私は、ずっと怖いと思っていた事が在ります。

それは、自分の大事な人、親しい人が突然居なくなってしまう事です。

父が重症を負って入院した時からそう思い始めました。

だから私は良い子に成ろうと思いました。最初は忙しい母や兄達に迷惑を掛けたくないと思ったのが始まりだと思います。

皆の笑顔が見たくて、その笑顔が陰るのが嫌でした。自分が我慢すれば良い事は我慢をして、自分がされたら嫌な事は他人にはしませんでした。大好きな兄からそう教わったからなのかもしれません。

でも、その教えが在ったから私には親友と呼べる友達が二人できました。アリサちゃんとすずかちゃん。私が隠し事をしているのに気付きながらも、私を応援してくれる大切なお友達。周りの人に胸を張って自慢が出来る、私の親友。

今から一年とチョット前に、家族・・・男の子のお友達が出来ました。彼は強くて優しくて、偶に意地悪な時が在って、私の家族とも、お友達とも仲が良くて・・・とても・・・大事な人でした。

勉強も見て貰ったり、一緒に料理や買い物のお手伝いもしました。

だから・・・・

 

「突然ですが・・・衛宮士郎君は転校しました。なんでも、お家の事情らしくて・・・急な事だから皆とも挨拶が出来なかった見たいです。」

 

私は・・・

 

「なのは・・・!? ちょっと大丈夫!!」

 

「なのはちゃん!!」

 

認めたくありませんでした。分かりたく在りませんでした。彼がいなくなった事を・・・

 

 

 

 

 

 

 

高町なのはが悲しみに襲われた頃、フェイト・テスタロッサは危機に直面していた。

 

(か・・・・・・かわいい)

 

ぷるぷると震えてる。

 

「貴女・・・誰?」

 

フェイトは今、自分がドコに居るのかを思い出して気を引き締めデバイス・・・バルディッシュを構えた。ザンバーは出さないが、何時でも動けるように少しだけ重心を動かす。

此処は協力者で在る衛宮士郎の工房、その第二階層。周りには壁だけだが侵入者迎撃の為のトラップが在ると言われたのを思い出し、フェイトは構えを解いて口を開いた。

 

「貴女は士郎の・・・仲間?」

 

フェイトが少女・・・と呼ぶには多少幼い女の子に声を掛けると、女の子はコクリと一回頷いた。

 

「久遠は・・・士郎の友達・・・士郎は久遠の恩人。此処の場所を教えたの久遠・・・士郎から時々で良いから此処の様子を見てほしいってお願いされた・・・だから・・・来た。士郎は何所? 貴女は誰?」

 

「私はフェイト・テスタロッサ。士郎は下で用意してる。」

 

 

 

 

Side フェイト

 

目の前を歩く女の子の後ろを歩きながら、私は士郎が良く分からなく成ってきた。

言い方が悪いかも知れないけど士郎は殺人者だ。私はソレが怖いと思うけど、仕方が無い事だと理解してるし私を助けるために一人殺してる。

一度だけ、アルフに士郎と協力しても良いのか? と聞かれた事が在る。その時は違う事を言ったけど、本当は信用できると思ったからだ。

あの時・・・私と士郎が始めて出会った時、彼は私を庇った。でも、本当ならそんな事は士郎にとってデメリットにしかならない。唯の他人だった私を見捨てていれば、怪我など負わずにあの怪物を殺せた筈だ。その証拠にあの時、怪物は唖然としていた。

士郎は優しい。それに御人好しだ。本人に言ったら怒られそうだけど・・・私はそう思う。

彼は質量兵器と呼ばれる物を使う、誰かを護る為に・・・たぶんそれは、あの白いバリアジャケットの女の子だと思う。だから、彼には戦って欲しくない。でも彼は必要な事だからと言う・・・解らない、嫌われるかも知れないのにソレが必要な事だというのが解らない。

 

「お姉ちゃん?」

 

「え・・・あっごめん。何?」

 

「士郎・・・戦ってる。」

 

「うん。」

 

「だから・・・嫌いに成らないで」

 

「え?」

 

久遠が何を言ってるのかが解らなかった。確かに彼は人殺しかもしれない。私を庇ったのも偶々かもしれない。でも私は士郎が嫌いではない。たとえ私が士郎の一面しか知らなくても、それは変わらないと思う。

 

「士郎・・・帰ってくると血の臭いがする。最初からしてたけど・・・帰ってくるともっと血の臭い濃くなってる。火薬の臭いも濃くなってる。皆解らない・・・でも、私には解る。」

 

「・・・・・・・・・」

 

「士郎我慢してる・・・ずっと我慢してる。士郎ずっと泣いてる・・・士郎強いから、皆気付けない。士郎気付かせない。士郎は嘘吐きだけど、嘘吐きじゃない。だから・・・お友達で居て欲しい」

 

「・・・うん。大丈夫だよ、私は士郎を嫌いに成らない。士郎は私の大事な友達で、仲間だよ。」

 

うん。私が士郎の友達ってもいいよね・・・私がそう思うだけ。士郎には聞かないし言わない、少し怖いから・・・・

 

最下層まで降りる短い間、久遠がイロイロと教えてくれた。かなりたどたどしく、掻い摘んでだけど・・・・妖怪って使い魔と同じようなモノだよね?

 

 

Side 衛宮士郎

 

朝早くセルフィから連絡が在った。奴らがまた日本に入っているらしい、去年の七月頃にリスティさんが情報を流して繋がっていた政治家やら何やらを公安と警察が一斉検挙したのに。

正直な話、九州や北海道などの他国にある程度近い所に作るのなら放っておいた。ある程度人数が集まったらまた情報を流して、混乱している内に・・・というのが一番安全だからだ。米軍基地などに篭られたら厄介だが・・・海鳴市の近くに一般企業に偽装して・・・・となると話は違ってくる。

最初は此方の情報が流れているのか? と思ったが、ソレは無いとセルフィとダンの両方から言われた。既にリスティさんに連絡して在るので、俺は奴らの『足』を壊すだけで良い。馬鹿な事に奴ら『頭に良い野菜』を此処で捌くらしい。なんともお粗末で阿呆な考えだ、勿論それも一部の事で殆どは武器や動物の一部らしい。

 

俺は、頭を振ってクスリを咥えた。

ジェルシード。魔力を圧縮させ固めた様なオーバーテクノロジーの遺産、正直之が十あれば『孔』を開ける事が出来ると思う。二十一全てが在れば『孔』を開け『固定』し、少しの間ならアレの足止めも可能だと思う。『才』がそれも飛び切りの『才』、遠坂やイリヤ位の魔術師ならば・・・・

 

(如何思う? アリシア)

 

俺は思った事を少し前から同居人? と成った少女に聞いてみる

 

(・・・イけると思うわよ? たぶん私も『至れる』わ。前は流れ込んできた知識を無理やり使ったから、中途半端にしか成功しなかったし理解も出来てなかったから無理だったけど)

 

(エミヤの知識か・・・才能が無いから知識だけでもと思ったんだろうな)

 

(そうかもね。でも無駄では無いと思うわ・・・陣を引けば使えるでしょ?)

 

(無茶を言うな。陣を引いた後での魔力の調達で何年掛ると思う? それに魔術の理論は理解していても、魔法は知らん。)

 

(それもそうね。・・・で? 如何したの何か悩み事? あ、記憶や考えを読めっていうのは無しだからね。)

 

(解ってる。ただの気晴らしだよ。ただ・・・)

 

(ただ?)

 

(どの道、フェイトには辛い結果しか残ってない様な気がしてな・・・無論、君にもだ)

 

(・・・うん。解ってる。でも、少しだけ望みが在るなら・・・私はソレに賭けたい。親が間違った事をしたら、娘である私が怒って挙げないと・・・フェイトにはキツイと思うし、沢山甘えさせて上げたい。)

 

(そうなる様に動いて「士郎!!」グフ!!」

 

一つだけ思ったことが在る。火をつけて無くて良かった。

 

 

Side out

 

金色の弾丸が衛宮士郎に飛び込んだ。

 

金と黒の少女がソレを見てワタワタとなった

 

なんか騒がしかったので様子を見に来た赤い狼が、クエッションマークを大量に浮かべた。

 

状況、カオス

 

「久遠・・・取り敢えず退いてくれ。フェイト、こっちに来て座りなさい。アルフ、説明するからお茶を頼む」

 

衛宮士郎は冷静に指示を出し、座り直すと久遠の頭を撫でながら言った。

 

「久しぶりだな久遠。元気だったか? 」

 

「うん!! 久遠、元気。士郎は・・・大丈夫?」

 

「・・・ああ、大丈夫だ。」

 

フェイトはそう言いながら笑顔を浮かべる士郎と、久遠を見ながら思った。

 

(士郎は嘘吐きだけど嘘吐きじゃない・・・か。辛く無い筈じゃないのに・・・)

 

「フェイト? 如何した、何か考え事か?」

 

フェイトは首を振って否定した

 

「ううん。ただ、二人とも仲が良いなぁって」

 

「フェイトも久遠と仲が良いだろう? 初対面で怖がられてないのは珍しいんだぞ? なあ、久遠」

 

「フェイトお姉ちゃん・・・優しい匂いする。お姉ちゃん・・・久遠嫌い?」

 

「き、嫌いじゃないよ?! 」

 

「じゃあ・・・お友達」

 

「え・・・良いのかな・・・私がお友達で」

 

「ダメ?」

 

すこし・・・いや、かなり哀しそうな顔でフェイトを見る久遠にフェイトは慌てて言った

 

「ダメじゃないよ!! お友達だよ?!」

 

その後、久遠にじゃれ付かれて少し困惑しながらも笑みを見せるフェイトを見て、アルフは涙が浮かんできそうなのを耐えながら笑顔でお茶を配った。

 

 

「・・・士郎」

 

「なんだ? アルフ」

 

「アンタと協力関係が結べて、本当に良かったよ。」

 

アルフはそう言うと、一度だけ目を擦ってから二人の下に行った。

 

 

 

 

夕日が沈む頃、高町なのはは肩ににフェレット・・・ユーノ・スクライアを乗せて町の中を歩いていた。ジェルシード探索である。

普通ならば念話で、肩に乗せたユーノと喋りながらしていたのだろうが・・・今回は違った。あからさまに空元気なのである。普段なら見ている方が活力が湧く笑顔が、陰っている。ユーノはソレを知りながら、何も出来ない自分が情けなく。そして、憤慨していた。

高町なのはが空元気な、無理をして何時も道理を装っている理由をユーノは知っている。家に帰って来たなのはに直接聴いたのだ、最初は何か嫌な事が在ったのかなと思い。それなら、話を聞いて少しでも元気に為って貰おうと、愚痴でも良いから発散して貰おうと思ったからだ。今の自分には其の程度の事しかできないと理解しているからだ。ソレが情けないと思う理由

憤慨している理由は、高町なのはの家族とも呼べる男の子に対してだった。

彼・・・衛宮士郎とは数度しか会った事しかないが、悪い印象は無かった。ソレよりも好感が持てた。温泉に行った時、彼はなのはとその友達の分の荷物を持ったり。何故か酔っ払って寝てしまったなのはの友達を、優しく抱き上げて部屋まで送ったりと、紳士的な行動をしていた。それも自然に、装って遣っているのでは無く自然に。それは、男として尊敬できる行動だった。

なのに彼は、なのは・・・高町家の人達に分かれも告げずに何処かに行ってしまった。なのはのお父さんは何か知っている用だったが・・・自分以外の誰も其の事に気付いていない様だった。

町を探索しようと、なのはに言ったのは衛宮士郎の住んでいるマンションに寄ってみる事が目的にしたからだ。勿論、なのはにその事は言っていない。ただ、彼女はソレを拒否するだろうなと思ったからだ。衛宮士郎が住んでいるマンションは知っていた。なのはが前に教えてくれたのを覚えていたからだ。

マンションに近づく為に時々、「右に行ってみよう」「左に行ってみよう」と誘導しながら。マンションに着くとなのはが哀しそうな、何かに耐える様な表情をしたのに心が痛んだが、序でに衛宮士郎がドコに行ったのかを聴いてみようと言い。同じ階に住んでいる人にも聞いてみた。

返答は、良い物では無かった。

不思議な事に彼の住んでいた階には二人しか人が居なかった。衛宮士郎の住居を中心として両隣の二つ目までの部屋に人は居なかった。運が悪いと思った。話を聞いた二人・・・階の両端に住んでいた主婦は、そんな事は知らないとの事。

溜め息が出た。

不謹慎だが思ってしまう。ジェルシードが今見つからないかなぁと

高町なのはは、そんな性格では無いが少しでも気を紛らわせる事が在れば良いのにと云う思いから出た考えだった。

だから

 

「!? 結界!!」

 

「!? っ・・・街中で無理やりジェルシードを発動させたのか!!」

 

タイミング良く現れてくれた、黒い少女が起こした騒動に少し感謝した。

 

 

 

 

 

ユーノが予想していた通りに、ソコには彼女達が居た。黒いバリアジャケットを身に纏い、金色の髪を揺らす魔導士と。犬歯を剥き出しにして威嚇する赤い使い魔が。

彼女達が何故、ジュエルシードを集めるのかは知らない。アレは危険な物だと彼女達も理解している様なのに・・・・・・なんで、話し合いで解決できないのだろうか・・・

 

「私の名前は!! 高町なのは!! 私立聖祥大附属小学校3年生!! 貴女は?!」

 

「それは、知って「貴女の言葉で知りたいの!!」・・・フェイト、フェイト・テスタロッサ」

 

「貴女はなんで、ジェルシードを集めてるの?」

 

高町なのはは、諦めてなかった。話し合いで解決出来る筈と、争う事は無いんだと。しかし、其の願いは

 

「それは「言わなくて良いよ!! フェイト」・・・アルフ」

 

「そんな奴に話さなくて良い!! 暖かい場所でぬくぬくと護られてる、何も知りやしない奴に話す事なんてないだろ?! こいつが出て来なければ!! アイツは傷つかなくて良かったのに!! アイツに護られてる癖に!!」

 

何も知らない・・・全てを隠されてる少女への糾弾の叫びに因って立たれた

 

「うん、そうだね・・・何よりも。話すだけじゃ何も伝わらない!! 伝えられない!! 私達の目的はジェルシード!!」

 

「そうだよフェイト!! あたし達にアンタの理由は関係ない!!」

 

そう叫んだ瞬間。アルフはなのはに飛び掛った。

 

「なのは!!」

 

バチィ!!

 

「また、お前か!!」

 

アルフは、ユーノが張った障壁に一度弾かれたが直ぐに喰らい付いた。ガリガリと、互いの魔力が接触する。片方は障壁を破ろうと、片方は護ろうと。

 

「ぐっ・・・う・・・ジェルシードは危険な物なんだ!! ソレは君達も解っているんだろう!!」

 

「ソ・・・レ・・・がぁぁぁぁ!! 如何したっていうんだい!!」

 

障壁が砕ける。ユーノは、アルフが獰猛な笑みを浮かべたのを視て

 

「なぁ!!」

 

笑った。

 

二重結界と言えば良いのだろうか。其の結界は一層目の結界が破れた瞬間に、少しだけ間隔を空けて展開された。勢い良く突っ込んだアルフには堪らなかった。結界を破り吹っ飛ばしてやろうとしていた所に突如、カウンター気味に障壁を展開されたのだ。幸いだったのはアルフのスピードが最速に達しって居なかった事だろうが・・・少なからず、ダメージを負った。

地面を少し滑り、アルフはユーノの認識を改めた。

 

「(コイツ・・・防御に優れてるだけじゃない。知恵が回る)フェイト!! コイツはアタシがヤル!! フェイトは白いのを!!」

 

「ユーノ君!!」

 

「大丈夫!! 行ってなのは!! ジェルシードの封印を!!」

 

 

 

 

 

 

 

そうやって戦う二組を、衛宮士郎は少し離れた所で視ていた

 

「さあ、後は距離だな」

 

(そうですね。近すぎず遠すぎず・・・微妙に難しいですね・・・)

 

(・・・士郎。アナタ・・・後悔はしないの?)

 

頭に響く少女の問いに、苦笑しながら衛宮士郎は答えた。

 

「後悔はしてるさ・・・何故、もっと早く気付かなかったのか。何故、その時に居なかったのか・・・後悔だらけだ。だが、今からする事には後悔も、未練も微塵も無い。」

 

(・・・難しいわね。)

 

(そういうモノですよ。アリシアさん。どの道、コレはマスターの独善で自己満足です。)

 

「そういう事だ。其の為に彼女達に触媒を与えた。其の為に彼女達に仕込んだ。策も、保険も」

 

(それでも・・・私は卑怯だと思うわ。特に、保険はね。人として如何かと思うわ)

 

「だからこそ。俺にはプレシアの事が在る程度理解できるよ・・・話した事は無いがね。君の話を聞く限り、彼女は俺の可能性の一つで、俺が彼女の可能性の一つだ。ソレを分けたのは彼女が優しすぎたのと、俺が元々壊れていた事の違いだよ。」

 

(マスター。そろそろ・・・)

 

「あぁ、アリシア。気を引き締めろ、下手をすると流されるぞ? ダン転移先の用意は?」

 

(既に・・・何時でも往けます。)

 

「ソレでは・・・往くぞ? 告げる(セット)!!

 

 

 

 

二人の少女の間で、封印状態に会ったジェルシードが震えた。ユーノ・スクライアとアルフは、ソレを敏感に感じ取り。叫んだ

 

「なのは!!」

 

「フェイト!!」

 

二人の少女は互いのデバイスを構え飛んだ。このまま往けばジェルシードを挟んで互いのデバイスがぶつかっただろうが其の前に、黒の少女は白き剣に阻まれ。白き少女は逆方向に飛んでいった。

 

「士郎!! なんで・・・」

 

フェイトは言葉を最後まで紡げなかった。魔力の暴風・・・活動を停止していたジュエルシードが突然発動したからだ。アルフもユーノもその場に、踏ん張り動けずに居た。

衛宮士郎だけが平然と絶っていた右手に持った長槍を構えて。

フェイトは状況が理解しきれなかった。それもそうだろう。ついさっきまで争っていた少女は、この間よりも多少強く成っていたとはいえ負ける気はしなかった。スピードにクロスレンジでの戦いは常に自分を優勢であり・・・確かにあの数の魔力弾を操られるのは厄介だったが。それでも、負ける可能性は少なかった。

が、それよりも士郎の持っている槍が理解できなかった。その槍が保有する魔力量。ジェルシードが発する魔力をまるで、そんなモノが最初っから無かったかのように消しているその槍の能力。何よりも衛宮士郎が彼女を蹴り飛ばした理由が理解できなかった。

 

 

 

 

 

高町なのはは、一瞬だけ気が遠くなった

 

(蹴ら・・・れ・・・た・・・の?)

 

身体を起こそうとすると、鈍い痛みが腹部に走り。飛びかけた意識がハッキリとした。

 

(そうだ。ジェルシードを封印しようとして・・・・・・赤い何かが・・・)

 

「そうだ、フェイトちゃんは・・・・・・」

 

視線を眼前に向けたなのはは、息を詰まらせた。ソコには

 

彼女が求め

 

彼女が頼り

 

会えずに居なくなってしまった。少年が立っていたから

 

「シロ君!?」

 

なのはの声に、衛宮士郎は一度だけ視線を向けた。ただ、それだけだった。

 

槍が跳ね上がりコンっと、ジェルシードに接触した瞬間。魔力本流が止まった。エメラルドグーリーンの宝石が高く跳ね上がると、衛宮士郎は口を開いた。

 

「フェイト、回収しろ」

 

そう言われたフェイト・テスタロッサは、慌ててデバイスを構え飛んだ。

 

 

 

ユーノ・スクライアは突然の事に呆然とした。最初にまさか・・・と思った。次に、何て事だと自分のミスを呪った。少し考えれば解った筈の事だった。高町家を包む、自分が無謀と談じた結界。高町なのはの家族からはソレを張れる、維持が出来る程の魔力を持った者は居なかった。消去方で考えれば、彼に衛宮士郎になる。だが、彼からは魔力を感じなかった。

 

(もっと良く調べておけば!!)

 

自分の仕出かしたミスだと、理解できてしまった。そこで思う。

 

(彼は何で、なのはじゃ無く。あの女の子の所に・・・)

 

答えは出なかった。解ったのは、この世界には独自の魔法があり。ソレが知られてない事から、ソレは秘匿されているという事と。おそらく、ソレを管理する組織が有るだろうという事。そこまで考え、ユーノは怖ろしくなった。

この世界は管理「外」世界と成っている。という事は、時空管理局からその身を隠し気付かれない様にしている「技術」が有るという事。もしくは、とても「小規模」な組織かもしれないという事。だが、何よりも怖ろしいと思ったのは・・・・衛宮士郎が携えた長槍。遠間から見ても解る程の魔力を内包している上に、魔力を掻き消して居るという事実。魔力を無効化する槍、ソレの刃が刃引きされていないのは見て解った。

 

極上の魔導士殺しじゃないか!! 下手をしたらロストロギアよりも危ない!! いや、なんでソレを彼が持っている?! まさか・・・・)

 

ユーノが導き出した答えは、至極簡単で単純な答えだった

 

(彼はこの世界でかなり上の立場に居る魔導士?! )

 

一度答えを出してしまった頭は考えるのを止めない。止めれない。不幸な事にユーノの頭は良く、回転も速かった。

 

(・・・もし、そうなら・・・彼は最悪・・・人を殺している可能性も在る。極上の魔導士殺しともいえる槍を携えてる。ソレを許されている立場に居る。彼があのフェイトとかいう魔導士に協力しているという事は・・・・組織ぐるみでの援助が彼女にはあるという事か!!)

 

ジャリっという足音でユーノの意識は、思考の海から浮き上がり。今自分の置かれている状況を直視した。

眼前に突きつけられた鋭い穂先。

まるで罪人を裁くかのような、冷たい視線。

そして、その口から出た言葉は

 

「貴様が、なのはを巻き込んだのか。異界からの侵入者」

 

断罪の言葉だった。

 

(殺される。)

 

「おい、貴様がなのはを巻き込んだのかと聴いているんだ」

 

ユーノは震えながら、答えた

 

「そ、そうだ。だから彼女は「関係ないとは言わさんぞ、下郎」・・・っ!! 仕方無かったんだ!! アレは、ジェルシードは危険な物だ。早く回収しなければ世界が滅びるかもしれないんだ!!」

 

叫び、訴えるユーノに対し。士郎は表情を変えずに言う

 

「ほう・・・それでは、当然報告はしているのだな? 君が属する組織に」

 

「それは・・・・」

 

していない。それが答えだった。早く回収しなければと、発掘したのは自分なのだから責任が在ると思い。すぐさま回収に向かい、傷を負い。助けを呼んだ。

 

「していないとは言わせんぞ。」

 

「・・・していない。事故だったんだ!! 輸送の途中でトラブルが在ってする暇が・・・」

 

「ほう? ならば、貴様は一週間以上もの間連絡する暇も手段も無かったのだな? 」

 

(そうか・・・僕は・・・)

 

「っ・・・それは」

 

「もういい。貴様では話にならん。」

 

(最初から間違っていたのかっ!!)

 

己に対する失望で、ユーノは死にたくなった。もし、回収に出る前に管理局に連絡していたら? 自分では無く自分よりも膨大な魔力を持つなのはに、レイジングハートを使って連絡して貰えば? 可能性は在った。自分の到着が大幅に遅れれば、スクライア一族が探索に出る。恐らく、既に出ている可能性が高い。

 

(僕が!! 僕が変に急いだから!! くそっ、事故にトラブルに在ったら連絡するのが基本じゃないか!! 危険な物を輸送しているのならば尚更だった!!)

 

ユーノから距離を取り、槍を携えた儘。衛宮士郎は先程までの熱を持たない声でなく、暖かさを持った声色で隣に降りてきたフェイトに「帰るか」と言った。

アルフは何処か哀しそうな瞳で、士郎の隣まで歩くと笑顔を作って「今日の晩御飯はなんだい?」と少しオドケタ風に聴く。

其の姿を見て高町なのはは叫んだ。

 

「シロ君!!」

 

なのはには解らなかった。何故、衛宮士郎がフェイト・テスタロッサと一緒に居るのかが。

 

(なんで)

 

何故、突然居なくなったのかが。

 

(なんで)

 

何故、何も言ってくれないのかが。

 

(なんで)

 

何故、ユーノに酷い事を言ったのかが。解らなかった。そして、認めたくなかった。

 

(私の傍に居てくれないの?)

 

「シロ君!!」

 

「語ることなど、何も無い」

 

求めた代価は拒絶の言葉。

 

衛宮士郎は持っていた槍を投げると短く吐いた

 

壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)

 

爆発。視界を塞ぐ美しい閃光。

 

「解らない・・・解らないよ。シロ君。」

 

高町なのはは涙を流しながら、そう言った。

 

 

 

 

 

夜。何時もより少し襲い末娘の帰りに、高町家の人間は何も言わなかった。言えなかった。家族の中で一番中が良かったのは高町士郎だが、家族の中で一番衛宮士郎に懐いて居たのは高町なのはだったからだ。

高町恭也は其の姿を見て何か知っているで在ろう父に、聴こうかと思ったが直ぐに諦めた。恭也から見た父・・・高町士郎は強い人間だ。ハチャメチャで理不尽で親馬鹿で楽しい事が大好きな何処かブットンダ人間だ、だがそんな父が大好きだと胸を張って言える。恥ずかしいから普段は言わないが・・・・涙や悲しみが似合わない人間だと言う事を知っている。まぁ、それは普段から無愛想な自分を抜かした家族全員に言えることだが・・・。其の中でも得に似合わないと思っている二人が悲しみに暮れているという事に、嫌な予感がした。

妹はソレを隠すのがまだまだ下手だから直ぐに解かった。だが、表面上は平然としている父の偽装に気付いた時は・・・諦めるしか無かった。

 

(何が、起こっているんだ? 何を知っているんだ・・・とーさん)

 

 

 

食事が終わり、風呂に入り、部屋に戻った高町なのはは布団に入った。

 

「・・・なのは」

 

「なに・・・ユーノ君」

 

気まずい雰囲気が部屋を支配したが、ユーノは自分の考えを言う為に切り出した。念の為に念話で

 

(あの・・・さ。彼は・・・衛宮士郎は現地魔導士だと思うんだ。それも、それなりに高い地位に居る)

 

(・・・・・・・)

 

(それでね、なのは。もしかしたら、彼女・・・フェイト・テスタロッサは彼が所属しているだろう組織から、何らかの援助を受けてる可能性が高いかもしれないんだ)

 

(知らない・・・知らないよ!! 私も何が何だか判らないよ!! なんで・・・なんで、シロ君がフェイトちゃんに協力してるのかも!! なんで、何処かに行っちゃたのかも!! 解からないよ!! 解からないんだよ・・・・・)

 

ユーノは驚いた。少女と共に過ごした時間は短い。しかし、其の人柄は知っていた。人に優しく、少し頑固で、我慢強い女の子。そんな、女の子が此方を向いて涙を流しながら視ていた。ユーノはなのはを落ち着けようとした時

 

「なのは・・・チョット良いか?」

 

ひっぐ・・・お父さん?」

 

ガチャリとドアが開き。

 

「大事な話がある」

 

高町士郎は切り出した

 

 

 

 


あとがき

 

作者はアンチでは有りません。ただ、ドSなだけです

 

アリサ「・・・・・・」

アレ? アリサさんの拳が飛んでこない? 如何したんですか?

アリサ「ん・・・あ〜なんて言ったら良いのかしら? まあ、なのはの依存度が少し高いなぁって思ってね」

ソレも含めての成長ですよ? 自立というか・・・なんというか

アリサ「言いたい事は分かるんだけどね・・・士郎のギャップが凄すぎるんじゃとも思うんだけど?」

・・・心に鋼をまとう男ですよ?鉄の男ですよ?

アリサ「・・・・・・いや、それでも・・・コレは遣り過ぎだと思うんだけど」

ちょっと過激な方がいいかなぁ〜と。作中で書いている通りになのはに嫌われるのも、目的の一つですし

アリサ「まあ、そうなんだけど・・・」

取り敢えず。それは置いといて、今回出てきた初の宝具!!

アリサ「名前が出てきてないけど、なんで効果が在るの?」

常時発動しております。

宝具の名前は、破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)です。

効力は魔術の無効化(防御系のみ)

例外として、武具の場合は強化や属性付与、能力付与も打ち消すぜ!!

アリサ「卑怯すぎじゃない?」

そうでもない、当たらなかったらただの槍だし。過去に交わされた呪いや契約は打ち消せないし。

まあ、りりかるの魔導士達からしたら溜まった物じゃない。

ホンマもんの『魔導士殺し』にして『宝具殺し』

見つけたら、遠距離からの砲撃で何とかしましょう。

 

今回はこの辺で、終わります。

アリサ「次回もよろしくおねがいします。・・・・・取り敢えず作者。ソコ動くな」

え?! ちょ!! せめてボディウボァ!!

アリサ「うっさい!! なのはを泣かせたアンタが悪い!!」




なのはの前に現れたシロ。
美姫 「流石のなのはも混乱を通り越して、取り乱しているわね」
まあ、言ってもまだ子供だしな。
にしても、ユーノの推測は面白いな。
美姫 「まあ、彼は事実を知らないから、ああいう予想になっても仕方ないわね」
まあな。敵対関係になったと思っているなのははどうするのか。
美姫 「そして、士郎は何を話すつもりなのかしら」
次回も待っています。
美姫 「待ってますね〜」



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