それは、悲しい戦いでした・・・
互いの正義を守るために、刃を振るう力・・・
繋がらない想いの中、少年は炎を宿す・・・
止めるために・・・助けるために・・・
リリカル戦記・・・始まります。
リリカル戦記リュウケンドー!!
第三話「奮い立て、熱き炎」
≪ピ・・・ピ・・・ピ・・・≫
医務室の中、部屋の隅のベッドでなのはは眠っていた。先ほどのシャマルとの一戦により肉体に不可がかかり、意識を失ってしまったのである。
「・・・なのは」
ベッドに寄り添うように、フェイトはなのはの看病をしていた。ただし、その表情はあまり良くはなかった。守れなかった事、助けれなかった事が、フェイトの心を曇らせてしまっていたのだ。
「なのは・・・必ず、私が守るから」
フェイトが悲壮な決意をしている中、別室ではリンディとエイミィ、そしてレイジングハートとバルディッシュが置かれていた。
「どう、修復状態は?」
「はい。バルディッシュはまだいいとして、レイジングハートはコアにもダメージがきていますから、修復には時間がかかります」
「そう・・・」
リンディはため息を漏らした。無理もない、なのはとレイジングハート。このコンビが負けるとは思っても見なかったからである。これを知った局員たちも、愕然としたのである。
『リンディ提督』
『一つ、頼みがあるのですが』
すると、突如レイジングハートとバルディッシュが尋ねてきたのだ。リンディは驚きながらも、それに応じる。
「どうしたのかしら、レイジングハート?それにバルディッシュ」
『私たちに・・・現在実働試験中の【MADAN】システムを投入して欲しいのです』
レイジングハートの言葉に、リンディもエイミィを驚いた。それを気にせず、バルディッシュも続く。
『今の我々の力では、あの騎士たちを倒すどころか、マスターを守りきる事も不可能。ですから、我々は新たなる力が欲しいのです』
『提督。無茶な相談は承知のうえです。どうか、私たちにマスターを守る力を!!』
二つのコアの必死な思いに、リンディはチラっとエイミィを見た。すると、エイミィはニッコリ笑顔で親指を立てていた。それをキッカケに、レイジングハート&バルディッシュ改造計画が発動した。
その頃、はやて家に迎えられた剣二はというと・・・。
「皿洗い〜皿洗い〜っと」
まるで主夫の如く、夕食の洗い物を片付けていた。すると、剣二に気づいたのかシャマルが近づいてきた。
「剣二さん、手伝いますよ」
「いや、ここは俺一人でも出来ますよ」
「二人でしたほうが、早く片付きますから♪」
「そっすね。じゃぁ、お願いします」
シャマルの言葉に同意すると、少し横にずれた。その隙間に、シャマルが入ってくる。そしてそのまま、ぱぱっと洗物を片付けはじめた。
「シャマルさん、家事が得意っすね」
「いえいえ、まだまだです」
「いや〜、こんな美人で家事上手で気配り上手な妻を持った人は、幸せっスよ」
そう言ってハハハと笑う剣二。それに対して、シャマルは剣二のまっすぐな言葉に顔を真っ赤にしていた。
「こ、ここは私が片付けますから、け・・・けけけ剣二さんはお風呂に入ってきてください!!」
「・・・は、はい」
不思議がりながらも、シャマルの言葉に従い剣二は風呂に入る事にした。そして風呂の状態を確認しようとしてドアを開けると・・・。
湯船に身体の浸かり、長い髪を触っているシグナムがいた。
≪バタン≫
剣二は速攻でドアを閉めた。
「ご、ゴメンシグナムさん!!俺・・・・」
「気にする事はない。私は気にはせん」
「とにかく・・・・すいません」
「何故そこまで謝る?」
「・・・女性の肌を無断で見るなんて、男の恥ですから」
それを聞いた瞬間、湯船にいたシグナムの頬が薄く染まった。
「わ、私は女らしくないぞ。可愛くもないし、綺麗でも・・・」
「そんなの関係ないっス!!シグナムさんはシグナムさんの可愛さがあって、シグナムさんはめっちゃ綺麗です!!それは、この八神剣二が保障します!!」
剣二はそれだけを言うと、脱衣所を出て行った。シグナムは剣二の言葉に顔を真っ赤に染め、そのままのぼせてしまったのだった(苦笑)。それから少し経ち、剣二が寝ようとすると、車椅子にのり枕をかかえたはやてがやってきた。
「ん、どしたはやて?」
「剣二兄。ちょっと恐い夢見てもうた・・・・一緒に寝てもええ?」
上目遣いで訴えてくるその目を見て、フッと優しく微笑むと、剣二ははやてを抱きかかえ、自分の寝ているベッドに寝かせた。
「まったく、はやては甘えん坊だな」
「えへへ♪剣二兄〜♪」
抱きついて甘えてくるはやての頭を優しく撫でながら、剣二は眠りに落ちた・・・と、まぁ平和な日々を過ごしていたのだった・・・。
「ふぁ〜、温かくて気持ちいいや」
とある休日。剣二は街をブラブラと散策していた。すると、前方から見かけた顔がいた。そこには、赤茶髪の長い髪に、スタイル抜群の女性・・・アルフ【人型形態】が、スーパーの袋を持って歩いていた。
(あの人・・・・猫耳がないな。アレってやっぱり飾りか何かだったんだろうか?)
剣二が疑問に思っていると、突如アルフに声をかけてくる男がいた。見た感じ、チャラチャラした感じの男であるため、周りにいる人も困っていた。
「な〜姉ちゃんいい身体してんな〜。どーだい、ウチで働かないか?」
「あいにく、そんなめんどい事はパスだよ」
「い〜じゃね〜かよ」
「しつこいわ!!」
そう言って、アルフが男の腕を振り払った。すると、男は逆上して懐からナイフを取り出したのである。
「このアマ!!ふざけんじゃねえ!!」
男はそう言って、ナイフをブンブンと振り回す。アルフも派手に動けないため、最低限の動きでしか避けれない。
「あいつ・・・何して・・・」
剣二はそう言って止めに入ろうとした次の瞬間、かわしきれなかったアルフの頬を、ナイフが掠ったのである。それにより、アルフの頬からはかすかに血が零れた。その瞬間、剣二は消えた。
「何してんだテメェーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
爆発的な加速力で男に近づくと、全身のしなりを利用した拳を男の腹部に叩きこんだ。それにより男は吹っ飛び、電信柱に激突して気絶してしまった。
「だ、大丈夫っスか?」
「え・・・・ああ・・・・うん」
剣二は呆然としていたアルフに問いかけた。すると、声で我に返ったのか、アルフが答える。
「ご、ごめんね。助けてもらっちゃって」
「いいっスよ。肌は女の命っスから」
それを聞いた瞬間、アルフの脳裏にリュウケンドーの姿が写った。そしてそれが、剣二とダブったのである。そんな中、何も言ってこない事を疑問に思った
剣二が尋ねてきた。
「ほ、本当に大丈夫ですか?なんなら病院に・・・」
「え・・・いや、本当に大丈夫だから!!・・・ありがとね」
「いいっス。お姉さんみたいな綺麗な人に出会えただけでも、今日はラッキーですから」
それを聞き、益々赤くなるアルフ。そんな中、突如知った声が剣二の後ろから聞こえた。
「ン?何してんだ剣二?」
「あら、剣二さん」
買い物にきていたシャマルとヴィータに気づき、剣二が振り向いた。するとそれと同時に、見えなかったアルフに二人が気づいた。その瞬間、辺りの空気が冷たくなる。
「ど、どうしたの?」
「・・・すみません剣二さん。先に帰っててもらえますか?」
「ワリィ・・・ちょっと外してくれ」
シャマルとヴィータの言葉に、何やら嫌な予感を感じながら剣二はその場を後にした。その瞬間、シャマルは一帯に人払いの結界を張った。
「おもしれえじゃねえか・・・・シャマル、コイツはアタシがやるよ」
「任せます、ヴィータちゃん」
「上等。アタシもあんた等とは戦いたかったよ」
次の瞬間、ヴィータとアルフは宙に舞った。
「・・・やっぱり、嫌な予感が当たった」
剣二は死角となるビルから、二人の戦いを見ていた。そんな中、彼のデバイスである撃龍剣が尋ねる。
『いいのか剣二?あのままで』
「・・・いい訳ねえだろ!!撃龍剣!!」
『待っていたぞ!!』
剣二はそう言うと、変身用のキーであるリュウケンキーを取り出した。そしてそれを、撃龍剣の鍵穴に差し込む。
「発動!!」
そう言って、スライドを下ろす。そしてそのまま、剣を天へと向けた。
「撃龍変身・・・」
すると、撃龍剣の先端から青き龍が解き放たれた。そしてその龍は天に昇ると、最後に剣二の身体へと降り立った。その瞬間、剣二は・・・リュウケンドーへと変身する。
「よし・・・行くぜ!!」
リュウケンドーはそう言うと、皆のもとへと向かった。
アルフとヴィータは、高層ビルの上で戦っていた。アルフは拳で、ヴィータは鉄の伯爵【グラーフアイゼン】を構えてでだ。
「ブレイク・インパクト!!」
アルフは紋章を発動させながら、拳をヴィータへと向ける。しかしそれを、ヴィータは障壁で強引に止めた。
「主のため・・・消えろよ!!」
ヴィータはフルスイングでグラーフアイゼンをアルフめがけて叩き込む。アルフはそれを障壁で防ぐも、緩和しきれずに弾き飛ばされてしまった。その隙を突いて、ヴィータが更なる追撃のため、カートリッジをロードした。
「シュワルベ・・・フリーゲン!!」
小さな鉄球を、アイゼンでたたき出す。すると、鉄球は赤い光球へと変化し、アルフへと向かう。しかし、いきなりの連続攻撃にアルフは反撃できない。
「・・・フェイト」
アルフが死を覚悟した次の瞬間、その光球を何者かが弾いた。そこには・・・。
「またかよ・・・お邪魔剣士!!」
「アンタは・・・」
ヴィータとアルフが見た戦士・・・・それは。
「お邪魔上等!!リュウケンドーだぜ!!」
片方からすれば目の敵。もう片方からすれば・・・・自分を救った者。
「気に喰わない気に喰わない!!ぜ〜ったいきにくわない!!
ヴィータはそう言うと、グラーフアイゼンを変化させた。片方がドリル状で、もう片方がブースターもように見える。
「喰らえーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
砲丸投げのような遠心力の回転から、一気にリュウケンドーめがけてブースターを展開して突っ込んでくるヴィータ。
「ちっ!!」
リュウケンドーは撃龍剣でそれを防ぎにかかる。しかし、遠心力と加速力を増やした攻撃に、さすがのリュウケンドーもぶっ飛ばされてしまった。
「ど・・・・どうすりゃ・・・・」
『リュウケンドー。獣王を呼び出すのだ!!』
「獣王・・・?」
『お前の武器であり、友であり、誇り高き仲間だ!!さぁ、早く!!』
「・・・ああ。レオンキー!!」
リュウケンドーが落下する中、ホルダーからレオンキーが射出され、撃龍剣に装填される。すると、リュウケンドーの下に六亡星の青き紋章が描かれた。そしてそこから、一匹のサポートアニマル【ブレイブレオン】が飛び出し、リュウケンドーを背中に乗せた。
「お前は・・・・ブレイブレオンか。・・・俺に、力を貸してくれるか?」
『グォォォォン!!』
リュウケンドーの言葉に、ブレイブレオンは吼えて答える。すると、レオンはビークルモードへと変化し、ビルの壁を垂直に走りだした。そしてそのまま、ビルの屋上を越え・・・・空へと飛び上がる。
「な、何する気だよ?」
ヴィータが何事かと見ていると、空中でブレイブレオンはリュウケンドーをがっちりと掴み、そのまま回転しだしたのである。
「これが俺達の、三位一体攻撃だ!!」
リュウケンドーはそう言って、撃龍剣にキーを差し込む。
『ファイナルブレイク』
まるでフィニッシュを決めるように、ブレイブレオンはリュウケンドーを投げ飛ばす。そしてそのまま、一直線にヴィータのもとへ。
「撃龍剣・・・魔弾斬り!!」
リュウケンドーの魔弾斬りは、障壁展開をしたヴィータへとぶつけられる。ヒビが入りながらも、アイゼンはしっかりとヴィータを守り続ける。
「さっさと撤退してくれ。俺は、倒す事を望まない」
「く・・・・覚えてろよ!!」
ヴィータはべ〜と舌を出しながら、シャマルと共に撤退したのだった。
「ふ〜、大丈夫で・・・」
リュウケンドーがアルフに近づこうとした次の瞬間、気配を感じ、空を見た。そこには、S2Uを構えたクロノの姿があった。
「お前は・・・?」
「僕は時空管理局執務官【クロノ・ハラオウン】だ。MADANデバイスに選ばれし君を・・・拘束にきた」
それを聞いた途端、アルフの血相を変えてクロノに言った。
「クロノ!!この人はアタシを二度も助けてくれた恩人よ!!それを拘束って」
「僕だって、本来なら拘束したくないさ。だけど、デバイスを使用している以上、僕は君を確保しなければならない。同行、してくれるね?」
クロノの問いに、リュウケンドーはアッサリと答えた。
「却下だ。俺はあくまで、守りたいから戦うだけだ。この力がある限り、俺は俺なりに戦いを止める」
「・・・そうか。戦いたくはなかったけど、仕方が無い」
アルフの悲痛な叫びを振り切り、クロノがリュウケンドーに先手を仕掛けた。
「クリムゾンバイト!!サジタリアスアーチ!!」
「くっ!!」
赤い光の刃が、まるで弓矢の如く発射される。そしてそれは、リュウケンドーの身体を傷つけていく。
「な、なんて威力だ!!」
『気をつけろ!!あれを集中して受ければ、いくらお前でもただではすまん!!』
撃龍剣の言葉が終わる前に、クロノは更なる攻撃を放つ。
「スティンガーブレード!!エクスキューションシフト!!」
蒼き光の剣が多数展開し、標準を・・・リュウケンドーへと向けた。
「や、やべえ!!」
『まずい!!リュウケンドー!!これを!!』
撃龍剣はホルダーを操作し、赤いキーを射出した。そしてそれを受け取った瞬間、クロノはS2Uを振り下ろした。
「行け!!」
その瞬間、爆撃の如く大量の剣が放たれた。それは有無を言わさず、リュウケンドーに直撃・・・しなかった。何故なら・・・。
「火炎武装!!」
リュウケンドーがいた場所から炎が上がり、それが龍の形を構築すると、リュウケンドーの周りをグルグル回り始めた。そしてその龍は、リュウケンドー装甲を変えていく。そして・・・。
「ファイヤー・・・リュウケンドー!!」
赤きリュウケンドーが、その剣を全て砕くのだった・・・。
あとがき
W:「遂に登場、獣王ブレイブレオンとファイヤーリュウケンドー!!」
ブ:「グォォォン(俺がいるんだ。負けがあるものか)」
剣:「まったく、なんでこんな生意気な性格なんだよ(汗)」
ブ:「ガァァ!!(やるのかゴルァ)」
ボコボコボコ(ケンカ中)・・・
フェ:どうやら、剣二さんとブレイブレオンがケンカし出したので、今回は私とバルディッシュが最後をくくります。
バ:『次回のリリカル戦記に向かい・・・』
フェ&バ:「『プラズマザンバーブレイカー!』」
クロノと戦闘になってしまったな。
美姫 「果たしてどうなるの?」
大人しく拘束されなかった所為で、ややこしい事態にならなければいいけど。
美姫 「さてさて、どうなるのかしらね♪」
次回も楽しみにしてます。
美姫 「待ってます〜」