(まずい、不味い不味い不味い。)

 

どうして? という思いがある。

 

されど、やはりと思う処が在る。

 

だが、まずいと。デバイス・ダンは思った。

 

主である衛宮士郎の命により協力者、フェイト・テスタロッサの手伝いに来たのは良かった。急な転移は彼女達を驚かせてしまったが、それほど気にする事では無いと思ったからだ。

主の近状と、自分が二人の連絡役をすることを伝えるとフェイトは頷きアルフも反対しなかった。この二人は信用できる・・・がこの二人の後ろに居る者は信用できない。それがダンと衛宮士郎の見解だ、ロストロギアを回収させるのに魔導士一人と使い魔一匹しか派遣しないのはおかしい。危険度の低い物ならばまだ納得できるが、次元震を起こせるほどの危険物を回収させるには少なすぎる。

二人が何故ジェルシードを回収しているのかは知らない、というか聴いてはいない。二人には関係ない事だからだ。衛宮士郎の目的は『恩人』であり『家族』である「高町家」の守護・・・高町家の日常を壊す可能性を秘めた、もしくは可能性の高い者の排除だ。敵対するに至って、協力者や同士やらが自然と集まり少し大所帯になってしまった感も在るが、衛宮士郎の目的はそれだけだ。

ダン、真名は控えるがその愛称で呼ばれているデバイスの目的は、『至る』為に障害として現れる現象を倒すという、未だに達成されない己の存在理由を満たすのが目的であり、他は如何でも良いといった具合だ。

主である衛宮士郎や約一年以上共に有る「高町家」の事は心配するし、気にも掛けるが・・・それだけだ

 

話を戻そう。ダンが何故まずいと思っているのかそれは

 

「なんで、なんでこんな・・・・」

 

主が守護の対象とする高町家の末娘が、何故かデバイスを持ち。協力者、フェイト・テスタロッサと流れ上敵対関係に成っているからである。

鍔迫り合いの状態にある二人のデバイスから感じられる魔力は、主の何倍も上だ

ダンは己の不甲斐無さを呪った。翌々思えば、この間起こった町の破壊事件。主と自身が居ない間に起きたジェルシード関連と思われる事件は、誰が解決したのか? 自分達はフェイトに会った事によって勘違いをしてしまったのだ。ジェルシードを集めている魔導士=フェイト、という図式が出来てしまった為にフェイトが回収したのだろうと思ってしまった。

完全に自分達の失態だ。

 

 

Side なのは

 

今日は、すずかちゃんの家にお呼ばれされたので何時もよりちょっとだけオメカシをした。レイジングハートの横に並ぶように掛けたアクセサリーは純銀製の盾を模した形に、剣が突き刺さったペンダント。盾の中心に埋め込まれてる紅い石が綺麗で、とても気に入っている。

誕生日にシロ君がくれた物だ。「女の子にプレゼントする形の物じゃないけど」とシロ君は言っていたけど、とても嬉しかったのを覚えている。

そのペンダントを服の上に出して、お兄ちゃんと月村邸の門を潜った。

 

「何時見ても大きいよね〜」

 

「ああ、そうだな・・・だが」

 

「だが?」

 

「ロボットに襲われた事を思い出せば、驚く事はないだろ?」

 

それもそうかと思い、ロボットに襲われた時の事を思い出してみます 

以前、兄とすずかちゃんの家に遊びに来た時は登録? するのを忘れたという理由でロボットが沢山出てきました。今でも鮮明に覚えています。

鉄の塊を、切り裂くお兄ちゃん

鉄の塊を、蹴り砕くお兄ちゃん

鉄の塊が吐き出したゴム弾を、私を抱えながら回避するお兄ちゃん

 

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・兄は本当に人なのでしょうか?

何故だか、無性にシロ君に会いたくなりました。こんな時はシロ君が淹れてくれるミルクティーが一番です。

私が、そんな事を思っていると兄がインターホンを押しました。直ぐにドアが開く当たり、ノエルさんはとても優秀なメイドさんなのだと思います

 

「恭也様、なのはお嬢様、いらっしゃいませ」

 

ノエルさんは、月村家のメイド長さんで無口ですがカッコイイ人です。

家の中に入り、廊下を進むとアリサちゃんとすずかちゃん、それに忍さんが紅茶を飲んでいました。忍さんはお兄ちゃんこと、高町恭也と付き合っていて大学卒業後に結婚するそうです。お父さんとお母さんが喜んでいたので間違いありません。

 

「恭也、いらっしゃい」

 

「ああ」

 

ラブラブです。

 

「なのはちゃん、いらっしゃい」

 

「ファリンさん、おはよう御座います」

 

ファリンさんはすずかちゃんの専属メイドさんで、明るくて優しいお姉さんです。

私は、お兄ちゃん達が別の部屋に行ってしまったのでそのまま椅子に座っていた猫を抱えて退かし、座りました。

 

「今日は呼んでくれてありがとうね」

 

「此方こそ、今日は来てくれてありがとう」

 

「今日は元気そうね。」

 

「え?」

 

あれ?・・・何時も通りに過ごしてたと思ったんだけどなぁ

 

「何驚いてるのよ、なのは。」

 

「え、いや、えっと・・・・」

 

「フフフ、アリサちゃん。からかったら駄目だよ。」

 

「別にからかってる訳じゃないわよ。なのはに元気が無いって、最初に気付いたのはすずかじゃない。だから・・・ちょっと悔しいだけ。まぁ、士郎がいたのなら最初じゃ無いっていうのも解るんだけど・・・」

 

「だって、なのはちゃんは親友だもん」

 

「私だってそうよ」

 

「う、うぅぅ〜」

 

恥ずかしいやら嬉しいやらで言葉がでません。そんな私を見て二人は笑いました。私に出来る事は一つ

 

「にゃ、にゃぁーー?!」

 

錯乱する事だけです。

その後、ユーノ君が子猫に追いかけられたり。ファリンさんが目を回して紅茶を零しかけたり、ユーノ君が猫に咥えられたり、追い掛け回されたりとあって

外でお茶をする事になりました

カチリとカップを置く音がするとアリサちゃんが足元を見ながら言いました

 

「ほんと・・・すずかの家は猫天国よね」

 

「里親が決ってる子も居るから少ししたら減っちゃうんだけどね・・・」

 

「ヤッパリ、寂しい?」

 

私がそう聴くとすずかちゃんは

 

「うん。でも・・・皆がそれぞれの場所で大きくなって幸せに成ってくれると思うから・・・」

 

と言って笑いました。

すずかちゃんは強い子だと思います。私よりずっと・・・・私は今も心がモヤモヤして落ち着きません。

話せば楽には成ると思います

魔法の事も馬鹿にせず受け入れてくれると思います。

でも・・・話す事は出来ません。この間の事件では幾つ物ビルが、道路が崩れ、壊れました。そんな危険と関わる様な事を私は二人に話せません。

如何すれば良いのかが解りません。こんな事は家族にも、シロ君にも話せません。お兄ちゃん達は優しいから助けてくれるでしょう。

シロ君も笑いながら助けてくれると思います。だからこそ、話せません。

 

(なのは・・・・)

 

(大丈夫だよ。ユーノ君)

 

ユーノ君の言葉に私はそう答えます。そんな時です。私達がジェルシードの魔力に気付いたのは

近くに在る所為で動けない私を、動けるようにユーノ君が先行して動きました。私はユーノ君を探すと言って席を立ち、森の方へ駆け出そうとした時に二人に言われました

 

「なのは!! アンタが何に悩んでいるのか私は知らない。知りたいけど無理に聞こうとは思わない。だから・・・何時か話せる様に成るまで待ってあげるから!! しっかりしなさいよ!!」

 

「なのはちゃん、私もアリサちゃんと同じだからね!!」

 

私は大きな声で「ありがとう」と答えました。涙が出そうです。

 

そして、私は出会いました。何処か寂しげな目をしたもう一人の魔導士に・・・この時、私は彼女と彼が繋がっている事も・・・私が常に護られていた事も知りませんでした。

 

 

Side out

 

高町なのはが森に入っていったのを見送ったアリサ・バニングスと月村すずかは、椅子に座りなおし溜め息を付いた。

 

「あ〜恥ずかしいわ・・・まさかあんな事言っちゃうなんて・・・」

 

「うん、後でお姉ちゃんにからかわれちゃうかも・・・・でも」

 

「元気は出たみたいね」

 

「うん」

 

二人は笑って、紅茶を飲んだ。アリサは少し考えてから言った

 

「ねえ・・・すずか。実は私もアンタ達に秘密にしてる事があるって言ったら・・・怒る?」

 

すずかは首を横に振り、笑って言った

 

「怒らないよ。だって私も皆に隠してる事が在るもの」

 

「士郎関連でしょ・・・絶対」

 

「アリサちゃんもでしょ?」

 

二人はそう言うと、苦笑しながら言った

 

「仕方ないわよね」

 

「うん、仕方ないよね」

 

笑い声が庭に響く。互いに譲れない一線が在るのを知っているから、知ってしまったから。そこが似通っているのが嬉しいようで、哀しいようで、可笑しい。

互いに秘密にしたい出来事がある。自分の方が美しいとは思わない。互いの秘密の中心に居るのは、同じ人だから・・・

 

そんな少女達の笑い声を聞きながら高町恭也と月村忍は、頬を緩めた。しかしそれも直ぐに戻る。

 

「それで・・・氷室に付いての情報は間違いないのか?」

 

「ええ、喜ばしい事にね・・・氷室の死亡は確認されたわ。でも半年以上も前に死亡していたとは思いもしなかったわ」

 

「しかし、一体ドコで? もしかして御堂さんが?」

 

恭也の言葉に忍は首を横に振った

 

「違うわ、さくら姉さんは氷室の死亡を知っていたけどね・・・死亡したのは八月上旬頃で、場所はイギリスはロンドン。私の記憶が確かなら、二人の人物がちょうどその時期に日本に居なかった筈よ。すずか達が寂しがってたからね。」

 

恭也は去年の夏を思い出す。忍がいった人物は二人、父である高町士郎と弟的存在である衛宮士郎の二人のみだ。

父が親権を奪われた!! と嘆いていたのを覚えている。

 

「とすると・・・シロ君だな。父さんは八月に成るギリギリに帰ってきたし、シロ君は八月下旬に帰ってきた。それに・・・」

 

「それに?」

 

「帰ってきたシロ君は何処か疲れていたし、脚運びも少しおかしかった。少ししたら元に戻っていたが・・・何かが在ったと考えるのが妥当だろう」

 

全く・・・俺達はどれだけ彼に救われているのか・・・

 

そんな言葉が口に出た。忍は、少し冷めてしまった紅茶を飲み恭也に聞く

 

「恭也・・・シロ君ってそんなに強いの?」

 

恭也はその言葉に簡潔に答えた

 

「強いが弱い」

 

そんな矛盾を孕んだ答えに、忍は頭を傾げる

 

「あぁ、すまない。俺が言いたいのはだな・・・彼は弱いんだ。才能という物が完全無欠に無い。剣では俺達には及ばないし、槍や戦斧でも達人には敵わない才能しかないんだ。之は俺と父さんの予測だが・・・彼自身も『自分は何を遣らせても二流ですよ? まぁ、創るという事は得意で例外ですけど』と、言っていたしな。」

 

「えっと・・・それじゃ、氷室に勝てないんじゃ・・・」

 

「試合ではだろ? 前にも言ったと思うんだが、試合ならば俺でも勝てる。後少しすれば美由希も勝てるようになるだろう・・・だが死合いでは勝てない。」

 

「つまりシロ君は剣道の試合とかでは弱いけど、殺し合いでは強いって事?」

 

恭也は頷きながら言う。

 

「乱暴な言い方だが、ソレであっている。父さん曰く俺達じゃ勝てないらしい。」

 

自分より強い父が笑いながら言っていたのを恭也は思い出した。

 

(切り札を切られたら人間じゃあシロ君には勝てないぞ?)

 

(父さん・・・それは言いすぎじゃないのか? ソレと飲みすぎだ)

 

(酔ってない!! 偶にお前と酒を飲むといらん事いうな・・・俺が言ってる事は事実だ。出会いがしらの殺し合いなら勝算はあるがな・・・狙われてみろ。勝てる気がしなぞ、俺は)

 

「取り合えず、シロ君は強いって事でいいのね?」

 

「まあ、間違ってはないが・・・・」

 

「詳しく説明しなくて良いの。フゥ・・・でも如何しようかしら? お礼がしたいけど、シロ君って驚くほど物欲がないでしょ? 家のすずか事当主の座でもあげちゃおうかしら?」

 

「冗談でも止めろ。シロ君の事だから『すずかの事を考えろ、このマッド!!』と叱られるぞ」

 

去年は忍の発明でエライ目に会ったもんだ・・・まさか現代に恐竜が蘇るとは・・・

 

「でも、本当に如何しようかしら・・・私達を影で護ってくれている小さな守護者さんへのお礼・・・・・・そうだ!! ねえ恭也」

 

「なんだ、忍?」

 

「シロ君も温泉に行くんでしょ?」

 

「ああ、その予定だが・・・・何をするつもりだ?」

 

内緒―と笑う忍に一抹の不安を感じる高町恭也だった。

 

 

 

 

時を進ませよう。場面を写そう。

フェイト・テスタロッサは木の上に立ちデバイスを起動させた。目的の物、ロストロギア・ジェルシードを発見したからだ。すぐさま封印作業に掛かろうと思ったのだが・・・協力者の持つ不思議なデバイス。ダンが「何かが近づいている」と警告されたからだ。彼女が待機モードではなく、起動モードならばサーチャーを使い確認ができるのだがフェイト・テスタロッサは、そのことを知らないので自分で探る事にした。

使い魔であるアルフが隣に居たのならば「あたしが見てくるよ!!」と、言っただろうが生憎と彼女には別の場所・・・ジェルシードが在ると思われる場所の特定と確認に行ってもらった。ダンには止められたが、フェイトとしては早くジェルシードを集め母親に渡したいという思いがある。ソレ故にダンの提案を跳ね除けた。嫌われたかな? と、心配になったが。ダン曰く

 

「マスターの聴かん坊よりマシですよ? 何より譲れない思いが在るのならばソレを貫き通すのが、正しいのです。少なくとも私はそう思いますし、そういう人は好きですよ? 私は」

 

との事、それを聞いて嬉しさ半分、安心半分といった気分のフェイトは表情を引き締めた。此方に近づいてくる人物を観察していると小動物と会話をしているのが分かった。

 

「使い魔? 士郎と同じ? いや、でも・・・・」

 

協力者である彼は自分に「魔術師は俺しか居ない」という事を教えてもらっていた事を思い出した。彼にナニが在ったのかは知らない。知りたいと思うけれど、知ろうとしてはいけない。ソレが礼儀だと思い彼女は聞かなかった。

観察対象の少女は服の中から、丸いガラス玉の様なモノを取り出した。ソレを確認したフェイト・テスタロッサは、躊躇無く巨大化した猫にフォトンランサーと呼ばれる魔力弾を放ち、封印作業に入った。

 

 

そして、冒頭にもどる。

フェイト・テスタロッサからすれば、白いバリアジャケットに身を包んだ少女は弱かった。素人といっても良い彼女と戦闘訓練を受けた自分との戦力は歴然としていた。

 

(これなら、なるべく傷つけずに終われる)

 

そう、思った。その判断はフェイトのバリアジャケットの内側にいるダンにとって、ありがたい物であった。白い少女・・・高町なのはに万が一が在った場合、主である衛宮士郎が如何なるか? 如何するのか? それが分からないからだ。

衛宮士郎は『家族』を愛している。それは、如何使用もない程に・・・だからこそダンには解らない事がある。彼は愛しているのに、護ろうとしているのに高町士郎と高町桃子以外の人物を突き放す事がある。

勉強や宿題などの勉学に関しては一度教えたことは手伝わない。之は分かる。用は反復しろという事だからだ。

鍛錬に至っては容赦が無い。高町恭也とは一回しか模擬戦をしていないが、高町美由希とは頻繁に打ち合う。それも一回毎に太刀筋等の癖を変え、言葉を使い心理面でも攻める。その後に行う高町士郎を含めての反省会などでは、ボロクソに言う事も多々ある。

故に如何出るかが分からなかったからだ。

 

高町なのはは分からなかった。如何して今戦っている少女がジェルシードを集めているのか? 如何して話し合いに応じてくれないのか? 何故、自分と戦っているのか?

それが分からなかった。故に隙だらけだった。

酷な話だが、戦いの最中気を逸らしてはいけない。悩んではいけないとは言わないが、迷いを抱いた状態で戦ってはいけない。それら全てが敗北に繋がるからだ。それでも之を十歳にも成っていない、ましてやついこの間まで魔法を知らず、戦いを知らなかった少女にソレを求めるのは無理な事だった。

 

『覚悟』を決めて戦う者と、『覚悟』を持たず『迷い』を身の内に抱いてしまった者が戦えば、ソコに絶対的な戦力が関わらなければ勝敗は明らかだ。

 

高町なのはは敗北し、フェイト・テスタロッサは目的の物を手に入れた。ただそれだけである。

 

 

 

目が覚めると高町なのははベッドの中に居た。右腕には包帯が巻かれていたそれを見て、なのははボンヤリと思った

 

(そうか・・・私は気を失って・・・・)

 

周りを見れば皆が心配そうにしていた。御免なさい・・・そう思う気持ちが心に満ちていた。涙が出そうに成るのを耐え、心で泣いた。

 

ごめんなさい話せなくてごめんなさい・・・と

 

兄に背負われて家に帰る。何時も道理にご飯を食べて、風呂に入った。父にも母にも姉にも兄にも心配された。でも何も聴かれなかった。それを嬉しいと思う。聴かれれば喋ってしまいそうな自分が居るから・・・

不意に机の上を見れば家族で撮った写真が目に入った。ソコには彼が居る。胸が苦しくなった。彼に隠し事をしている・・・それは自分の我侭な『約束』を今も護ってくれている彼への裏切りなのでは無いだろうか? 

そう訴える自分が居る。でもソレは彼を危険に巻き込むという事だと訴える自分が居る。

二律背反。彼が大事だから大切だからと思う気持ちが、別々の事を訴える。

大事だから大切だから隠し事をしたくない

大事だから大切だから喋ってはいけない

鬩ぎ合う気持ちに答えは出ない。少女である彼女はその答えが出せるほど達観していないし、経験もない。

 

「如何したら良いか分からないよ・・・シロ君」

 

高町なのは、今此処にはいない衛宮士郎に言った

 

 

 

陰鬱な気持ちを抱えてしまった高町なのはと違い、フェイト・テスタロッサは幸先の良いスタートに上機嫌だった。イレギュラーが在ったものの、ソレは可能性として考えていたし実力も大した事が無かったからだ。

此方には町一つを包める程の知識と技量を持った協力者が居るという、安心感もある。帰りは、ダンが転移魔法を使ってくれたので無駄に魔力も使うことも無く楽に帰れた。少しすると使い魔のアルフも帰ってきた。

ジェルシードの確認も出来たと嬉しそうに言った、アルフの頭を撫でる。

詳しい事を聞いていると空が赤みを帯びてきた事に気付き、疑問が浮かんだ

 

「ねえ、ダン」

 

「はいはい、何でしょうか? フェイトさん」

 

「あのね、士郎はご飯とか如何してるの? 左肩直ってないんでしょ?」

 

フェイトの疑問とは協力者、衛宮士郎の事だ。彼が怪我をしたのは自分の所為である。彼は自分のミスだと言っていたが、そうとは思えない。

 

「大丈夫ですよ。食料の備蓄とかも在りますし・・・なんなら様子を見ますか? 向こうにサーチャーを一つ置いてきているので、見れますよ?」

 

「え・・・良いのかな?」

 

「視ようよフェイト。あたしも気に成るしさ」

 

「でも・・・失礼じゃ・・」

 

「大丈夫ですよ。マスターはその程度の事で怒ったりはしませんから。注意ぐらいで終わりますよ」

 

純粋な子供一人に悪魔が二匹。結果は見えていた

 

「それじゃあ、バルディッシュ繋ぎますから映像を写してください」

 

『OK』

 

映し出されたのはベットで眠る衛宮士郎の姿だった。

それを視て二人は思った、まるで死んでいるようだと

ソレを視てダンはアレ? と思った。映像を巻き戻し、早送りする。

衛宮士郎は一度も起きていない

 

「フェイトさんアルフさん。マスターの部屋からペンダントを持ってきてください!!」

 

「え?」

 

「早く!!」

 

「分かったよ」

 

鬼気迫るような声にうろたえたアルフが、走って部屋に入り、ペンダントを二つ持って戻ってきた。

 

「五つ合ったんだけど・・・之で良いのかい?」

 

「良いです。お二人とも絶対にソレを離さないで下さい・・・外せば死にますから」

 

「死ぬって?」

 

フェイトの言葉にダンは魔方陣を展開しながら答えた

 

「工房に行きます。工房は魔術師の秘奥が眠り、研究する場所です。詳しい事はマスターから聞いてください。ソレを持っている限り貴方達はマスターの身内として護られます。」

 

「離したらいけないんだね。」

 

「はい。ソレでは転移します。・・・・使用者の生命の危機を確認。第一級危機と判断。依って魔法許可を破棄、自動魔法使用を適用。・・・二人ともチャンとペンダントは持っていてくださいね!! 転移開始」

 

そして、二人と一つは部屋から消えた。

 

夕焼けの光に照らされながら、テーブルの上に置かれた金属片バルディッシュはボソリと言った

 

「・・・・・・・・・置いていかれた」

 

その後、自分が主と同じようにこの世界のこの国の語源を喋って居る事に気付き考え込むのである。

 

 

 

 


あとがき

 

職が見つからない・・・BINです。

士郎に何か在ったようです。

なのはは悩みを抱えているようです

アリサは原作よりも大人なようです。ナニが在ったかは其の内に?

すずかも同じようです。

ユーノは出番が少ないですw

彼にナニが在ったのかは次回で!!

できると良いなぁ。ここから下は全く関係の無いオマケ兼何と無く思い浮かんでしまった話です。気にしないで下さい。

 

 

 

男は疲れていた。

体は勿論の事、精神的に疲れていた。

コツコツと石畳の道路を歩く。久しぶりに訪れたロンドン。風は冷たく、人通りも少ない道で疲れ果てていた白髪の男は凍えそうな少女を見つけた。

少女の身なりはボロボロだった。所々が破れた服に、ボロボロの布切れに身を包み蹲っていた。少女が顔を上げると目が合った。

当たり前だ男は少女を居ていたのだから・・・・顔立ちは自分と同じアジア系、身長からして五歳前後。しかし、何よりも男が引かれたのはその目だった。

純粋・・・又は無垢と言って良いほどに少女の瞳は澄んでいた。よく視れば瞳の色は碧で髪の色も同じだった。少女の瞳に写った自分を見て男は思った。

 

(あ〜遠坂に殴られるな。髪の色が同じに成っちまった・・・変わらないのは肌の色だけか・・・)

 

「泣いてるのか?」

 

少女が口を開きそう言った

 

「ふむ・・・泣いているのかと、訪われれば泣いていないが。ソレよりも君は帰らなくて良いのか? 家族は? 」

 

男は言って自分でしまったと思った。少女の身なりを見れば分かるというのに。

しかし、少女は気にした様子も見せずに言った

 

「知らない。父ちゃんも母ちゃんも居ないから知らない。ソレよりも兄ちゃんは泣いてるだろ?」

 

「いや、泣いていないんだが」

 

男は困惑した。少女は自分が泣いていないのに、泣いていると言うのだ。ソレが分からない。

 

「泣く時は声を出して、涙を出さないといけないんだぞ?」

 

少女はトテトテと自分に近づき手招きをした。しゃがめという事なのだろう、男は自分でも分からずしゃがんだ。

少女は男の頭に手を置いて左右に動かし言った

 

「頑張らなくても良いんだぞ? 泣きたい時は泣かないとなぁ〜」

 

ビクリと体が震えた、心が震えた。

つぅ、と頬を何かが伝い。ソレが涙だと気付くのに時間が掛った。前を見れば少女が笑っていた。

 

ああ、そうか・・・・俺は・・・・

 

男は少女を抱き上げ、しゃくり交じりの震える声で言った

 

「行く所がないのなら・・・一緒に来るか?」

 

「暖かいか?」

 

「此処よりは」

 

「お腹一杯食べられるか?」

 

「太らない程度にしろ」

 

「太るか〜・・・それなら少し我慢しないといけないな〜」

 

「そうしとけ、それで・・・来るか?」

 

「行く!!」

 

「そうか・・・・なら、連れて行こう」

 

なぁ、兄ちゃん名前なんていうんだ?

士郎、衛宮士郎だ。君は?

よつば!! 

よつばか・・・苗字は?

苗字? なんだそれ? 

無いのか? 

駄目なのか?

駄目じゃないが・・・困ったな

困るのか? それじゃあ、兄ちゃんと同じでいいぞ

    ・・・同じで良い・・・か。そうだな、それなら俺の事は兄ちゃんじゃなくて父ちゃんと呼べ

父ちゃん? 良いのか?

遠慮するな

そっか・・・うん父ちゃん!!

なんだ、よつば

父ちゃん!!

なんだ、よつば

えへへ〜呼んだだけ〜

そっか・・・

おう、そうだ

 

正義の味方を目指した男が出会ったのは、無垢で純粋な少女だった。

少女の言葉は男を救い、男は救いを求めていた自分を認めた。

之はそれだけの話

戦場を騒がせていた裏社会でも暗い場所を騒がせていた男は、この日を境に消えた

されど、彼と少女の話は続く。

その物語が、幸せであるようにと紅いコートを羽織った女性が願った。

 

「全く、アイツがロンドンに来たって情報が入ったから打ん殴ってやろうと思ったのに・・・・幸せになりなさいよ。士郎」

 

女性は男とは反対の方向に向かい歩みを止めた

 

「でも・・・あの子ちょっと可愛かったわね・・・士郎を含めてあの子に譲っちゃうのもなんか癪だし・・・・ふふ・・・諦めるのは私らしくないしね」

 

女性が言葉を吐いた時、男は背筋が冷たくなった

 

如何した? 父ちゃん

ん? いや何か嫌な予感が・・・

何だソレ?

何でも無い。ただアカイアクマに狙われたような・・・・

アカイアクマってなんだ?

いいか、アカイアクマっていうのは普段はお嬢様な猫を被っているんだが、ベアクローとガンドを得意とする怖い奴なんだぞ

そ、ソレは怖いな!!

怖いぞ、だから未だに嫁に行ってないんだ

 

「誰が行かず後家だ!!」

 

ぬお!!遠坂!!

父ちゃん!! 出た!! アカイアクマが出た!!

ちぃ、逃げるぞよつば!!

まてこらぁ!! 誰の所為だと思ってんのよぉ!!

あはははは、早いぞ父ちゃん!!

 

 

今から始まるのは正義の味方じゃ無くなった男と、その男の娘に成った少女の物語

 

よつふぁて

 

続かないよ?たぶん・・・きっと・・・どうしたらいいかな?





なのはとフェイトの初めての接触はやっぱりフェイトが勝って回収したみたいだな。
美姫 「それよりも気になるのは、やっぱり士郎よね」
ああ。一体、何が起こっているんだろう。
美姫 「ああ、とっても気になるところで続くのね」
今回はおまけまで付いててお得〜。
美姫 「よつばと! とのクロスネタね」
みたいだな。こちらも楽しませてもらいました〜。
美姫 「それじゃあ、また次回を待ってますね」
待ってます。



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