合同企画第3弾

ドタバタコメディー(?)

  妹たちと蛍火――阻止せよ兄貴どもとレン!―― 3

 

作:ペルソナ&FLANKER

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「兄さんと恭也さんへのプレゼントは決まりましたから、次は蛍火さんがプレゼントする品を探しましょう」

「うん、そうだね!」

 

 兄の良さを改めて思い出し、仲直りするためのプレゼントを決めた2人のテンションは高い。

 はしゃぐ姿を優しい目で見る蛍火と、遠くから温かい眼で見つめる蒼牙と恭也。嫉妬の視線がまだ解けないレン。

 色々と複雑な集団だ。

 他の店に足を向けようとした矢先、

 

 クゥ〜

 

 可愛らしい腹の虫が2匹(実際は+1)が鳴いた。

 

「くくくっ」

「えっと(///」

「あぅ(///」

 

 自分達が鳴らしていることを蛍火に気付かれたと知り真っ赤になるフェイトとなのは。

 

「随分と可愛らしいお腹の虫が鳴きましたね」

 

 笑うだけでなくわざわざ口に出すのか、蛍火!?

 

「むぅ〜、蛍火さんはデリカシーがないです!」

「あのっ、そういう事あんまり言わないで下さい」

 

 怒るなのはと恥ずかしがるフェイトといった対照的な反応を示す。

 彼女達の性格が良く現れている。

 

「確かに、それは失礼を。では、不貞を働いた私に挽回の機会としてお2人の食事を用意させていただけませんか?」

 

 悪びれている様子もなく、自然と昼食を誘う。

 明らかに女性に慣れすぎている。

 笑ったのもこのための前振りだというのなら、何て計算!?

 

「うわっ、蛍火さん。もしかして女性慣れしてる?」

「クロノでもそんな事言わないよ?」

 

 呆れているというよりももはや感心している2人。

 周りにいる男が揃って鈍感だからこそ、蛍火の反応は新鮮に写った。

 

 

 

 

 

「……貴方たち、妹にすら呆れられるほど本当に鈍感なのね。まあわかってたけど」

 

 レンの容赦ない言葉に反論するにできないのが恭也と蒼牙。

 

「そこまで俺は鈍いのか……」

「まあ……幾度となく鈍感・朴念仁と言われちゃいるんやけどな」

「あと無神経でしょ? よくFLANKERがあとがきであなたたちをそう言ってたし」

「「……あの駄作者め……!」」

 

――――レン、ばらさないで! 私(FLANKER)が殺される!

 

「どうでもいいし」

 

――――ひどっ!?

 

 とそのとき、なのはとフェイトと同様の音が、レンのお腹から聞こえた。

 

 

 

 

 

 などと鈍感男どもが駄作者に殺気を放っているのは放っておいて。

 

「ふむ、では昼食は必要ないと。お腹の虫がまた鳴っても知りませんよ?」

「うぅ〜〜〜、お願いします」

「…………お願いします」

 

 しぶしぶながらも了解を示す。

 やはり、大勢の人の前でお腹の虫がなるのは恥ずかしい。

 蛍火はどう考えても意地悪だ。

 

「はい、任されました」

 

 

 

 

 

「「…………」」

 

 顔を真っ赤にして下を向いているレンと気まずそうにしている恭也と蒼牙。

 なのはとフェイトがお腹の虫を鳴くと同時にレンも空腹を訴えていた。

間近で聞いてどう対処すればいいのか分からない鈍感2人。

 気が利かない。

 

「あ〜、レンちゃん。俺達も昼飯を食べに行かないか? あっちの3人も丁度食べに行くようだ。

 これ以上追跡しているのはさすがに……な?」

 

 気を利かせると同時に自分達に都合のいい方に持っていこうとする蒼牙。

 これ以上、隠れて見ていては見つかったときに妹達に怒られかねない。

 それはなんとしても避けたい2人。

 

「ダメ、まだ蛍火を追いかける」

 

 空腹で恥ずかしいのだが、それ以上に蛍火の事が気になるレン。

 そんな頑なな態度に蒼牙も恭也も閉口する。

 

「しかしな……」

 

 恭也も口を開いてレンを説得しようとするが、

 

「貴方達は約束さえ守れないの?」

 

 蒼牙と恭也に隠しもしないで侮蔑の視線を向けるレン。

 彼女は蛍火と共に過ごしている。だからこそ、レンは蛍火同様に『誓い』に煩い。

 

 蛍火を基準に生きているレンが『誓い』に煩くなってもおかしくはない。

 

「ぬぅ……」

「くっ……」

 

 そしてその言葉は蒼牙と恭也を抉る。

 2人は『守護者』と『義士』。

 自らの信念に『誠』である必要があり、見つけた信念を『護る』必要があり、信念を全うする『義』がなくてはならず、

 自らに課した『誓い』を破る事は赦されない。

だからこそ2人にはその言葉は痛い。

 

「「分かった」」

 

 2人は違える事が出来ない。自らが掲げる信念と横に並ぶ『誓い』を出されてしまっては。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここです。どうぞ」

 

 ドアを開けて、中へと導く。もちろん、なのはとフェイトを先に入れることを忘れない。

 そこはもちろん蛍火が経営する喫茶店。

 

 喫茶店と呼ぶにはあまりにも席が少ない。

 しかも昨日、なのは達がよった喫茶店と比べると立地も悪い。

 そんな事を不審に思うも2人は気負いもなく中に入っていった。

 蛍火を信頼しているからこそだろう。

 

「あんまり大きくないですね」

「大きすぎると忙しくなってしまいますからね。道楽で始めた店ですし」

 

 道楽で始まったとはいえ、毎月きっちりと黒字をたたき出しているこの店。

 そもそもこの店は情報を集める為に作った店なので目立っては困る。

 

「「あ、あはははっ」」

 

 道楽で喫茶店を始めたという蛍火に汗を浮かべる2人。

 スケールの規模が違う。ある意味で兄達と同じ規格外には笑ってしまうしかない。

 

「では、少々お待ちを。用意してきますので」

 

 

 

 

 

 喫茶店に入っていく3人を見つめる蒼牙、恭也、レン。

 反応は様々だ。

 

(なのははそんな事はしない、変なことにはならない。

そうだ、そう……なのはと一緒に過ごしてきた俺がそれを一番知っているんだから、変なことは起きないはずだ)

(フェイトは大丈夫だ。しない、するはずがない)

 

 仲良く喫茶店に入っていくことを見て悶々とする恭也と蒼牙。

 

誰もいない喫茶店に人を入れるなんて私だけだと思ってたのに! 思ってたのに……

 

 蛍火の行動に憤りを感じるレン。

 ずっと特別だったと思っていたのに今になって全てが崩れていく。

 それは悲しいを通り越して、心が痛んでくる。

 そんな痛ましげなレンを気遣う心を持ちながらも再びシスコンの心を燃やし始めた兄達。

 レンの『誰もいない喫茶店』の部分を聞き、妹達の身が危険だと気付いてしまった。(←地獄耳かよ

 立地条件が悪い為に助けの声も届かない。ある意味で襲うには適した状況。

 

「蒼牙、準備はいいか?」

「えぇに決まっとるやんか。くくっ、あの時譲った勝ちを今返してもらおうやないか、蛍火!!」

 

 密室→助けが来れない状況→中にいるのは危険人物と可愛い妹→しかも危険人物は前科(レン)持ち。

 

 

 

 結論――蛍火は蒼牙たちの可愛い、可愛い!! 妹を襲う!!!

 

 

 

 そんな馬鹿げた結論に至ってしまったシスコン達。

 2人が喫茶店に強襲しかけようとした矢先にまた、クゥと可愛いお腹の虫が鳴いた。

 そこには頬を赤らめ俯いているレン。

 

「……あ〜、レンちゃん?」

「何か買って来ようか?」

 

 気を削がれ、レンに向き合う2人。

 この2人、酷い目にあわされているがそれでもレンを気にかけている。

 2人が良く知るフェイトに似ていると心の底で気付いているからだ。

 

「……お願い」

 

 2回も親しくない男の前でお腹の虫が鳴った事が恥ずかしいのか2人に頼み込む。

 

「蛍火が作った料理以外を食べるのは嫌だけど……」

 

 その言葉を聞いてまたしても2人に緊張が走る。

 

((マズイ!! なのは(フェイト)もこの娘みたいに餌付けされるかも知れん!!))

 

 暴走に暴走を重ねている思考はそこに行き着いた。

 2人の予想もあながち間違っていないから恐い。

 

(蒼牙!! 俺が見張っている。だからお前はソッコーで何か買ってきてくれ!)

(なっ、恭也!? 万が一の事が起これば装備の整っていないお前では勝てるか分からへんぞ!!)

(時間稼ぎぐらいは出来る。だから……だから、早く飯を買ってきてくれ!!)

(親友…………分かった。すぐに戻ってくる!)

 

 眼だけで言葉を交わした2人。

 そして蒼牙は“瞬移”を駆使して表通りへと向かった。

 

 

 

 

 

 表がうるさい事に全く気付かないなのはとフェイト。

 そして、料理をしながらも表の様子を気配で感じ取る蛍火。

 

(さっきので引くと思ったんだが……あいつら、真性のシスコンだな。

 ふむ…………もう少しからかってやるのもいいか)

 

 表の蒼牙と恭也の慌てふためく様を見るのが何よりも楽しみになってきた蛍火。

 彼は致命的なミスを犯している。

 それは恭也と蒼牙の気配に気を取られるあまりレンの気配に気付いていないという。

 

「はいっ、できましたよ」

 

 蛍火が奥に引っ込んで10分ほどでその手に皿を持って出てきた。

 運んできたのは湯気が立っているミートソーススパゲティ。

 この世界にはレトルトなど無いので確実に手作りだ。

 知っている方もいると思うが、ミートソースは作るとなるとかなり時間が掛かる。最低でも2時間は掛かる。

 つまり、この男はこうする事を事前に決めていたのだ。

 

 

 

 なのはとフェイトを落そうとしているとしか思えない!!

 

 

 

 実際は美味しい物を食べて欲しいと料理人魂を発揮しているだけなのだが、そうとは思わない者が3人ほどいるが……。

 

「いただきます!」

「いただきます」

 

 行儀良く手を合わせてスパゲティを食べ始める2人。躾が行き届いている。

 そしてスパゲティをきちんとフォークにくるませて一口。

 

「「美味しい」」

 

 そんな素朴な感想に微笑を浮かべる蛍火。

 着飾った言葉を伝えられるよりも、簡潔な言葉こそが料理人にとって何よりの褒美。

 

「ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フェイトは無事か!?」

 

 ずざざぁーーーーと砂煙を上げながら登場する蒼牙。

 その手には沢山の料理。表通りに並んでいる屋台から買って来たものだろう。

 蒼牙たちが住んでいる世界各国の料理がかなりある。

 お好み焼きから、ケバブ、サンドイッチ、ピッツァ、ホットドッグなどなど比較的食べやすい物を選んでいる点は褒められる。

 

「蒼牙、油断は出来ないがまだ手は出していないようだ」

 

 蒼牙にあわせるように恭也も普通に答える。

 何かが確実に間違っている。(←いや、まあ、いまさらですが……

 

「そうか、安心した」

 

 ほっと一息ついて、身体を休める蒼牙。

 だが、あくまでも一時的だ。何か起きればすぐにでも動けるようにしているところはさすが?

 

 一息ついている蒼牙の裾が無言で引っ張られる。

 もちろん、レンだ。

 

「…………」

 

 何も語らずに目線だけで蒼牙に催促する。

 そしてその視線の意味をきっちりと蒼牙は理解して、抱えているホットドッグをレンに渡す。

 蒼牙から手渡しで貰って一口。

 

「蛍火が作った料理の方が美味しい」

 

 眉をひそめて愚痴をこぼす。

 目の前でレンにとって最上級の料理を他の誰かが食べていて、自分はそれ以外の料理を食べるというのは辛い物だ。

 

 レン、やっぱり君の将来は不安だ。

 

 そしてそんなレンを見て殺意を漲らせる兄達の将来はもっと心配だ。

 

(大丈夫なはずだ、なのははそんな事はしない。普段から躾はしている。近所でも礼儀正しいと評判なほどに!)

(フェイトの場合、恥ずかしがって変なことはせんやろしなあ……無理やり? HAHAHA、その時は八つ裂きにしたるさかいな)

 

 そこでふと思いついたように蒼牙はニヤリと内心で笑う。

 

「ところでレンちゃん。君は蛍火のことを――ぐはっ!?」

「蛍火を呼び捨てにしていいのは私だけ」

「…………」

「あ〜、わかった。わかったからやめてやってくれ」

「そう。分かった」

 

 ポイっと投げ捨てるように蒼牙を手放す。(←……ひでえ……

 

(しばらくは起きそうにないな……蒼牙、哀れな)

 

 何度目だか数える気も起きない恭也は、地べたにうつ伏せで倒れる蒼牙に冥福を。(←何か違うだろ!?

 

「で、君は彼のことをよく知ってるのか?」

「蛍火の事は私が誰よりも知ってる」(←ちょっと誇らしげに

 

 それを聞いて内心でガッツポーズをとる恭也。

 恭也も蒼牙も何をしたいか?――蛍火の弱みを握るための情報収集である。(←黒いな……

 妹のためならレンからまでも情報収集する兄たちである。(←人としてどうよ?

 

「ふむ、なるほど。では彼のいいところはどういうところだろうか?」

 

 いきなり悪い所を聞くと勘繰られかねないため、まずは一呼吸置く恭也。

 

「優しくて、何でも出来て、格好いいところ」

「……(子供らしくて実に簡潔でわかりやすいが)……具体的にどんなことをしてくれるのかな?」

「私の失敗した料理を食べても許してくれた。次に作った料理もきちんと食べてくれた。

 料理が出来て、お勉強も色々と教えてくれて、さりげなく私を気遣ってくれるの」(←思い出して凄く嬉しそうに微笑んでいる

「……(悪い所がないぞ)……いい奴なんだな」

 

 と、そのとき蒼牙から念話が。彼はまだうつぶせのままだ。

 

(恭也、この子の料理を再度食わせろ)

(ん? 毒でも入れる気か?)

(いや。おそらくこの子も料理は美由希ちゃんやシャマル並みだ。俺の勘がそう告げて――ぐはっ!?)

 

 なぜか背中を踏まれている蒼牙である。

 

「……何となくよ」

 

――――あ〜、念話だからレンには聞こえてないはず。何となくで気づいた? 何となくってなんだ、何となくって!?

 

 

 

「女の勘」

 

 

 

――――素晴らしい! 女の勘に万歳!(血涙

 

「蒼牙……わざわざ地雷を踏むとは……」

 

 精神がイッてる蒼牙はここまで考えなしであろうか?

 

――――うちの本編の蒼牙はどこ行った?(←by 涙を流すFLANKER

 

「それで蛍火が苦手なものは何かあったりするの――ぐはっ!?」

「同じことを二度言わせないで」

「蒼牙、お前芸人根性があるな。ボケ役としての」

「いくら俺が関西人や言うても、いらんわ、そんなモン!」

「蒼牙はやっぱり芸人なの?」

「……そう見えるのか?」

「それ以外にどう見えるの?」

「…………」

「……一番効いただろうな、今の。まあしかし最近はやてと2人して漫才してる姿は芸人に見えないこともなかったが」

 

 さりげなく……というかしっかり恭也もトドメをさしているんだが。

 

「……俺はそういう風に見られているのか……くっ、これからはもっと硬派に生きなくては……男として俺は失格!?」

 

――――ただでさえ固い蒼牙が今以上に固くなり、後にフェイトたちが元に戻すために苦労することになったのは別の話♪

 

「芸人な蒼牙は放っておいて、恭也、何か聞きたいことがあるんじゃないの?」(←実は聡い

「む、鋭いな。あ〜、まあ、そうなんだが……」

 

 敵の弱点を教えろとは言えない。

 

「はっきりしないからなのはとフェイトに嫌われるのよ(ボソ」

「「…………」」

 

 恭也も蒼牙の横で失意に暮れるのであった。

 

 

 

 

 

「「ごちそうさまでした」」

「はいっ、お粗末さまでした」

 

 食事に夢中のあまり言葉も忘れて完食した2人。彼女たちを嬉しそうに見ている蛍火。

 その蛍火の手には珈琲カップ。

 カップの中に並々と入っているわけではないところを見るとエスプレッソだろう。

 そしてその横にはほどよく泡立てられたホイップ。

 

「少々お待ちください」

 

 カップを2人の前に置いたのに待てと言われて少し困惑するなのはとフェイト。

 だが、その疑問もすぐに解消された。

 左右同時にホイップを入れ、そして基礎となる模様を作り出す。

 両手に握られた細い棒が同時に、されどまったく別の動きをしてホイップの上に絵を作り出す。

 

「気が利きすぎだと思うんだけど……」

「でも嬉しいかな。兄さんももうちょっと蛍火さんくらい気が利いてくれるといいんだけど」

「う〜ん、気が利かなくても、せめてデリカシーをもうちょっと持ってほしいかなあ、お兄ちゃんには」

 

 会話しつつも、見事な手際を感動の視線で見つめるなのはとフェイト。

 だが、その表情は感動から驚きに変わっていく。

 

 

 

 何故なら出来上がったのはデフォルメされたイタチと額には宝石らしき物が付いている小犬。

 かなりユーノとアルフに似ている。

 

 

 

「え〜と、蛍火さん。この絵に描かれてるのは?」

「お2人に相応しそうなマスコットを描いたつもりですよ」

 

 にっこりと笑う蛍火。

 この絵に描かれている動物は正しく2人の使い魔だ。(ちがっ!?

 

 

 

 

 

「僕は使い魔じゃないって言ってんだろーーーー!」

「うわ!? い、いきなり何だい、ユーノ」

「え?……あれ? 何か僕が使い魔って言われたみたいな気がしたんだけど」

 

 時空管理局本局の無限書庫内にてアルフと共に検索魔法と読書魔法を行使していたユーノ。

 周囲を見回すが、確かにアルフ以外に人はいない。今は昼休み時間のため、他の司書たちは皆出ているのだ。

 

「またクロノあたりが僕の悪口でも言ってたな……」

「それよりユーノ、これ探して。そのクロノからまた調査依頼来てんだって」

「またか!? いったいあいつはどれだけの仕事をこちらに任す気だ! 労働法に明らかに違反してるだろ!」

「まあこの量には殺意すら感じるねえ」

「昼休みくらいゆっくりさせろーーーー! あいつ、今度という今度は覚えたてのルーン式攻撃系結界術で……!」

 

――――待て待て! 私(FLANKER)の本編ですらまだ満足に登場してない魔法体系を口にするな、ユーノ!

 

 

 

 

 

 などとクロノにとっては非常に迷惑この上ない事態になってしまっている。

 どこまで騒動を波及させる気だっての。

 しかしさすがの蛍火もそんなことは知らない。

 

「まぁ、飲んでみてください」

 

 コーヒーを満足そうに飲んだ2人の頬にはホイップが、

 もちろん、その事にフェイトとなのはは気づいていない。

 

(ふむ、もしかして…………絶好のからかいの機会か?)

 

 そんなチャンスを蛍火を見逃すはずもなく、蛍火は手にナプキンを持った。

 もちろん、窓からはナプキンを持っていないようにして、顔をなのはに近づけ、ホイップを拭う。

 角度によってはキスをしていると見間違うぐらいの顔の近さで。

 

「えっ、あの、蛍火さん? あっ、ありがとうございます///」

 

 真っ赤になっているなのはを横目で見てすぐにフェイトにも同じ事を。

 

「あぅ///」

 

 やはりフェイトも真っ赤になって俯く。

 嫉妬心全開でないからやはりこういうことは恥ずかしいのだ。

 

 

 

 

 

「「……………………Kill……………………」」

 

 逝っちゃった眼で物騒なことを呟くが恭也と蒼牙は動けない。

 その横にいらっしゃるレンさんがもはや神すらその視線だけで殺せるぐらいの勢いで怒っておられるからだ。

 蛍火に殺気を送りつけるも隣のレンにビクビクと震えている蒼牙と恭也。

 

「……おい、蒼牙。さっきからなんで俺の後ろに?」

「なぜかさっきから俺ばかり殴られとるさかいな。不公平やろ」

「親友を盾にすると言うのか、お前は」

「やかましい。親友の癖して一度も助けようとせんお前に言われとうないわ」

「助けに行きたくても行けない気持ちがわかるか!?」

「知るか、そんなモン。こっちゃ何度死にかけたと思っとんねん! お前も1度死んでみい」

 

 情けないなんて言わないで欲しい。今のレンはStS8話で恐れられているなのはさんよりも恐ろしいのだから!!

 レンの傍にある家の壁がビシビシと音を鳴らしながらヒビが入っていく。

 ボロボロとレンガが崩れ落ちていく。

 そんなレンを視界に入れずに殺意を膨らませていこうとするが膨らまない。

 それ以上に脳裏の警鐘がここから逃げろといっているから。

 結局、蒼牙と恭也は触らぬ神に祟り無しとばかりにレンにも蛍火にも触れずにいることを決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「蛍火さんがプレゼントを贈る女の子はどんな娘なんですか?」

 

 街中に戻ってレンへのプレゼントを探す事となった。

 しかし、なのはとフェイトは肝心のプレゼントを渡す相手の特徴を聞いていなかったことを思い出した。

 

「そういえば、言っていませんでしたね」

「だめですよー」

 

 なのはの嗜めるような言葉に蛍火は自嘲する。

 そんな大切なことを言うのを忘れていたのだから。

 いや、それはきっとあまりにも当たり前に近くにあるものだから伝える必要すらないと思っていたのかもしれない。

 

「腰まで届く白銀の髪、深い蒼の瞳、透き通るほどの白さを持った、純白のワンピースがよく似合う女の子です」

 

 蛍火の言葉をそのまま想像した2人は一つの結論に達した。

 

「「お姫様?」」

 

 ここまで揃っていればもはやお姫様とさえ言えるかもしれない。

 それほどまでに美の条件が整いすぎている。

 

 それを言うのならフェイトもそうなのだが……なのはとて金の髪などではないため目立つ容姿ではないが、

 充分お姫様と呼べるだけの容姿持ちである。

 例えば……

 

『つぶらで、溢れんばかりの優しさと包容力を兼ね備えた瞳。

 元気さを象徴する赤茶色の髪と「ちょこん」という言葉と可愛さを形にしたようなツインテール。

 白と桃色が特に良く似合う、笑顔が一番輝く女の子』

 

 どうだろうか? ちなみにこれは今の精神がイッてる恭也のなのは評である。

 え、今の蒼牙がフェイトを評価したら? ん〜……

 

『心地よいほどの静けさを有しながら、人を惹きつけてやまない金色の髪。

 冷静で聡明でありながら、正反対とも言える一生懸命さを持っていて、それを象徴するような真紅の瞳。

 人の心の機微に鋭い、誰よりも人らしい女の子』

 

 こんなところでしょうかね〜。(笑

 もちろん、多分に兄としての贔屓目が入っておりますが。(爆

 

「あははっ、お姫様……確かにそうかもしれないです」

 

 そう、蛍火にとってはお姫様。

 彼を救い出してくれた、闇から救い上げてくれた月光の如き優しさを持ったお姫様。

 蒼牙にとってのフェイトのように。

 

「えっと、外見じゃなくてその娘の中の方とか」

 

 外見だけでは何を贈ればいいのか分からない。

 

「そうですね。お2人に良く似ています」

 

 今までの何処か飄々とした表情ではなく、優しく見守る眼。

 その眼は本当に恭也と蒼牙に似ている。

 大切な物を大切だと知り、それを可能な限り愛しようとする者の眼。

 慈しみと愛情と申し訳なさが混じった、恭也と蒼牙と全く同じ眼。

 

「外見ではなくその内面が似ています。どうしようもない私達に手を差し伸べてくれた優しさが、

 糾弾されるべき私達に優しさを教えてくれたことが、闇から拾い上げてくれたその心が」

 

 それはなのは、フェイト、レンの3人に共通すること。

 犯罪者であろうとも手を差し伸べる優しさが、その闇から抜け出すまでずっと手を差し伸べてくれる優しさが……。

 それは例えようも無いほどに尊いもの。

 

 

 

 ただ…………臆面もなくベタ褒めされた2人は真っ赤になっていた。

 

 

 

 

 

「むっ、蛍火は何を言ったの?」

 

 今までと違って蛍火の声があまりにも小さすぎた為にレンには聞こえなかった。

 だが、その隣にいる蒼牙と恭也には聞こえた。

 半分近くは唇の動きを読んでいたが、それでも聞こえた。

 特に、蒼牙には胸が痛くなるほどに……。

 

「いや、気にするほどのことではない」

 

 それしか蒼牙は言えない。

 誰よりも蛍火の事を理解できる為に、今の言葉をレンに伝えてはいけないと思う。

 蛍火が先ほど言った言葉は本人が本人に言わなければならない言葉。

 それを第三者が伝えていいほどに軽い言葉ではない。

 フェイトに救われ、『ありがとう』と伝えた蒼牙はその重さを誰よりも理解している。

 

「でも、あのなのはとフェイトは顔を赤くしてる。きっと……」

 

 ふつふつと怒りがわいてきたのか、レンが硬く拳を握る。

 今その拳を地面に叩きつければ地面も割れるだろう。女の嫉妬って恐い。

 

「「何!?!?!?!?!?!」」

 

 グリンと首が回ってなのはとフェイトが顔を赤らめていることを確認する。

 

((またしてもフェイト(なのは)に何かしやがったな!!))

 

 3人が等しく殺意を蛍火に送る。

 

 

 

 

 

 そんな殺意を受け流しながら蛍火は元に戻った2人に答えを求める。

 

――受け流すというその行為が命取りだ。

 

「プレゼントはどんなものにするか決めてるんですか?」

「それが中々に決まらなくて、唯……『形の無い物』か、『形に残らない物』を贈りたいと思っています」

 

 『形の無い、残らない』贈り物などあるのだろうかと首を捻るなのはとフェイト。

 そんなものは普通贈るものではない。

 ましてや、それを贈ろうとする意味が分からない。

 

 だが、蛍火は『形に残る』贈り物をしたくなかった。

 その想いは矛盾しているだろう。

 何も残したくないのなら何も贈らなければいい。

 何かを残したいのなら『形ある何か』を贈ればいい。

 なのに、『形の無い物、形の残らない物』を贈ろうとしている。それはまさに愚者。

 

「え〜〜〜と」

「…………」

 

 言葉遊びと思っても可笑しくない質問に必死になっている2人。

 

「真剣に考えなくていんです。貴女達が蒼牙君と恭也君にもっと何をして欲しいかを教えて欲しいだけなんです。

 もしくはその逆を」

 

「それだったら、お兄ちゃんにもっとお話して欲しいです。一緒にお話して、一緒にいて欲しい」

「兄さんにもっと料理を教えて欲しいです。一緒の時間がもうちょっとだけ……欲しいです」

「たくさん、何でもない約束をして」

「兄さんと一緒に笑い合って」

「「そんな一緒の時間が欲しい」」

 

 2人が願うのは一つ、それは大好きな兄と一緒に過ごす時間が欲しい。

 些細な願いだろう。きっと何でもない願いだろう。何処にでもあるはずの願いだろう。

 だが、だからこそその願いは重い。

 

 そして、2人の願いはきっとレンにも通じる。

 

「……そうですか…………そうですね。何気ない物をあの娘と一緒に共有して行きましょう」

 

 『形の無い贈り物や形の残らない贈り物』は決して一方通行で無い。

 共有できてやっと伝え合える物。

 

 それは『贈り物』とは言えないかもしれない。

 けど、それは本当に大切な物で、だからこそ蛍火は贈らなくてはいけなくて。

 

「2人とも、ありがとう」

 

 

 

 

 

――続く――

 

 

 

 


あとがき

  「さてさて、やっと3話目。人がこなさそうな店に幼い少女を連れ込む犯罪者、蛍火!

    そしてをそれを監視する蒼牙&恭也そしてレン!」

  F「犯罪者っていうかさ〜、あれはモノホンの紳士にしか見えないんですがw」

  ペ「恭也と蒼牙からしたら犯罪者にしか見えんでしょ?」

  F「狂って理性的な判断ができない恭也と蒼牙から見たらねw」

  ペ「そして、ちょっとしたおちゃめで致命的なミスを犯してしまった蛍火w」

  F「キスしてるように見せかけるだっけ? レンがいることに気づいてないがゆえの、蛍火の暴走?w」

  ペ「いや、まぁ。蒼牙と恭也をからかうためとはいえやりすぎな感じが大きいんですけどねw」

  F「ギャグコメディですから。しかしまあ、彼の読みはどこまでいくの?w 使い魔の姿すら当ててしまうとはw」

  ペ「まぁ、本当にそこはギャグなんですけどねw

    本人がいないのをいい事にかなりレンのことを褒めるとはこいつ本当に蛍火か?」

  F「いやいやいやいや、恭也と蒼牙のべた褒めに比べれば、とても綺麗な褒めですがなw」

  ペ「ふと見えてしまった蛍火の心ですけどね。というか素直な蛍火は蛍火じゃねぇ!!」

  F「あっはっは。レンが絡むとなっちゃうと。いいじゃないですか。彼の変化というものが感じられるよ」

  ペ「まぁ、今回は番外ですし、

    レンととても内面が似た二人に出会ってしまったわけですから仕方ないといえば仕方ないのですけどねw」

  F「にしても……恭也と蒼牙、弱みをレンに聞き出そうとは、もはや卑怯すぎるw」

  ペ「いや、蛍火相手に弱みを聞き出そうとするのは卑怯じゃないでしょ?」

  F「でも聞き方がさ? 卑怯っぽいw」

  ペ「まぁねw 普段の二人からしたら考えられないねw」

  F「そしてついに出たね。蛍火のレンへのプレゼントについて。あれが蛍火の心を示した重要な部分」

  ペ「ですね。本来本編で出すべきなのでしょうが、ちょっとばかり出来ませんでした」

  F「『形なきもの』か。それに答えるなのはとフェイトの温かい心が蛍火の温かいけどどこか悲しい心と、

    いい対比になってる気がする。図らずしてw」

  ペ「何時か蛍火もなのはとフェイトのように悲しさがなくなるのだろうか? まぁ、それは本編なので置いておきましょうw」

  F「SAの方を楽しみしつつ、次回をば。次回でラストだね」

  ペ「このままギャグで終わるのか? それともまた何処かにシリアスがあるのか。それは次回のお楽しみで」

  F「それでは今回はここいらで失礼をば〜」





うーん、レンがとっても怖いです。
美姫 「恋する乙女は無敵って感じね」
いやいや、無敵すぎるだろう!
美姫 「次回でラストみたいだけれど、どんな結末が待っているのかしら」
このままだと、蛍火もただでは済みそうもないような……。
美姫 「さてさて、どうなるのかしらね〜」
次回も待っています。
美姫 「待ってますね〜」



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