アドルファに敗れた恭也とオリウスが運ばれた場所。そこはアースラの内部と似たような場所。

長い通路や途中にある多くの部屋など見た感じで良く似ており、ここは戦艦の内部なのではと予測も出来る。

しかし予測しようにも運ばれた本人たる恭也は先の激闘にて敗れ、運ばれたときには気絶していた。

オリウスに関しても、元々デバイスとして生まれた場所がここだから別段驚くようなものではない。

そして運ばれてから僅かな時間が経った現在、オリウスは恭也と引き剥がされ、ジェドの元にいた。

 

「よくぞ帰ってきたな……心配したぞ、リース」

 

《……帰ってきたじゃなくて、帰ってこさせたの間違いでしょうが》

 

ブスッとした声でそう返され、ジェドは困ったかのように指で頬を掻き始めた。

そもそも彼は彼女が自身の元を去った理由を分かってはいない。いや、実際は分かろうとしていないのかもしれない。

自身が娘のためを思って行っている研究を、当の娘本人に否定されてしまうのが怖いのかもしれない。

結局、本当にそうなのかは分からないが彼が理由を知らないのは事実。それ故、困惑を浮かべるしかないのだ。

 

「何をそんなに怒っているんだ? 私が何かリースの気に触る事をしたのなら謝るが……」

 

《っ……私をこんな身体にしておいて、よくもまあそんな事言えるよね》

 

ジェドの言葉で彼女の不貞腐れた声の中には僅かな怒りの感情が含み始める。

それにまた更に困惑してしまう彼は、今度は腕を組んで彼女が言ってきた言葉の意味について考えた。

そして考え始める事僅か一分弱、その答えを導き出したジェドはそうかとでも言うように顔をバッと上げた。

 

「そういえばお前がアイラと家出をしたのは、その身体が気に入らなかったからだったな……いやいや、すっかり忘れていたぞ」

 

《……はあ?》

 

確かに気に入らないというのはあるかもしれないが、彼の出した答えは根底から間違っていた。

気に入る入らないの問題以前に、彼女は人であった自分を強制的に捨てさせられたのが許せないのだ。

だから彼の放った言葉に呆れるような声を上げ、更なる怒りを抱きながらそれを正そうとする。

しかし、彼女が言葉を放つよりも先にジェドは動き出し、彼女の身体となる蒼い宝玉を手に取り部屋から出た。

 

《ちょ、どこに連れてく気!? ていうか私に触んないでよ、この変態親父!!》

 

「……そんな口が悪くなるほど気に入らなかったのか。すまん……すぐに新しい身体を用意してやるからな、リース」

 

彼女の喚きを全て身体が気に入らなかった故のものと決め付け、彼は歩みを止めない。

そうして念話による喚き声が廊下に響く中、彼はただ一点の方角を目指して元いた部屋から遠ざかっていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのはB.N

 

【第一章】第三十話 解き放たれし者、彼女たちの真意

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『え! なのはちゃんにシェリスちゃん!? ほんまに!?』

 

「うん。いろいろあって今、闇の書さんと戦ってるの」

 

外で誰かが戦っているとは聞いたがそれがなのはとシェリスだとは思わず、はやては驚きを声に表す。

しかし状況が状況故に悠長に驚いてもいられず、そこで彼女は何かを考え込むように間を置いた。

だが、今も言ったとおり事態は急を要するため、悩む時間も僅かに彼女を告げる。

 

『ごめん、なのはちゃん、シェリスちゃん。その子、止めてあげてくれる?』

 

「にゃ?」

 

はやての声が聞こえたときからお腹の痛みを忘れたシェリスはその言葉に首を傾げる。

彼女と戦ってる時点で止めようとする意図があることは明確なはず。なのにはやては改めて止める事を依頼する。

その意味がシェリスには分からないため小首を傾げるしかなく、それを声で読み取ったはやては詳細の説明に入った。

それによると闇の書の本体とは別に自動防御プログラムというものが存在し、それが管理者権限を使用不可にしているらしい。

だからはやてからでは闇の書を止めることが出来ない。だけど、外でプログラムと戦っている者なら可能となるのだ。

目の前の彼女――自動防御プログラムに何らかの強いダメージを与え、一時的にでもフリーズさせれば管理者権限が使用可能になる。

管理者権限さえ使えれば闇の書を救う事が出来る……故に、外で戦っている彼女たちにそれを頼みたいという事であった。

 

「なる……確かに管理者権限さえ使えれば、本体とプログラムを切り離す事が出来るかもしれないスね。いやはや、ピンチの際に救いの女神あり……解決の兆しが見えてきたっスね!」

 

いつの間にか隣に移動していたアドルファの言葉に、同じような内容を念話にて聞いていたなのはは頷く。

と同時に彼女はレイジングハートを両手で持ち、先端を闇の書へと向けて高らかに叫ぶ。

 

「エクセリオンバスター、バレル展開。中距離モード!!」

 

《All right. Barrel shot》

 

叫びに応じてバレルたるデバイスの先端は開かれ、彼女の足元に桜色の魔法陣が展開する。

だが、まるでそれを妨害すると言うように海から多数の触手が出現。途端、砲撃準備で動けない彼女へと襲い掛かる。

それにより一旦は展開したバレルを閉じて回避行動に移ろうかとも考えるが、行動に移すよりも早く隣にいた両名が動いた。

 

「なのはお姉ちゃんの邪魔はさせないよ!」

 

「そういう事っス! てなわけでなのはさん、遠慮なくぶちかましてやってくださいっス!!」

 

展開する盾によって迫る触手の脅威からなのはを守り、増える触手の群れを容赦なく斬り刻む。

障壁を的確に張って守れるシェリスにも驚きはするが、それ以上にアドルファの動きには驚きを通り越してしまう。

増える端から斬り刻み、増えた数よりも減った数のほうが多いという状況に出来る彼女の腕前。

闇の書単体を相手にしてるときも凄いとは思ったが、無数に近い触手相手のこの立ち回りはそれ以上であった。

しかし、だからといってそちらばかりに気を取られるわけにはいかない。折角、自分のために二人が頑張っているだから。

 

「いくよ、レイジングハート!」

 

《Yes, my master》

 

一度閉じた目を開き、闇の書たる上空の彼女を見据えて告げた言葉にレイジングハートは応じる。

そしてなのはは魔力を集束した光を先端に顕現するデバイスを強く握り、そして先ほど以上の声で叫ぶ。

 

「エクセリオンバスター! フォースバースト!!」

 

叫びに呼応して環状の魔法陣がレイジングハートに顕現。途端、集束した魔力は更に光り輝く。

力強い輝きではあるが、どこか温かさが感じられる光。それはきっと、なのは自身の思いを乗せた故。

闇の書の内部空間に囚われた者を助けたい。闇の書自身を悲しき運命から解放してあげたい。

強く抱く思いは魔力の光となって表れ、そして――――

 

 

 

「ブレイクシューートッ!!!」

 

――四つの閃光となり、闇夜の空を駆けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バルディッシュ、ここから出るよ。ザンバーフォーム、いける?」

 

《Yes, sir》

 

「……いい子だ」

 

相棒たるバルディッシュの返事に笑みを浮かべ、一撫でした後に彼女はそれを大きく掲げる。

そして魔力を走らせることにより自分に残る夢の最後の残り香を消し、見慣れたバリアジャケットを纏った。

自身の身を包んだそれを一目確認すると同時に彼女は掲げたデバイスを下ろし、両手で構える。

 

《Zamber form》

 

構えたデバイスから二発の弾丸の装填音が響き、魔力の解放と共にその形状を変える。

ほんの一瞬にして変わった形状はいつもの斧とは違い、巨大な剣であろうものの柄であった。

そして形状が変化して間もなく、解放された魔力は巨大な柄に相応しいほどの大きさをした金色の刃を顕現する。

 

「疾風迅雷!!」

 

刀身と同等の色をした魔法陣を足元に展開し、彼女はバルディッシュを一度前に掲げた後、ゆっくりと一周させる。

そして一周を終えると大剣を上段へと構え、空間を震わせるほど高らかな声を上げ、一面に紫電を走らせる。

彼女のその姿には、先ほどの夢に関しての迷いはもうない。姉のお陰で、彼女は迷いを断ち切ることが出来た。

だから彼女はこの夢の世界を完全に終わらせる。自分を待っていてくれる人たちがいる世界へ戻るために。

その思いを胸に彼女は振り上げた大剣をほんの数秒だけそこで止め、一度だけ目を閉じた後――――

 

 

 

「スプライトザンバーーー!!!」

 

――閉じた目を開くと同時に、金の刃で夢の空間を斬り裂いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁて、この空間をぶっ壊すとするか。カールスナウト、フラクチャーモード準備」

 

《Yes, my master!》

 

弾丸の装填音を空間に響かせ、カールスナウトの刃の形状は鋸状へと変化する。

そして解放した魔力を動力にして鋸を高速回転させ、けたたましい音と共に火花を散らせる。

 

「ついでだ……エティーナにアタシらの成長の程を見せてやろうぜ、カールスナウト!!」

 

《Yes. Fracture barrels deploy, Thrasher creation!》

 

エティーナは自分の目の前で確かに消え去った。だけど、彼女はまだ自分を見てくれている。

自分がまだ迷ってはいないか、泣いてはいないか。きっとそんな心配を抱いて、見てくれているに違いない。

そう思えるからこそアイラは彼女の心配を拭おうといつもの調子で叫び、戦斧を大きく振り上げる。

 

《Thrasher barrels expand and create complete!》

 

「よっしゃ! じゃあ、いくぜ――――!!」

 

振り上げたデバイスは鋸状の刃を覆う両側の装甲を開き、力強く回転する刃を露出させる。

後は振り上げたそれを振り切るだけ。それだけできっと刃は空間を斬り裂き、夢は本当の終わりを告げる。

そして同時に見せつける事が出来る。彼女と一緒にいた頃よりも、自分がずっと成長しているということを。

なぜなら今、彼女が放とうとしている技はその頃はまだ未完成だった。よく不発に終わって、彼女に励まされていた。

その技が使えるという事はきっと成長した証となり、彼女の心配を拭うには十分なものとなるだろう。

だから彼女はもう迷いを見せない。彼女の心配を消し去り、自分の成長を見せ付けるために――――

 

 

 

「スラッシャーインパルス!!」

 

――ただ力強く、怒声のような叫びと共に戦斧を振るった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夜天の主の名に於いて、汝に新たな名を贈る」

 

光の溢れた空間で、聖母の如く慈愛に満ちた声をはやては響かせる。

闇の書と呼ばれ続けてきた悲しき彼女を、ただ優しさで包み込むかのように。

 

「強く支えるもの、祝福の追い風、幸福のエール……」

 

彼女の声が語り続けるそれはまるで、一つの詩のようにも聞こえる。

そしてそれは一切の迷いなく、目の前の彼女だけへと向けられる言葉。

もう闇の書などと呼ばせないため、ただ彼女へと贈るはやて自身の優しさ。

それは光の溢れる空間に新たな光を生み出し、彼女の頬に一筋の涙を伝わせる。

そんな彼女へとはやては今一度優しい笑みを向け、そして――――

 

 

 

「リィン、フォース……!」

 

――変わらぬ優しき声で、新たな名を告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を焼くほどの閃光が収まり、戻った来たフェイトとアイラの姿があった。

同時に切り離された防衛プログラム、そして夜の天を冠する二色の光が僅かな間を空け、隣り合うように存在する。

その様子を戻ってきた二人、そして彼女らを戻すために奮闘した者たちは静かに見詰める。

見詰める先にあった小さな光は四色の光を生み出し、それらはまるで寄り添うように姿を顕現した。

 

「ヴィータちゃん!?」

 

「シグナム!?」

 

何度も武器を交えた者。烈火の将シグナム、鉄槌の騎士ヴィータ。

加えてシャマルとザフィーラの姿もそこにはあり、なのはたちは僅かばかりながら驚きを示す。

だけど同時に理解も出来る。守護騎士たる彼女らが戻ったということは、自分たちのしたことは成功だったということを。

そしてそんな彼女たちに更なる確信を与えるべく、守護騎士が囲む白い光は弾けた。

 

「夜天の光よ、我が手に集え」

 

光から現れた少女はなのはやフェイトにとってとても見知ったもの。

それ故か、彼女たちは少女の姿を見た瞬間に嬉しさが溢れ出し、彼女の名前を呼んだ。

すると呼びかけに少女は顔を向けて小さな微笑を返し、手に持つ剣十字のレリーフを象った杖を高々と掲げた。

 

「祝福の風、リィンフォース――――セットアップ!」

 

声に応じてレリーフから光が放たれ、その光は彼女の身体を包み込む。

そして光は彼女を守る甲冑となり、夜天の魔道書との同調を示すように瞳と髪の色が変化した。

そうして光が収まり、そこに立っていたのはもうただの少女ではなく――――

 

 

 

――夜天の王としての、八神はやてがそこにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全てが戻り、後は目の前で黒く輝く防衛プログラムを破壊するだけである。

だが、暴走開始まで時間がないにも関わらず、そこに至るまでで様々な問題が発生した。

はやてに抱きつき、ヴィータが泣き出してしまった事。彼女が戻り、シェリスがはしゃぎ出して手が付けられなかった事。

そこはまあ些細な問題であるとも言えるのだが、もっとも大きな問題であったのが――――

 

 

「なんでテメエがここにいるんだよ……」

 

「いやぁ、そう言われましても……ウチにもいろいろあるわけでして」

 

――皆に交じって、アドルファがここにいるという事。

 

 

本来管理局にとって重要指名手配犯たる彼女がここにいるのは、闇の書に関してとは別個で問題。

なのはの説明によって彼女がこの事態の収拾に協力してくれたということは分かったが、それでも納得は出来ない。

なぜなら百歩譲ってはやてと交友関係のあるシェリスはいいとしても、彼女が出張る理由が一切浮かばないのだ。

元々アイラも彼女については謎が多い上、性格的にかなり信用できないから余計に彼女の口調を強くなる。

加えて状況説明のために後から合流したクロノも現在は警戒中。まあ、しょうがないと言えばそうであろう状況だった。

 

「あ〜、そんなに警戒しなくても大丈夫っスよ。ウチは確かに立場上管理局と敵対関係スけど、今は別に事を荒立てようとか思ってないスから」

 

「……なのはの手助けをしてくれたみたいですから、そこは分かります。ですけど、初めからそうするつもりではなかったんでしょう?」

 

「まあ、それはそうスけど……」

 

「じゃあ何のためにここへ? いや、それ以前に貴方たちの目的は――――」

 

「ちょ、ちょっとクロノ、落ち着いて……」

 

捲くし立てようとするクロノをフェイトが止め、彼は落ち着くために小さく一息ついた。

闇の書事件でも、そしてそれ以前でも管理局を騒がせている面子の一人。しかも公に手配されている人物。

そんな者を前にしているせいか気が少し高ぶってしまう。事件を以前から追っていた彼ならば、無理もないだろう。

だが闇の書の暴走まで時間もない事を落ち着いた後に思い出し、また後で事情を聞かせてもらいますとだけ告げる。

そして先ほどからただ成り行きを黙ってみているしかなかった面々へと顔を向け、現状についてを話し出した。

 

あと数分であの闇の書の防衛プログラムは暴走を開始する。僕らはあれを止めなければならない。現状では方法は二つ……一つは極めて強力な凍結魔法で停止させる事。そしてもう一つは、軌道上に待機させてあるアースラのアルカンシェルで蒸発させる事だ」

 

一つ目の方法である凍結魔法による停止。これはクロノがグレアムより託されたデバイス『デュランダル』を使う。

元々グレアムはこれを用いて闇の書の暴走時を狙い、凍結させようとしていたのだからおそらくは出来るだろう。

そして二つ目は先日追加武装としてアースラに備え付けられた魔導砲『アルカンシェル』を使い、消滅させる事。

特定条件を満たしていない限りは使用許可が下りないくらい危険な武装であり、その破壊力も凄まじいといえる代物。

故に防御プログラムと言えど直撃を受ければ消滅は必須。だからこそ凍結に続く二つ目の方法として挙がった。

 

「これ以外に何か手がないか。闇の書の主と守護騎士の皆に意見を聞きたい」

 

「えっとスねぇ、ウチの意見として言わせてもらはぶっ!?」

 

「テメエはちっと黙ってやがれ……」

 

「じゃあシェリスの意見をむぐっ!?」

 

「シェリスもちょっと大人しくしてようね?」

 

横から口を挟もうとしたアドルファはアイラに殴られ、シェリスはフェイトによって口を塞がれた。

そんな彼女らを横目で見て呆れの溜息をついた後、クロノは再度夜天の主と守護騎士に目を向け尋ねた。

 

「えっと、最初のは多分難しいと思います」

 

「そうだな。たとえ凍結させても、コアがある限り再生機能は止まらない」

 

シャマルについでシグナムが告げた事により、一番目として挙がった方法は除外された。

とすると後はアルカンシェルによる蒸発しか手がないという事になるが、それに関して別の方向から声が上がる。

 

「あとアルカンシェルもぜっっったい駄目!! こんな所で撃ったらはやての家までぶっ飛んじゃうじゃんか!!!」

 

二番目の方法に対して断固反対と叫ぶヴィータ。その言葉からはかなり聞き捨てならないものが含まれていた。

故にそれが気になったなのはは近くのユーノにどういう事かを尋ね、返ってきた返答に唖然としてしまう。

 

「あの! 私もそれ反対!!

 

「私も、絶対反対!」

 

「むぐ〜!!」

 

ヴィータと同じく反対の意思を示すなのはとフェイト。そして口を塞がれているため言っている事は分からないが、シェリスも同様の様子。

だけど三人の思う事も分かるが、闇の書の暴走が始まればその被害の程はアルカンシェルの非ではなくなってしまう。

だからこそクロノやリンディとて撃ちたくはないが、撃たなければ止められないと言うならばそうするしか手がない。

そう説得されてなのはもフェイトも二の句を繋げなくなってしまう。ただ、シェリスに至っては何やら叫びながら暴れているが。

 

「あーもー! 鬱陶しいね! みんなでズバー!っとやっちまうわけにはいかないのかい!?」

 

「あ、アルフ……」

 

「はっ、これだから頭の足りない奴は……事態がそんな単純なものだったら誰もこんなに悩まねえよ」

 

フェイトの困ったような声に次いでアイラの正論だが非常に失礼極まりない言葉。

それにアルフは苛立ちをそのままぶつけるかの如くアイラを睨むが、彼女はプイと視線を逸らしてしまう。

そんな二人に再度クロノは溜息をつきつつ、時間がないながらもどうしたものかと悩み始める。

 

「いつつ……よ、要するに、アルカンシェルを撃つに当たって被害がなければいいわけスよね?」

 

「そうですけど……何か手があるんですか?」

 

「手があるも何も、単純にここで撃たなければいいだけの話じゃないスか」

 

回りくどい物言いにクロノは首を傾げ、それにアドルファは少しばかりの溜息をつく。

そして上のほうを軽く指差し、先ほどの言葉の意味を彼らへと告げた。

 

 

 

「つまり、地上で被害が出るなら被害が出ない場所に転送したらどうってことスよ。例えば、宇宙空間とか」

 

 

 

彼女が口にした一言に一部を除いた誰もが唖然としてしまう。

しかし、我に返ると同時になのはやフェイト、はやてや守護騎士たちはその意見に賛同する声を発した。

宇宙空間への転送さえ出来れば、確かにアルカンシェルを撃ったとしても被害は皆無であろう。

だけどそれはあくまで転送がうまく行けばの話。下手をして失敗にでもなれば、それこそ被害はアルカンシェル以上。

だが、クロノとしてもユーノとしても、賭けに近い方法であれ被害が出ない可能性があるならそちらを押したい。

それ故、賛同とも反対とも口にしない一人、アイラへと意見を求めるために視線をそちらへと向けた。

すると彼女は少し考える仕草を見せた後、いいんじゃないかと短く告げることで彼女たちと同じく賛同の意を示す。

 

「仕方ない……賭けに近い方法ではあるけど、現状でそれが一番の選択であるなら」

 

アイラが頷いたことでほとんどの者がこの方法に賛同。故にクロノも仕方なしとばかりに了承した。

そして方法が決まった上で一同は暴走開始までの残り時間を利用し、各々の準備へと取り掛かり始めるのだった。

 

 


あとがき

 

 

というわけで、いよいよ決戦も次回で幕引きだ。

【咲】 長いような、短いような……微妙な感じよね。

まあなぁ。

【咲】 ていうか、アドルファがいるのに捕まえようとはしないのね?

普通に考えて無理だろ。闇の書の暴走まで時間が十数分程度、その間で彼女を捕まえられるならとっくの昔に捕まってるよ。

【咲】 まあ、クロノも状況を見て何が今重要かを判断したってことね。

そういうこと。ま、事件が終わったら改めて逮捕〜って感じかもしれないがね。

【咲】 その前に逃げるんじゃない? シェリスを連れてさ。

逃げるだろうね、確実に。

【咲】 ていうかさ、実際のところ彼女は何しに来たわけ?

闇の書を救うためだよ。

【咲】 ていうことはさ、防御プログラムを破壊しても夜天の書は〜っていうのを知ってるの?

彼女も一応は科学者だからね。プログラムを破壊しても、夜天の書が破損したまま伝々に関しては分かるよ。

【咲】 ふ〜ん……じゃあ、そこに関する手もちゃんと考えてるのね?

さあ、それはどうだろうねぇ……。

【咲】 ……まあいいわ。じゃ、今回はこの辺でね♪

また次回会いましょう!!

【咲】 ばいば〜い♪




いよいよ防御プログラムとの対決。
美姫 「クロノも流石に優先順位はどちらが先かを判断したみたいだしね」
果たして無事に防御プログラムを消滅させられるのか。
美姫 「気になる次回は……」
この後すぐ!



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