどアイラにとっては一年の中で何よりも楽しみな日で、その日もいつものように両親の帰りを待った。

共働きしていて休日以外はあまり家にいないが、誕生日の日は必ずプレゼントを片手に早く帰ってきてくれていた。

しかしその日だけはいくら待っても帰ってこず、それでも只管待つ彼女へと一つの知らせが届いた。

その知らせの内容は――――

 

 

 

――父と母が、亡くなったというもの。

 

 

 

二人とも心臓を一突きされて即死。犯人は今、巷を騒がせている通り魔と断定された。

両親の遺体と対面させられたと共にそう告げられたが、そのときのアイラの耳には入らなかった。

何も聞くことが出来ず、ただ綺麗な物言わぬ姿となった両親の姿を見ているしか出来なかった。

そしてそれからしばししてそのときの両親の持ち物と言われる代物を渡され、家へと帰された。

その中には当然、アイラへと向けて贈られるはずだったラッピングのしてある包みも存在していた。

包みの中を開けてみるとそこにあったのは、彼女の髪と同じ色をした石が備わる首飾り。

きっとアイラは喜ぶだろう……そんな想いがそれからは伝わり、首飾りを抱きしめて彼女はただ泣いた。

そしてその日から彼女は何をするにも無気力な状態となり、通い詰めていた両親の墓石前に居座るようになった。

それがジェドと出会う二日前の話。そしてそこから、現在の状態へと至っているというわけである。

 

「正直、初めはアンタらの事をウザイって思ってたよ。放っといてくれればいいのに無駄に話しかけてきて、変に構ってきて……挙句、ここに住まないかなんてさ」

 

「……そっか」

 

「でも、いつしかアンタらといる事が居心地良く感じ始めてた。アンタらといるときは、父さんや母さんの事を思い出さなくて済んでたから……」

 

父や母と同じ温かさを持った人たち、そして同様の温かさがある場所。

それがいつからかアイラの傷を癒し始め、閉じていた心も少しずつではあるが開き始めていた。

だが、それは所詮逃げているだけ。父と母が死んだという事実から、目を背けているだけ。

それに気づく切っ掛けとなったのが先ほどの出来事だったのだと、彼女は続けて告げた。

 

「管理局が犯人をもっと早く捕まえていれば、二人とも死ななくて済んだじゃないか。アンタにアイツが管理局の人だって聞いたとき、そんな事を思ったら……」

 

「憎む気持ちが、止められなくなっちゃったんだね……」

 

「……うん」

 

だけど語りこそしないが彼女自身、それが見当違いの物だと理解してる事をエティーナは知っている。

自分が声を掛けたあのとき、僅かに垣間見えた彼女の表情は怒りではなく、怯えるようなものであったから。

それはおそらく、逆恨みの怒りをあろう事かエティーナの友達に向けてしまった事に対する怯え。

彼女が悪いわけではないのに、管理局が悪いわけではないのに、大切になり始めていた人の友達にそんな怒りを向けてしまった。

そしてそれが原因でエティーナに嫌われる事が怖かった。だから彼女の顔もまともに見れず、アイラは逃げ出したのだ。

 

「…………」

 

全てを語り終え、やはり顔を向ける事が出来ずにアイラは再び枕に顔を埋める。

そんな彼女にエティーナは何も言う事なく、椅子からアイラのいるベッドの上へと移動する。

そして、顔を隠したままの彼女にゆっくりと手を伸ばし――――

 

 

 

「……アイラ」

 

――静かに名を呟き、その小さな身体を優しく抱き寄せた。

 

 

 

そこでようやくアイラは上げる事のなかった顔を上げ、エティーナと視線を合わせた。

そのとき見た彼女の表情からは、これまでにないほどの優しさが感じ取れた。

そんな表情のままエティーナは優しく、強く、アイラを抱きしめて告げる。

 

「辛かったんだね……お父さんもお母さんも亡くして、傷の痛みにずっと耐えて。私たちにも、その辛さを見せないように我慢までして……」

 

告げられる言葉に頷く事もなく、再び彼女の顔から目線を外す。

だけどアイラが目線を外してもエティーナは目を外さず、ただ優しく言葉を放ち続ける。

 

「でも、もういいんだよ? 辛さを隠さなくても、痛みを我慢しなくても……私が、私たちが全部、受け止めてあげるから――」

 

 

 

 

 

「私たちがずっと、傍に居てあげるから」

 

 

 

 

 

そう言われた瞬間、アイラは再び目線をエティーナへと戻した。

若干の驚きを纏わせるアイラに、彼女は変わることない微笑みをただ向ける。

そこからは少し前まで感じる事が出来ていた、だけど今は感じる事の出来なくなった温かみがあった。

だからか、薄っすらと彼女の目に涙が浮かび上がり、抱きしめていた枕を手放して彼女へと抱きつく。

抱きつき、嗚咽はいつしか堰を切ったように泣き声へと変わり、彼女はエティーナの腕の中でただ泣き続けた。

そんな彼女をエティーナは泣きじゃくる子供をあやすよう撫で続け、泣き止むまでの間、ずっと抱きしめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくの後に泣き止んだ彼女は、少し恥ずかしげな表情を見せながら離れた。

そんな様子がエティーナにとって愛おしく感じ、手を伸ばして今一度彼女の頭を撫でる。

するといつもなら若干の抵抗を見せていたはずが、打って変わって顔を赤くしながら大人しく撫でられていた。

そこから少しして撫でる手が離れると、僅かに名残惜しそうな顔を見せながらも彼女はベッドから降りて立ち上がる。

そしてちょっと離れた位置にある机の前へと立ち、引き出しを開いて何かを取り出すと彼女の元へと戻ってきた。

 

「これ……」

 

そう言って差し出してきたのは、朱色の石が備わる簡易な首飾り。

おそらくそれは、先ほどの話にあったアイラの父と母が彼女にプレゼントするはずだったというもの。

それを差し出され、エティーナは少しばかり手に取るのを躊躇するが、彼女が頷くのを見てゆっくりと手を伸ばした。

 

「綺麗な首飾りだね。これ、さっき言ってたアイラのお父さんとお母さんの?」

 

「うん。これを見ると父さんや母さんを思い出すから、ずっと付けられなくて……」

 

「そっか……でも、どうしてこれを私に?」

 

「えっと……」

 

そこでアイラは僅かに目を背け、またも恥ずかしげに頬を染める。

それにエティーナは理由が分からず首を傾げるが、彼女が答えを告げるまでジッと待った。

すると僅かな間を開けた後、目を逸らしたままやはり恥ずかしそうに言った。

 

「つ、付けて欲しいんだ……アタシに」

 

恥ずかしげに告げられた言葉に、エティーナは若干の驚きを顔に浮かべた。

さっきも彼女が言ったとおり、彼女が今までこれを付けられなかったのは父と母の事を思い出すから。

思い出した二人の事から失った日のことを思い出し、辛い思いをするのが嫌だったから。

だから今まで付けられずに持っているだけだった。なのにそれを今、自分に付けて欲しいと彼女は言った。

故にエティーナは彼女の告げた事に驚くしかなく、首飾りとアイラを交互に見た後、一言尋ねた。

 

「……いいの?」

 

短い言葉だが、意味は十分に伝わる一言。

それがアイラにもしっかり伝わり、恥ずかしげな表情は一転して真剣な顔となる。

だけどそこから返ってくる返事は首を縦に振るという、肯定を意味する返事であった。

その返事を見ても僅かにエティーナは迷いを見せるが、数秒後に頷き返して首飾りの留めを外す。

そして彼女の首へと手を伸ばし、そのまま後ろへと回してちょうど中央にて外した留めを付け直した。

首飾りを付け終えた彼女が首から手を退けて数歩後ろに下がると、アイラは少し恥ずかしげに指で軽く朱色の石を揺らす。

 

「ど、どうかな……?」

 

「うん、似合ってるよ。なんていうか、付ける前よりも女の子っぽくなった感じがするな♪」

 

「そ、そっか……」

 

発言自体をまともに聞けば、それはまるで付ける前は男の子っぽい感じがするとも聞こえる。

だが、女の子っぽいという発言を褒めと取ってるためか、アイラはその部分に気づかずただ照れる。

 

「ピアスに首飾り、とくれば次は指輪かな♪ 今度一緒に街でアイラに似合う指輪でも見に行こっか♪」

 

「い、いいよそんなの。これ以上装飾品を付けても邪魔になるだけだって」

 

「ふふ、ダ〜メ。アイラは喋り方とか雰囲気が少し男の子よりなんだから、外見だけでも女の子っぽくしないと♪」

 

「うぅ……」

 

今度の失礼発言はちゃんと聞いてはいたものの、彼女の雰囲気に圧されて唸るしか出来ず。

結果として拒否も出来ずにエティーナの言うとおりに事が進み、近々買い物を一緒することになった。

だがまあ、以前なら怒鳴って拒否していたのに、今は照れながら控え気味な拒否の姿勢。

これを見るとアイラとしてもまんざらではなく、ちゃんと嬉しいという思いがあるのだろうと分かる。

そうしてエティーナの言動にアイラが照れるばかりの状況はしばらくの間、この部屋にて繰り広げられる事となるのだった。

 

 

 

 

 

エティーナとの話の後、アイラは彼女と共に皆がいるジェドの部屋へとやってきた。

それは先ほど迷惑を掛けたリンディに謝罪をすると言い出したアイラの言葉故である。

エティーナは話の中でリンディはきっと気にしてないと言い、実際彼女は気にした感じはない。

だけどアイラとしてはそんな事は関係ない。悪い事をしたのなら気にしてなかろうと謝るのが筋。

本来素直な性格故のこの判断にエティーナも気にしなくていいとは言えず、道理であるが故に彼女と共に部屋へと来た。

そして今、後ろでエティーナ、正面でジェドとグレアムに見守られながら、彼女はリンディと向き合っていた。

 

「…………」

 

「……えっと」

 

アイラからではないが、二人が来たときに簡単な事情を聞いている。

だから彼女からの気にしてないからとも言わず、アイラと向き合いながら彼女の言葉を待つ。

だけど睨んでいたときとは逆にアイラは目も合わさず、無言のまま頬を赤くしてそっぽを向いていた。

しかもそんな状態で時間が数分と過ぎている故、リンディとしても少し困り気味な様子になっていた。

そんな中、このままでは埒が明かないと思ったのか、エティーナが彼女の後ろから両肩に手を置く。

だがそこからする事はただ一言告げるだけ。頑張ってと、ただ彼女を勇気付ける一言を口にするだけであった。

しかしそれが彼女には効いたのか、アイラはまだ頬を染めながらも背けていた視線をリンディへと合わせる。

そして一、二度ほど深呼吸をした後――――

 

 

 

「ご、ごめんなさい……」

 

――小さな声ながらも、そう口にした。

 

 

 

それは彼女にとって精一杯の謝罪の言葉。それが彼女の口からリンディに向けて放たれた。

その事に事情はある程度聞いていたものの、ジェドとしても感嘆の息を漏らさずにはいられない。

対してそれは面と向かうリンディも同じなのか、少し驚きを見せながらもすぐに笑顔になり、少ししゃがんで彼女の頭に手を置いた。

 

「さっきの事、私は全然気にしてないわ。むしろ謝るのは私たちのほう……私たち管理局がもっとしっかりしていれば、アイラちゃんのお父さんもお母さんも亡くなる事はなかったのだから」

 

撫でながら言ってくる彼女の言葉に対し、アイラは首を振るって否定の言葉を言おうとする。

だが口にするものがまともな言葉にならず、最終的には消え入りそうな声となって下を向いてしまう。

しかしそれでもリンディには伝わったのか、ありがとうとお礼の言葉を告げられ、もう二、三度頭を撫でられた。

そして撫でる手が離れた後、アイラは俯いた顔を再び上げて再度彼女と視線を合わせ、おずおずと口を開いた。

 

「一つさ……約束してくれよ。もう絶対、アタシみたいな奴を生み出さないって……」

 

「……ええ、約束するわ。アイラちゃんにも、他の誰にももう悲しい思いはさせない。この件の犯人も必ず、捕まえてみせるわ」

 

同意を求めるように後ろのジェドの横に立つグレアムへと視線を送り、彼もそれに頷く。

二人のその反応と言葉を見て、アイラは言葉ではなく頷き返す事で信じると二人に返した。

その後、三人のやり取りを見て事が収まりを見せたと判断したジェドはアイラへと近づいた。

 

「一時はどうなるものかと思ったが、何事もなくて何よりだ。しかし、存外に丸くなったな、ちびっ子」

 

近づくと共にそんな事を言い、リンディと同様に頭へと手を置いて撫でようとする。

だが、頭に手を置いた段階でアイラによって払われ、ちょっと睨み気味な視線を向けられた。

 

「アンタは撫でんな……変態さが移る」

 

「なんだそれは……というか、私は変態ではないといつも言っているだろ!!」

 

「嘘つけよ!! アタシの着替えやら風呂やらを覗きやがって……変態以外になんて呼べってんだ!?」

 

「だから、あれはわざとではないと何度言えばわかる!」

 

「毎度毎度同じ事されたらわざとじゃないなんて思えるか!! この変態ロリ男!!」

 

売り言葉に買い言葉というように、アイラの発言にジェドは猛反発を見せる。

対してアイラも一歩たりと引かず、彼を上回る勢いでギャアギャアと喚きたてる始末。

先の雰囲気から打って変わったそんな状況に、蚊帳の外とされた三名は苦笑するしかなかった。

 

「もう……ジェドさんもアイラも、相変わらずなんだから」

 

「でも、逆に仲が良くも見えるわね。凄く息が合ってるみたいだし」

 

「確かに……しかし、ジェドも一体何をしてるんだか」

 

寄ってきたエティーナの言葉にリンディは同意し、グレアムも同意しつつジェドの行為に溜息をつく。

だがそんな三人の発言や様子など気にも留めず、ジェドとアイラは未だに喚き合っていた。

しかしそれも喧嘩するほど仲が良いと見る三人は止める事なく、ただ微笑ましそうに見るだけ。

そしてこの二人の喚き合いは三者が見詰める中、およそ三十分近く続くのであった。

 

 


あとがき

 

 

そういうわけで、アイラの一件は収まりを見せたわけです。

【咲】 早いわね。

まあねぇ……そもそも管理局を恨む事自体、お門違いだってアイラは気づいてたわけだしな。

【咲】 でも、正直簡単に割り切れる事じゃないでしょ。

ふむ。だから彼女はもう同じ事をしないでって約束を出したんだよ。

【咲】 それを切っ掛けで割り切ろうとしたって事?

そういうことだ。まあ、過去の結末が分かってるんだから、約束が破られたのも分かるだろうがな。

【咲】 エティーナが死んだ現在を見るとそういうことになるわねぇ。

うむ。しかも、今度はお門違いとかではなく、現実問題として管理局に非がある事件だしな。

【咲】 それがアイラが管理局を恨む理由ね。

そうそう。ただ、現在の話ではもう過剰に恨んではいないけどな。

【咲】 確かにリンディやグレアムには恨みの感情を出してないわね。

うむ。まあ、管理局自体は恨むというより、不信感丸出しな部分があるわけだが。

【咲】 でも管理局とある程度関われるって辺り、昔とは違うって事よねぇ。

だな。まあだからこそ、グレアムはアイラと会って話したとき、大人になったと言ったわけだが。

【咲】 なるほどねぇ……で、次回の話は過去のどんな部分なわけ?

ふむ、次回はだな、今回出たエティーナとアイラの買い物風景のお話だな。

【咲】 それって本編を進める上で必要ある話なの?

かなりな。それに序盤こそ買い物風景だが、後半でアイラの両親を殺した犯人が……。

【咲】 犯人が……何よ?

まあ、その先は次回のお楽しみにだ。

【咲】 はぁ……まあ、いいけどね。

てなわけで、今回はこの辺にて!!

【咲】 また次回会いましょうね♪

では〜ノシ




管理局が直接何かをしたとかではなかったみたいだな。
美姫 「みたいね。だからこそ、アイラもこうしてリンディたちとも仲良くなったのね」
しかし、それでもまた不信感を抱く事になってしまったんだよな。
美姫 「そうよね〜。で、次回はちょっと気になる言葉が」
だな。一体何が起こるんだろか。
美姫 「次回も待ってますね」
ではでは。



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