どうも、高町美由希で〜す。

 

シロ君が家に来てから一週間ちょい、なのはとも仲良くなったようでイロイロと安心しています。

 

まぁ、恭ちゃんがイロイロと嫉妬する場面が在ったり無かったりで、色んな意味でドキドキだけどね〜

 

でも、チョット寂しい事にお父さんが鍛錬の時にシロ君に付きっ切りで・・・私はファザコンじゃないんだけどな〜

 

帰ってくると、二人ともボロボロだし。訓練を見せてくれないし。

 

あっ、因みにシロ君って私より強いんだよね・・・ショックな事に。そのせいか、訓練が厳しくなったし・・・少し踏んだり蹴ったりです。

 

今度、シロ君が鍛錬している時を狙って尾行しようと思います。

 

そんな訳でScaffold of Person condemn 始まるよ〜。

 

 

 

今日は翠屋がお休みで高校も行事の準備の為、半ドンで終わり時間を持て余していた。だからかも知れない、ふとそんな事考えてしまった。まぁ、思い立ったが吉日とも言うので、シロ君とお父さんが家を出て行くのを確認してから、先回りしたんだけど

 

キィン

 

「(なんで二人とも真剣で戦ってるの!!)」

 

秘密の特訓なんかとは格が違う戦いに、私は唖然とした。

 

「(ていうか、シロ君は兎も角お父さんも本気モードじゃない?!)」

 

二人より離れている私の所まで、その闘気と言えば良いのだろうか? その様なモノがビシビシと伝わってくる。いや、そんな事は如何でも良くないけど如何でも良い。

 

「(シロ君の動き・・・ホントに人間の動き? 木々を足場に使った三次元戦闘なんて使われたら、恭ちゃんでも勝てないかも。いやソレよりも・・・アレって神速?)」

 

大地に脚を着けての移動速度が在り得ない、何度か兄に見せてもらった御神流奥義の歩法に似ているような気がする。

 

「(でも、神速とは違う・・・何処かが・・・あっ!! そうか初速から最速だからそう見えるんだ!! そうだそうだ、あの上半身を地面すれすれまで傾けるのも、空気抵抗とかたぶんその辺の事を考えてのってえぇぇ!! 今シロ君お父さんの『徹』を『徹』で相殺した!!)」

 

キィン、ギィン、キィン

 

美しく響く鋼の二重奏

 

その音に聞きほれてしまいそうに成るけど、それ以上に

 

「(二人とも、物凄く楽しそう)」

 

それから二分ほどだろうか? 鋼の音楽を聴きながら、楽しそうな二人を見ていたのは。戦いが終わったのは、この場には不釣合いな目覚ましの音が鳴ってからだった。

 

「っ、ハァー・・・・・ありがとう御座いました」

 

息を付いて礼をするのはシロ君

 

「もう、五分たったのか・・・休憩にしよう。あの動きには、まだ体が慣れてないんだろう?」

 

体が慣れて無いって、如何言う事だろう? 私は二人の会話が気になり少し近づく、すると

 

ズドン

 

ナイフが私の横を通って、木に在りえない音を立てて突き刺さった。あの〜、木が思いっきり凹んでる上にナイフが根元まで刺さっているんですけど!!

 

「ハァー、美由希速く出て来い。次は外して貰えないぞ?」

 

「えっ!! 美由希さん!!」

 

「あははは・・・・・・お願いだから当てないでね? シロ君」

 

私は両手を上げて二人の前まで歩いて行った

 

 

 

side士郎(子)

 

ゴチンと拳骨が落とされる。

 

拳骨を落とされた美由希さんは、頭を抑えて悶えている。美人な人が頭を抑えて転げまわるのは、如何かと思う。

 

「士郎さん・・・流石に『徹』での拳骨は・・・」

 

俺がそう言うと士郎さんは、豪快に笑いながら言う

 

「何を言うシロ君。人様の秘密を盗み見るような娘には、之ぐらいがちょうど良いのだよ。な? 娘よ?」

 

「うぅ〜〜〜・・・私が悪かったので、もう少し手加減してくれても良いんじゃないかな〜と思うよ」

 

そんな美由希さんに士郎さんが拳を上げると、「きゃぁ〜」と言いながら俺の後ろに隠れた。俺は何故かソレが面白くて笑った。士郎さんも俺に釣られたのか、笑っていた。美由希さんは「えっ!! なんで笑うの〜!!」と言って、不思議そうにしていた。

 

「おっと、笑ってる場合じゃなかった。シロ君」

 

俺は士郎さんに言われて、急いで薬を取り出し口に咥え火を付けた。

 

「ちょっとシロ君!!」

 

「はい?」

 

美由希さんが声を出したので薬を吹かしながら、返事をする。

 

「いや、はい? じゃなくてタバコなんて子供が吸ったら駄目じゃない!!」

 

あっ、そう言えば士郎さんと桃子さん以外に薬の事言ってなかった。

 

「あ〜美由希チョット待て」

 

士郎さんが、美由希さんを捕まえて言う

 

「お父さんも何、容認してるの!! タバコは「いや、だからそれタバコじゃないから」え?」

 

俺は美由希さんに言葉をぼやかしながら言う

 

「之は精神安定剤みたいな物なんですよ。その証拠にニコチンもタールも成分には含まれてないですし、フィルターも付いてないんです。ちょっと、イロイロ在りまして」

 

「精神安定剤って、シロ君「それ以上は禁止な」・・・・・はい。ごめんね、シロ君」

 

頭を下げる美由希さんに俺も頭を下げる

 

「いえ、言ってなかった俺が悪いんですし。頭を上げてください」

 

美由希さんはすまなさそうな顔をして、頭を上げた。

俺は、念の為に持ってきていたバックに、夫婦剣を終い半ばまで吸った薬を携帯灰皿に入れた。

その後は三人で話しながら帰った。話していて分かったのだが、美由希さんはかなりの読書家で沢山の本を持っているらしい。今度何か借りてみようと思う。

家に着くと士郎さんに、夜部屋に来てくれと言われた。その表情がとても真剣なので俺は直ぐに頷いた。

 

 

そして、夜が来る

 

三日月が照らす部屋で、俺と士郎さんは向かい合って座っていた。

士郎さんは真剣な表情で、頭を下げて言う

 

「シロ君、恭也と闘ってくれ」

 

予想できない事は良く在るモノだなと、冷静な部分が考える。

当たり前だ。俺では恭也さんには勝てない。

 

剣の技術で劣っている

 

リーチで劣っている

 

速さで劣っている

 

体力で劣っている

 

そして何よりも、俺は自分のアイデンティティー・・・自己存在理由を見失っている。

 

確固たるモノが無い自分の弱さは、身に沁みている。

 

無駄に蓄積された戦闘経験が今の衛宮士郎では、『高町恭也』と『御神流剣士・高町恭也』には勝てないと囁いている。

 

「闘うのは構いません。しかし、ソレは恭也さんへの侮辱に成ります。俺には中身が無い。ソレは士郎さんが一番分かっている筈です。」

 

最後に搾り出すように言う。本当なら言葉にしたくない、余計に思ってしまうから

 

「俺は・・・まだ見つけて無い」

 

自然に拳を堅く握ってしまう。自覚してしまう。

 

俯いている俺に士郎さんが優しく言った

 

「之は、俺の勝手な考えかも知れないし、思い込みかもしれない。・・・シロ君、いや、衛宮士郎君。」

 

俺はフルネームを呼ばれて、顔を上げた。

 

「新しく出来た『家族』を護る事から始めてみないか?」

 

そう言った。そう言われた。『家族』という言葉がストンと入ってきた。

 

「俺は君の事を本当の息子の様に思っている。と言うより君は、既に『俺の息子』だ。桃子もそう思っている。恭也も美由希もなのはも、きっとそう思っている。」

 

士郎さんは笑顔だった。笑顔で言葉を紡いでくれている。そして気付いた、士郎さんの笑顔を何処かで見た事が在ると

 

「血の繋がりなんて如何でもいい。俺はそう思う。だって俺と桃子は血が繋がってない。恭也は俺の連れ子だし、美由希は妹の子だ。でも家族だ、『家族』なんだ。何でだか分かるか?」

 

士郎さんの問いの答えが浮かばない。士郎さんの笑顔と同じ笑顔を浮かべた人が、思い出せない

 

「それはだな、『心が繋がってるんだ』」

 

士郎さんは胸を指差してそう言った。

 

「良いんですか? 俺が家族に成って・・・皆の事を『家族』だと思って良いんですか? 家族を切り捨てた俺が!! 全てを犠牲にした俺が!! 産みの親すら思い出せない俺が・・・俺みたいなヒトデナシが・・・がらんどうな、俺が」

 

士郎さんは、笑い飛ばした。

 

「それが如何した。」

 

唖然とする。俺の所為で危険が及ぶかも知れないのに、俺が皆を裏切るのかも知れないのに、士郎さんは笑い飛ばした。

 

「俺が君を『息子』と思っている。俺の家族が君を『家族』だと思っている。ソレが全てで、ソレが現実だ。それで、衛宮士郎君。返答は如何に?」

 

士郎さんは悪戯が成功した子供の様な笑顔だった。

 

「(この人は大きいな・・・そうか・・・見た事あるはずだ。だって)」

 

だって、今の士郎さんの笑顔は・・・切嗣にそっくりなんだ。

ソレが分かった瞬間、ストン入ってきた『家族』という言葉が広がった。

 

いいのかな・・・この人達と『家族』に成っても

 

許されるのかな・・・桜

 

それは都合の良い幻聴なのかもしれない

それでもこの耳に、心に響いた。愛しくも懐かしい彼女の声が

 

成って良いんですよ・・・先輩、幸せに成ってください

 

苦笑しながら言うような、優しい言葉が聞こえたんだ

 

だから、搾り出すように聴いた。声が震えているのが、自分でも分かる。

 

「迷惑じゃないんですか?」

 

「当たり前だな」

 

「皆を傷つけるかもしれない」

 

「俺達は皆強いぞ」

 

「・・・・・もしかしたら「シロ君」っっ!!」

 

「君は頑固だな・・・でもな、俺は・・・俺達はもっと頑固だぞ?」

 

士郎さんは腕を伸ばして、俺の頭をクシャクシャっと撫でた

 

「俺達と『家族』に成ろう」

 

「っあ・・・」

 

その後の事は、あまり思い出したくない。この人達には泣かされてばっかりだ。

朝起きた時、俺は士郎さんと桃子さんに挟まれて横に成っていた。

親子、川の字という奴だ。

 

ソレが、堪らなく恥ずかしくて

 

ソレが、堪らなく嬉しくて

 

心が痛んだけど、堪らなく幸せだったから

 

日の昇ってない、でも薄っすらと明るみを帯びている空に誓う

 

この人達を護ると

 

 

 

 

 

Side士郎

 

「父さん・・・か」

 

士郎は泣き疲れた少年が、寝てしまう前に「ありがとう・・・・父さん」と言ったのを思い出しニヤ付いていた。

これから新しい息子を如何愛してやろうか? と考えるだけで心が弾む

日本一週武者修行の旅でもするか? それとも、いっその事海外に繰り出してみるか? と考えるだけで楽しい。

恭也とは良く旅に出た物だ・・・ならばそれ以上の事をしても良いのでは無いかと思う。士郎は同じ名前の息子を布団に横たえると、隣に横に成る。

 

「(シロ君は恭也よりも荒事には慣れているから、海外でマフィア潰しをするのも面白そうだ)」

 

もしこの時、恭也が父の顔を見ていたならすぐさま士郎(子)を掻っ攫って逃亡を図るように説得しただろう。ソレほどまでに高町士郎、旧姓・不破士郎は無茶苦茶な人物なのである。再婚してある程度落ち着いた士郎の中の何かが、鎌首を擡げている

 

「(でも・・・桃子に怒られそうだな・・・いやしかし、息子と戯れたいと思うのは父の本能!! 父の業!! むしろ義務?!)」

 

怒られてもヤル、それがこの男である

 

「それにしても・・・・この寝顔はある意味反則だな」

 

士郎は息子の寝顔を見て、溜め息を付いた。

この息子は普段はしっかりしてキリっとした表情をしているため、少し微笑むだけでもギャップが激しいのである。ちょっと無愛想な所も在るので、恭也にも繋がるモノを持っているかもしれない。そう思うと言葉が自然に出た。

 

「孫は三人以上見たいな」

 

「私は四人以上見たいわ〜」

 

突然声が聞こえたので士郎は「ぬぉ!?」と声を上げた。高町桃子、油断なら無い女性である。

 

「も、桃子さん? 何時から其処に?」

 

何時の間にか引かれた布団一式

 

その上に座って「えいえい」と士郎(子)の頬を突く妻

 

チョット可愛いと思ってしまうのは、心底惚れてるからなのだが・・・

 

「そうね〜、あなたがニヤ付いて何か考えてる時位から居たわよ?」

 

なんで気付かなかったんだろう? と、ちょっと自己嫌悪気味な夫に微笑みながら桃子は聞く

 

「なんでニヤ付いてたの?」

 

ソレを聴いて士郎は、頬が緩むのを感じながら言った

 

「始めてシロ君に、父さんって言われた」

 

 

 

その後、まだ「母さん」と呼ばれた事が無い桃子が凹みソレを慰める士郎がチョット様が在って部屋に来た美由希が、目撃している。

序でに美由希が士郎(子)の寝顔を見てドキッとしたのは、彼女の最大の秘密だったりする。この時、桃子が何かを感じたのだが美由希が既に部屋から離れた後だったので、桃子は大層がっかりしたそうな。

 

 

 

『此処ではない何処か』

 

始めまして・・・で良いのかな?

 

私は、ただ観るだけしか出来ないナニか。勿論、名前では無いよ? 名前が無いからね。

 

呼び方は、好きな様に呼んでくれ。

 

私は、ただ疑問を提示するだけだし。偶にナニかのヒントを提示するだけだから。

 

さて・・・彼は護る事を誓ったようだが、ソレが『一』に成れるかどうか・・・答えは人それぞれだ。

 

私にも答えは解らない。今が見えても、先は視えないからね。

 

あなたは、如何思う? 自身の願望を含んでも良い。答えは無数で一つしかないんだから。

 

矛盾ではないよ? 世界は常に増え続け、滅び続け、生まれ続けているのだからね。

 

答えが解るのはまだまだ先のようだから、暇つぶしに提示しただけのこの疑問。

 

面白いと思わないかい? その答えが理解できない物なのかもしれないのに・・・

 

ああ、これ以上は干渉できない様だ。はは、無理はする物じゃ無いね。それでは、この辺で。次に会えるのは何時になるか解らないけどね。

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

早足に部屋に戻った美由希は、ぶつぶつと何かを吐きながら明日の学校の用意をしていた。

 

「シロ君は弟、シロ君は弟、シロ君は弟、シロ君は弟、シロ君は弟、シロ君は弟、シロ君は弟・・・・・・でもチョット可愛かったかも・・・・・・・アレ? シロ君は弟・・・可愛がっても問題なし?」

 

彼女はブラコンに目覚めるかも知れない

 

 

 

 


あとがき(今回は補足?)

 

美由希がブラコンに成る要素はある? と思うBINです

士郎君が護る事を誓った様です。

そして、士郎さんが何かを企んでいるようです。

士郎と士郎、同じ名前を持つ二人が何かを遣らかす物語。

もしかしたら、語れるときが来るかも?

 

士郎が使っている精神安定剤に付いて、正直に言うとBINの趣味ですがちゃんと理由があります。

 

最初は普通に錠剤か液薬を考えていたのですが、速攻性が無いためにタバコ型に変えました。タバコを愛する人ならば、直ぐに解るかも知れませんが簡単に説明します。

 

精神安定の効果が得られる煙を吸う→煙は器官を通って肺に入る→煙は肺にある肺胞から酸素と一緒に、血中に吸収される。→血液は全身に酸素などの栄養素を運ぶ。

 

という感じです。説明が下手ですみません。

 

デメリットが在るとすれば、見た目が悪い。死ぬほど不味い。使いすぎは体に悪い。という所です。

 

長々とすみません。それでは





遂に士郎も守るべきものを見つけたのかな。
美姫 「それよりも悪巧みする士郎の方が気になるわね」
寝ている間に掻っ攫って気がつけば船の上とかなったりな。
美姫 「あり得るかもね。さてさて、次回はどうなるのかしらね」
それではこの辺で。



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