『An unexpected excuse』

   〜川神百代編〜



「俺が好きなのは……」

 

 恭也はふと空を見上げて何かに気づいた様に後ろに大きく飛び退いた。

 一瞬送れて恭也が立っていた場所に人が空から降りてきた。

 

「空から美少女登場〜〜!! ……って、恭也! 何で避けるんだよ!」

 

 華麗に舞い降りた少女は恭也に口を尖らせながら詰め寄った。

 

「やかましい!! いくら俺でも空からやってきた百代を支えられるかっ!」

 

 恭也はため息を吐きながら徹を込めたでこピンを百代にお見舞いした。

 

「あだっ!? 何だよ、構えよぉ〜〜邪険にすると泣くぞぉ〜〜!!」

 

 百代は涙目になりながら恭也に抱きつこうとするも、恭也に額を押さえつけられており近づくことが出来ないでいる。

 

「あっ、あの〜お楽しみのところ恐縮ですが、もしかして武神の川神百代さんでしょうか?」

「……いかにも、私が武道四天王が一角の川神百代だっ!!」

 

 美由希がおそるそる声を掛けると、百代は振り返ってポーズを決めながら肯定した。

 その姿と言葉に辺りに黄色い声援が木霊した。

 

「なんだなんだ、恭也。こんなに姉ちゃん達を侍らせて……私にも少しお裾分けしてくれよ♪」

 

 百代は恭也に首に腕を回しながら耳元で楽しそうに囁く様に言った。

 

「はぁ〜別に侍らせてるんじゃない……それで何のようだ?」

 

 恭也はため息を吐きながらもどこか嬉しそうに訊ねている。

 

「金貸してくれ、恭也。お前になら少しは躰で返してもいいぞ♪」

 

 百代は頬を染めながら恭也の背中に胸を押し付けながら耳元で囁いた。

 

「……断る!!」

 

 恭也は百代を背負い投げながら言い放った。

 

「何だよ、こんな可愛い彼女が頼んでるのにぃ〜〜!!」

「それとこれとは別だっ!! 親しき仲にも礼儀ありと言うだろうがっ!!」

「私の躰じゃ不満かっ!? 散々弄り倒してるのに……はっ!!? まっ、まさかっ!! もう私に飽きたのかっ!? 他に付き合っている女がいるのかっ!!?」

「誰もそんな事言ってないだろう!! 百代が俺を嫌いにならない限り、俺は百代一筋だっ!!」

 

 恭也は思わず自分の言った言葉に赤面して一瞬固まってしまった。

 

「炙り肉!!」

 

 恭也が固まった隙に百代の腕が紅蓮の焔に包まれて振り下ろされる。

 

「くっ……猿落とし!!」

 

 恭也は突っ込んできた百代のボディーにカウンター気味に蹴りを入れてそのまま躰を反転させた。

 百代は頭から地面へと落とされそうに成るもバク転の要領で恭也から距離を取った。

 

「あはははっ♪ やるな、恭也!! ならばこれはどうだ!! 致死蛍!!」

 

 百代の腕から氣弾が恭也目掛けて飛び出した。

 恭也は危なげなく紙一重で氣弾を避けていく。

 

 激しい攻防を繰り返しながら痴話喧嘩している二人を尻目にFCの皆は一人また一人と中庭を去っていった。

 後にはどこから出したのか色紙を両手で持ちながらそわそわとしている美由希と、これまたどこから取り出したのかビデオカメラで撮影している忍や、あわあわと狼狽している那美、触発されたのかお互いに技を出し合っている晶とレンが残っていた。

 

 

 

 

 

「さすがは恭也だな。無手でも私を相手にここまで戦えるなんて……さあ、もっと戦おう!!

「はぁはぁ……無茶を言うなっ!! 百代相手にこれ以上戦ったら膝がもたん」

 

 恭也は肩で息をしながら膝を押さえている。

 

「すまん恭也……興が乗りすぎた。大丈夫か?」

 

 百代は恭也を抱き上げながら訊ねた。

 

「おい、百代……なんで俺はお姫(・・)()抱っこ(・・・)されているんだ?」

「早くフィリスちゃんに診てもらわないとな……行くぞ、恭也!!」

 

 百代は恭也を抱えたまま、海鳴病院へ向けて駆け出した。

 

「ちょ、ちょっと待て百代!! 自分で歩けるから……」

「遠慮するな恭也!! 膝を痛めたままほっとくと私がフィリスちゃんに怒られる」

 

 恭也が顔を真っ赤に染めながら抗議するが百代は聞く耳を持たずそのまま走り去っていく。

 その姿は沢山の人に見られてしまい、次の日には海鳴中に噂が広がった。

 

 

 

 

 

「ねえ、恭也? 噂の逞しい彼女さんは何時紹介してくれるのかしら?」

 

 桃子は嬉しそうでいてどこか意地の悪い笑みを浮かべながら訊ねている。

 

「はぁ……高町母。心配しないでも直ぐに会えるぞ」

 

 恭也がため息混じりに肩を落とすと同時に翠屋のドアが開いた。

 

「恭也〜♪ 奢られに来たぞぉ〜♪」

 

 噂の逞しい彼女である百代が鼻歌交じりにやってきて恭也の腕に抱きついた。

 

 

 

 

 

 恭也は根掘り葉掘り聞いてくる桃子に疲弊しながらも、百代との馴れ初めを語っていった。

 途中百代の注釈も入り、聞いているほうが恥ずかしくなるほどの桃色空間が形成されて皆ブラックコーヒー片手に聞き流す羽目となった。

 

 

 

<おわり>

 


<あとがき>

 

今回は『真剣に私に恋しなさい!』から武神の百代ちゃんを登場させてみました。

 

百代「呼ばれて飛び出て美少女登場!!」

 

まあ、確かに見た目は美少女だよな。

 

百代「何だよ、文句あるのか!?」

 

だって素手で地面を叩き割ったり、隕石を破壊するほど氣を放出するなんてチートを超えて最早バグだよ。

 

百代「そうか? 家のジジィやヒュームさんも同じような事出来るぞ」

 

どこのDB世界だよ。まあ、百代ちゃんには可愛らしい弱点があるからなw

 

百代「何だと!!? 美少女な私に弱点なんかないぞ!!」

 

ほう〜そうか。ならば、草木も眠る丑三つ時に……

 

百代「わぁあぁ〜!!なっ、何にも聞こえないぞぉ〜!!」

 

どうした? まさかお化けが怖いなんてないんだろう?w

 

百代「おっ、お化けなんていないんだ。非科学的な……」

 

ほれ、後ろを振り返ると血まみれの……www

 

百代「ぎゃぁあぁ〜!! 星殺し!!」

 

ちょ!!? うぎゃぁあぁ〜!!??




今回の投稿は百代〜。
美姫 「武神も彼の前ではデレデレに……って、戦っているわね」
だな。しかも訪問理由が金の無心という。
美姫 「見た目美少女なのにね」
最後は恭也がお姫様抱っことか。
美姫 「これは結構、珍しいパターンよね」
うんうん。楽しませてもらいました。
美姫 「面白かったです」
投稿ありがとうございます。
美姫 「ございま〜す」
ではでは。



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