暴れまわったアイラが落ち着きを取り戻した後、一同はとりあえず場所を変えることにした。

引越ししたての部屋は荷物やらで散らかっており、話をする空間としては適してはいない。

加えて引っ越したリンディたちとしては近所付き合いとなるなのはの親に挨拶をしておく必要もある。

それらの理由があり、部屋から出た一同はマンションの一階へと降りて入り口から外へと出た。

そこでフェイトに会えるのを待っていたアリサたちと合流し、軽い自己紹介の後になのはの親がいる翠屋へと赴いた。

昼時から少し過ぎた時間ということもあって客足に落ち着きが出ているものの、それでも多少は込み合っている。

それ故にまた後でということにしたほうがいいかと悩むリンディだったが、気を利かせたなのはが厨房へと呼びに向かっていった。

それから程なくしてなのはに連れられて店の店長兼なのはの親である桃子が顔を出し、引越しの挨拶をリンディは口にする。

 

「本日より近所に引っ越してまいりました、リンディ・ハラオウンと申します。これからよろしくお願いします、高町さん」

 

「あらあら、どうもご丁寧にありがとうございます。こちらこそよろしくお願いしますね」

 

ペコペコと頭を下げて挨拶を交わした後、軽く話しこみ始める桃子とリンディ。

近所付き合いとなるのだし子供が親友同士なのだから親としての交友も必要だろうが、仕事時に話し込んでいいものだろうか。

いや、昼時が過ぎたとはいえ忙しいのに変わりないのだからいいわけがない……現に厨房からの松尾の視線が非常に怖い。

とまあ、大人たちのそういった事情はさておき、所変わって翠屋の外には子供たち+αが同じく会話に花を咲かせていた。

その一同の周りを駆け回る二対の影……フェレットと子猫の姿が非常に印象的である。

 

《逃げんなぁ! 大人しくしろ、ユーノォォ!!》

 

《だ、だったら追っかけてこないでくださいよぉぉ!》

 

アリサとすずかはともかく、念話が聞こえる者たちにはどうしたらいいか迷うことであった。

聞こえぬ振りをして放置するべきか、ユーノを助けるべくアイラを抑えるべきか。

それを悩みに悩んだ結果、アイラが先ほどのように我を失っていないということから放置することにした。

まあ、傍目から見たら種族の違う二匹の動物がじゃれあっているようにも見えるので見る分には問題ない。

実際、念話が聞こえていないアリサとすずかがこの光景を目にしても――

 

「本当に仲がいいよね、ユーノくんとアイラちゃんって」

 

「そうよねぇ。本来だったらハンターと獲物って間柄なのに、どうしてこんなに仲がいいのかしらね」

 

仲がいい二匹という風にしか捉えず、微笑ましいものを見るような目で見るだけである。

まあ、実際仲がいいというのは間違っていないだろうが、やっていることはユーノ虐めに他ならない。

そのことが分からぬ二人の呟きになのはもフェイトも、恭也でさえも乾いた笑いを浮かべざるを得なかった。

 

《これだから、野生本能が備わった馬鹿猫は……》

 

アイラのことを良く知るオリウスだからこそ言える、容赦のない一言。

それが三人の耳にも良く聞こえ、なぜかとても印象的になるほど頭の中に残るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのはB.N

 

【第一章】第十話 平穏の中で…… 後編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユーノとアイラの行動は見つつも、フェイトは頭の中では別のことを考えていた。

それは昨夜の戦闘で共に戦った、恭也とオリウスのこと。

正直言うとフェイトだけではシグナムの技量を前に勝つことはおろか、保つことでもやっとだと言える。

だけど二人が加勢してからは目に見えてこちらが押していた……つまりこれは、二人の技量の高さを物語る。

シグナムと同等以上の剣の腕とそれを更に強化する魔法の数々、フェイトの目から見ても強いと言えた。

特に近接主体のその戦い方は近、中接戦闘を主とするフェイトにとってはとても憧れる動きだったと言ってもいい。

 

「あの、恭也さん……」

 

「ん? どうした、フェイト?」

 

だからフェイトはその腕に憧れ、恭也に教えを請おうした。

今のままではデバイスの修理が完了しても、今の自分に力がないのであれば何も変わらない。

前のように絶対に二人が傍にいるとは限らない……今度も自分はおろか、再びなのはを危険に晒すかもしれない。

力が欲しい……誰もを守れるとまではいかなくとも仲間たちを、なのはたちを守れるほどの力が。

その考えが内にあるからこそ、フェイトは恭也に近接戦闘の教えを請おうとした。

 

「私にた――《はい、ちょっと待った!》――……え?」

 

しかし、フェイトの願う言葉はオリウスによって待ったを掛けられた。

突然だったためにフェイトは驚きを浮かべるが、冷静になるとすぐに止められた理由を理解する。

昼時ということもあって人通りがそれなりにあるこの場所で、無闇に戦いやら魔法やらと口にして言い訳がない。

だからフェイトは止めてくれたオリウスにお礼を口にし、念話へと切り替えて言葉を告げた。

 

《私に戦い方を……教えてくれませんか?》

 

《戦い方? それは近接での戦い方ということか?》

 

言葉の意味を汲み取りそう言うとフェイトは肯定するように頷く。

自分の主体は近接戦闘、フェイトの戦闘方法も半分以上はそれが含まれている。

故に教えを請うてくるのは別段不思議ではないし、強くなりたいという思いも確かに理解できる。

加えてどうして強くなりたいのか、というのも分かりきっているために聞くだけ無意味だ。

だから恭也からすれば近接戦闘を教えること自体は問題ないのだが、問題が挙がるとすればそれは時間だった。

襲撃者と何時また戦闘になるかも分からない現状、生半可な教えは逆に足を引っ張りかねない。

時間がないなら時間がないなりの教え方というのもあるが、それだとやはりどうしてもキツイものになってしまう。

だからこそ恭也はその胸をフェイトに伝えるが、それを聞いてもフェイトの決意は変わることがなかった。

そこまでの決意を見せられると恭也としても無下には出来ず、とりあえずは了承するという形で結論を出した。

すると出された結論に対して先ほどまで黙っていたオリウスが唐突に疑問に思ったことを口にする。

 

《そうなるとさ〜、フェイトは恭也の弟子っていうことになるの?》

 

《ふむ……弟子、というばそうなるかもしれんな。剣を教えるわけではないにしろ、戦う術を教えるわけなのだし》

 

《ふ〜ん……でもさ、近接戦闘を教えるんだったらアイラでもいいんじゃないの? ほら、フェイトとアイラのデバイスって何か似てるし》

 

確かにオリウスの言うとおり、近接主体の戦い方をするのはアイラも同じだ。

加えてバルディッシュのサイズモードとカールスナウトのアックスモードは少し似通ってもいる。

しかし、オリウスのこの提案には根底的な問題があった。

 

《フェイトの訓練を任せるのはアイラの性格を考えると止めておいたほうがいいと思うが?》

 

《あ〜…………うん、そうだね。ごめん、馬鹿なこと言った》

 

アイラの戦闘面での性格……それは勝気で非常に負けず嫌い。

そのことを魔法訓練でよく知っている恭也はそう言い、オリウスも激しく同意するように告げる。

アイラのその性格を知らないフェイトは二人の様子が理解できず、困ったような顔をするしかなかった。

当時のことを思い出して疲れたような苦笑を浮かべつつ、恭也は気にするなと告げてフェイトの頭を撫でる。

 

《まあ、まずはフェイトの技量を見ないとな……デバイスの修理が終わったら、一度模擬戦をしてみよう》

 

《模擬戦、ですか?》

 

《ああ。技量が分からなければ何をどう教えていいのかも分からないからな》

 

《技量って……一緒に戦ったんだからある程度分かるんじゃないの?》

 

《武器を交えてみないと分からないこともあるということだ、オリウス》

 

《そんなもんかなぁ…………ま、私からしたら戦力増強が出来るなら問題ないけどねぇ〜》

 

オリウスたちが抱えている問題、『闇の書』の守護騎士とはまた別の襲撃者の可能性。

それを考えると戦力は少しでも強く、また多いほうがいい。

だからこそオリウスとしてもこれに関しては特に文句はなく、どっちかと言えば肯定派である。

まあそんなわけで、結果としては二人に了承されたことでフェイトは内心で安著し、同時に嬉しさからの笑みを浮かべる。

絶対に強くなれるとは言えないけれど、それでも強くなれるかもしれない可能性の道を切り開くことが出来た。

だからこそ浮かべられた小さな笑みに恭也はまたも少しだけ苦笑し、もう二、三度ほどフェイトの頭を撫でる。

そんな中、フェイトとは真逆に位置する場所より視線が向けられ、恭也はそれに気づいてそちらを向いた。

 

「む〜、フェイトちゃんだけズルイ……なのはも撫でて欲しいのです」

 

向けた視線に映ったのは頬を膨らますなのはの顔、その口が告げたのは不満の言葉。

傍目から見れば恭也が無条件にフェイトを撫でているように見え、それにフェイトが嬉しそうにしている。

先ほどまでの会話が聞こえていないなのはの目から見てもそう映り、それ故に不満を持ったのだ。

そのことをすぐに理解した恭也はこちらにも少しだけ苦笑し、もう片方の手でなのはの頭も撫でる。

かといってフェイトのほうを止めようとすると少し寂しげな顔をするため、仕方なくこちらも撫で続ける。

結果としてなのはとフェイトの顔には気持ち良さそうな笑みが浮かべられ、それを維持するために恭也はしばし撫で続けた。

 

《なのはに甘いっていうのは知ってたけど、フェイトにも結構甘いし…………恭也ってシスコンじゃなくて、ほんとはロリコン?》

 

《違うに決まってるだろ……》

 

その光景を見てそう告げてきたオリウスの言葉には即答で返す。

シスコンまでは許せても、さすがにロリコンと言われるのは遠慮願いたいようである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海鳴市の一角に建つ住宅、その扉前にシェリスは立っていた。

住宅の表札には八神と表記されており、これを見ればはやての家なのだと簡単に分かる。

ならばなぜシェリスはベルも鳴らさず、中にも入ることなく扉の前に立っているのか。

それは至って簡単……ただ珍しく緊張しているだけのことだ。

元々友達など出来たこともなかったシェリスは当然友達の家に遊びに行くなどしたこともない。

だから格好は変じゃないかとか、髪は乱れてないかとか、いつもは気にしないことを気にしている。

 

「にゃ……だ、大丈夫だよね?」

 

This will be the third time I(これで三度目になりますが)......It is not a problem at all(まったく問題はありませんよ、), master(マスター)

 

アリウスにまで確認して身嗜みを整え、ようやくシェリスの視線は扉の横の呼び鈴へと向かう。

それを見据えて深呼吸を一回、二回として心を落ち着け、覚悟を決めたとばかりに手を伸ばす。

徐々に徐々に伸びていく手が呼び鈴のボタンへ近づいていき、触れると同時に僅かに力を入れて押し込む。

 

 

――ピーンポーン

 

 

ボタンが押されたことで呼び鈴が家の内部に響き、外にも僅かに聞こえてくる。

そしてその音が響いてから数秒後、聞き覚えのある声と共に扉へと駆け寄ってくる足音が聞こえる。

駆け寄るような足音は扉近くまで近づくとゆっくりとしたものへと変わり、同時にガチャと鍵の開く音が響く。

鍵が開けられてから僅かにも立たず扉がゆっくり開かれ、そこから出てきた顔はシェリスも知ってる者の顔だった。

 

「どちらさま……って、シェリスちゃん!?」

 

「こんにちは〜、シャマルお姉ちゃん♪」

 

まさかシェリスが訪ねてくるとは思ってなかったのか驚きを露にする。

反対にシェリスは先ほどの緊張など見せぬかのように満面の笑みで挨拶を返した。

突然の事態故にシャマルはしばし呆然としてしまうが、すぐに我に返ると笑みを浮かべつつ用件を尋ねる。

それにシェリスは隠すことなくはやてに会いに来たと告げると、シャマルはこれまた何の疑いもなく笑顔で招き入れた。

そもそもはやてとシェリスが友達になったとき現場にいたシャマルからしたら、その一言を疑う余地など浮かばないのだ。

だからこそ裏があるとは到底思えず、招き入れたシェリスをはやてのいる居間のほうへと案内した。

 

「シャマル〜、お客さんは誰やったん……って、シェリスちゃん?」

 

「遊びに来たよ、はやてお姉ちゃん♪ はい、お土産!」

 

「お〜、おおきに。にしても、よう家の場所が分かったなぁ……」

 

シャマル同様驚きを浮かべつつも、シェリスが訪ねてきたことを純粋に喜ぶ。

シェリスもはやてに釣られるように笑みを浮かべて身体全体で会えたことの喜びを表す。

それにはやてもシャマルも苦笑を浮かべ、シェリスから受け取った土産の箱をテーブルに置いて蓋を開けた。

 

「お、シュークリームやん。ちょうど食べたいなぁと思ってたとこやねん♪」

 

「にゃ、そうなの?」

 

「そうなんですよ。でも、三つしかありませんね……どうしましょう?」

 

「そやなぁ……うちらだけで食べてしもうたら、他の皆……特にヴィータが怒るかもやからなぁ」

 

シグナムやザフィーラはともかくとしても、ヴィータは甘いものが結構好きだったりする。

故にここでシュークリームを平らげてしまえば、ヴィータが知ったときに怒るとはいかなくとも拗ねるだろう。

だったら全員が半分だけ食べて残りを取っておけばいいとも考えるが、そうするとシュークリームの美味しさが損なわれてしまう。

かといって皆が帰ってくるまで取っておこうかと考えても、皆が何時帰ってくるかも分からないしシェリスが何時までいるかも分からない。

食べるにしても帰宅を待つにしても問題が発生してしまい、はやてもシャマルもどうしようかと悩んでしまう。

そんな中でシェリスは他の皆、ヴィータという二つの単語に首を傾げ、一体何のことかと二人に答えを求める視線を向けていた。

向けられる視線に二人は気づきその疑問について答えるとシェリスは申し訳なさそうな顔を浮かべて口を開いた。

 

「うにゅ……ごめんね、はやてお姉ちゃん、シャマルお姉ちゃん。シェリスがもっと多くシュークリームを買ってくればよかったのに……」

 

「ああ、そんなに落ち込まんでもええよ。お土産っちゅうんは持ってきてくれるだけでありがたいんやしな」

 

はやてに同意するようにシャマルも笑顔で頷くが、それでもシェリスの顔は晴れなかった。

折角初めての友達のためにお土産を買ったのに個数が大きく足りない。

しかもはやてとシャマル以外にも家族がいると聞いていたにも関わらず、それを忘れて最低限の数を買ってしまった。

そのことがはやてやシャマルの役に立てなかったということに繋がり、構わないと言われても気にはしてしまうのだ。

そんなシェリスの様子にはやては少しだけ困ったような顔をするも、笑みを張り付かせてゆっくりと車椅子を動かし近づく。

 

「うちもシャマルもほんとに気にしてへんから、そんな顔せんといて。シェリスちゃんが落ち込んでるとうちらも悲しくなってまう」

 

そう言いつつはやてはシェリスの頭に手を置き、ゆっくりゆっくりと髪を梳くように撫でる。

初めの内はそれでも顔を俯けて落ち込んでいたシェリスも、それを続けていくと次第に笑顔になる。

そして最終的にはくすぐったそうに、それでいて気持ち良さそうに目を細めて撫でられていた。

微笑ましく見えるその光景をシャマルは静かに微笑を浮かべながら見守りつつ、内心で土産をどうするか考える。

品質を考えるとなるべく早く食べたほうがいい……だけど食べてしまえば今家にいない三人に申し訳がない。

どちらにも相応の問題が発生するため、どちらにするかを悩みに悩んでも中々答えなど出るものではなかった。

 

 

――ガチャ

 

 

再び浮上したその問題を目の前の光景を見つつ考えていると玄関方面からそんな音が響く。

それにシャマルだけでなくはやても気づき、撫でる手を止めて元の位置に戻して玄関方面に視線を向ける。

自身を撫でる手が下ろされたことにちょっと名残惜しそうな顔をするシェリスも、少し遅れて玄関方面からの声に気づく。

響いてくる声の数は二つ、しかし近づいてくる足音は三つ……一体家の中に誰が入ってきたのかをシェリスは不思議に思う。

しかしはやてとシャマルは近づいてくる声と足音に覚えがあるらしく、ちょうどいいというような顔を浮かべていた。

 

「たっだいま、はやて!」

 

「今戻りました、主」

 

「わんっ」

 

はやてとシャマルの予想通り、居間に現れたのは見覚えのある者たち。

二つの三つ編みに束ねた赤い髪、白い半袖シャツに黒いミニスカの女の子。

ポニーテールに束ねたピンク色の髪、白いコートを着込んだ落ち着きのある女性。

そしてその間にいるのは蒼色の中に僅かな白を混じらせた毛の色をしている傍目狼っぽい大型犬。

この特徴で上からヴィータ、シグナム、ザフィーラだと分かるが、同時にこの面子が一緒に帰ってくるのは珍しい。

ヴィータとザフィーラだけならともかく、シグナムとこの二人は基本的に出かける場所もそこに至るまでの道も違う。

故に本来なら一緒に帰ってくることなどないのだが現実に三人は共に帰宅し、この居間へとやってきた。

どういった風の吹き回しなのか……そのことをはやてもシャマルも考えながらも、三人の言葉にお帰りと返事を返す。

返された返事に多種多様な反応を三人は見せ、それと同時に二人の間にいるシェリスに気づき不思議そうな顔をする。

 

「? はやて……そいつ、誰?」

 

「うちの友達のシェリスちゃんや♪ ほら、昨日の夕飯のときに話したやろ?」

 

そう言われてヴィータは昨夜のことを思い出し、ああと納得するように漏らした。

反して肝心のシェリスはヴィータとシグナム、そしてザフィーラを交互に好奇心の篭った目で見る。

そんなシェリスにはやてはその三人が先ほど言った家族なのだと話すと理解したというように頷く。

そしてもう一度三人を一通り見た後、ゆっくりと三人へと歩み寄ってにっこりと満面の笑みを浮かべた。

 

「シェリスはシェリスっていうの♪ よろしくね、ヴィータお姉ちゃん、シグナムお姉ちゃん、お犬さん♪」

 

「お、おう」

 

「こちらこそよろしくだ、シェリス」

 

(お犬さんお犬さんお犬さんお犬さん……)

 

ヴィータは若干戸惑い気味に、シグナムは凛とした口調でシェリスへと返す。

しかし、ザフィーラはお犬さんと呼ばれたことがショックだったのか、頭でそれを繰り返し呟いていた。

まあそんなザフィーラはともかくとして、この二人と会ったらシェリスがどんな反応を示すか心配だった。

ヴィータは少々突っぱねた性格、シグナムは結構寡黙……シェリスとはちょっと相性が悪いとも見える。

だけど実際に会ってみると元来の無邪気さが手伝ってか、いつものシェリスとなんら変わりはなかった。

対してヴィータもはやての友達という言葉が効いているのか、それともシェリスの邪気のない笑みに圧倒されたのか。

どちらかは分からないが普段の突っぱねた性格は表に出ることはなかった。

そしてシグナムもいつもどおり凛とした態度ではあるが、心なしか僅かに口元に笑みを浮かべていた。

 

「ああ、そや。シェリスちゃんがお土産にシュークリーム買ってきてくれはったんやけど、食べるやろ?」

 

「え、マジで!? 食べる食べる!」

 

「あはは、そかそか。じゃあ、お茶の用意して皆で食べよか♪」

 

「では、私がお茶を用意してきます」

 

「あ、私も手伝うわ、シグナム」

 

シュークリームと聞いて目の色を変え、そそくさと机に置かれる箱に近づくヴィータ。

同時にシグナムはお茶の用意のために台所へと行き、その手伝いにシャマルもそちらへと向かう。

その三人の様子を見ながら、自分のとこへと戻ってきたシェリスと笑みを浮かべ合うのだった。

 

 


あとがき

 

 

さてさて、今回も前半は恭也サイド、後半はシェリスサイドだったわけだが。

【咲】 フェイトが恭也に弟子入りするっていうのはよくあることよね。

まあな。だけど、このよくあることをしないと起こりえないことがあるわけだよ。

【咲】 何よ、起こりえないことって?

それはまだまだ先の話故に秘密だ。

【咲】 ケチねぇ。

ケチって言うなケチって……で、後半のシェリスサイドだが、ここでは残りのヴォルケンと対面だ。

【咲】 これで全員と顔見知りになっちゃったわね。

だな。これが事件にどの程度影響してくるのか……それはまだ未知数だ。

【咲】 少なくともシェリスがヴォルケン側につく前提は出来てるわよね。

そうだな。まあ、そうなるかどうかはまだ分からんわけだが。

【咲】 でもさ、実際ヴォルケン側についても数ではまだ不利よね。そこんとこどうなわけ?

ふむ、数では不利でもシェリスやヴォルケンの戦闘力を考えるとそうでもないな。少なくとも、シェリス一人で恭也とアイラは抑えれるし。

【咲】 そんなに強いわけ?

強いっちゃ強いわな。そうでなければ、ジェドが自分の娘を戦わせたりしないだろ。

【咲】 実力を知ってるから信頼してる、ってことなわけね。

そゆことだ。

【咲】 で、次回はようやく二度目の戦闘?

ふむ、時間軸を一気に飛ばすからそうなるかな。まあ、実際に戦闘開始になるかはわからんが。

【咲】 ふ〜ん……ま、がんばんなさいな。じゃ、今回はこの辺でね♪

また次回会いましょう!!

【咲】 バイバ〜イ♪




なのはだけじゃなく、フェイトにも甘い一面が。
美姫 「やっぱりこちらも妹みたいなものと認識したのかもね」
かもな。あらぬ嫌疑を掛けられつつも、弟子に。
フェイトがどこまで成長するのか楽しみだな。
美姫 「ヴォルケン側と面識ができたシェリスの動きも気になるわね」
うんうん。どんな展開が待っているんだろうか。
美姫 「次回も待っていますね」
待ってます!



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