「……なの、は?」

 

突然起こったその状況に、いち早く口を開いたのはフェイト。

しかし、呟かれたその声も呆然とした様子が窺え、事態を頭が理解し切ってないことが分かる。

そしてそれは他の面々にも同じ事がいえ、一瞬ではあるが状況が理解出来ずに頭が混乱する。

だが、まだ僅かに混乱を抱きながらも、ある程度状況を理解するに至ると同時に……

 

「なのはぁぁぁあああ!!」

 

絶叫と言うに近い叫びを上げつつ、フェイトはすぐさまなのはに駆け寄ろうとする。

だが、その行動は一瞬で前へと回り込んだシグナムによって止められることとなり、フェイトの口元が僅かながら苦々しく歪む。

すぐにでも駆け寄り、なのはの胸から生えている腕を払いたい……でも、それには立ち塞がるシグナムを越えていかねばならない。

現状では恭也とフェイトの二人でどうにか押していたが、自分一人だけで往なせる相手とは到底思えない。

それでも、なのはを放っておくなどフェイトは出来ず、焦りを抱きながらもシグナムを睨みつけて押し通るべくデバイスを構える。

それに対して、シグナムも通す気はないという意思を見せるかの如く、フェイトの目を見返しながら剣を構え直した。

 

 

 

 

 

「な……なんだ、あれは」

 

時をほぼ同じくして、恭也は呆然と目の前で起こった事態にそう呟いた。

誰しも何が起こったのか分からない……それは無論、恭也とて同じだと示す言葉を。

そんな呟きに本来なら返す者がいないはずのこの場で、答えを告げる声が恭也の頭に響いた。

 

《まあ、見た感じ……空間魔法の一種じゃないかな。 でも、あの手に持ってるのは、リンカーコアだよね?》

 

Nine times out of ten(十中八九、それで), and I certainly believe that(間違いないと思います。).》

 

《だよねぇ……でも、なんでリンカーコアを》

 

胸から生えた腕がリンカーコアを取り出した理由、それがオリウスには分からない。

ことの事情すら知らないのだから、それは当然と言えば当然であると言えよう。

だが、そのことを純粋に口に出して疑問に思うオリウスとは違い、恭也にとってはそんなことどうでもよかった。

苦痛に歪むなのはの顔……それを招いているのは胸から生える腕、たったそれだけが頭の中にあった。

 

「っ……」

 

その考えが齎す熱を理性という水では冷却できなくなったとき、恭也は弾かれたように駆け出した。

だが、駆け出した恭也に対してフェイトのときと同様、シグナムが剣を構えた状態で立ち塞がった。

しかし、まだ理性が働いていたフェイトならともかく、今の恭也は立ち塞がる程度では止められない。

 

Releasing a request from (マスターからの解)the master confirmed(除要請を確認。). Through wrap matters(禁則事項をスルーし、), forced to protect canceled(プロテクトを強制解除します。).》

 

《へ? プロテクト解除って……ええ!?》

 

二つの声が聞こえた瞬間、オリウスを鞘に納め、もう一刀―八景にオリウスを持っていないほうの手を添える。

同時にオリウスのコアに先ほどのような多重の文字円が浮かび上がり、魔力がオリウスへと流れる。

 

《Gullfxi》

 

魔力を受け取って術式を構成し、言葉と同時に構成した魔法を発動する。

それと共に恭也は瞬時に神速の領域へと入り、モノクロの世界を脅威のスピードで駆ける。

そして、シグナムとの距離を至近まで近づけ、領域から抜けると同時にそれを放つ。

 

 

御神流奥義之陸 薙旋

 

 

恭也が一番得意とし、もっとも信頼する抜刀からの瞬間四連斬撃。

これに加えて魔法の効果が出るため、一つの斬撃に対して幻影が三つほど発生する。

本体の斬撃も含めるとその数合計……十六。

 

ただでさえ速いこの奥義を強化した神速を抜けたと同時に放たれる。

更に本物は四発であるものの、目に見える数だけを言えば元の四倍の数の斬撃。

見たこともない技、その条件下、この二つをすれば如何にシグナムと言えど避けることも受けることも出来ず――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――瞬間、シグナムの体は再びビルへと激突した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのはB.N

 

【第一章】第四話 遠かりし過去の罪 前編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビルへと激突したシグナムを見ることもなく、恭也は再びなのはへと駆け出した。

だが、なのはの胸から生えていた腕は、シグナムに邪魔をされて再び駆け出すまでの間に事を終えてしまっていた。

それでもなのはは気を失わずに、ふらつきながらもカウントゼロ告げる合図と共に振り上げた杖を振るい……

 

「す……スターライト、ブレイカァー!」

 

結界を容易に突き破るほどの、凄まじい砲撃を放った。

それにより結界は全体に罅を走らせ、ガラスが割れるような音を立てて砕け散る。

それと同時に砲撃を放ったなのはは意識を闇に落し、力を失った体はゆっくりと後ろに倒れ始める。

しかし、倒れゆくなのはに間一髪で駆け寄った恭也は、その体を抱きとめることに成功した。

 

「なのは……」

 

顔を覗き込むようにして名を呼ぶも、気絶している故に返事は返ってこない。

そのことがなのはを守れなかったという事実を思い出させ、意識せずとも恭也の内に後悔を呼ぶ。

他の者たちもそんな恭也となのはに遅れて駆け寄り、様々な感情をその顔に浮かべていた。

恭也のように後悔を浮かべる者、なのはの心配する者、自身の不甲斐なさに怒りを浮かべる者。

しかし、そんな各自様々な表情を浮かべる中で、それらとは全く違うことを思考する者たちもいた。

 

《オリウス……さっき恭也が使ったのって、プロテクトを掛けた魔法じゃないかい?》

 

《……うん》

 

《そっか…………これで、完全に後戻りが出来なくなったね》

 

《だね……一瞬だったから明確な居場所までは分からないだろうけど、少なくとも私たちのいる世界は知られただろうし》

 

《はぁ……こうなると、不本意ながら管理局に頼るしかないね。 あまり良いことじゃないけど、私たちだけで行動するよりは安全だし》

 

シグナムに対して恭也が行使した、プロテクトの先にある魔法。

それを一瞬とはいえ使ったことで、二人の考えうる最悪の事態を招く可能性が増大した。

故に、本来は選択肢から除外すべきこと……時空管理局に頼るということが現状では最良の選択となってしまう。

以前言ったとおり、この選択は二人にとってはあまり良くないこと……下手を打てば、その場で捕まる可能性すらある。

だが、それでも安全面を選ぶならばそれが一番であることも事実であるため、正直なところ選らばずを得ないといった状況である。

 

《まあ、今までもどうにかなったんだ……今回もどうにかなるさね》

 

《楽観的過ぎ……》

 

前向きな考えはアイラの良い面とも言えるが、現状では同意することは出来ない。

それほどに、二人からしても今の事態はとても追い詰められた状況だということであった。

二人が念話にてそんな会話をする中で、なのはの治療のために転送が行われることとなった。

これに恭也はもちろん、アイラもついていくことに同意し、結果としてその場にいる全員を対象に転送が行われる。

そして、転送が行われた次の瞬間にはその場にいた者たちの姿が消え、一陣の風が吹く音が響き渡るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時空管理局へ転送されてからの対応は実に迅速だった。

すでに転送先にて医療班が待機しており、なのはをその者たちに任せて運ばせる。

その際のユーノの動きも実に早く、それが行動全体を迅速にさせたと言っても過言ではない。

そのことに恭也も、アイラも感謝を口にする中、通路の先より二人の人物が歩み寄ってくる。

一人は緑色の髪をポニーテールという形で纏めた妙齢の女性。

そしてもう一人は黒い服を身に纏う……どこか恭也と見た目も雰囲気も似ている少年。

早々と歩み寄ってきたその二人に、フェイトとユーノ、アルフは報告やらなのはの容態やらについてを話し合う。

そんな四人を恭也は壁に凭れながら見続け、その隣にてアイラも思いっきり疲れたと顔に出しつつ背中を預ける。

 

「? ……ユーノ君、そちらの方は?」

 

話を終えたのか、緑髪の女性が恭也とアイラに視線を向けながらユーノに尋ねる。

そしてその事については隣にいる少年も気になっていたのか、視線を向けつつ耳を傾ける。

 

「えっと、こちらは今回の民間協力者の方で、なのはのお兄さんでもある高町恭也さんです。 それとそちらの方は……」

 

「……アイラだよ。 名前も覚えてないなんて薄情だねぇ、ユーノは」

 

「え……あ、すみません、どこかで会ったことがありましたっけ?」

 

「……恭也の家に、猫がいなかったかい? アイラっていう猫がさ」

 

「いましたけど……って、ええ!? も、もしかして……あの猫が、あなたなんですか!?」

 

「そのとおり……てか、気づくの遅いよ」

 

呆れ混じりにアイラは言うが、正直気づけなくてもしょうがないと言えよう。

アイラは猫形態で高町家にいるときは完全に猫として振舞っているし、他人に気づかれるようなヘマはしていない。

まあ気づかれたら気づかれたで高町家の面々なら素で受け入れるだろうが、面倒がまったくないわけでもない。

故にアイラは猫形態のときは完全に猫としているため、ユーノが気づけなくても無理はないというものだ。

だが、アイラの一言によってその猫がアイラだと知ったユーノは、その顔に微妙にながら怯えを走らせる。

それも仕方ないことだろう……ユーノが高町家にいたとき、アイラはしょっちゅうユーノを追い掛け回して遊んでいたのだから。

それはアイラにとっては良い遊び相手として映るのだが、ユーノからしたら食われるかもしれないという恐怖があった。

だからこそ、その猫に苦手意識を植え付けられ、正体を知った今でもその苦手意識が先立ってしまうというわけである。

 

「アイラ……いや、まさかな。 でも、あれも確か……」

 

そんな中でただ一人、黒服の少年が顎に手を当てて何かを呟いていた。

その言葉の端々にはアイラの名前が口にされ、当の本人はそれに僅かながら表情を歪める。

いきなり表情が変わったこと、少年が呟く言葉、それらに恭也を除いたほぼ全員が頭に疑問符を浮かべる。

しかし、そんな皆の疑問に答えることなく、少年は一直線にアイラへと歩み寄って口を開いた。

 

「少し確認したいことがあるので、失礼ですが姓のほうも教えていただけますか?」

 

確認したいこととは何か……それをアイラは聞き返したりはしない。

なぜなら、どうして少年が自身の姓を聞きたがるのかの理由を、アイラは推測出来ているからだ。

だから、それに対しては何も聞かずに、尋ねられたことの答えのみを口にする。

 

「……アルウェッグ」

 

「そうですか……やはり、あなたが」

 

口にされた名に、少年は納得するようにそう呟いた。

そして緑髪の女性も最初は不思議そうにしていたが、その名を聞いてしばし考え込んだ後に小さく声を上げる。

だが、それ以外の面々はその名を聞いても何なのか分からず、何がやはりなのかと聞くような視線を二人に向ける。

その視線に気づいた故か、それとも意識せずにか、少年は僅かに息をついて皆のその疑問の答えを口にした。

 

「S級指名手配犯、ジェド・アグエイアス……その助手として指名手配中の、アイラ・アルウェッグ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたを、この事件に関わる重要参考人として連行します」   .

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放たれた言葉にほとんどの者が絶句し、呆然としてしまう。

S級指名手配犯という言葉が出たのにもそうだが、一番は……アイラがその助手であるということ。

存在そのものは今日初めて知ったが、恭也と共に助けてくれた側からしたら悪い人物には到底思えない。

いろいろと問題やフェレットとしていたときに追い掛け回されたこともあるが、共に戦ったユーノは特にそう思った。

犯罪を犯すほど悪い人ならば、捕まる危険性があるにも関わらずなのはを助けたりするだろうか。

否、アイラが凶悪犯と言える人物であるのならば、助けることなどせずに見捨てるだろう。

それが分かるからこそ、その場にいるほとんどの者がアイラは悪い人じゃないという思いを抱いた。

 

「……ああ、わかったよ」

 

しかし、少年の言葉に何の反論も告げず、アイラは同意する言葉を口にする。

まるでそれが事実であると、間違った部分は一切ないと認めるように。

それにやはり皆は驚き、同時に各々向ける視線が恭也へと向けられる。

ユーノ以外は恭也が正確にどの程度アイラと共にいたのかということを知ることはない。

だがそれでも、先ほどのユーノとの会話、そして恭也と共に現れ助けてくれたことを考えると決して共にいた時間は少なくないと分かる。

だからこそ、恭也なら少年の発言を否定し、アイラを引き止めるのではないか……皆はそう思ったのだ。

 

「……」

 

だけど皆の思いに反して、恭也は壁に背を預けながら口を閉ざしたままだった。

その様子からは皆には少年の発言を、アイラが連れて行かれることを肯定しているようにも見えた。

故に皆は向ける視線を非難するような意味合いのものに変えるも、それと同時にアイラが少年の元に歩み寄っていく。

そしてアイラが自身の近場まで来ると、少年もまた身を翻して歩き出し、共に通路の奥へと消えていった。

それを止めることも出来ず、見送るしかなかった一同は再び視線を恭也へと移し、先ほどと同じような意味合いの目を向ける。

 

「恭也さん……なんで、止めなかったんですか?」

 

「? なぜ止める必要があるんだ? 彼の言っていることは確かに事実……なら、アイラを連れて行っても不思議はないだろ?」

 

フェイトの言葉の返しは少しばかり冷たい言い方ではあったが、言っていることは確かに間違っていない。

だが、どのくらいの時間だったとしても、共にいた仲間ならばそれでも弁護なりして助けるべきではないか。

そう思うからこそ、フェイトは納得が出来ずに、でも……と小さく呟いて俯いてしまう。

その様子に恭也は不謹慎と思いながらも僅かに苦笑を漏らし、ゆっくりと近づいてフェイトの頭に手を置き撫でる。

 

「フェイトは、優しいんだな…………でも、これは本当に心配するようなことでもないんだ」

 

「どういうこと、ですか……?」

 

「彼の言ったことを良く思い出してみるといい……そうすれば、自ずと意味がわかる」

 

「クロノが、言ったこと……」

 

そう言われ、フェイトは少年―クロノの告げたことを再度思い出してみる。

そして僅かに間を置いて、恭也の言ったことの意味に気づいた。

 

「捕まったわけじゃ、ない?」

 

「そういうことだ。 確かに彼は「連行する」とは言ったが、「逮捕する」とは一言も言ってはいない」

 

確かに恭也の言ったとおり、クロノは捕まえるという関連の言葉は口にしていない。

告げたのは、重要参考人として連行する……ただそれだけ。

そのことに気づき、恭也の言葉を聞いたフェイトは、再度確認を取るために緑髪の女性に視線を向ける。

すると、その女性は恭也の言ったことに同意するように小さく頷き、口を開いた。

 

「その方の言うとおり、アイラさんは別に逮捕されたわけじゃないわ。 確かに指名手配はされていたけど、それはあくまで事件に関する重大な情報を持っているかもしれないからという理由。 だから、その事件に関する重要参考人として、事情聴取を行うために連れて行かれたの」

 

「そ、そうだったんですか……」

 

女性からも確認を取れ、フェイトは安心するようにホッと息をついた。

出会ってからほとんど時間も経っていないのにも関わらず、まるで自分のことのように安心を浮かべる。

その様子からフェイトの優しさというものが窺え、恭也もその女性も僅かばかり微笑を浮かべた。

そんな中で、恭也のみに聞こえるように、念話にてオリウスは独り言紛いの言葉を呟いた。

 

《でもまあ、この先本当に捕まらないかっていうのは正直分からないんだけどね》

 

《ふむ……だが、あれを話すようなヘマはさすがにしないんじゃないか?》

 

《どうだろ? アイラってああ見えて結構馬鹿だし、相手の誘導尋問に乗せられて話す可能性も捨てきれないんだよね》

 

何気に酷い物言いだが、それは長い付き合いであるオリウスだからこそ言えることでもある。

故に恭也はそれについて弁護しようにも出来ず、周りの者に気づかれない程度の小さな苦笑を浮かべた。

そんな恭也と、自身が言った馬鹿という単語にて、オリウスはふととあることを思い出し、それを告げる。

 

《と、こ、ろ、で〜……恭也、さっきの戦闘でプロテクトを強制解除したでしょ?》

 

《む、まあ確かにしたが……あれは》

 

《言い訳無用! あれほど言ったのにプロテクトを解除して、あまつさえその先にある魔法を使うなんて……そんなに自分や皆を危険に晒したいの?》

 

《むぅ……》

 

《むぅ、じゃないよ。 お陰で本来なら逃げればいいだけだったのに、管理局とこうして関わる羽目になったんだからね! それにグルファクシを使った上に、神速まで使って……自分の体を苛めてそんなに楽しい?》

 

一方的に責めるような感じだが、確かにオリウスの言うことはもっともだった。

プロテクトの先にあった魔法―グルファクシを使ったことで現在いる世界がばれ、管理局を頼らざるを得なくなった。

加えて、恭也の身を案じて自分達も戦闘参加したのに、その恭也が神速内での加速などという馬鹿げた行為をした。

そして、まだ現在もそのダメージを体に残しつつも表面上は我慢して表に出してはいないが、オリウスからしたらそれはバレバレだった。

その知られているということを恭也も分かっている故か、オリウスの告げてくることに対して恭也は反論できず、ただ口を閉ざして怒られ続けるのみであった。

だがこのとき、恭也は忘れていた……無言を決め込むという行為は、オリウスにとっては逆効果にしかならないということを。

 

《さっきのなのはの行動といい、恭也といい……なんで兄妹揃って無茶ばっかりするかな。 人が折角心配して忠告してるっていうのに、にも関わらず恭也は……ああ、やっぱりそういうことなんだね》

 

《な、何がそういうことなんだ?》

 

《つまり、私みたいな一デバイスの言うことなんて聞いてられないってことなんでしょ? まあ、それだったら仕方ないよね〜……所詮私は魔法を使うための道具でしかないし》

 

最終的にはこうして、嫌味が多々入ったグチグチと並べ立てるのだ。

さすがにこうなると恭也も無言を決め込むわけにもいかず、平謝りという感じでオリウスに謝罪をする。

するとオリウスはあっさり言葉を並べ立てることを止める……まあ要するに、ただ恭也に謝らせようという算段だっただけの話だ。

ちなみに、恭也はそのことには気づいているのだが、この口調をされると弱いので結果的にいつも乗せられていたりする。

 

《じゃあ、恭也が謝ったところで話を戻すけど、グルファクシは今後使わないこと! カートリッジシステムのないこのデバイスじゃ、あれは結構キツイんだからね! あと使うなとは言わないけど、神速も極力控えてよね!》

 

《あ、ああ、わかった……》

 

だがまあ、先ほども言ったがオリウスがこう言ってくるのは恭也のことを思ってが大半。

故に内心では心配かけて悪いとは思っているが、それでも使わなければどうしようもないときは存在する。

だからこそ悪いとは思いつつも使ってしまうわけで、そのたびにオリウスからお叱りを受けるのだ。

しかし、怒るからと言ってオリウス自身がそこに気づいていないわけではない。

だが、気づいているからと言って許容できることでもなく、形式的には使えば怒るというわけである。

 

「あの……」

 

そんなオリウスにこってり絞られている中で、緑髪の女性が恭也に声を掛ける。

そのときの顔はどこか不思議そうなものだったのだが、ある意味それも当然だと言えよう。

というのも、オリウスの今送っている念話は基本的に恭也のみに向けられたもので、他の者には一切聞こえない。

そのため、オリウスの怒りで表情を焦りに変えても、それは周りの人からしたらどうしたのかと思われても仕方がない。

それが女性の表情で瞬時に理解したからか、表情を元へと戻し、なんでもないと女性に告げた。

すると、その女性はまだ僅かに不思議そうなといった様子を窺わせながらも、声を掛けた理由である用件を口にする。

 

「えっと、少し後になるんですけど、貴方にも事情等を伺ってもいいかしら?」

 

「構いませんけど……先ほどの彼が言っていたことに関してはアイラほど語れませんよ?」

 

「ええ、構いません。 それに、今回の件に関しても少しお聞きしなければなりませんし……」

 

それに恭也が了解を示すように頷くと、女性は先のほうの休憩所で待っていて欲しいと告げる。

その後、その場所への案内をアルフとユーノに任せ、フェイトを連れて通路の奥へと去っていった。

そして、二人が去っていくのを姿が見えなくなるまで見送った後、恭也も二人に案内されて女性とは反対方向へと歩き出すのだった。

 

 


あとがき

 

 

というわけで、今回は前編というわけだけども。

【咲】 まあ、そこはいいとして……原作と少し違うわね。

確かにな……本来、医務室にフェイトと行くのはクロノだし。 でもまあ、クロノはアイラの事情聴取してるからリンディにと。

【咲】 それって原作の話にある程度影響が出てくるんじゃない?

そこはまあ、変なところが出んように調整するさね。

【咲】 ふ〜ん……それともう一つ、クロノは今、アイラの事情聴取をしてるのよね?

ふむ、そうだが?

【咲】 じゃあさ、原作ではなのはが目覚めたらグレアムとの応接室で会話になってるけど、どうするわけ?

それまでには事情聴取も終わるよ……大して聞くことがないし。

【咲】 それおかしくない? 事件解決に向けてはまったく進展してないんだから、少しでも情報は欲しいはずでしょ?

ふむ……少し言い方を間違えたな。 聞くことがないというより、聞けないというほうがいいか。

【咲】 どういうことよ?

まあ、次回のお話で出るんだけど、事情聴取の際にクロノが誤ってアイラの逆鱗に触れてそれどころじゃなくなるんだよ。

【咲】 つまり、アイラがキレて、その場では話を聞くどころじゃなくなるってわけ?

そういうことだな。

【咲】 ふ〜ん……で、逆鱗に触れるって、どんなことを言うわけ?

それはまあ、アイラの過去に関わることだ……でも詳しくは、次回のお楽しみ。

ちなみにだが、アイラはキレるとキャラが一変するというのも言っておこう。

【咲】 なんとなく想像出来るような出来ないような……。

そんなわけで、今回はこの辺で!!

【咲】 また次回も見てね〜♪

では〜ノシ




管理局の元へ。
美姫 「アイラが関係している事件って何なのかしらね」
どの辺りまで語られるのか。
美姫 「うーん、続きが気になるわね」
いや、本当に。次回が待ち遠しいです。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



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