『こんな休日の失敗談?』





 ガタンゴトン、ガタンゴトン。
 規則正しい振動と共に視線の先の景色が目まぐるしく動いていく。
 初夏の日差しに当てられた緑に、空の蒼を映す青い海。
 ガタンゴトン、ガタンゴトン。
 右肩に掛かる心地良い、優しい重さを感じながら移ろう景色に眼を奪われる。
 目の前の女性も似たようなもののようで、移ろう景色を嬉しそうに見ている。
 今は見えないが、恐らく尻尾ははちきれんばかりに振られていることだろう。
 そう考えると、まぁ、こう言う突発的な小旅行も悪くないものだ、と思える。
 ガタンゴトン、ガタンゴトン。
 真っ黒なトンネルを通る。この真っ黒を抜けたら次はどんな景色なのだろうか?
 目の前の女性からは喜びの期待を強く感じる。
 電車一本でここまで喜ばれると、こっちまでなんだか幸せな気分になってくる。
 悪くは無いな。うん、悪くは無い。
 何となくそれっぽっちで幸せを感じてしまっている自分が可笑しくて、心の中で心にも無い事を呟く。
 もっとこう、年頃の少女を楽しませるネタを持つべきなんだろう。
 だがそれは、何となく自分のキャラじゃないように思えてしまい――こう、抵抗があるのだ。
 やはり今度、同年の友人に相談すべきか……。
 ガタンゴトン、ガタンゴトン。
 そんな事を考えながら頭の隅ではぼんやりと、本当にぼんやりと思う。
 そういえば、そー言う事に詳しそうな友人って少ないなー……と
 そうこうしている内に長い長い真っ暗なトンネルを抜け、明るい景色が映え渡る。
 一面の青と蒼。雲一つ無い晴天とはこう言う物だ、と景色が主張してすらいる錯角がする。
 暖かい太陽の光に照らされ綺羅綺羅と輝く青と、遠く――何処までも突き抜ける蒼。
 眩暈がするほどの絶景。ただただ、見惚れるほどの世界。
 ふと視線を逸らすと、はしゃいでいた女性も言葉を無くし、ただ今は見えない尻尾を振りながら世界に見惚れていた。
 その日、その時だけの景色――か。
 何となく、前に読んだ小説の一説を思い出し――なるほど、と感心させられる。
 ただただ美しく、ただただ綺麗なこの景色。同じものは二度と見れない。
 明日のこの場所、この時間に見る景色はまた違う美しさがある、と。
 がたんごとん、がたん、ごとん
 右肩に掛かる金の髪をなるだけ優しく梳きながら、その寝顔を惜しくも思っている自分を自覚。
 もうすぐ目的の駅に着く。そろそろ起こすべきだろう。
 そう思うが、手は髪を梳くだけ。声は俺も、目の前の女性も出せない。
 歳相応の笑みを浮かべた寝顔。それはこの少女が最近見せるようになった“女の子”の顔。
 起こすのが勿体無い、もう少し――そう、ほんの少しだけこのままで。
 目的の駅まで後数分。
 初夏の太陽が燦々と照りつける日。海開きもまだ行われていない。
 それでも俺達は、今日この日、海に来ていた。泳ぐ事は――出来るかもしれないが水着は持ってきていない。
 本当に、ただ何となく――海に行きたいから来ただけ。ただそれだけの、日曜日。







 その日は天気も良く、朝から縁側で日向ぼっこと非常に――
非っ常に年頃らしくない趣味で時間を潰しつつ午後からの予定を考えていた青年、高町恭也。
 上の妹からは爺むさいだの、母親からは爺むさいだの、挙句には姉的存在からも爺むさ――ちょっと泣きたくなったのですよ。
 ええ、もう。あれ?悲しくないのに涙が――あれぇ?
 まぁそんなことはどうでも良い。その日、朝から恭也は暇だった。朝食を摂ったらやる事もなしに縁側でぼんやりと。
 こんな良い天気。しかも日曜日。貴様は何歳だ?と家族に心の中で突っ込まれながらも縁側でぼんやり。
 湯飲みと季節外れの蜜柑を傍に置き、ただただ庭を眺め続ける。母親は店へ、上の妹は神社に遊びに、下の妹は友達と出掛け――
高町家は今日も平和です、まる

「ふぅ――確かに、新しい趣味を持つべきか」

 誰とも無しに呟く。流石に盆栽、釣りは若者らしくないと悟ったか?まぁ、釣りは判らんでもないが。
 とりあえず、頭の中では新しい趣味(予定)を浮かべてみる。
 散歩、読書、野球、映画―――ゲーム?

「後はどんなのがあるか…」

 指折り数えてみるが、良いのが浮かばない。っていうか、やっぱりどれもアレだな。
 と言うかゲームは趣味か?そんな事を考えてみる。
 アレは娯楽であって趣味ではないのでは?でも、最近は全国大会とかあるらしいしな。
 ……と、そんな感じで良い感じに思考に没頭してさらに若者らしさを失っていく恭也。
 恐らく、精神年齢を図るゲームをやらせれば相当な年齢になるのでは?とは高町家一同の言。
 と、ちょっとトラウマっぽい事を思い出そうとしていたら――

「む、アルフではないか」

 気付いたら庭の隅に見慣れた大型犬(狼な)を見付ける。
 どうやら今日は相当気が緩んでいるらしい、視認出来るまで気付かないとは…
 いかんいかんと頭を振って思考を切り替える。常に緊張感を持って行動、と再度胸に刻む。

「恭也――今日は暇だろ?」

 狼が喋る――と、客観的に見れば夢でも見ているような光景だがいかんせん、高町家は色々と“そういう”のが集まっている場所である。
 これくらいで驚いているようではここでは過ごしていけないのだ。
 というか、ここでは狼どころかフェレットやら場合によっては狐まで喋るのだ。気にするだけ損である。

「む……」

 客観的に見れば暇だろう。
 と言うか暇だ。でなければこんな良い天気の日に縁側でのんびり茶など啜っていない。
 ……が、出会い頭に指摘されると、結構複雑なものもあるが今はそれは無視。

「まぁ、暇だが――フェイトは?」

 恭也としてはアルフは暇、フェイトは暇ではないと言う図式が瞬時に頭の中で組みあがる。
 それも、この二人――一人と一頭を知る者ならそう思うであろう。
 いつも二人一緒にいるのが当たり前、と周囲に思われている二人と一頭なのである。

「フェイトなら玄関だよ。」

「む?」

 怪訝そうな声をあげる恭也に

「勝手知ったる他人の家、ってね」

 その一言で、何となく事の顛末が判ってしまうのは良い事か悪い事か。
 まぁ、良い事と言う事にしておこうと思う。それが賢明だ。

「なら、少し待っていろ。久しぶりに三人で茶でも」

 そう言い腰を上げる恭也。

「悪いね」

 全然そう言うことを感じさせない口調のアルフはいつも通り。
 それでも悪く思えないのは、この狼の性格のおかげであろうと妙に悟った心境の恭也。
 まずは玄関で申し訳なさそうに待っているであろうフェイトに声を掛けようと、玄関に向かうのだった。







 茶と茶菓子のせんべいを用意してリビングへ。
 本当なら紅茶とそれに合った洋菓子が良いのだろうが紅茶はともかく菓子は昨日美由希が試作した『クッキー(仮)』しかなかったのだ。
 というか、誰も処分しなかったのか、アレ。
 ちょっと嫌な汗を流しながらリビングへ向かう。
 そんな恭也へ

「?……何かありましたか?」

「いや、少し嫌なモノが…な」

「「??」」

 先程までとは打って変わって若干顔色を悪くした恭也に、さりとて詳しく聞く事も出来ず首をかしげる二人。

「まぁ、二人にはどうと言う事でもない。それより、今日はどうした?」

「暇だったから来た」

「そうか」

 悪びれもせずアルフ。それに即答の恭也。第三者から見れば、もう少し会話は無いのかと突っ込みたくなる。
 まぁ、二人とも直球勝負が好きだから仕方ないのか。

「恭也さんは、今日は予定は?」

「特に無くてな。正直、二人が来て助かったと言った所だ」

 迷惑だろうと考えていたフェイトとしては、強引にでも誘ってくれたアルフには感謝である。
 そうですか、と本人も気付かない笑顔を浮かべて日本茶を啜る。
 最近は良く笑顔を浮かべるようになった、と恭也は思う。
 初めて会った頃の張り詰めた感じは薄れ、歳相応――とまではまだ行かないが、それでも人前で笑顔が増えた。
 良い傾向だ、とも思う。別に、自分はこの少女と深い関係にあるわけでもないし、血の繋がった家族でもない。
 自分が勝手に心配しているだけ。言い換えるなら、ただのお節介である。
 性別も違えば歳が近いわけでもない。
 それでも、それでも――叔母と対峙した夜に出来た、友達なのだ。
 だから―――

「恭也、変な顔してるけどどうかしたの?」

「ぬ、変な顔なんかしてない」

「いーや、今のは変だ、変。なんか、恭也らしくなかった」

 なんだそれはと思いながら

「失礼な。俺だって嬉しければ笑いもする」

 その言葉にきょとんとする二人。
 そんな顔をされて何故か落ち着かなくなる恭也。
 自分は、もしかして相当変なことを言ったのだろうか?と不安になる。

「…何か良いことでも?」

 そして、今度は意図して笑顔を浮かべながら金髪の少女が聞いてくる。

「ああ、まぁ、こう言うのは本人達は得てして気付かないものなんだろうな」

「「???」」

 再び、二人の頭上には疑問符が浮かぶ。
 その様子に、嬉しそうに

「何、気にするな」

「そう言われると、余計に気になるんだけど」

「だろうな」

 すまし顔で茶を一啜り。
 茶菓子のせんべいを一齧り。
 意地悪顔でさらに一言。

「ただ、新しい趣味が見付かっただけだ」

 それはもう楽しそうに言う恭也。
 二人が困惑する様を見て喜んでいる、と称した方が正しいか?

「恭也、アタシたちをからかって楽しい?」

 その言葉にさも心外だ、とばかりに肩を竦め

「どうだろうな」

 苦笑交じりに言葉を返す。
 楽しいというより嬉しい、といった感じが強いか?と自己分析。
 多分そうだろう。なんだかんだ言って、恭也自身、
 この三人でのお茶会とも呼べないような、まどろみにも似たゆっくりした時間は心が安らぐ。
 そして恐らく―――フェイトもアルフもだろう、と思う。
 ゆったりとした安らぐ笑みを浮かべるフェイトに、心底楽しそうに恭也に食って掛かるアルフ。
 優しく暖かい空間。

「ところで、二人はこれから時間は―――あるんだったな」

「そりゃもう、恭也なんかに頼らなきゃならないくらい暇だからね」

 肩をすくめて言い放つアルフにぬ……とくぐもった声を上げる恭也。
 十中八九さっきの仕返しだろう、が

「あ、アルフ!!」

 フェイトが慌てて紅髪の女性を嗜める。

「良いんだ、フェイト」

 それを嬉しそうな顔で止める恭也。

「アルフのは冗談だ。気にしてないし、フェイトももう少し冗談を言えるようにならないとな」

「で、でも……」

「フェイト」

 尚も何か言いたげなフェイトを遮り

「俺達は友達だ。少しずつ、こういうのに慣れていこう」

 茶を一啜りして、優しく諭すように言う。
 冗談を言い合い、笑いあう。正しい事をしたら褒め、間違った事は正しく諭す。
 それが正しい“友達”だと思う、と言葉には出さずに心に留める。
 この少女は絶対的に対人経験が少なすぎると思う。
 そして、その考えは間違っていないとも、思うのだ。少女の家庭環境は知っている。
 だからこそ、それは間違っていると判るのだ。正さなければならないと、思ったのだ。思って、しまったのだ。

「フェイト」

「……はい」

 落ち着くために茶を一啜りして、応えてくれる。
 そんな少女が嬉しくて

「海に行こう」

「はい?」

 返事をしたのはアルフだった。
 しかも、言外に「暑さにやられたか?」みたいな感情がひしひしと…。

「こんなに良い天気なんだ、少し遠出するのも悪くないだろ」

「珍しいね。てっきり出不精だと思ってたよ」

「なるほど。お前が俺をどう見ているか良く判った」

「さっきのは冗談として摂って今回はダメなの!?」

「なに、冗談だ」

 仕返しとばかりに言い返す。正直、恭也の冗談は冗談と判りにくい。
 そんな事をブツブツ言うアルフを尻目に

「こんな調子だ。フェイトも言えるようになるよう頑張れ」

「は、はぁ…」

 曖昧ながらも返事をしたフェイトに満足げに頷き

「では、財布と羽織れるものを取ってくる。アルフ、茶菓子を片しておいてくれ」

「人を何だと!?」

「大飯喰らい」

「即答!?」

 なんと言う会話だ、と苦笑するフェイトを置いて、マイペースな恭也は部屋に向かうのだった。







 駅をはさんで海と山に分かれる夏場は人で溢れる海水浴場に到着。時間は電車乗り継いで40分近くといった所。

「ふむ、やはり人は少ないな」

 それでも、ゼロじゃない辺りは近年騒がれる温暖化の所為か。
 腕組みしてまばらに居る人間を観察してみる。暑い。

「来てみたのは良いが、何をする?」

「考えてなかったの?」

「ああ。こーいうのは兎に角勢いと行動が肝心だと言われてな」

 何故か無駄に胸を張ってみる恭也。
 そして呆れたというか、相変わらずの甲斐性無しっぷりにこの男の脳味噌を解剖するのが世の女性の為かと半ば本気で悩み始める獣娘。
 二人同時に、しかしまったく違う理由で固まる二人。
 残ったフェイトは良い迷惑である。

「誰に言われたの、その名言は」

 名言辺りに明確な悪意を感じるが、それに気付かず

「赤星という、俺の友人だ」

「そいつは男?」

「ああ、男だが?」

「恭也、男友達少ないだろ?」

「…………ぐっ……」

 何でかその一言が胸に刺さったらしい恭也は軽く呻いて視線を逸らす。
 しかも、クリーンヒットらしく変な汗まで額に浮かべている。

「きょ、恭也さん?」

 心配そうに見上げてくるフェイト――が、その真っ直ぐな瞳が正直一番辛い。
 なんか恭也の中のトラウマっぽい部分にグッサリと何かが突き刺さる。特にダメージは受けていないが膝から崩れ落ちそうだ。

「もう少し助言を求める友達は選んだ方が良いよ、恭也」

 別に助言自体が悪いのではないと思う。ただ、実行に移す側がその意味を正しく理解していなかっただけだ。
 まぁ、その辺りをこの男に求めるのは酷と言うものだろう。
 何となくその辺りを悟ってしまったアルフは

「で、どうするの?このまま見てるだけ、ってのも芸が無いだろ?」

「……そう、だな」

 どうしたものかと思案数瞬。

「フェイト、釣りは好きか?」







 海辺を離れ、駅を通り抜け、森を通ること10分程度。
 自身の感と、運を天に任せて森を突っ切ると、良い感じの川辺を発見。
 ちなみに、後ろからついてきている二人は森の中を歩くのが初めてなのか、妙な知識だけ豊富な恭也にしきりに感心していたり。
 だがまぁ、これが通じるのは今回だけだろう。次からはもっと良く遊ぶ場所を考えとかないと命に関わりかねない。
 いや、冗談抜きで背中に冷や汗が伝う恭也。はて、何で俺はこんな所に居るんだろう?と歩きながら考えてみたり。
 まぁ、そんなのこの際どうでも良いんだけどな。

「ふぅ、良かった。隠れた穴場に到着だ」

「いま、良かったって言ったよね?」

「さ、釣竿を造るぞ」

「恭也、次は―――」

「うむ、肝に銘じておく」

 なら良し、と一応お許しを出して川を覗き込むアルフ。
 暑さとは別の汗を流しながらフェイトを伴って釣竿に使えそうなしなった枝を捜す恭也。
 ちなみに、糸には鋼糸を使うつもりなこの男。行き当たりばったりもここまで来ると意地とかそんなのを超越し始めるな。

「というか、海に来たのと違うの?」

「……高町家では、目的地で予定変更するのは良くある事だ」

 頭に浮かぶのは今は亡き父。
 確かに予定が予定通りに進んだ事は一度もなかったなぁ、と。
 嗚呼、極限の幼少時代。

「恭也さん、針と餌は?」

「抜かりは無い。餌は今から採る。針はこれを―――」

 懐から取り出したるは飛針と呼んでいる御神流の投擲暗器。というか、針太すぎ。マグロでも釣る気か。
 それを石で叩いてつの字に曲げる。それを即席で三つ。もはや形振り構っていない追い詰められた恭也。
 しかし、普通の釣りを知らないフェイトとアルフはしきりに「へぇ、釣り道具って自作するんだぁ」的な視線で感心してたりする。
 はたして、この男の暴走が何処までバレずに突っ走れるのか、非常に見ものである。

「では、次は餌だな」

「魚の餌って…木の実とか?」

「違う。水の中の魚がどうやって木の実を取るんだ……」

 はぁ、やれやれと普段の恭也ならまずしないであろうオーバーリアクションでアルフの回答を却下。
 視線を続けてフェイトへ

「え…っと。小魚?」

「ふむ。まぁ、間違いではないが、今回はそんな大物は狙わないのでハズレだ」

 惜しかったな、とフェイトの頭を撫でる恭也。
 猫のように首を竦めるフェイトを見ていると自然と笑顔が浮かんでしまう。そんな恭也を見ながら
 「あれ?何か扱い違わない?」的な仕草で首をかしげるアルフ。

「ちなみに、答えは―――」

 と、周囲で一番大きな岩(人の頭大)を無造作に蹴り飛ばす恭也。すると―――

「「!?!?」」

 ウジャウジャと“色々”な生物が居た。しかも沢山。
 おそらく、三人の両手の指の総数を超える数だろう。正直、覚悟できてなかった二人には悪夢のような光景だろう。
 だがそこは我等の恭也。まったく意に介さず素手で3〜4匹まとめて鷲掴む。再度驚く二人。

「きょ、きょうや…良く触れるね、そんなの」

 無言でうんうんと頷くフェイトを見ながら…

「……確かに、女の子にはこれは嫌だろうな」

 やっと自分の間違いに気付く。

「よし。二人の分にも餌をつけておく」

「「宜しくお願いします」」

 何で気付いたら釣り教室みたいな流れになってるんだろう、この三人。







 そんなこんなで手製の釣竿を手に三人はそれから2時間ほどのんびりとした時間を過ごしていた。
 こういうのはアルフは苦手かと思っていた恭也だが、意外と楽しいらしくお喋りしながら楽しく釣りに興じている。
 フェイトはアルフの喋り相手をしながらも釣竿をしっかりと両手で握り締めている。少し緊張しているようだ。
 ちなみに恭也は

(昼飯、どうしよう)

 魚が釣れたら捌いて、とも考えたが流石に飛針の針の大きさでは川魚は釣れないだろう。
 そろそろ潮時か、と思う。
 今から昼食を摂って帰ったらそれなりの時間になるだろう。
 フェイトたちさえ良ければそのまま夕食に招待するのも良い。

「よし。そろそろ帰るか」

 その言葉に凝り固まった身体を伸ばすアルフとフェイト。
 妙なところで姉妹みたいだな、この二人、と変なところで感心する恭也だった。







 山を降りて(?)電車に乗って駅前のちょっと値を張るところで昼食を摂って帰宅。
 なんというか男の見栄で交通費も昼食代も三人分出したので相当軽くなってしまった財布を仕舞っていると

「今日は色々と楽しめたよ、恭也」

「それは良かった。正直、こう言うのは苦手でな……」

 だろうね、と心の中で呟くアルフ。

「すまないな、フェイト、アルフ。今日はあまりゆっくり出来なかっただろう?」

「そんなことは無かったよ、ねぇフェイト?」

「…うん……」

 妙に楽しそうなアルフと、嬉しそうなフェイトを見ながら

(ふむ。まぁ、経験した事が無かったから真新しかった…と言った所か)

 何でこの男はこういう事だけは鋭いんだろう?
 この鋭さの三分の一でも……はぁ。

「そうか。まぁ、次があるならもう少し勉強しておく」

「はい、次も楽しみ…です」

 そうか、とほぼ無意識にフェイトの頭を撫でる恭也。
 そんなこんなで無事とは言わないけどそれなりに収穫のある休日を過ごした三人だった。


 後日、某友人にデートコースを聞いた恭也に妙な噂が流れるのは別の話だったり






ほのぼのでありながら、随所にお笑いが。
美姫 「飛針で釣り針が良かったわね」
確かにな。純粋な二人を騙す恭也、ってか。
美姫 「こんな休日も良いわよね」
だな。いやー、とっても和みました。
美姫 「投稿ありがとうございました」
ございます。



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