恭也たちとなのはたちは守護騎士やシェリスたちに逃げられた後、ユーノが付き添うという形でアルフを管理局へと転送し、仮本部となっているマンションへと赴いた。

そこですでに集合していたリンディやエイミィと合流し、作戦がものの見事に失敗したことを報告する。

そして話を終えた後に二人は落胆を浮かべると共に、謎の少女――カルラから告げられたことに驚愕した。

自分たちを捕らえようとするならば、自分たちはあなたたちの大切なものを奪う……その脅しの一言に。

正直管理局員の個人的な情報がばれるとは思えない。もしばれたとしても、データベースからハッキングされた可能性が高い。

そしてそうなのだとすると痕跡が残る可能性も大いに高く、そこから彼女たちの素性がばれてしまうことだってある。

だからそのことを管理局に即報告して調べてもらったがその一時間後、驚くことにハッキングされた痕跡は一切ないと返ってきた。

俄には信じ難い事実だが、それが本当なら一体相手はどうやって個人情報を得たのか。この世界の人だけに関わらず、局員のものまで。

しかしやはりというか、真実を得るには情報があまりに少なすぎる。だから今ここで結論を出すことは出来なかった。

故に唯一得られている情報として相手の名前、カルラ・クラムニーという名の人物についてエイミィに調べてもらうよう依頼する。

エイミィ自身もそれほど脅しを言ってのける相手に少し興味がある故、明日管理局に戻って調べると快く引き受けてくれた。

 

「でも、もしかしたら何も出ない可能性もあるかもね。自分たちの素性がばれるようなヘマをするとも思えないし」

 

「確かにそうだ。だけど可能性はゼロじゃない……情報が少ない今、可能性が薄くともそれに頼るしかない」

 

何も情報が得られないからといって調べることを放棄は出来ない。それは皆とて同じだ。

だから誰もがクロノの言葉に頷き、その情報に賭けてみる形で進む方面となった。

しかし問題はここから……この件に関して、どう動けばいいのかということ。

情報面から調査することは出来ても、脅しが真実か否か分からなければ下手に動くことが出来ない。

もし本当であるのなら最悪の結末を迎える可能性が極めて高い……賭けに出るにはあまりにリスクが大きすぎた。

 

「あの脅しはぶっちゃけるとこちらの行動を全て制限しているに等しい。闇の書に纏わること以外の全て……つまりはシェリスを捕まえようとする行動すらあいつらからしたら逆らったと取ってもおかしくはないね」

 

「だとすると、こちらが打って出るためには下手に手を出さず情報を得る……この場合だと、捕まえずしてシェリスからジェドの居場所を聞き出す以外にはないな」

 

《結局は危ない橋だけどね〜。シェリスのことだから誘導尋問に掛かれば簡単に吐くと思うけど、そこからの行動を迅速にしないとすぐにばれるし》

 

情報を得てからすぐにでも行動を起こし、ジェドを逮捕しなければならない。

情報を得たシェリスからジェドへと情報が伝わり、カルラとその仲間に伝わってしまうことが確実だから。

そして情報が伝われば脅しに逆らったと判断され、結果として言ったとおりのことをする可能性が高い。

これだけはなんとしても避けなければならない。だからこれははかなりの慎重さを必要とする行動だった。

 

「まあ、もっとも安全な策としては彼女を説得して引き入れ、情報を引き出すというのもあるけど……これは正直難しいな、今日の様子を見ると」

 

「研究の過程で何が成されているのか、何が成されるのかを知っていながら協力してるからねぇ、シェリスは。ま、それほどあいつを信用しているってことだろうけど……」

 

《馬鹿な子だよ、ほんと……昔も今も、そういったところが全然変わってないんだもん》

 

善悪の区別が出来なくとも、父親のすることだから絶対に正しい。

その思考が昔も、そして今も変わっていない……だからこそオリウスはそれを馬鹿だと言える。

研究が進めば一体どうなるのか。一体何をされるのか。それを全て知っているから。

そしてそれが成されたときの悲しみと絶望を……誰よりもよく知ってるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのはB.N

 

【第一章】第十四話 人の心を持ったデバイス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば……シェリスがオリウスのことをお姉ちゃんって言ってたけど、あれってどういうことなの?」

 

オリウスの呟きで場が僅かに静まる中、思い出したかのようにフェイトが聞いた。

数時間前の戦いの際、シェリスがデバイスのオリウスを見ると同時に姉と口にしたこと。

デバイスと親しい間柄というだけなら分かるが、人間である彼女がデバイスを姉と呼ぶのは明らかにおかしい。

だから何かしらの意味があっての言動であるのは確かだが、その意味がフェイトを含めて(恭也、アイラを除く)誰にも分からない。

故に言われた本人がいるのだから聞けばいい。そう考えたフェイトは単刀直入に尋ねたのだ。

 

《ん〜、別に言葉通りの意味だけど……それで皆は納得……しないよね、やっぱり》

 

「まあ、出来ればそう言われる理由を聞きたいのは確かだね。そうでなくても君たちは不思議な点が多すぎるんだから」

 

クロノが返した言葉に皆は同意するよう一様に頷き、視線がオリウスを持つ恭也に集中する。

視線を向けられた恭也とオリウス、そして向けられずとも話の矛先となっているアイラはしばし考える。

言うべきが、言わざるべきか。言葉にすれば簡単な悩みだが、三人にとっては非常に重大な悩み。

なにぶん彼らの持つ情報はジェドに纏わる極めて重要なものであると同時に、自らを危険に晒す情報だ。

つまり考えなしに話せば敵側からはもちろん、今は味方である管理局からも罪を問われる可能性も低くない。

 

「……なら、『罪は問うても今ここですぐ捕まえるようなことはしない』って約束してくれるなら、話してあげるさね」

 

故にアイラは自分たちの安全のために、この条件をクロノへと提示した。

これは言葉の裏を返えすと、約束しなければ何があっても情報を話すことはないということ。

管理局としてもジェドに関わる情報は欲しい。だけどこの条件はクロノの独断で頷いていいことじゃない。

だから彼は隣に座るリンディに了承するか否かを視線で求めた。

その視線に対して彼女は少し考えた後に了承するというように頷き、クロノはそれを見てから視線を戻して頷き返した。

 

「オッケー。じゃあ約束通り話すけど、もし話し終わった後に約束破ったらただじゃおかないからそのつもりで」

 

「わかった……」

 

釘を刺すような言葉と睨みにクロノは言葉と共に頷いて答える。

ちなみにそのとき、睨みに対してのものかクロノの頬を一筋の汗が伝ったりしていた。

どうやら、先日の彼女から受けた暴行未遂とそのときの視線が今だ頭に残っているようだ。

 

「そうだねぇ…………まずオリウスのことを話す前に一つ聞くけど、あんたたちはジェドのことをどこまで知ってる?」

 

「簡単なプロフィールと過去にデバイス製作者として管理局から一目置かれていたこと……大半が局で調べられることだから、そのぐらいかな」

 

「ふ〜ん……で、あんたは?」

 

「私も大体同じです。ただ、数回ほど彼と直接会ったことがあるくらいで、彼のしてた事にはあまり関わりませんでしたから……」

 

「会ったことがある?」

 

返ってきた言葉にアイラは首を傾げ、顎に手を当てて考え始める。

だけど悩み始めて僅か数秒足らずで手を外し、思い出したというようにポンッと手を叩いた。

 

「ああ、なんか名前と顔に引っ掛かりがあると思ったらそういうことかい。確かエティーナの友達だったよな、あんた?」

 

「ということは……やっぱり、あのときの小さな女の子があなたなの?」

 

「そうそう。いや〜、あまりに変わってて分からないならまだしも、あまりに変わらなすぎて分からないとはねぇ」

 

「こっちも、データで見たときはまさかとは思ったけど……本当に久しぶりね、アイラちゃん」

 

懐かしそうな目で告げてくるリンディにアイラは珍しく照れたように頬を掻く。

そんな二人の様子に恭也やオリウスを含めて事情を知らぬものたちは置いてけぼり。

事件についての話し合いをしているはずなのに、なぜか場の空気は同窓会っぽいものになっている。

 

「あ〜……折角の再会のところ申し訳ないんだが、時間も遅いから話の続きに戻ってもらえないか?」

 

「ん? あ、ああ、そうだったね……いや、懐かしかったからつい本題を忘れてたよ」

 

今再会を果たしたと言っても過言ではないので仕方の無いことではある。

しかし時間も時間、状況も状況であるために恭也は申し訳なく思いながらも話を元の筋へと戻させた。

そんなわけで話の筋も元に戻したアイラは先ほどまでしていた話の続きを口にし出した。

 

「まあ、ジェド個人に関しては知っているみたいだから、まずはオリウスのことに繋がる前提の話をさせてもらうよ」

 

「前提というと、オリウスというデバイスの製造過程の話ってことですか?」

 

「そんなとこ。じゃあ、少し長くなると思うけど、ちゃんと聞いてなよ?」

 

シェリスが姉と呼ぶ意味に製造過程が関係あるのか、というのは誰もが思う疑問。

だが頷くと共に一変して真面目な顔になったアイラを前にするとそんな疑問は口に出来ない。

故に皆はアイラの顔を視線に捉えつつ静まり返り、成されるであろう話で疑問が明かされるのを待った。

そんな皆の視線を一身に受けながら、アイラは全員を一度だけ見渡した後に話を始めた。

 

「まずジェドの研究についてだけど、これの目標として置かれていたのに「人と人のように、持ち主とデバイスが共に戦える」というのがある。これはアンタらの持ってるインテリジェントや、守護騎士たちやアタシが持ってるアームドでも最低限なら可能と言えることだね。現に簡易な魔法程度ならデバイスが独自で術式を編んで行使してるのをアンタらも知ってるし見てるだろ?」

 

「えっと……例えば私のバルディッシュやなのはのレイジングハートみたいに、危ないと判断されたら気を利かせて防御魔法を展開してくれることとかですか?」

 

「ま、そんなとこだね。で、それらのデバイスでも出来るのだからその目標は目指す意味がないようにも思えるけど、実際は似てるように全く違う。あいつが求めたのは共に戦えること……つまり専門的な用語で言うと、デバイスによる魔法術式の二重処理機能なんだよ」

 

「なるほど……オリウスに二つの人格が備わっているのはそういう理由か」

 

クロノ、そしてリンディはその説明で納得したが、なのはとフェイトはイマイチ分かってはいなかった。

そのためそこの部分は視線で二人に振られ、アイラの代わりに二人がこれの説明することとなった。

それによると魔法術式とはそもそも術者が魔法を使う際に用いる魔法式であり、これを知らなければ普通は魔法を使えない。

だが基本的に術式はデバイスの記憶中枢にて保存されており、コマンドさえ受け取ればよほど大きな魔法でない限りすぐに展開できる。

物によっては主からコマンドを受け取らなくとも、自らの意思と判断で使用することもデバイスによっては可能となる。

しかしデバイスは術者を一人決めてその者からのコマンドしか受けとらないため、基本的に術式は一度に一つしか処理できない。

そこでジェドによって考案されたのが「二重術式処理機能(ダブルキャスティングシステム)」、一度に二つの術式を処理しきる機能であるというわけだ。

 

「でも、これは下手したらデバイスが術式を処理できずに魔力が暴発する危険性もある。それを完成させたというのだから、やっぱりデバイス製作者としての腕はかなりのものということになるな」

 

「昔っからデバイス馬鹿だったからねぇ……三度の飯よりデバイス作るのが好きって奴だったよ」

 

そして自身が作ったデバイスを愛し、自分の子供のように大切にし続ける男。

それがデバイス製作者としてのジェドの顔であり、アイラが彼に惹かれた一面の一つ。

その証拠にこれを語るアイラの言葉は呆れというようなものだったが、語る顔には当時を思い出しての笑みが浮かんでいた。

 

「まあそこは置いとくとして話の続きに戻るけど……アンタの言うとおり、さすがのデバイス馬鹿でもこれを製作するのは困難極まったんだ。製作を始めたのはシェリスが生まれるよりも二年ほど前だったから、大体十三年前くらいかな。何度も設計図を作っては捨ててを繰り返して……そんなのを半年くらい続けたときだったよ、あいつが一人の女とくっ付いたのは」

 

「その女性というのが、エティーナ・オーティス。管理局の勧誘を悉く蹴ってジェドさんの助手であることを貫いた魔導師であり……私の親友だった人よ」

 

そのときの彼女の嬉しそうだった顔が、今でもリンディの脳裏に焼きついて離れない。

やっと彼が振り向いてくれたと、自分の気持ちに気づいてくれたと喜んでいた笑顔が。

 

「で、その二ヵ月後くらいに研究もある程度の段階まで進み、あとは組み上げて最終調整をするだけとなった。加えてエティーナのお腹に新たな命が芽吹いたんだ。あの頃は幸せの絶頂だったねぇ……ジェドも、エティーナも、そしてアタシも」

 

誰もの間には確かに幸せがあった。小さいけれど、三人にとって最高の幸せが。

ジェドとエティーナが結ばれたことも、それでも変わらぬいつもの生活も、家族が新たに増えることも。

何もかもが当時の三人にとっては幸せなこと。決して話したくなかった輝かしい日々。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――だけど、幸せな日々は唐突に決壊してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幸せだった日々が忘れられないように、その日のことが忘れられない。

幸せの中心だったと言ってもいい彼女の死、信じてきたものから裏切られた絶望感。

起こりえた何もかもがジェドとアイラから幸福の日々を奪い去った日のこと。

詳細が分からずともアイラの表情から結末がどんなものかが想像でき、皆も表情が僅かに沈む。

特に酷かったのは、リンディ……エティーナの死に関して、グレアムと同じく彼女も無関係じゃなかったから。

 

「ごめんなさい、アイラちゃん…………私があのとき、ちゃんと止めていればっ――」

 

「この間グレアムのジジイにも言ったけど、アンタらが気にする必要はないよ。出来ないことなんていうのは人間誰しもあること。それがたまたまアンタにとってこれだった……それだけのことさね」

 

気にするなと彼女は言う。だけどグレアムがそうだったようにこれは簡単に割り切れることではない。

そして二人以上にアイラからしたら割り切れるわけがないはずだ。管理局を、グレアムやリンディを恨んでも不思議はないはずだ。

あのとき管理局があんなことを要求しなければ、行われるそれを二人が止めてさえいれば……。

結局はもしの話であり、現実として成しえなかった現在ではアイラが関わった者たちを恨み、憎むほうが自然なのだ。

だけど彼女は気にしていないような素振りを見せる。二人のせいじゃないと、たまたま起こりえたことだと割り切ろうとする。

感情のまま怒りをぶつけることも、罵倒をすることも一切しない。それが逆に彼女を辛い思いにさせることだとしても。

 

「……まあ、ジジイと同じでこれだけじゃアンタも納得がいかないわな。憎み続けてもおかしくないはずなのにアタシがこんなこと言うんだから」

 

何も答えを返さないことが肯定してると取れ、アイラはソファーの背凭れに深々と背を預ける。

その後に僅かながら溜息をつき、周りを見渡すと全員が納得していないような顔をしているのが目に映る。

リンディと違って何があったのかは知らない。だけど彼女の様子からして普通じゃないことがあったのは確か。

そしてそれはリンディの言動と様子からして恨んでも不思議じゃないことだと分かる。だから、納得が出来ない。

いや、正確には不思議でならないというほうが正しいだろう。どうして憎しみを放棄できるのか、どうして割り切ることが出来るのかが。

だからアイラはその疑問を解く答えとなる話を、今こうして話していることの本筋となる部分を話し始めた。

 

「アンタらのその疑問を解く鍵となるのが、オリウスの誕生に纏わる部分。愛する者を失ったことで生まれた……歪んだ研究に関してだよ」

 

「……もしかして、死した者を蘇生しようとでも考えたのか?」

 

半年ほど前にあった、フェイトと出会う切っ掛けとなる事件。

PT事件と呼ばれるこの事件の首謀者、プレシア・テスタロッサは少し違えどそれと似たことを成そうとした。

ジュエルシードを用い、アルハザードの秘術を使って愛娘であるアリシアがいた過去を取り戻そうとしていた。

その事件と関わった者としてはアイラの述べたことに対して、そういう答えが思い浮かんでしまう。

特にPT事件に深い関わりを持つフェイトからしたら尚更……故に彼女はそのときを思い出して辛そうな顔をする。

 

「残念だけど、不正解だよ。アイツがしようとしたことはそんなことじゃない……それよりももっと、非人道的なことだよ」

 

PT事件の詳細を知らぬアイラからしたらなぜフェイトが落ち込んでいるのかは分からない。

だが話の矛先はそこではないため、今は気にせずにクロノの言葉を否定した。

そのことに皆は一様に驚きを浮かべる。考えが違っていたことではなく、もっと酷いことだという言葉に。

そんな一同にアイラは特に何を言うでもなく、中断された話の続きを口にしだす。

 

「エティーナが死んだ……だけどアイツが宿した命はそれよりも前に無事生まれ、今も生き続けてる。でも娘が生き続けていることが逆にジェドを追い詰めたのさね……二度と家族を、失いたくないってね。だからこそアイツはエティーナが生きていたときに行っていた研究の難点となることを、その願いのために用いたんだよ」

 

「研究の、難点……?」

 

《簡単なことだよ。『二重術式処理機能(ダブルキャスティングシステム)』は完成すれば確かに大きな戦力となるけど、完成させるにはクロノが言ったように自律意志を二つ入れる必要性があったの。でもこれはデバイスにとっても負荷が大きいし、加えて人格二つを入れたデバイスなんて普通の魔導師の魔力じゃあ扱えないんだよ。少なくとも、なのはやフェイトくらいの魔力がある人じゃないとね》

 

扱えないデバイスは起動させることすら出来ない。それでは意味がない。

だからジェドはそこの部分で多大に悩み続け、とある方法を取ることでデバイスは完成することとなった。

そのときに挙がったこの問題点をジェドは願いのために使った。これだけではまだ要領を得ない。

それがちゃんとアイラにも分かっているからこそ、この話の答えとなる部分を語りだす。

 

「オリウスが今言ったとおり、こういう難点がアレにあった……これを思い出したジェドはこう考えたんだ。娘の人格……いや、この場合は心とでも言ったほうがいいか。それをリンカーコアと共に抽出し、デバイスへと組み込むことで半永久の命とデバイスの完成という結果を得るとね」

 

「っ!? そ、そんなこと……可能なのか?」

 

「可能だから、オリウスはこうして完成したんだよ」

 

「で、でも、そのジェドって人が願ったのは娘の命なんだよね? だったら、シェリスじゃなくて別の人でそんなこと……」

 

「ああ……そういえば根本的なことを話してなかったね。確かにジェドが願ったのは娘の命が潰えないことだけど、その娘っていうのはシェリスだけじゃないんだよ」

 

ジェドの娘は一人ではない……それは誰もが知らない事実。

故に恭也を除いた一同は驚くしかなく、語り続けるアイラから視線を外すことも出来なかった。

 

「シェリスと双子であり姉である、ジェドの娘。それが――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リース・アグエイアス……インテリジェントデバイス【オリウス】の、自律意志となった子だよ」

 

 


あとがき

 

 

とまあ、今回は少し短めだが、これがオリウスが生まれる過程だな。

【咲】 ん〜、ていうかさ……リースっていえばもう片方の自律意志じゃないわけ?

ふむ、確かに彼女はそう言っているな。だけど、そう言っていたのには少なからず意味があるのだよ。

【咲】 意味ねぇ……ま、いつもの如くここでそれは話さないんでしょ?

まあな。さて話を変えまして、今回のここでは少しばかり補足をしようと思う。

【咲】 何の補足よ?

ふむ、二つあるんだが……まず一つ目、過去を秘密にしていたアイラがなぜ今回話したのかだ。

【咲】 そういえば前に聞かれたときは頑なに話したがらなかったわね。

ふむ……まあ、今回話した大きな理由は、事態が急変しすぎてしまったからだ。

謎の少女――カルラの出現、脅し紛いの調査断絶等々……これだけでもジェドをどうにかする手立てがなくなることだ。

だから管理局、というか彼らに約束を取り付けてある程度を明かし、秘密裏調査の協力をってことだな。

【咲】 でもさ、そんなことしなくてもクロノたちは調べようとしてなかった?

確かにな。でも、何も元となる情報がなければ調査は出来ない……それが分かってるから、話すことで協力してるんだよ。

ちなみにだけど、話してることはアイラが関わる過去の半分程度だけで、全ては話してなかったりする。

【咲】 ふ〜ん……で、二つ目は?

二つ目は〜、過去を話すのはオリウス……というより、リースの心が強くなったときと言っていたのに、どうして今話したのかだ。

これは文をよく読めば分かることだけど、アイラが知りえるリースとシェリスの母親の死の真相……これを彼女は話していない。

そもそも母親がいると言うこと自体は知っているわけだし、事故で死んだと言うことも聞かされているからリースも疑問を抱かない。

つまり結果として事実が明かされることはなく、リースにとって辛い現実を教えることにはならなかったというわけだ。

【咲】 なるほどねぇ……でも、いずれは知ることになるんでしょ?

まあね。ただ、この章では話されないだろうけどな。

【咲】 じゃあ何章で話されるのよ?

たぶん二章……このオリジナルの設定が生かされる部分でだ。

【咲】 ま、あくまで今は闇の書事件解決が先決というわけね。

そういうことだ。では、補足もしたところで今回はこの辺にて!!

【咲】 また次回会いましょうね〜♪

では〜ノシ




オリウス誕生秘話。
美姫 「驚きの内容だったわね」
だな。しかし、全てが語られた訳じゃないらしいし。
美姫 「ああ、全てが明らかになるのはいつなのかしら」
それに、今後の管理局の動き方も気になる。
美姫 「次回も楽しみにしてますね」
待ってます。



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