Sie sind liebten

Das andert nicht sogar jetzt

An das Silikon Gras, in dem Sie beilaufig sind, wird erinnert

An Ihre Stimme wird erinnert

Glatten Sie dann

Das wurde Gedachtnis

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピピピっと電話が鳴る。

 

時間は既に深夜だ。正直に言えば迷惑なのだが、トイレに起きた自分の運が無いと思う事にした高町士郎は受話器を取った

 

「もしもし?」

 

聞こえてきたのは、旧友の声だった

 

「おお!! 久しぶりじゃないか、アル。・・・・・うん、うん・・・・・来週に? ・・・・いや、迷惑じゃないさ。ティレオさんとフィアッセちゃんも来るんだろ? なのはも喜ぶ。・・・え? 親馬鹿で何が悪いか!! なのはは、目に入れても痛くないし、シロ君は寝顔が天使さ!! ・・・・ん? ああ、そうだった。アルにはシロ君を紹介してなかったな・・・・いや、血は繋がってないよ。それでも・・・」

 

あの子は俺の息子だ

 

そう吐いた士郎を、リビングの入り口でコッソリと見ていた桃子はクスリと笑って。部屋に戻った

 

「なんだか妬けちゃうわね」

 

なんだかんだで、何時まで経っても新婚夫婦。出来れば自分を見ていて欲しいのだ

 

そして、この日の朝より高町恭也・美由希は知り合いに訪ねまわる事になる。

 

 

 

花見に行こう

 

 

トントン、とまな板を叩く音が響く

 

熱せられた油にジュッと衣を付けた鶏肉が入り、芳ばしい香りが漂う。

 

「なのはー、おにぎりは塩と鮭と梅干を順にいれてねー」

 

「はーい」

 

「桃子さん、ほうれん草の御浸しは甘めで良いんですか?」

 

「うん、ソレで良いわよ? あっ、恭也そろそろ時間だから迎えに行ってあげて」

 

パタパタと忙しい台所。包丁振るうは、高町桃子。

 

おにぎり詰める、高町なのは。

 

御浸し作るは、衛宮士郎。

 

広げるシートは広大だ、笑顔で荷造り高町士郎

 

客人迎えに行ってきます。デートじゃないぞ。高町恭也に月村忍

 

二人の見張りは頼んだぜ、我らが天使? ノエルさん

 

料理は出来ないが、荷造り手伝う。高町美由希。

 

『高町家』は今日それぞれの友人を誘い、花見に行くのである

 

 

準備は進み、車が戻ってくる音がした。全員が笑顔で、心が温かくなる。それと同時にチクリと胸が痛んだ。

 

罪悪感が在る

 

俺は此処に居て良いのだろうかと、考えそうに成った瞬間。なのはに手を引かれた

 

「どうしたんだ? なのは」

 

「えっ?・・・・・・なんでもないよ? ほら、今からアリサちゃん達を紹介するから」

 

なのははそう言って、俺の手を引きながら歩いた。なのはの友達というと・・・アリサ・バニングスと月村すずかという名前だったな

 

車の前には二人の少女が立っていた

 

気の強そうな金髪の少女

 

(あの子が、アリサ・バニングスか。すると隣の・・・)

 

ズクン

 

心臓が抉られた様な痛みが奔った。

 

(違う!! 重ねるな!! 俺はこれ以上彼女を!! 桜を侮辱する訳にはいかない!!)

 

雰囲気が似ていた、彼女が恐れていた事と似た様な事を恐れている事も知っている。

 

それでも・・・彼女ではないのだ。

 

「始めまして」

 

俺が声を掛けると、二人は『この人誰?』と言いたげな視線でなのはを見た。俺はちゃんと笑顔で言えただろうか

 

「えっと、この人は衛宮士郎君。今、一緒に住んでるんだよ。」

 

うん。誤解を招くようなセリフだけれど、年齢的にセーフ・・・だよな?

 

金髪の少女は「なるほど」っと手を打って

 

「始めまして、アリサ・バニングスよ。最近なのはが家に帰る時、無暗に嬉しそうだった理由がやっと解ったわ」

 

「アリサちゃん、遠まわしになのはちゃんをからかうのは・・・・あっ、私は月村すずかと言います。宜しくね、シロ君」

 

ゴッド、俺の呼び名はシロ君で決定ですか?

 

横を見ると、恭也さんの隣で忍さんがこっちを見て笑っていた・・・・

 

「ニャ!! なんで、すずかちゃんがシロ君の事知ってるの?」

 

「後で車でね。アリサちゃんもそれで許して欲しいかなぁ〜って・・・」

 

「どーしようかなー、私だけ知らないのは不公平だと思うの」

 

聖祥仲良し三人組。女子三人寄ればなんとやら。そんな中、俺は士郎さんに呼ばれたので、なのは達に一言断ってからその場を離れた。

 

士郎さんの隣に居たのは、紳士と淑女。二人とも新聞やテレビで見たことのある、有名人「クリステラ夫妻」驚く俺を余所に士郎さんが言う

 

「アル達は初めてだろ。この子が俺、自慢の息子のシロ君だ」

 

ポンポンと頭を軽く叩かれる。ソレが嬉しくて、照れくさい。『自慢の息子』と言われたからには、それに答えるのが礼儀

 

「始めまして、衛宮士郎といいます。『世紀の歌姫(レディ・クリステラ)』、ミスタ・アルバート」

 

恭しく頭をたれる。二人は笑顔で言う

 

「まぁ、レディだなんて・・・こんな、おばあちゃんに言っても何もでないわよ? 小さな紳士(ジェントルマン)さん」

 

「本当に、お前の子か? お前よりこの子の方が、素晴らしい紳士だぞ。士郎」

 

「はっはっは、自慢できるだろ? それでだな、ちょっとアルにお願いがあってな・・・続きは車の中で話そう。シロ君も俺の車に乗ってくれ」

 

俺は士郎さんにそう言われ、車に乗り込んだ。

 

 

 

道を先導してくれる、忍さん達の車に着いていきながらアルバートさんが盛大に溜め息を吐いて言った

 

「士郎、お前バカだろ。いや、抜けてるのか」

 

士郎さんは何も言わずに、車を運転している

 

「お前が、そう頼むのなら吝かではないが・・・この子の意見は聞いたのか?」

 

勿論、俺も知らなかったので聴いていない

 

「いえ、俺は士郎さんに全てを任せていたので・・・・全く」

 

今、問題に上がっているのは俺の戸籍の事である

 

士郎さんが用意しようとしたらしいのだが、俺はこの世界の人間では無い。つまり、孤児院に居た記録すら作れずに養子に取れない。

そこで昔、世話に成った人に頼もうとしたら既に引退しており、無理との事

 

どうするか悩んでいた所に、アルバートさんからの電話が有ったので上院議員の立場とコネを使って何とかできないか? と頼んだのである。

 

「あまり攻めないでくれ・・・これでも、自分の不甲斐無さに辟易してるんだ」

 

「士郎さん・・・やっぱり俺は「その先を言うのは無しだよ」・・・はい」

 

「まぁ、何とかやってみよう。国に戻ってからだけどな。」

 

「恩にきる」

 

その後、俺はティレオさんとイロイロな話をした。

 

ソングスクールという、歌の学校の事

 

娘であるフィアッセさんの事

 

学校の近くに美味しい紅茶を出してくれる、喫茶店がある事

 

俺が知らない・・・しかし、知識と別な記憶を持つ俺には世界での違いを探す、情報収集をするという思いも有った。・・・俺は人の善意を無碍にしている。

 

全く・・・救いがたいな・・・もともと、俺はこんな考えをするほど染まっては居なかった筈だ。・・・・俺は自分を保てるだろうか。今に成って自覚する。

 

俺は、壊れ続けている。

 

 

 

 

暫く、道を進むと門が見えた。ここから先は私有地なのではないだろうか? そう思ったのが顔に出たのだろう、士郎さんが笑いながら「許可は取ってあるから、大丈夫だよ」と言った。

其処から先は、正に桜色の世界だった。

 

短き生を謳歌するように咲き乱れる桜の花

 

時折吹く風に花弁が舞い散り、刹那の美しさを脳裏に刻む。

 

幻想的で儚い桜が魅せる一瞬の芸術は、大いなる自然の恵み。

 

桃源郷というモノが在るのならば、この様な風景がソコには在るのだろう

 

俺は、広げたシートの上でそう思った。

 

大人達は既に、アルコールが入り始め。顔が少し赤い。

 

恭也さん達は士郎さんに捕まり、酒を飲まされながら「結婚は何時になるんだ」と絡まれている。

アルバートさんも、士郎さんと一緒に恭也さん達をからかっている。ブラウン管を通して観るのとは、全く違う印象を受けたが・・・・なるほど、アレが素のアルバート・クリステラなのだろう。

桃子さんとティレオさんは、微笑みながらソレを見ている。・・・止める気は無いようだ。視線を元に戻すと、恭也さんと目が合った

 

そこで弾けるシンパシー

 

互いに目で語る

 

(シロ君、救援を求む!!)

 

戦力分析開始。敵、高町士郎、アルバート・クリステラ。共にアルコールによる、気分の昂ぶりが有り。とても楽しそうだ。

月村忍は、伏兵として認識。彼女はこの状況を楽しんでいる。

ノエルさんは、味方より除外。彼女は忍さんの命令を第一に動く可能性が高すぎる。

 

解析結果。無理

 

(すまない、兄上。戦力が違いすぎる。)

 

恭也さんの顔に絶望の色が広がる。何とかして上げたいのだが、出来ない。顔を横に背けると、なのはが士郎さん達を観て言った

 

「うぅ、お父さん達ハメを外しすぎだよ・・・」

 

如何やら、身内の痴態に恥ずかしがっている様である。

 

「ごめんね、なのはちゃん。家のお父さんもハシャイじゃって・・・」

 

フィアッセさんも恥ずかしい様だ。そんな二人を慰めるアリサとすずか。二人とは、食事が始まってからそれなりに話した。特にすずかとは、初対面にしては話したと思う。事情を知っているからだろう。此方としては忍さんが高町家に来た時から既に、違和感を感じていたから時間の問題だったのだろうが・・・余計な摩擦が無いのは良いことだ。

そういえば、誓いを立てなくてはいけないらしいが・・・・この場合は、誰に立てれば良いのだろうか?

 

「シロ君・・・・無理かなぁ」

 

現実逃避はお終いのようだ。なのはの言葉で、現実と向き合う事にする。

 

「解った・・・」

 

俺がそう言うと、すずかとアリサが止めに入った

 

「ちょっと、無理するんじゃ無いわよ。」

 

「そうだよ、シロ君。私達じゃ無理だよ。」

 

「問題無い」

 

俺はそう言うと立ち上がり、士郎さん達の方を向いた。

 

早まったかも知れない

 

既に顔を真っ赤にした恭也さんが、更に飲まされて大変な事に成っている。俺が頬を引きつらせたのが解ったのか、フィアッセさんが言った。

 

「止めた方が良いよ、シロ君。此処は、大人である私が行くから。」

 

「いえ、俺が行きますよ。女性は大切にしろと教えられているので・・・それに、男の子には意地がありますから」

 

フィアッセさんは少しだけ俺を見て言った

 

「男の子の意地か・・・良し、それじゃあ任したよ。シロ君」

 

「はい、行ってきます」

 

俺は数歩、歩いて思い出したように言った

 

「ああ、なのは」

 

「ふぇ?」

 

「別に、撃沈しても良いのだろう?」

 

「轟沈させてください。」

 

「いや、二人ともソレは駄目だから」と突っ込むアリサにすずかが笑った。

 

 

俺が近づくと、士郎さんがコップを取り出し琥珀色の液体を入れた

俺は、口を開く前にコップを受け取る。だって零したら勿体ないだろ?

 

「士郎さん」

 

「なんだいシロ君? そろそろ、恭也が観念しそうだからちょっと待って・・・」

 

どうやら、恭也さんは(精神的に)瀕死のようだ。此の儘では、来週あたりに結婚式が開かれるかもしれない

そこで俺は、対高町士郎用最終呪文を口にした。

 

「士郎さん、調子に乗りすぎるとなのはに嫌われますよ

 

ピシっと、動きが止まった。その隙に恭也さんを救出する事に成功。序でにアルバートさんにも釘を刺しておく事にする。

 

「アルバートさんもですよ? フィアッセさんが身内の痴態に恥ずかしがっていましたから」

 

いい年した大人が二人して、固まった。

 

二人はゆっくりと愛娘の方へと首を動かして、崩れた。なんかもう精神的に・・・

 

なのはとフィアッセさんは、目が笑ってない笑顔で声を出さずに口を動かしたのだ。

 

曰く、お父さんなんか、もう知らない

 

親馬鹿に対しての最終兵器は、二人を轟沈させた。二人は、影を背負いながら互いに杯を交わしている。

俺は恭也さんを支えながら、桃子さん達の方に避難した。

手早く水を用意したり、恭也さんが横に成れるスペースを作る所は、慣れているとしか言い様がない。

 

「そうだ、シロ君。車の中に在る黒いケースを持ってきてくれないかしら?」

 

「いいですよ。少し待っててください。」

 

俺は早足で車に向かった。むぅ、コップを置いてくるのを忘れた。俺はティレオさんから頼まれたケースを空いてる右手で持ち、コップをシートの上に置いてクスリをポッケに入れてからコップを持ち直し桃子さん達の所に向かった

 

ケースを持って戻ると、なのは達が集まっていた。何でも、歌詞はまだ出来てないがフィアッセさんの新曲を披露してくれるそうだ。なのは達の目がキラキラと輝いている。

 

残念な事に俺はクスリの時間なので、そっとその場から離れた。少し歩くと、大きい桜の木が在った。俺はその木に背中を預け腰を下ろした。クスリを咥え、火をつける。

 

「・・・・まずい」

 

クスリを一吸いして、酒の入ったコップを持ったままだという事に気付いた。

色と匂いからして・・・・ウイスキーかと当たりを付けて、一口だけ口に含んだ。

 

「少し・・・甘いかな?」

 

コップを地面に置き、クスリを吸う。傍から見れば子供がタバコを吸っている様にしか見えないので、世間的にまずい。序でに味もまずい。

目を瞑り、体から力を抜く。すると、音が聞こえてきた。

 

「綺麗な音だな・・・・バラードか」

 

酔っていたのかも知れない。今の体は子供なのだから・・・・口から自然に出た言葉を聴いて、俺はそう思った

 

 

 

Sideなのは

 

ティレオさんの指が鍵盤を叩く。フィアッセさんは鼻歌を歌うように、声を出さずに歌っている。私はその言葉のない歌がとても綺麗で、心を奪われた様な気がしました。お父さん達もその旋律と声に聞き入っています。そこで私はシロ君が居ない事に気付きました。

私はお母さんに、声を掛けようとして止めました。聞こえてきた声がとても哀しかったからです。

 

Sie sind liebten

Das andert nicht sogar jetzt

An das Silikon Gras, in dem Sie beilaufig sind, wird erinnert

An Ihre Stimme wird erinnert

Glatten Sie dann

Das wurde Gedachtnis

 

「この声・・・シロ君だ。」

 

私は、怖くなって声のする方に向かいました。お姉ちゃんが「どうしたの?」と一緒に付いてきてくれたのが、心強いと思いました。

歌は続いています。日本語でも英語でもありません。それでも・・・その声に込められた悲しみは途轍もなく、私の心を締め付けました

 

Wir mochten zu Ihnen treffen

Sie sind liebten

Obgleich es liebte hat

Obgleich an Ihres Gesichtes erinnert wird

 

そして、私はこの日。本当の衛宮士郎を見ました。

桜の木に寄りかかって歌う彼は儚くて

遠くを見つめている姿は何故か貴くて

何処かに行ってしまうのでは無いかと、怖くなりました。

彼は、シロ君は今にも壊れて終うのではないかと思ってしまうほど、透明でした

私はシロ君に駆け寄ろうとして、何時の間にか後ろにいた兄に止められ口を塞がれました。

 

「!! ん〜む!?んんむ、んんむんむ!!」

 

「なのは、時には一人にしてやるのも優しさだ。」

 

兄は私にそう言うと、私と姉を連れて草叢に隠れました。

 

 

 

Side衛宮士郎

 

Sie sind liebten

 

気付けば君は俺の中に住んでいた

君の思いに気付こうともせずに、呆れるほど真っ直ぐに走っていた自分が今は憎いよ

 

Das andert nicht sogar jetzt

 

捨て去ってしまった物は、取り返しの付かないモノで

 

An das Silikon Gras, in dem Sie beilaufig sind, wird erinnert

 

君の声を聴いていなかった。

 

An Ihre Stimme wird erinnert Glatten Sie dann

 

今更追いかけても、掴む事の出来ない君の影に

 

Das wurde Gedachtnis

 

未だに俺は縋っている。

叶わぬ夢と理解していたのに、愚かしくも君と比べて・・・君を切り捨てたのに

俺は・・・・

 

Wir mochten zu Ihnen treffen

Sie sind liebten

Obgleich es liebte hat

Obgleich an Ihres Gesichtes erinnert wird

 

今口にして居る事は、俺の弱さだ。そうと知っているのに、止まらない

 

obgleich Sie gewust haben

Was die Leere anbetrifft, die der Kasten ist, wenn Sie Ihr eigenes Verbrechen sind, obgleich Sie gewust haben

Wir mochten zu Ihnen treffen

Ihr lachelndes Gesicht mochte sehen

Jedoch moglicherweise wird es gesagt, das es bedauernd ist,

Wir mochten zu Ihnen treffen

Kirschbaum

 

曲が聞こえなくなるのと同時に、言葉も止まった。

自分の言った言葉に反吐が出そうだ

 

「何が・・・君に逢いたいだ・・・・・」

 

精神が揺れる。視界が歪む。心が軋む。俺はソレを止めるために言葉を紡いだ

 

I am the bone of my sword

 

体は剣で出来ている。

 

硬い、硬い・・・冷たい鉄で・・・

 

俺は、精神が落ち着くのを待ってからなのは達の所に戻った。

 

 

 

 


あとがき

長くなったので一度切ります。

一つに収めきれない、未熟さが憎い




撃沈しても良いのだろう。いや、思わずはまってしまいました。
美姫 「本当にね。前半は賑やかだけれど、後半は」
うん。ちょっとしみじみと。今回は前編だけれど、後編ではどんなお話になるのかな。
美姫 「後編も楽しみに待ってますね」
ではでは。



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