恭也たちの住む世界とは別の次元世界の海上、遥か上空にて少女―シェリスはいた。

手には以前と同様にデバイスと思わしき杖を持ち、その身は蒼色のバリアジャケットを纏っている。

そんな姿で彼女は海上の遥か上を、一点の方向へと目指して飛び続けていた。

 

「ん〜……まだ追ってきてる?」

 

However the reaction has been (いえ、背後からの反応はなくなり),removed from behind(ましたので、たぶん) so it's probably resigned(諦めたのではないでしょうか?)

 

「そっか〜。 じゃあ、そろそろ通信入れて迎えに来てもらってもいいかな」

 

シェリスはそう呟くと空中にて停止し、ポケットの中を漁ろうとする。

しかし、ポケットから通信機を出すよりも早く、自分の周りを囲むように数人の人間が転移してきた。

それと同時に彼女は結界が張られ、その結界内に自分たちが閉じ込められたことに気づく。

 

「うにゅ……追ってこないと思ったら、待ち伏せしてたんだね」

 

Rather than from the original(というよりも、元からこちらに) purpose of this was to(誘い込むのが目的だった) wile I think(かと思います)......

 

「あ、なるほど〜……管理局の人って、意外に頭いいんだね♪」

 

結界内に閉じ込められ、数名の管理局の人間に囲まれた……そんな二人にとってあまり宜しくない状況。

だが、そんな状況であるにも関わらず、シェリスの声には焦りのようなものは一切感じられなかった。

それは囲っている相手が全て武装局員故か、それともシェリス自身がまだ幼いと言える年齢の子供故か。

 

答えは、否……シェリスが焦りを見せないのは、そのどちらにも該当しない。

確かに相手は全て武装局員ではあるが、数の上では圧倒的に相手が勝っている故に状況的には不味い。

確かにシェリスは幼いと言える年齢ではあるが、その状況が分からないほど子供ではない。

 

ならば、なぜ彼女はその状況に対して焦りを一切見せないのか?

それは至極簡単なことであり、非常に理解し難い理由でもあった。

 

「じゃあ、――を待たせるのも悪いし、ちゃっちゃと片付けちゃおっか」

 

Agreed(了解です), Master(マスター)

 

告げた言葉と共に表情に浮かぶのは、笑み。

それは悪戯が成功した、もしくはおもちゃを与えられた子供のような。

そんな……そんな楽しくてたまらないと言うような、笑み。

そしてそれが物語る……彼女がなぜ、この状況に対して焦りを抱かないのかを。

そう……彼女は、この状況を――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アリウス、カートリッジロード!」

 

Sphereform!》

 

 

 

 

 

 

――楽しんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのはB.N

 

【第一章】第一話 終わりを告げる平穏

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

病院へと赴いた恭也はやはりというか、昨日来なかったことに関してフィリスに怒られた。

それに対して恭也は言い訳を試みたがそれは意味を成さず、結果としていつもより三割り増しでマッサージを受ける羽目となった。

病室内部で響く声にならない絶叫、もがく恭也になぜか笑みを浮かべるフィリス……そして、服のポケットの中で怯えるオリウス。

そんな光景が成り立つこと一時間弱、診断とマッサージを終えた恭也は悪夢から解放されたというような顔で病院を後にした。

 

 

病院から自宅へと戻ると大体の者が帰宅しており、夕食のための準備を行っていた。

だが、そんな中でただ一人……アイラだけは何もしてはおらず、出る前と変わらず縁側で寝ていた。

まあ、猫形態なので自然な形と言えばそうなのだが、中身が人間だと知っている身からしたら呆れる光景である。

これでタダ飯をガツガツと食べているのだから、その性格は激しく遠慮がないと言ってもおかしくはないだろう。

 

《……ねえ、恭也。 あの何もしない怠慢クソ猫に魔法撃っていい?》

 

《気持ちは分かるが……さすがにここでは止めておけ》

 

これに怒りを抱くオリウスを止める恭也、というのも最近では日常の光景。

恭也と出会う前からオリウスはアイラと共にいたのだが、本人曰くここまで怠慢なのは初めてらしい。

故に今までもそうだったが、今のその様子が今までで一番ムカつくらしく、隙を見ては魔法をかまそうとする。

だがまあ、さすがに高町家内で魔法を使うのはいろいろと不味いため、何とか嗜めるのが恭也の役目。

そんな間柄が出会ってから間もなくして成り立ち、今ではいつもの光景といっても差し支えないものになっていたのだ。

 

「あ、お帰りなさい、おにいちゃん」

 

「ん? ああ……ただいま、なのは」

 

そんなアイラの横にて座っていると、ちょうど縁側を通りかかったなのはが寄ってくる。

ちょこんとアイラを挟んで隣に座り、ジッとアイラに視線を向けた後に苦笑を浮かべる。

 

「アイラちゃん、いっつも寝てるね」

 

「まあ、猫だからな。 アイラといえば……ユーノは元の飼い主のところに帰ったんだったな?」

 

「え……う、うん、そうだけど……なんで?」

 

「いや、ユーノがいないから、アイラが最近寝てばかりになってしまってな」

 

「あはは……確かにユーノくんとアイラちゃんって、仲良かったもんね」

 

なのははそう言うが、正直なところ仲が良いというのは疑問なところである。

というのも、ユーノがいたときアイラは寝ることが今より少し少なかった代わりに、彼を追い掛け回すのだ。

それでなのはに念話で助けを求めることもしばしば……正直、ユーノからしたら勘弁願いたいと言ったところ。

しかし、なのはもユーノもアイラはある程度賢い猫としか思っていないため、苛めないようにお願いすることもしない。

そんなわけで、結果としてユーノはアイラのいいおもちゃになり、高町家にいるときは日々追い掛け回されていた。

だが、それも最近ではユーノの姿がなくなったためになくなり、必然的にアイラの睡眠時間が多くなったというわけである。

 

――ピクッ

 

そんな感じでユーノとアイラの話をしていると、アイラの耳が軽く動いた。

そしてその数秒後に閉じられていた目が開き、軽い欠伸と伸びをすると隣にいるなのはを見上げる。

 

「夕ご飯……出来たみたいだね」

 

「みたいだな……全く、いつもは起きないくせにこういうときだけはすぐ起きるな、アイラは」

 

アイラの特技……それは一度寝たらほぼ起きないことと、朝昼夕の食事時には必ず起きれることだ。

あまり褒められた特技ではないが、猫故にある意味微笑ましい特技ではあるため、なのはは苦笑する。

反対に恭也は、表向きは苦笑を浮かべてはいるが、内心ではかなりの呆れを浮かべているのは言うまでもないだろう。

とまあ、そんな表向きは同じで内心は正反対な二人はゆっくりと立ち上がり、アイラと共に食卓へと歩んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕食が終わってしばらく経ち、恭也は美由希と共にいつもの鍛錬へと向かった。

この際、アイラも面子の中に加わっていることも最近では当たり前になっており、美由希は特に何も言わない。

そしてアイラが観戦――というか寝てるのだが――している中で鍛練は行われ、それがいつも通り数時間続く。

その数時間後に鍛錬が終わると美由希を先に帰して一時間程度魔法の訓練をする、というのもいつも通りのこと。

全ては、いつも通り……変わることない日常としてこの日も過ぎていくはずだった。

だがそれは、鍛錬を終えての帰り際に察知したそれによって打ち砕かれることとなった。

 

《なっ、結界!?》

 

《やば……とうとう見つかっちゃったかな?》

 

張られた恭也のいる位置まで達する広域の結界……そして同時に感じた魔力。

それにオリウスとアイラは自身を追ってきたものかと考えるが、その考えは次の瞬間否定された。

 

《あれ……魔力の反応、全然違う方向に行っちゃったね》

 

《奴らじゃ、ない? だとすると一体誰が、何のために結界なんて》

 

「ふむ……とりあえず、その反応とやらが向かった先に行ってみれば分かるんじゃないか?」

 

《そうだねぇ……じゃあま、近場みたいだしとりあえず行ってみよっか》

 

《だね〜》

 

恭也の言葉に二人も同意し、三人は揃って魔力の感じられる場所へと向かって行く。

それはそこまで遠い場所ではないため、走り始めてから僅か十分程度で付近へと辿り着くに至った。

そしてその場所から反応のする場所に視線を向け、同時に恭也の顔には驚きが走った。

 

「なの、は……」

 

視線の先にあった光景……それは、恭也の妹であるなのはが同じくらいの年頃と思われる少女と戦っている光景。

いや、戦っているというよりも、一方的に攻撃を仕掛ける少女の攻撃をなのはが防いでいるだけと言ったほうがいい。

そして両者の手に握られているのはハンマーと杖……魔法を使っている辺り、それはデバイスなのだと分かる。

なのはが自分以上に魔力があることは二人より聞いていたが、デバイスを持っているとは聞いていなかった。

故に恭也はデバイスを片手に少女と対峙するなのはの姿に驚きを浮かべ、しばらく呆然としてしまう。

しかし次の瞬間、なのはの張った障壁に少女のデバイスがぶつかり、障壁を破ってなのはを吹き飛ばしたことで恭也は我に返った。

 

「なのはっ!!」

 

若干離れていることに加え、なのはがビルに激突する音に被ったため叫びは届かない。

だがそれに構うことなく恭也はなのはを助けるために宝玉を取り出し、なのはの元へと駆け出そうとする。

 

《恭也、ストップ!!》

 

しかし、駆け出そうとした足は頭に響いてきたオリウスの言葉で止まることとなった。

 

「なぜ止めるんだ、オリウス……なのはが、危ないんだぞ?」

 

《そんなの見れば分かるよ。 でもね、なのはがどんなに危ない状況でも、恭也には介入して欲しくないの》

 

静かにそう告げてくるオリウスの言葉に驚愕を浮かべつつ、アイラのほうに視線を向ける。

するとアイラもオリウスに同意見と言うかの如く、お座りをしたまま恭也をじっと見返していた。

出会ってから半年以上……恭也だけでなく、なのはを含めた全員と家族と言える付き合いをしてきた。

だというのになぜ、なのはを見捨てるというようなことが言えるのか……それが恭也には分からず、視線でそれを尋ね返す。

その視線を、意味を理解した二人は、その恭也が抱いた疑問について再確認というように説明した。

 

《以前も話したとおり、あたしたちは追われてる身……そして恭也も私たちに関わったあの日から、同じく追われる身になってるんだよ》

 

《そんな私たちが、なのはを助けるためとはいえ表立って行動すれば、あいつらは必ず私たちの居所を察知する。 そうなれば今以上に恭也も、なのはも……そして二人に関わる全員が危ない目に合うの。 だから、恭也にとって酷なことを言うようだけど……》

 

「……」

 

二人の言うことは確かにもっとも……それ故に恭也は爪が食い込みそうなほど右手を強く握り締める。

追われる身である二人、そしてその追っ手の危険性、それらを承知の上で恭也は二人を関わり続けることを約束した。

だが、だからと言って自分の家族が傷つくところを見ているしか出来ないなど、恭也には悔しい以外の何物でもなかった。

そんな恭也の様子に二人は内心悪いとは思いながらも、こればかりは譲歩出来ぬとばかりに無言になる。

そして三人がそんな状況になっている中も目の前の事態は進み、状況は先ほどから一変していた。

なのはを守るように現れ、三つ編みの少女と戦う金髪の少女と同年代くらいの少年、そして赤髪の女性。

 

《……あれって、管理局?》

 

《ん〜、一概にそうとは言えないけど……多分そうじゃないかな?》

 

突然現れたその三人にオリウスとアイラはそう推測するが、確証がないためそうだとは言えない。

しかしまあ、なのはを助けてくれるのならばどっちでもいいかという結論に達し、考えることを止めて再び恭也に意識を向ける。

そして向けると同時に驚愕する……あろうことか、デバイスを展開しようとする恭也のその光景に。

 

《ちょ、待って、恭也! ちゃんと話聞いてたの!? ここで私たちが介入したら――っ!》

 

「聞いてた……だが、納得は出来ん。 あんな小さな子たちがなのはのために頑張っているのに、俺が何もしないわけにはいかない」

 

《……あのね、恭也? 確かに私たちが参戦すれば状況は更に有利に運べるだろうけど、奴らを呼び込んでしまうかもっていうリスクがあるんだよ? それにあの三人がもし管理局の人間なら、あいつらに見つからなくてもどの道まずい状況になる……恭也だって、それは分かってるはずだよね?》

 

「分かってる……分かってるさ。 だが、魔導師である前に、俺は……」

 

《御神の剣士、ってわけだね……はぁ》

 

「お前たちの事情は知っている……だから、力を貸してくれとは言わない。 俺一人だけだとしても、なのはを……守る」

 

家族を失う辛さ……それを恭也は知っている故、妹が危ない状況であるのを見過ごすことなど出来ない。

だからこそ、オリウスやアイラが力を貸してくれなくとも、自分一人という無謀な状況だとしても、必ずなのはを助ける。

そう告げた言葉を体現するように、恭也は一度は展開するために取り出したデバイスを再びポケットへ戻そうとする。

だが、デバイスをポケットへとしまうその行動よりも早く念話を飛ばし、人型へと戻って恭也へと視線を向ける。

 

《わかった、わかったよ……まったく、しょうがないねぇ》

 

そのときの目は呆れが僅かに混じりながらも、どこか悟っていたかのような目をしていた。

そしてそんな視線が向けられると同時に、手に握られているオリウスも呆れ混じりのため息をついた。

 

《はぁ……仕方ないなぁ。 じゃあ、管理局に何か聞かれても下手なことは言わないって……約束出来る?》

 

「あ、ああ、それは承知しているが……手を貸してくれるのか?」

 

「手を貸すも何も……仮にもそのデバイスが選んだ主まで見捨てるほどあたしもオリウスも薄情じゃないよ。 結果としてあいつらには気づかれるかもしれないけど……ま、そのときはそのときさね」

 

《そゆこと》

 

「……ありがとう、二人とも」

 

僅かに微笑んで恭也はお礼を口にし、ポケットにしまおうとした宝玉を掲げる。

するとその瞬間、恭也の体は光に包まれ、その光が途絶えたときには先ほどとは異なる格好をしていた。

普段着と変わらない服の上に黒い法衣というバリアジャケット、そして八景が差してあるほうとは逆の腰に現れた小太刀サイズの剣型デバイス。

そんな姿に変わると同時に恭也はアイラへと視線を向けると、アイラもすでにデバイスを展開済みなのか戦斧型のデバイスを手に持っていた。

そして向けた視線がアイラの視線と交わり、軽く頷き合った後に恭也はデバイスの柄に手を置いて短く言葉を紡ぐ。

 

「準備はいいか、リース」

 

no problem(問題ありません)

 

リースの返答に再び恭也は小さく頷き、今度は今も戦闘が行われているであろう場所に視線を向ける。

すると、先ほどから更に事態が変わったのか、ピンク髪の女性が金髪の少女に向けて剣を振るい、吹き飛ばしていた。

その光景が目に入った瞬間、恭也はその位置から即座に走り出し……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Gullinbursti!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

落下するその少女を受け止めるべく、駆けていった。

 

 


あとがき

 

 

まあ結局、恭也がなのはを見捨てるなんて出来ないというわけだ。

【咲】 でもさ、これって安易に選んでいい選択じゃないわよね?

そりゃな……二人の言った危険性っていうのは本当のことだし、見つかれば今より不味い状況になるのも事実だ。

【咲】 じゃあなんで止めなかったの? それどころか自分たちまで介入しちゃったし。

止められなかったからだよ、意思が固すぎて。 それと自分たちも介入した理由は、オリウスの主を失うわけにはいかないからだ。

【咲】 ふ〜ん……オリウスもアイラも、恭也が大切だからってこと?

それもあるな……だけどまあ、どの道ここで止められなくて恭也一人を介入させれば、負ける可能性と気づかれる可能性は極めて高い。

もしそれで命でも落とそうものなら、追っ手に対しての恭也という対抗手段を失った状態で戦う羽目になる。

だから、後者を仕方ないと置いて、前者の可能性を無くすために二人は手を貸したってわけですよ。

【咲】 ていうか、守護騎士たちって非殺傷設定にしてるから、大丈夫なんじゃ?

そのことをオリウスもアイラも知らんのよ……というか、闇の書や守護騎士自体、二人は知らんわけだし。

【咲】 確かにねぇ……まあ、結果としてこの介入がどの程度話に影響するかが問題よね。

だな。 まあそれよりも前に、次回は戦闘に入るわけだが。

【咲】 恭也とアイラは誰と戦うわけ?

ふむ、誰だろうね……まあ、分かりやすいから予想は簡単につくだろうけど。

【咲】 分かりやすい? ……ああ、そういう組み合わせね。

ま、それは次回になってのお楽しみに……では、今回はこの辺にて。

【咲】 また次回会いましょうね♪

では〜ノシ




始まった闇の書事件。
美姫 「結局は恭也もそこに加わってしまうのね」
まあ、これは仕方ないさ。
さてさて、恭也の介入によりどう変わっていくのか。
美姫 「アイラたちの事情と合わせて気になるわね」
今回は何とすぐに続きが読める!
美姫 「気になる次回はこの後すぐよ!」



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