合同企画第2弾

ドタバタコメディー(?)

  なのはとフェイトの戦 ――気づけよ鈍感兄貴ども!―― 4

 

作:ペルソナ&FLANKER     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、今度は食事か………、この方向はキュリオとファミーユ。

 くくくっ、ここまで来ると逆に恐ろしいな。まぁ、それでも楽しむ事には変わりないがな♪

 さて、あの2店に協力を要請するか。あの人たちの事だ。少しお願いするだけで想像以上のことをしてくれるだろう」

 

 式神に唯一つの命令を載せる。

 それは『これから行く2組の兄妹らしき人物達を存分にからかえ。すべての費用はこっち持ち』である。

 

――――からかうだけでお前は一体幾らまで出費する気でいるんだっての。

 

「ふふっ、金は腐るほどにあるからな。こういう時に存分に使わないとな♪」

 

 

 

 

 

「ほぉ、変わった立地をしている喫茶店だな」

「そうですね。同じ系統のお店が向かい合ってるなんて」

「にしても……店員の服は何だ? ずいぶんとまた凝った感じがするな」

「メイド服……ですね」

「めいど?……ああ、いわゆる家政婦みたいなやつだな。ふむ、珍しい異国のふぁっしょんというやつか」

「…………私は蒼牙さんのどこまでも一昔前の『日本人』的な物言いのほうが珍しいと思います

「ふ〜む、あれがめいど服というものなのか。南蛮の服はまた重厚なのだな…………」(←初めて見たので珍しがってる

「蒼牙さん?」

「趣があると言うべきか? いや、趣を求めるには派手すぎるな。やはり趣を求めるなら日本伝統の和服の方が……」

「そ・う・が・さ・ん」

「やはり趣とは厳かで静かな佇まいを求めるものだからな。派手で自己主張が強すぎるのはどうにも好きにはなれん……ん?」

「むぅ〜〜〜〜!!」

 

 少しだけ、見惚れている蒼牙に嫉妬のなのは。いや、蒼牙は単に珍しがってるだけなのだが……。

 幾ら恋心を抱いていないとはいえ、隣にいる男性が他の女性に気を向けていたら小さくとも乙女は怒るのだ。

 

「な、なのはちゃん、なにを怒っているんだ?」

「蒼牙さん! 女の子とのデート中に他の女性に見惚れているなんて失礼です!」

「見惚れ……!? いや、俺は単に珍しいからと――」

「知りません!!」

 

 ご立腹のなのはに何が悪かったのかまったく分からない蒼牙。

 

(俺はただ文化の違いにいろいろ感じていただけだが……もしかして、また恭也が何かやったのか?)

 

 あまつさえ、親友に罪を擦り付ける始末。

 男として、兄として、この鈍感さはどうにかするべきだろう。

 

「と、取り合えず座らないか?」

「…………蒼牙さんの奢りですからね」

「ぬ、それはもちろんだ。婦女子に金を払わせるなど日本男児としての礼儀に反する」(←無自覚

「……蒼牙さん、今時そんなこと言ってると騙されますよ?」(←自分を『婦女子』に入れられていることの照れ隠し

「気をつけよう。だが少なくとも君はそんなことはしまい。ならば問題ない」(←超無自覚

「…………お兄ちゃんも蒼牙さんもそういうことを無意識に口にするから騙されるんです――女性のほうが…………」

「ぬ? 何か言ったか?」

「何でもありません!」(←八つ当たり気味

 

 少し怒り気味ななのはを促しながらなんとか機嫌を取ろうとする蒼牙。

 これがフェイトに適用されていれば今頃は…………。

 

「お帰りなさいませ、ご主人様!」

 

 大きな声で出迎えられる蒼牙となのは。あまりの元気のよさに二人も戸惑う。

 

「お二人がキュリオ三号店の開店以来、一万人目のお客様になります。

 ですのでお二人にはスペシャルメニューをご用意させて頂きます。ささ、お席へどうぞ、ご主人様」

「そっ、そうなのか?」

「はい!」

「まあ、ありがたいと言っておくが……その、"ご主人様"というのは何なのだ?」

「ご主人様はご主人様です」

「いや、そうではなく……」

「蒼牙さん、こういうお店なんですよ、きっと」

 

 苦笑いのなのはに戸惑う蒼牙。その二人に元気良く返事をするピンク髪の女性。何処となく笑っているのは気のせいだろうか?

 

「昨今の喫茶店とはそういうものなのか? なのはちゃん」

「え〜と、そこまではさすがに……」

 

 喫茶店の娘といえど、他の店の形態まで知っているというは無理があるだろう。

 

「まぁまぁ、お気になさらず、タダで食べられる事だけを考えてください」(←蒼牙の腕を取る

「タダほど高いものはないと言うが……ぬお!? お、おい、くっつくな! 放れんか!」(←顔真っ赤

「え〜、どうしてですか、ご主人様〜?」(←シナ作ってる。

「ど、どうしてもこうしてもないわ! 婦女子がやすやすと男に触れていいものでは――!」

「ご主人様ったら優しい♪ でも私はご主人様くらいイケメン……じゃなくって……優しい方なら体も差し上げますよ〜」

「か――!? そ、そこに直れ、貴様! ふ、婦女子なる者、そのような言葉を会ったばかりの男に対して言うものでは――」

「お二人様、ご案内〜〜!」(←無視

「いや、だから人の話を聞かんか、うつけ者!」

「…………」(←その横をスタスタと歩いて席に着くなのは

「な、なのはちゃん、彼女をどうにかしてくれ!」

「蒼牙さんの浮気者」

「う、浮気!? 待て待て待て待て! 俺はそのような気はさらさらない!」

「ご主人様、それはひどいです。私じゃダメなんですね? グスン……」(←無論嘘泣き

「な、なぜ泣く!? いや、そういうわけではなく、君ほど美人なら俺よりもっといい男がいるだろうからだな……!」(←無自覚

「///」(←さすがに照れる店員

「…………はあ…………」(←あまりに恭也と同じパターンなので呆れるなのは

 

 なぜかゲッソリと頬がこけた気がする蒼牙。もちろんその姿を、『彼』は机を叩いて笑いこけていることだろう。

 

 

 

 そして、出されたのは一つのドリンク。ハート型のストローが途中で2つに各々の方向に向いている。

 

 

 

「…………………………………………」

「…………………………………………」

 

 見事に絶句なおふたり。

 カップルドリンクとしか言いようのないものが目の前に並んでいる。

 

(ちょい待とうや、こりゃ何やねん? グラスは1つ。ならば1人分っちゅうこっちゃが……しかしストローが2人用……)

 

 関西弁 = 蒼牙は素。

 店の奥で何か笑い声が聞こえる。

 チラッとなのはを見る蒼牙。この状況をなのはに委ねている辺り、へたれだろう。(←からかわれまくったため戦意喪失気味

 なのははちらちらと恥ずかしそうに蒼牙を見ている。

 

(う〜、いくら蒼牙さんとは言ってもこればっかりは恥ずかしいよ〜///

 

 

 

 

 

(なのはと兄さんは確かこっちに………)

 

 舞台に上がって色々とあり、なのはと蒼牙を一時見失ったフェイトは必死になって2人を探していた。

 

(フェイト、何をそんなに急いでいるんだ? やっぱりトイレなのか?)←メチャクチャ失礼

 

 そんな恭也を尻目に辺りをきょろきょろとしていたフェイトはついに2人の姿を見つけた。

 

(ミツケタ)

 

 なにやら恐ろしい表情でいらっしゃるフェイトさん。

 その眼差しの向こうにはカップル専用ドリンクを前にして頬を赤く染め、見詰め合っている(フェイト視点)2人が……。

 

(フェッ、フェイト、何故そんなに殺気を出している? 何故だ!?)

 

 フェイトは二人の監視をしやすい位置を確保しつつ、2人を睨みつけていた。

 

「いらっしゃい〜、おめでとう!! おふたりは当店開店以来、1万人目のお客様になりました〜。

 ですので、おふたりにはスペシャルメニューを!!」

 

 フェイトには聞こえていない(殺気を飛ばすことに全力中)ので、恭也が応対する。

 

「それはまた何ともついていると言えばいいのか。しかし、なぜ俺たち以外客がいないのか聞いてもいいですか?」

「それはもう、おふたり専用ですから」

「むう……何やら悪い気さえするのだが……」

「お気になさらないで下さい。私たちは楽しい……そうじゃないそうじゃない……お客様へのご奉仕をしてるだけですから〜」

「しかし変わった条件ですね、この店は。向かいも喫茶店。しかも向こうもあの2人しか客がいないとは……」

「ああ、向こうも同じようなものです。どうも御兄妹みたいですけど、カップルって事で持ち上げてるんだと思います〜」

「……カップル……」(←しっかり反応するフェイト

「ひいっ!?」(←あまりの殺気に震え上がる店員

「……そ、蒼牙のやつめ。いい加減、フェイトを怒らすな……!」

 

 

 

 そして出されたのは蒼牙たちと同じくカップル専用ドリンク。

 

 

 

「…………………………………………」

「…………………………………………」

 

 こちらも見事に絶句。

 恭也は翠屋でこういうメニューのことは知っている。ゆえにどういうものかも知っている。

 

(ちょって待てい! これを俺にどうしろと!?…………の、飲めと言うのか!?)

 

 フェイトは無論、恭也以上にわかっている。そして顔を真っ赤にする。

 

(……これって、恭也さんと私が、こ、恋人っていうようなものだよね……それはそれでいいけど今は兄さんが……あ)

 

 またも出た出た、蛍火の本♪

 曰く、『鈍感なお兄さんがどうしても振り向かないなら、逆にヤキモキさせてしまいましょう!』らしい。

 

(そ、そうだよね。兄さんが私を見てくれないのが悪いんだから……)

 

 自分にヤキモキする蒼牙を想像。

 

 

 

『な、フェイト!? いくら相手が恭也と言えど……ならん、ならんぞ! その歳で恋人などと、この兄は決して許さん!』

『お、落ち着いて下さい、蒼牙さん!』

『たわけ! 妹が道を踏み外しかねん危機だ! ここで動かねば兄として、そして『義士』として末代までの恥!』

『そもそも蒼牙さんがフェイトちゃんに構ってあげないから……』

『くっ……わ、悪かった、フェイト! あ、謝るから早まるなーーーー!』

 

 

 

 想像終了。

 

「き、恭也さん……」

「ああ、フェイト、わかっている。ちゃんともう一本ストローを頼むとする――」

「飲んでください」

「なにぃぃぃぃ!? ほ、本気か、フェイト?」

「ほ、本気です。これで兄さんも……あ、いえ、何でもないです」

 

 フェイトの目は本気。長年の戦闘経験が恭也にそれを告げる。諦めろと。(←ヘタに能力が高いのも困りもの?

 しかしやはり親友の妹であり、妹の親友でもあるフェイトと……と躊躇う恭也。(←へたれ

 そこに店員登場。

 

「お兄さん! 妹さんが飲んでって言ってるんですから、飲まないとお兄さん失格ですよ?」

「む、い、いや。俺はフェイトの兄では――」

「屁理屈はダメです。お兄さんならドンと来い、みたいな頼り甲斐が必要ですよ」

「このような場でそれは必要ないのでは……」

「恭也さん……やっぱりダメ、ですか?」(←無意識に上目遣い・涙目・手を胸の前で組む

「…………フェイト、わざとやってないか?」

「……ダメ、ですか……」

「ああ、いや、わかった! の、飲めばいいんだな? 飲もう」(←半分ヤケ

 

 そしてストローに口をつけたフェイトに続き、最後まで躊躇っていた恭也も渋い顔で飲み始める。

 同時に痛すぎる視線を2つ感じた恭也であった。

 

 

 

 

 

「くははははははは! はーーーーっはっはっはっはっは! ひぃ、ひぃ、あははははははははははははは!」

 

 扉の奥から聞こえてくる盛大な笑い声。机を叩くような音も聞こえてくる。

 

「な、なあ……蛍火のやつ、何をトチ狂ってんだ?」

「さ、さあ……」

 

 蛍火の喫茶店を訪ねてきた大河と未亜は、入店した途端に聞こえてきた蛍火とは思えない蛍火の声に唖然とするばかりだ。

 どうやらスタッフルームにいるらしい蛍火。

 

「お、面白い……ここまで事が進むとは。くくく、鈍感どもめ、さらなる嫉妬の嵐に巻き込まれるがいい」

 

 あまりに危険な物言い。大河と未亜は何も言わずに喫茶店から出て行く。

 

「……平和だな」

「……うん。平和が一番だね、お兄ちゃん」

 

 大河と未亜は透き通るような青空を眺めながら、学園への帰路へと着くのであった。

 

「ふふふっ、ここは1つ、俺が特製デザートでも作ってやる! そしてさらにかき回してやるぞ!

 踊れ踊れ〜〜〜〜! くくくくっ、あははははははははははははははははははは!」

 

――――え、止めて? 無理♪

 

 

 

 

 

「…………オニイチャン…………フェイトチャン…………」(←嫉妬の対象がフェイトにまで広がりつつある

「…………(ああ、空が青いな)…………」(←恐怖で現実逃避を図る蒼牙

 

 恭也がフェイトと恥ずかしすぎるドリンクを飲んでいる。蒼牙は恭也を強者だと評価しつつ、自分は飲まないという決心を――

 

「蒼牙さん、飲んでください」

 

 なのはの一言で覆すしかなくなるのであった。

 

「……なのはちゃん、何もこんなことに対抗心を燃やす必要はないと思うのだが……」(←いちおう言ってみる

こ・ん・な・こ・と?

「……いや、重大事だな。すまん……」(←何がなのかはわかっていない……

「そうです! お兄ちゃんには不純異性交遊はダメだってわからせないとダメなんです!」

「恭也がそのような交遊するとは思えんが……そもそもそれなら俺たちもするべきではないのではないか?」

「はう…………あ、敢えて私たちがすることで恥ずかしい事だってわからせないといけないんです!」(←必死

「……道理が通っていそうで通っていない気がするんだが……」

「……私と飲むのは嫌ですか?……やっぱり私みたいな子供はダメですよね……」(←潤んだ瞳+俯き顔+肩を落として寂しげ

「わかった! ようわかった! 君の言うことはもっともや! さあ飲もうやないか!」(←罪悪感をメチャクチャ感じた

 

 そうして蒼牙は自分から口をつけて飲み始める。(←関西弁が出ている辺りすでにヤケ

 なのはも少し笑ってそれに続く。

 

(…………恥で死ねる…………父上、母上、申し訳ございません。しかしこれも『義』のため、お許しください……!)

 

 必死になってあるかどうかもわからない『義』を持ち出してなのはと飲み続ける蒼牙である。

 店の奥でキャーキャー店員が言っているが、蒼牙にはもはや聞こえていない。

 たださっきから当てられ続けている殺気が強まったことくらいしかわからない。

 

(ど、どないせいっちゅうんや!) ←いや、蒼牙ですよ?

 

 そして見事飲み干したなのはと蒼牙。

 心なし、なのはも自分の行動の大胆さを思ったか顔が赤い。だが嫌そうな顔ではない。

 

「け、結構おいしかっ……あの、大丈夫ですか、蒼牙さん?」

「はは、心配いらへんよ。あとで父上と母上の墓前でしっかり謝っておくさかいに」(←『義』(?)と『恥』の間で葛藤中

「だ、大丈夫じゃないじゃないですか……関西弁が出てる時点で」

「お、お待たせいたしました、ご主人様。当店特製、オムライスでございます……くふふ」(←必至に笑いをこらえてる。

 

 そこにやってきたピンク髪のウェイトレス。目に涙が溜まっていながらも笑顔を崩さないのは大したものであろう。

 

「あ、ありがとうございます。お、お腹すきましたね、蒼牙さん!」(←無理に雰囲気変えようとしてる

「ああ、これで少しはマシに…………………………」

 

 蒼牙の声がどんどんか細くなる。当たり前か、目の前のオムライスを見たら。

 

「…………あ、あの〜、これは…………?」

「はい。当店のカップル料理で、店長特製のオムライスでございます」

「……お、オムライスはわかるんですけど……ま、また1つだけですか?」

「ご心配なさらなくても、2人分ですよ」

「いえ、そういうことじゃないです! そ、その上、この……ケチャップがハート型って……」

「カップル料理ですから♪」

「……そ、そっか。カップル料理ですもんね。あはははは……」(←なぜか納得してる?

「はい♪」

 

 店員が肩を揺らしながら小走りで下がっていく中、なのははオムライスを凝視していたが、チラリと視線を正面に……。

 蒼牙は…………強敵を見ているが如く、眉を逆ハの字にしながら固まっていた。

 

「……そ、蒼牙さん……食べて下さい!」

「…………いや、ちょっと待て。さすがにこれ以上はヤバイだろう…………」(←特に蒼牙自身が

「だ、ダメです! お兄ちゃんにどれだけ恥ずかしいことかわからせないといけないんですから!」

「……そのために俺たちが恥ずかしい思いをするというのはやはり違う気が……」

「気にしちゃダメです!」(←ヤケ気味

「いや、気にしよう、なのはちゃん。それに君も俺のような人間とこれ以上恋人扱いなどされたら嫌だろう?」

「……そんなことないです。お兄ちゃんの親友さんだし、フェイトちゃんのお兄さんだし……ちょっとカッコいいと思うし……」

「無理はしなくていい」(←むしろ「するな」と言いたい

「む、無理じゃないです! さ、口を開けて下さい! あ〜んです!」(←もう強引

「……………………わかった」(←断っても無駄と悟った

 

 先読みの境地にすら達した蒼牙ゆえに、断っても無駄だと読めてしまった。(←これまたヘタに能力が高いのが仇に

 なのはの差し出したスプーンに載るオムライスを頬張る。

 …………なかなかに美味いのがせめてもの救いだろうか。

 

「……ふむ。まあ、美味い。文句なしにな」

「そ、そうですか、よかったです。そ、それじゃ、蒼牙さん……お、お願いします」(←もう1本のスプーンを差し出す

「……………………」

 

 無言で受け取り、オムライスをすくってなのはに食べさせる蒼牙であった。

 

 

 

 

 

「……ニイサン……ア〜ンシテモラウナンテ……」

 

 普段なら絶対にそんなことはしないしさせない蒼牙が、なのはとしている。

 

「……だいたい、なのはも何で自分からするの……? もしかして兄さんと仲がいいことを見せつけたくて……?」

 

 考えてみれば、このところいやに仲がいいのも、そもそもはなのはから蒼牙に声をかけていたからだ。

 

「……ずるいよ、なのは。なのはにはこんなに優しい恭也さんがいるのに……」

 

 フェイトはその恭也を見る。

 運ばれてきたオムライスを見て、ずっと無言の恭也を。瞬きすら忘れている恭也を。

 

「き、恭也さん。私たちも食べましょう」

「……フェイト、無理するな。顔が赤いぞ」

「だ、大丈夫ですから。恭也さんとなら私は構いません」

「いや、それは嬉しいのだが、しかしいくら何でもこれは……」

「な、なのはと兄さんもやってるんだから平気です」

「…………」

 

 恭也は視線を送る。気づけと。

 そしてその視線にしっかり蒼牙は反応した。

 

『蒼牙、お前ちょっとやりすぎだぞ』

『俺じゃない……! 断じて俺はこんなことをしようなどと言ってない!』(←目が必死

『ほ、本当にフェイトはなぜ怒ってるんだ?』(←気付けよ

『俺が知るか。フェイトに付き添ってるのはお前だろう、恭也。それより、お前もなのはちゃんを止めてくれ』

『どう止めろというんだ。なのはは俺を避けてるんだぞ?』

『と、とにかく、ここら辺で本当に何に怒ってるのか聞いたほうがいいぞ』(←聞かんとわからんか、オイ?

『う、うむ。そうしよう』

 

 アイコンタクトだけでここまで意思疎通する親友は素晴らしいであろう。(←ゑ?

 

 

 

「あ〜、フェ、フェイト。聞きたいんだが……」      「あ〜、な、なのはちゃん、ひとつ聞いてもいいか?」

「はい、何ですか?」                      「はい、いいですよ?」

 

「「お、俺は何か君の気に触るようなことをしただろうか?」」

 

「…………」                           「…………」

 

無言の妹たち。

そして返ってくるのは――

 

「恭也さんは何も悪くないです」                  「蒼牙さんは何も悪くないです」

 

自分が悪くなかったことに、まず兄たちは安堵する。

しかし……

 

「悪いのは兄さんですから」                    「悪いのはお兄ちゃんです」

「蒼牙が何かしたのか?」                    「恭也が何かしたのか?」

「「……私に構ってくれないんです……」」

 

そこで兄たちはようやく納得。

そう、単なるヤキモチ。

互いに好きな兄が構ってくれないからこそ、2人は拗ねていただけ。

 

「「そうだったのか……いや、それは悪いことをしたな……」」

 

兄たちはそこで互いに互いを見る。

 

 

 

『蒼牙、フェイトはお前に構ってもらえなくて寂しいだけだ』

『そうか……なのはちゃんも同じだ』

『確かにちょっと、なのはをないがしろにしていたかもしれん……』

『俺も仕事仕事でフェイトを少し放り出しすぎたかもな……』

 

 やっと気づいた兄たちは笑い合う。それぞれの今日のパートナーのふくれっ面を見ながら。

 それに気づいた彼女たちは顔を赤らめながら言う。

 

 

 

「それに兄さんはなのはと、デ、デートなんて……」       「お兄ちゃんはフェイトちゃんとは一緒にいるのに……」

 

正直、可愛らしいとしか言えない。

 

「そ、それになのはも兄さんといやに仲がいいですし!」    「フェイトちゃんはお兄ちゃんに甘えさせてもらっててずるい!」

 

しまいには妹同士で嫉妬し合っているようだ。

 

「私が兄さんの妹なのに……」                    「私がお兄ちゃんの妹なのに……」

 

 

 

『……喧嘩だな』

『そうらしい。少々微笑ましいわ』

『仕方ない。蒼牙、今日一日は我慢しよう』

『恥ではあるがな……まあ、これも罰として受け入れよう』

 

――――正しく見えて、しかしそれがこれからのドタバタのきっかけになるのだ。(←ゑ?

 

 

 

 オムライスの食べさせ合いが終わり、今度は軽めの肉料理。

 これまた食べさせ合いに始まり、兄たちが妹たちの口を拭ってやって終わる。

 しかし兄たちは気づかない。

 

 

 

――――自分たちへのヤキモチは、すでに互いのパートナーに対しての嫉妬心に代わっているということを。

――――なのはとフェイトは、もはや恭也と蒼牙にではなく、お互いに対して対抗心をむき出しにしているということを。

 

 

 

 そして食後のデザートが出てきた。パフェである。

 色とりどりのデザートが乗せられていて、4人は一瞬目を奪われたほどだった。

 

『ある方からの差し入れです。とってもおいしいですよ!』

 

 それが店員の言葉。

「ある方」が誰だか、わからないのはこの4人だけであろう。

 

「恭也さん……その、あ、あ〜んです」

「……わかった」(←いい加減慣れた……

 

 

 

「フェイトちゃん……うう〜」

「……なのはちゃん、いらないのか?」

「え、あ、た、食べます!……その、食べさせてください!」

「…………」(←受け入れると決めた手前断れず

「♪ おいしいです〜」

 

 

 

「な、なのは……! うう……あっ!」

 

 ついなのはと蒼牙のほうに目を奪われ、すくっていたクリームが胸のあたりに落ちてしまった。

 

「む……」(←拭こうかと思ったが子供とは言え女性の胸に触れることはできない

「き、恭也さん……お願いします」

「……し、しかしさすがにこれは……」

「あの、冷たいので……は、早く……」(←無意識に流し目になる Σ(゜З゜)!?

「わ、わかった。失礼する……」

 

 

 

「い、色仕掛け!? フェイトちゃん……お兄ちゃんもなにデレデレしてるかな……!」(←誤解

「いや、なのはちゃん、そう押し付けないでくれ――冷たっ!」

「ああ、す、すいません!」

 

 フェイトと恭也のハプニングを見逃すことができないままに、蒼牙にグイグイ押し付けていたので、クリームが彼の頬に。

 

「……蒼牙さん、目を閉じて下さい」

「? なぜだ?」

「いいから閉じて下さい!」

「わ、わかった……これでいいのか?」

「…………(ペロリ)」(←!?Σ(゜□゜)

「!?!?!?!?」

「〜〜(な、なのはーーーーーーーー!!)〜〜」 ←フェイト暴走 

 

 

 

 そんなこんなでパフェ一個を平らげる間、なのはとフェイトの戦いは続いた。

 

「フェ、フェイトちゃん……なら、私だって……!」

 

「ああ! な、なのは……ま、負けないから……!」

 

 で、その勢いにもはや口が出せない恭也と蒼牙は…………。

 

((ま、待て! 明らかにやりすぎじゃないか!?))

 

 そう思いつつも、しかし我慢するしかないと。

 

『くっ……死にたいぞ、俺は』

『早まるな、蒼牙! 耐えろ! 耐え切れ!』

『に、日本男児としてこれは切腹ものだぞ!?』

『だが受け入れると決めたろう! 途中で投げ出すのは『義士』として恥ずべき行為だぞ!』

『ぬうう……それを言われたら引けん……!』

『だいたいお前がダウンしたら、俺1人で耐えないといけないだろうが……!』

『それが理由か、恭也!?』

『うるさい! なら俺がここでダウンさせてもらうぞ!』

『ま、待て! それはならん! 俺たちは共に在るという誓いがあるだろう!』

『む……それを掲げられたらこんなところで倒れてられんな』

『勝つぞ、親友!』

『ああ、生き残って見せよう、親友!』

 

 どこか間違った友情の絆を確認しつつ、『守護者』と『義士』は戦い続ける。(←『恥』との戦いをね……

 

 

 

 こうして喫茶店での戦いは幕を閉じた。

 しかしそれは戦が終わったわけではない。戦場を変えて、妹たちの戦いは続行する。

 

「蒼牙さん、さあ、次に行きましょう!」

「わかったわかった。そう引っ張らないでくれ」

 

「恭也さん、早く行きましょう!」

「そんな慌てなくてもいいから落ち着け、フェイト」

 

 彼らは向かう。次なる戦場へ。

 

 

 

 その戦場の名は――――服屋。

 

 

 

 

 

――続く――

 

 

 

 


あとがき

  F「さて第4話……レストラン編だーーーー! 蒼牙が初っ端からゲッソリしてるし」(爆笑

  ペ「暴走に暴走を重ねたレストラン編。見所は満載だったかな?」

  F「全てがカップル! 強制カップル! もはや恭也と蒼牙は精神がヤバげ!」(笑

  ペ「対抗心が凄い状況に……もはや南無としか言いようが無い。羨ましいとか思ってませんよ?

    蒼牙と恭也が憎いと思ってるだけですから♪」

  F「なにフェイトの、む、胸を触ってるか、恭也! なのはに『ペロリ』って、蒼牙恨やまスィ(誤字にあらず)!」(←暴走

  ペ「そしてついにその胸に宿す想いが兄へのヤキモチではなく親友への対抗心へと変わってしまった!!」

  F「ある意味ハイテンションの妹たちとどん底の兄ども! しか〜し! これで終わるものか!

    次は……うふふふふ……」(←目が光ってる

  ペ「ついに、ついに!! 皆さんがお待ちかねのあのコス――ゲフンゲフンです♪」

  F「お待たせいたしました、お代官様(読者様)方……欲望渦巻くコス……ゴホンゴホン、です。くふふふふ……」

  ペ「なにぶん、未熟者が書いたシーンですので萌えないかもしれませんが見逃してください」(土下座

  F「それでは今回はこれで。さて、私は一足早くパラダイスへーーーー!」(←爆走

  ペ「では、次話でお会いいたしましょう。

    ちょっ、FLANKERさん、なのはとフェイトに飛び掛ったら蒼牙と恭也に殺されますよーーーー!!

    聞いて無いか……はぁ」





妹たちの行為は互いに火に油を注いでいるな。
美姫 「益々ヒートアップしていくわね」
いやー、面白い展開だ。
美姫 「兄二人は既に息も絶え絶えだけれどね」
あははは。後日、自分の行いを振り返ったら落ち込みそうだな。
美姫 「確かに」
さーて、次回はいよいよ、いよいよ!
美姫 「どんな光景が繰り広げられるのかしらね」
本っっっっっ当に待ってました。さあさあ、次回はどうなる。
美姫 「次回も待ってますね」
ではでは。



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