Beigeordnetes(座標) Reparieren(固定)―――――Bereich Impuls(地脈)――――Teilen(分断)

 

轟々と風が吹く夜空に、声が消える

 

Anschlus(接続)―――――Verstarkung(補強)―――――Offnung(開け)!!

 

月を背に、赤い外衣を身に纏った少年は、強く、強く強く声を上げた。

常人より「感じやすい」人には感じる事が出来るかもしれない『』が町を駆ける。

 

Offnung(開け) Offnung(開け) Offnung(開け) Offnung(開け) Offnung(開け)!! ―――――――Was Gatter(四方) anbetrifft() seitlicher(門は) offnung(開き) vier――――Das zentrale Gatter wird(中央の門は) von der Ermahnung fre igegeben(戒めから解き放たれる)

 

眼下の町を見下ろし、少年は言葉を紡ぎ続ける。

 

その少年は不思議だった。

 

足場など無い筈の空に立ち、腰に不釣合いな大型の拳銃を挿し、淡い燐光を体から発している。

 

Die Strase Schlaufe(道よ曲がれ)―――――Beschadigung Verstand wird(害意は弾かれ), Bosheit wird(悪意は) weggetrieben abgestosen(駆逐される)

 

ゴプっと少年は血を吐いた。ドコからか女性の声がする

 

「もう、無理です。マスター・・・これ以上は彼方の回路が持たない」

 

少年は口内に残った血を、唾液と一緒に吐き。言った

 

「持たせろ・・・俺に魔力供給をしながらでも、魔法は使えるだろ。」

 

「しかし「クドイ!!」・・・・了解しました」

 

居もしない女性と、少年の会話の直後、少年の足元に赤い『陣』が現れる。

円の中に六芒星、その中に奇怪な文字、その奇怪な文字さえも複数の文字が形作っている。

 

Im Gatter seitlicher Wandvier(四方の門に壁を)―――――Im zentralen Gatter schlussel(中央の門に鍵を)―――――Sie schliesen alle Gatter(全ての門は閉じ), fuhren die Strase(道は通る)

 

少年はゆっくりと降下し始める。顔は蒼白、体は震え、口の端からは赤黒い血が垂れている。

 

狂っている

 

常人が見ればそう思うだろう。しかし、少年は一般人ではない。ならば、社会の裏側の人間か? と問われれば、YesともNo とも言えない。

少年はこの世界の人間ではない。平行世界、並列世界、可能性世界、呼び方は様々だがそういう世界の人間である。その中でも特殊な『魔術師』と呼ばれる者だ。

 

トンと、少年は大地に脚を着けた。

 

「ゴフッゴホゴホ・・・・グッ・・・・・っは――」

 

少年は一頻り咳き込むと、深く息を吐き腰に挿した銃を抜いた。

 

「すまないな・・・ダン」

 

「もう、慣れました。マスターの聴かん坊」

 

少年はもう一度「すまない」と言うと其処から消えた。

 

少年の名は、衛宮士郎。今年から私立聖祥大附属小学校に通う三年生である。

 

 

 

 

 

ブゥ〜っと携帯が振るえアラームが鳴る。私はゆっくりと手を伸ばし、時間を確認するともう一度布団に潜り込んだ。

 

トントン、とノックの音の後にシロ君の声がする。私は眠った振りをして、待つ。少しするとガチャリとドアが開き、シロ君が私の体を揺する。

 

「おはよう、シロ君」

 

笑顔で言う私に、シロ君は苦笑しながら言う

 

「ああ、おはよう。なのは」

 

この遣り取りが、私の一日の始まりなのです。

 

私は、そう思っていました。

 

いえ、そう思いたかったんです。

 

この何気ない遣り取りがズット続くと

 

彼の苦笑から、私の朝が始まると

 

私は・・・そう願っていました

 

Scaffold of Person condemn始まります

 

 

 

 

 

おはようと、朝の挨拶が飛び交う学校の教室で衛宮士郎は考えていた。

 

無論、今日の晩御飯はナニにしようとか、何時も通りに『高町家』で厄介になろうとかではない。

一週間程前に自分の相棒が察知した魔力の事である。ソレさえなければ昨夜行った、大魔術に分類されるような事をする事はなかった。

予定では、一ヶ月後に行う筈だったのを強行したのだ。その代償として、全快しかかっていた相棒は再び破損し、自分自身は内臓の幾つかを痛めた。

自分の体に宿る神秘「鞘」を使えれば良いのだが、使えない。正確には使えるが、使ってはいけない。

 

ねぇ、聞いてる? てか絶対に聞いてないでしょ!!

 

ア、アリサちゃん。落ち着いて、ね? ね?

 

なのはちゃん。先にシロ君に気づいてもらった方が・・・

 

その所為で、朝の鍛錬に遅れそうに成った。士郎さんに迷惑や、心配を掛けたくないのに

 

もう、頭にきた!! 喰らえ!!

 

怒気を感じて士郎は頭を後ろに引き、跳んできた膝を避け、横に移動し。攻撃してきた如何にも気の強そうな少女の腰を支え、少女の肩を引き、腰に当てていた手を膝裏に移動させ抱きとめた。

 

「アリサ、跳び蹴りは淑女として如何かと思うのだが」

 

「あんたが、ボーっとしてるからでしょうが!! 人が話しかけてるのに、反応もしないあんたに淑女らしくないとか、言われたく無いわよ!! 似非紳士!!」

 

二人とも・・・いや、アリサと呼ばれた少女はヒートアップしていて気付いてないようだが。士郎の手・・・腕はアリサの肩と膝裏に廻っている。

その姿を見て、教室にいる女子はジィーっと二人を凝視しているし、男子は今にも血涙を流さんばかりに見ている。(少年達が白覆面を手にしない事を祈る)最初にアリサを止めようとしていた、栗毛の少女。高町なのはは半眼で士郎を見ているし、長い黒髪の少女。月村すずかは、顔を赤らめて二人の顔を見ている。

 

まぁ、全ては担任教師が何時もより早く来た為、この不思議な空間と成り果てた教室は直ぐに元に戻ったのだが。俗に言う『お姫様抱っこ』をされた、アリサ・バニングスは昼食の時間までなのはに、見つめられながら授業を受ける事に成った。

 

勿論の事だが・・・アリサがなのはに見つめられていた時間=士郎がなのはの機嫌を直すのに掛った時間である。

 

 

それでも、彼と彼女はこの日常が好きだった。

 

だから彼は(だから彼女は)日常に幸せを感じながら(自分と彼の共に過ごせる時間が)非日常を生きる事を決めた(減ったのが悲しかった)

 

護ると、恩人に誓った(共に居ようと、自分に誓った)恩人である人は、そんな事はしなくて良いと言ったが(彼はその事知らないが、心に決めた。あの時見た)それでも立ち止まる事は出来なかった(彼は今にも壊れそうなほど儚かったから)

 

日常と幸せの象徴である『高町家』を離れたのは、(夢で見たあの人に似た彼から離れたくないのは)護る為。(一人にしない為。)

 

これ以上彼等に、負担を掛けたくは無かったというのも在る。(彼が時々、歪な笑顔をするからというのも在る)

 

去年・・・彼がこの世界に来てからは出会いの連続だった。(今年の初め、彼が出て行ったのが寂しかった。)

 

彼が居た世界では『混血』と呼ばれる彼女達と出会った。(彼が居なくなってから、朝が怖かった。)そして、遠い地で彼を殺した。(彼が起しに来てくれないと、寒かった)

 

その時に彼女という、窓口に出会った。(彼が出て行った日に彼と約束した。)彼の内側を見抜いた人に出会った。(用事が無いときは、必ず家に帰ってくると)

 

彼と同じ目的を持つ人と出会った、(朝は、何時も通りに起してと、)理由は違うが協力関係を築き共に戦っている(本当はイケナイ事だけど、彼が近くに居ないと不安だった)人ですら無い、それでも心優しい友人と出会った。(もう、会えないのでは無いかと)

 

突然この世界に現れた異端の歯車は、世界に順応していっている様に見えた。

 

そう、見せられていた。小さな揺さぶりは幾度も在った。その度に彼は、周りに助けられた支えられた。

 

それすら、世界の布石とも知らずに

 

明確にして置こう。世界は矛盾を許さない

 

もし、世界が矛盾を黙認すると言うのならば。それは、利用出来るからだ。

 

彼の、衛宮士郎への揺さぶりは之から始まる。

 

 

時を戻そう。最初の揺さぶりは彼が日本に居ない時に起こった。

 

た・・・すけ・・・て

 

「? アリサちゃん、何か聞こえなかった?」

 

高町なのはは、不意に頭に響いた声に戸惑い友人に聞いた

 

「? 何も聞こえなかったけど・・・・なのはって霊感とか在ったけ?」

 

「怖いこと言わないでよ〜」

 

たすけて

 

「ほら!! また聞こえた!!」

 

「なんにも聞こえないけど? すずかは聞こえた?」

 

「ううん、私も聞こえなかったよ。なのはちゃん、声はどっちから聞こえたの?」

 

なのはは、「あっち」と声の聞こえた方へ駆け出した。

 

他の二人もなのはを追って走った。その先に居たのは傷ついたフェレットの様な動物。三人とも傷ついた動物を放って置ける様なニンゲンではない、当然の如く病院に連れて行くことに成った。

 

そして、その夜に事は起こる。被害者は高町なのは、原因はロストロギア・ジェルシード。

 

高町なのはは杖を取り、魔法少女と成った。理由は助けるため。助ける対象は動物だと思っていた、異界の住人。ユーノ・スクライア

 

高町なのはが魔法と出会った夜、彼・・・衛宮士郎も一つの宝石と出会った。

日本から遠く離れた地、イギリスのロンドンで

 

 

 

 

ロンドンの郊外に国さえも利用する。高貴な吹き溜まりがある

 

曰く、其処には全ての情報が集まる

 

曰く、其処を攻めては為らない

 

曰く、其処には最高の快楽が在る

 

曰く、其処は高級娼館よりも更に高い場所に在る

 

簡単に言えば世界最高の情報屋。もう一つの顔は知られる事の無い、高級娼館。

 

名を魔女の館。キリスト教圏の国で中世から存在する、ある意味で喧嘩売りまくりの情報屋である。

その娼館を纏めるのは一人の女性、彼女達は名を継ぎ、捨てる。本当の名を知るのは、本人を除外しても多くて二人。教育した者と信頼と信用を置ける契約者だけである。

 

「それで、急な依頼とは何かね? 本来なら義務教育として、学校に行かなくてはならないのだが」

 

外見に見合わない言葉遣いをするのは、彼が公私を分けているからだが・・・それでも、余り似合わないと思う。そんな事を考えながらセルフィ・ランバートは口を開いた。

 

「貴方には必要ないじゃない。貴方が日常に幸せを感じているのは解るけど・・・仕事の事はこれに書いて有るわ。それとも、口頭で説明して欲しい?」

 

その挑発とも取れる笑顔は、何よりも妖艶で殆どの男は骨抜きにされるだろう。しかし、衛宮士郎にとっては如何でも良いモノである。

 

「おい・・・・なんで、こんな都市伝説を解決しなくてはならないんだ? テレビの特番なんかで遣れば良いだろう。」

 

「伝説なら良かったのよ・・・・調査にだした三人の内、二人が心的ショックで鬱に成ったわ。最後の一人は、外傷が無いのに意識不明の重体。依頼主は・・・解ってると思うけど某国の某軍隊の上層の最古参」

 

士郎は眉を寄せると、吐いた

 

「貸しを作れると言う事か」

 

「正解。奴らを潰すには必要な貸しよ、貴方の保護者とその協力者。それと私達のお零れに随伴しようとしている奴ら。全員の利害は一致しているわ・・・」

 

「解った。取り合えず依頼は果たそう。全てが巧く行かなくともこの国と日本からは、奴らは駆逐できる。・・・・繋がっている奴らを含めて」

 

そう言って士郎は部屋を出て行った。一人、部屋に残されたセルフィは呆れた様に吐いた

 

「呆れた・・・日本でも動いているなんて・・・・」

 

セルフィ・ランバートこの名は彼女の本当の名前である。

 

 

 

 

 

 

場所は移る。広がるのは人が居ないゴーストタウン。そのゴーストタウンでも一番目立たない路地に、淡い燐光が漏れた。

 

「転移完了。マスター、目的地はここから八百メートル先です。サーチャーを飛ばした結果ですが、生態反応は周囲二キロにはありません。それと・・・」

 

「解っている。之だけの魔力量だ・・・・異世界からの混入物だろ?」

 

「はい、前回の物とは全く違います。」

 

溜め息が出る。異界からの混入物・・・ロストロギアがこの世界にあるという事は、彼等が出てくるという事だ。

正直に言えば、こないで欲しい。あと一年もすれば俺達は一段落すると言うのに・・・・どの道、彼等とは最低でも一回は会うことになるが。その時は敵同士としてだ。去年の暮れに出会った彼もソレは理解している筈だ・・・そういえば彼は・・・クロノは元気だろうか? 

 

「マスター・・・目的地に着きましたが、目標は地下のようです。」

 

「そうか・・・解析する。無いとは思うが周囲の監視を頼むぞ」

 

解析開始(トレース・オン)

 

自分だけの呪文を唱え、二十七の撃鉄が降りる。蛻の殻と成った孤児院を解析するのは簡単だった。

地下への入り口は院長室の床下に有った。大人一人が横に成れるほどの広さが有る階段は、それだけでナニをしていたのかが解かる。それほど長くない階段を下りきれば最先端の科学が広がっていた。

解析の結果わかっているのは、広さは大きいデパートの駐車場並に広い事ともう一つ下に部屋が有る事。

基本的に一直線の通路を歩いていけば、腐敗した死体が幾つも転がっていた。共通しているのは、白衣を着ている所だけだろう。どれも腐敗していて顔の判別が出来ない。鼻が曲がる様な臭いがするが・・・気にした処で如何にも為らないので無視する事にした。

淡々と通路を進む。幾つかの部屋を見ても在るのは死体と書類・・・時折、手術道具が有るだけだった。薬品の類も既に使い物に為らないだろう。

また、階段を下り通路を進む。半分程進んだ処でソレは来た。

 

注射の針

手術台

圧し掛かる知らない男、女

痛み

激痛

悲鳴

嘆願

嘲笑

冷たい視線

突き刺さるメス

未調整の薬

切り離された四肢

痛い

痛い

助けて

痛いイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイたす痛い痛い助けてイタイイタイタスケテタケテタスケテイタい助けてイタイイタイ許してユルシテユルシテイタイユルシテごめんなさいゴメンナサイゴメンナサイイタイ助けてユルシテいたいタスケテ許して許してイタイイタイイタイイタイゴメンナサイユルシテイタイ助けてゆるしてユルシテいたいイタイタスケテ

 

悪夢と呼べる物が襲ってきた。だがソレだけだった。成程、これを喰らえば常人ならば死ぬだろう。帰ってきた諜報員達は生きているのが奇跡・・・いや、不幸か。

 

「俺には利かないか・・・・」

 

慣れが在れば如何にでも成ると言うモノではない。それでも、気分が悪く成るだけだったのは、やはり慣れが在ったからだろう。たぶん、彼女達と彼等は絶望したのだ。それでも、希望に縋り付いてさらに絶望した。コレは彼等の復讐だ。

 

歩みを止める事は無い。俺は通路の行き止まりに有るドアを開き言った

 

「もう、君達を苦しめる者は居なくなったよ。だから・・・安らかに眠りなさい」

 

オォォォン

 

と音が鳴った。

語りかけたのは手術台に寝かされた少年に対して

音を鳴らしたのは少年の上に浮かぶ宝石

 

俺は静かに相棒を引き抜き、宝石を撃った。

 

 

 

 

 

「とんでもない物が迷い込んだな」

 

「はい・・・しかし、コレは使えますよ? このまま秘匿した方が宜しいかと」

 

相棒の声に俺は頷く。今は相棒の中に有る宝石には、シリアルナンバーが刻まれていた。つまり、複数有るのだろう・・・この忌まわしい機能を持つ宝石は・・・

 

俺は腕に抱えた少年を担ぎ直して言った。

 

「戻るぞダン。この子をセルフィに預けたら、コレと同じ物を探す。使い方を誤れば俺達の出番が早まってしまう。ソレではお互いに困るだろう?」

 

「そうですね・・・先ずはこの周囲一帯とイギリスの方から遣りましょう。強い意志に依って発動する可能性が高いですし、海に落ちているかもしれませんしね。」

 

そう言って俺達は転移した。

 

 

 

鐘がなり、全員が席を立つ。俺も同じように席を立ち鞄を背負った。

 

「シロ君。今日はどうするの?」

 

「あ〜悪いんだが、なのは。また、暫く学校に来れそうに無い。ゴールデンウィークまでには帰って来たいんだが・・・」

 

俺の言葉を聞いて落ち込む姿が、心に痛い。原因は昼食後に掛ってきた電話だが、内容が内容なので受ける事にした。

 

「そっか・・・少しだけでも駄目かな? 今日はフィアッセさんが来るんだよ」

 

ソレが原因ですとは言えない。

 

「ゴメン。家に帰ったら直ぐに出ないといけないから・・・」

 

俺は頭を下げて言った後、なのは達と一緒に途中まで帰った。

 

俺が今住んでいるのは、最近出来たマンション(ペットOK)の五階だ。日本での保護者は士郎さんに成っているが、俺は高町家の養子には成らなかった。ソレはまた別の話なので割合する

 

ドアを開け家に入る。制服はクローゼットに、鞄は机の上に置く。普段はポケットに入れている相棒をベットの上に置き、ベットの下から箱に入れた仕事道具を引きずり出す。

 

「後は夜に成るのを待つだけか・・・」

 

俺はそう言って仮眠を取ることにした。

 

 


あとがき

解からないスッヨネ・・・・御免なさい。BINです

士郎君が裏でイロイロと動いている様です。

オリキャラも出ております。

クロノ君と過去に会っている様です

彼等の目的とは一体?

士郎君もジェルシードを集めるようです。

これからどうなるのやら・・・・作者にも解らない(オイ





士郎が色々とやっているな。
美姫 「何か目的があるみたいだけれど、それもまだ分からないわね」
さてさて、それらが全て絡み合うのはいつか。
美姫 「その時、何が見えてくるのかしらね」
次回も待っています。
美姫 「待ってますね〜」



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