パチ、パチン―――
「ふむ、こんな感じか・・・」
今日も恭也は一人、庭に出て、盆栽の剪定をしていた。
いつもと変わらない休日の一コマである。
プルルル―――
その時、いつもはあまり鳴らない恭也の携帯が鳴った。
ディスプレイに表示されている番号は那美の番号だった。
「もしもし」
電話に出る恭也。
「高町先輩、今すぐに八束神社に来てください!」
聞こえてきたのは切羽詰ったような那美の声だった。
「何かあったんですか!?」
「く、久遠が・・・」
「久遠がどうかしたんですか!?」
(まさか、また何かあったのか!?)
つい先日に起こった久遠の暴走が恭也の頭をよぎる。
「・・・分身しちゃったんです!」
「・・・は?」
那美の言葉につい、間抜けな声が出てしまった恭也であった・・・
〜久遠がいっぱい?〜 作 K・SWORD
あの電話の後、半信半疑ながらも急いで神社にやってきた恭也。
目の前には狐、子供、大人の三匹になった久遠がいた。
プリ○セス天○もびっくりである。
「・・・どうしてこうなったんですか、神咲さん」
とりあえず那美に事の説明を求める。
三匹とも、気を失っているのか、ぴくりとも動かない。
「どうやら、愛さんの料理を食べて気絶した後、こうなったらしいんです・・・」
「・・・」
恭也、絶句。
(噂では聞いていたが、こんなことまで起こしてしまうとは・・・)
恭也は愛の料理に恐怖感を覚えた。
「で、治す方法はあるんですか?」
「・・・多分、時間が経てば元に戻ると思います」
「それまではこのままというわけですか・・・」
「はい・・・」
力なく頷く那美。
と、その時三匹の久遠が目を覚ました。
「・・・あ、恭也。おはよう」
「おはよう、きょうや」
「くうん」
三者三様の挨拶をする。と、三匹がお互いの存在を確認した次の瞬間、時が止まった。
「「「((え?))(くうん?)・・・」」
そりゃそうだろう。目の前に自分がいるんだから。
「く、久遠?」
「「「・・・□△@×〜〜!!」」」
三匹は言葉にならないような声を出し、辺りを飛び回る。
「お、落ち着け、久遠!!」
「落ち着いて〜〜!!」
十分後―――
「・・・というわけなんだ」
「くうん・・・」
「「・・・」」
恭也たちの説明でようやく事態を理解した三匹の久遠。
心配そうな顔で二人を見ている。
「やはり、このまま経過を見守るということですか?」
「そうなりますね・・・」
そんなことを二人で話していると、トコトコと子狐状態の
久遠が恭也の足下にやって来た。
「ん、どうした?」
「くうん・・・」
不安げな目で恭也を見上げる。
「大丈夫だ。必ず治る」
優しげな表情を浮かべ、抱き上げる恭也。
「くうん♪」
うれしそうな鳴き声をあげる子狐久遠。
「「・・・(きょうや)(恭也)!!」」
それを見た子供久遠と大人久遠が声を上げる。
「「(くおん)(久遠)も!!」」
そう叫び。子供久遠は首に抱きつき、大人久遠は足に擦り寄る。
「ちょ、ちょっとまて!」
慌てる恭也。
「・・・」
そして後ろにいる那美から発せられる、恐ろしいまでの負のオーラに冷や汗をかく。
「恭也は久遠のもの!!」
「ちがうもん!くおんのもの!!」
「くうん!!」
久遠は久遠同士でいつの間にか恭也の取り合いに発展していた。
(勘弁してくれ・・・)
「じゃ、恭也に選んでもらおうよ」
「うん」
「くうん」
何やら久遠同士が頷きあっている。
「ど、どうした久遠?」
「恭也はどの久遠が好き?」
「・・・は?」
大人久遠から発せられた言葉に思わず、間抜けな声を出す恭也。
「きょうや、どれがすき?」
「くうん」
三匹が恭也を見つめる。
(ど、どれが好きといわれても・・・そうだな。子狐は抱き心地がすごく良いし、
子供は俺のことを慕ってくれるいい子だし・・・。大人はプロポーション抜群で捨てがたいし・・・
ううむ。・・・って何を考えているんだ、俺は!?)
邪な考えが頭をよぎる。
「だめ!先輩は私のものなんだから〜〜!!」
それを見ていた那美、我慢が限界に達したのだろうか、叫びながら恭也に
迫ろうとする。だが・・・
「「雷」」
ドオオオン―――
大人久遠、子供久遠が那美に雷を放ったのだ。
「きゅう・・・」
那美は倒れた。
「お、おい、久遠!」
「だいじょうぶ」
「うん。死なないように手加減したから」
(そ、それでいいのか?)
「さて、邪魔者がいなくなったところで・・・恭也、どれが好き!?」
「きょうや!」
「くうん!」
改めて、恭也に迫る三匹の久遠。
(誰か助けてくれ〜〜!!)
恭也は心の中で叫ぶのだった・・・。
「・・・は!?ここは・・・?」
気がつくと、恭也は高町家の縁側にいた。どうやら昼の暖かい陽気に負けて、寝ていたようである。
「夢だったのか・・・よかった・・・」
ほっとする恭也。と、その時・・・
プルルル―――
・・・携帯が鳴った。
「!?」
思わず、びくっとなる恭也。
おそるおそる携帯を手に取り、ディスプレイを見る。が、次の瞬間、思わず携帯を落としそうになった。
そこに表示されていたのは・・・那美の番号だった。
―――ENDLESS?
あとがき
ども。え〜、K・SWORDです。氷瀬さんのお許しがあり、私のSSを投稿させてもらえることになりました。
ですが、質の高い作品が多くあるこのような場所に私のSSを置いてもらっていいのだろうか?
という疑問や、心配があります。
で、今回の作品は先月行われた“とらいあんぐるパーティー4”で書いた作品を加筆修正したものです。
本当は新作を送りたかったんですが、仕事が忙しいので今の段階ではこれが精一杯です・・・
もしかしたら、次回は新作が送れるかもしれません。
その時はよろしくです
では〜
投稿ありがとうございます〜。
美姫 「こういう作品は大好きです」
良いよね〜。ENDLESSものってのも。
美姫 「三パターンの形状を持つ久遠ならではね」
あははは。
美姫 「K・SWORDさん、本当にありがとうございました」
ました!