第二話


















 運命は、時に祝福で、時に残酷である。
 避けられない運命、定められた時。
 覆すことすら出来ない出来事。
 運命と螺旋が、今動き始める。






























何かに出逢う者たちの物語・外伝
魔法少女リリカルなのは 〜二つの運命と螺旋に出逢う者〜












































 街から少し離れた森の中。
 街と街の間の森のため、人が居ることは滅多に無い。
 ましてや、今は夜。
 その森に、切り開かれたらしき場所に、魔方陣が出現した。
 さらに魔方陣は、一瞬だけ強い光を放つ。
 そして収まると、アースラのメンバーが立っていた。
 すぐさまリバンとカルナが、周辺の偵察に出た。一般人に見られたかどうかの、念のための確認に。
「よし、先に目的のポイントまで行くぞ!」
 クロノは、全員に指示を出す。
 途中、リバンとカルナと合流し、目的地が見える場所まで移動した。
 時覇は住んでいる街へ。
 そして、森から抜ける手前辺りの茂みに、身を隠す。
「あそこって……水多町?」
 転送してきた管理局チームの一人、なのはが街を見て呟いた。
「知ってるの、なのは?」
 その呟きを聞いたユーノが尋ねてきた。
「うんって言うか……あっちが、私たちが住んでいる海鳴町だよ」
 苦笑しながら、水多町の反対側を指差した。
 その先には、なのはやフェイト、はやてたちの家がある海鳴町があった。
「と……隣町だったのか」
 手で顔を覆うクロノ。
 他の魔導師たちも苦笑、呆れ、引き攣るしかなかった。
『ま、まあ〜、地元だったんだし、それに家を留守にしなくても良くなったんだし、ね』
 なんとかしようと、エイミィがフォローを入れる。
「ま、まあともかく、クロノ提督、指示をお願いします」
 黒髪の男性――ランガが指示を求める。
「ああ、そうだなランガ執務管……では、先の指示道理、三人一チームとなる。第一チームははやて・シグナム・ザフィーラ。第二チームがなのは・ユーノ・ヴィータ、フェイト・アルフ・デュナイダス。そして最後のチームが俺・ルーファン・ライガ。そして待機チームのシャマル・リバン・カルナだ」
 そして、エイミィが通信で補足を伝える。
『各チームのリーダーは、はやて特別捜査官・なのは教導官・フェイト執務官・クロノ提督・リバン執務官です』
 エイミィが言い終わると同時に、リンディに変わる。
『今回の任務は、ロストロギアの回収と桐嶋時覇という方の確保です。ラギュナスよりも早く彼と接触をお願いします』
 どこと無く焦りがある言葉。
 それほど切羽詰った状況であることが分かる。
『では、クロノ提督』
「はい、リンディ提督……では、作戦開始!」
 そして、森から三つの光が飛び立ち、水多町へ三方向に別かれていった






































第二話:動き出す歯車







































「はあ〜、店が潰れたんじゃなくて改装工事かよ……紛らわしいんだよ、店長」
 店長の嘘に踊らせられていた時覇。
 あの後、木本に尋問を受けている時に発覚し、店長だけ叱られている最中だ。
 ちなみに、時覇が今までバイトしてきたところ、全て潰れて止めているのだ。
 しかも、最短記録が、ファミレスの一週間だった。
 潰れた理由は、初の休みの日に店が火事にあった為である。
「それにしても、改装工事なら仕方ないか……別の短期バイトでも、探すかな」
 などとボヤキながら、大通りに出る。
 そこでふと、駅前のデパートが目に入った。
 『新規改装のため、在庫処分セール開催中!』という垂れ幕が掛かっていた。
 すぐ財布を出して、中身を確認する。
 残金――4,708円。
「……久しぶりに、本でも買おうかな」
 財布をポケットに入れながら、デパートの中に消えていった。



 その頃――水多町・東側上空では、なのはのチームはロストロギアを重点において、捜索魔法をかけていた。
(こちらはなのは、シャマルさん聞こえますか?)
 なのはは、辺りをも回しながら、シャマルとの念話を続けた。
(ええ、聞こえますよ、なのはちゃん。定期念話ですね……どうぞ)
(ターゲットらしき人物およびロストロギアの反応はありません。ユーノくん、ヴィータちゃん、そっちの様子は?)
 シャマルに繋いだまま、ユーノとヴィータに念話を繋ぐ。
(こちらユーノ、見つからなかったよ、なのは)
(こちらヴィータ、こっちも同じだよ)
 順に報告する二人。
 ユーノは割と穏やかだったが、ヴィータは少し焦り気味だったの口調だった。
(わかったわ、引き続き捜索とお願いします)
(はい、わかりました……ユーノくん、ヴィータちゃん、私は向こうの方を見てくるから)
 と、町外れの方を指差す。
(うん、僕は町に下りて探してみる)
 と、言いつつ降下していた。
(アタシは、なるべく二人の中間地点上空で索敵魔法をかけてるよ)
 ユーノとなのはの距離を測り始める。
(うん、わかった。二人とも、気をつけてね)
 なのはのフィンフライヤーは一段と輝きを増し、先ほどよりも速いスピードで東側の街外れに飛んでいった。
(気をつけて、なのは)
(高町もな)
 そこで念話を終え、それぞれの配置に移動した。



 一方、はやてのチームは、水多町・中央駅前で桐嶋時覇を探すことに重点を置いていた。
「シグナム、見つかった?」
 探索魔法で辺りを捜索しながら、この時間帯で年頃の男が行きそうな場所を、周って戻ってきたシグナムを迎えた。
「いえ、残念ながら」
 首を横に振りながら答えるシグナム。
「そっか……リインフォース、そっちはどうなったんや?」
 実体化して駅前周辺を限定に、密度の高い探索魔法を発動しているリインフォースU。
「いえ……こう人が多いと……」
 少し落ち込むリインフォースU。
(お前のせいではない)
 ザフィーラが、念話で励ましの言葉を掛ける。
 ちなみに、ザフィーラは子犬モードなので、念話のみの会話しかできない。
「はい――!? マイスター、微弱ながら反応がありました!」
 はやての上着を引っ張りながら、慌てる様に伝える。
「ほんまか!?」
  その言葉に、シグナムとはやての足元にいたザフィーラが、リインフォースUに視線を向ける。
「って、リイン、服が伸びてまうやないか」
「あ、ごめんなさいです、マイスターはやて」
 すぐ手を離す。
「で、リインフォース、場所は?」
 はやての変わりに、シグナムが尋ねる。
「はい、ロストロギアの反応があります。場所は……あのデパートの三階辺りからです」
 その反応があったデパートを指差した。
 そのデパートは、『新規改装のため、在庫処分セール開催中!』という垂れ幕が掛かっていた。
「あそこか……主、どうしますか?」
 シグナムの問いに、考えるはやて。
 そして考えがまとまったのか、顔を上げ、シグナムを見る。
「シグナムは、私と反応を追う。で、ザフィーラがシャルマに連絡でいい?」
「わかりました」
(仰せのままに)
「ではマイスターはやて、案内します。こっちです」
 リインフォースUに案内されて、はやてとジグナムはデパートの中に消えていった。
 それを見送ったザフィーラは、すぐさま裏路に入り、大型犬に姿を変え、周囲を警戒しながら上空へ飛んだ。
(シャルマ、聞こえるか?)
 早速シャルマに念話をする。



(シャルマ、聞こえるか?)
 ザフィーラからの念話受ける。
「どうしたの、ザフィーラ?」
(ロストロギアの反応を確認した。今、主とシグナムが後を追っている)
「はやてちゃんとシグナム二人だけで?」
(リインフォースもいるのだが)
「どうしたんだ?」
 クロノが、念話に割り込んできた。
(ロストロギアの反応を確認した際、主とシグナムが後を追っていところだ)
「なんだって!? 場所は!」
(閉店の垂れ幕が掛かった、中央駅前のデパートの三階だ)
「よし、リバン執務官、カルナ教導官の二名を向わせる」
(頼む)
 そこで、ザフィーラとの念話は途絶える。
「聞いての通りだ。出られるか、二人とも?」
 その言葉に、頷く二人。
「シャマル特別捜査官も、あとから向かわせる」
「了解」
 杖タイプのデバイスを、バトンの様にクルクル回しながら答えるカルナ。
「はぁ……カルナさ、オホン。カルナ教導官、遊ぶなら先行ってますよ?」
 と、浮遊魔法を展開して、空中で浮遊するリンバ。
「ああ、ごめんごめん。それでは」
 二人は、薄い軌跡を残しながら、中央駅前に飛んでいった。
 それを見送るクロノとシャマル。
「シャマル、今までの状況をアースラに報告」
「はい、わかりました」
 その指示に、アースラに通信を繋ぐシャマル。
 そして、クロノはユーノに新たに念話を繋げる。
「ユーノ聞こえるか、確保対象である桐嶋時覇を見つけたらしい。至急、はやてたちと合流してくれと、なのはに伝えといてくれ」
(わかったけど……今、肝心のなのはとの連絡ができないんだよ)
 少し焦った感じで返ってきた。
「なのはとか? ならヴィータとは?」
(ああ、それなら一緒にいるから……とにかく、なのはを探してみる)
 少し考えるクロノ。
「……わかった、判断はそっちに任せる」
(何かわかったら、連絡する)
 そこで念話が終わる。
「クロノ艦長、報告終わりました」
 シャマルがタイミングを計って、声を掛けてきた。
「ああ、ご苦労……すまないが、一人で向かってくれないか?」
「え、わかりましたけど、何か問題でも?」
 少し困惑するシャマル。
「どうやら、なのはと連絡がつかないらしくてな。これからユーノたちと合流する」
「なら、私も一緒に――」
 手を出しで、言葉を止めさせる。
「駄目だ、今は任務を最優先にするべきだ」
 少し落ち込むシャマル。
 そのままクロノは、言葉を続ける。
「ユーノがいるんだ、すぐに見つかるさ。あいつの探索魔法には、いつも当てにしてるからな」
 軽く笑うクロノ。
 いつも口論している二人だが、それなりに信頼はしてるんだなと、感じるシャマルだった。



『本日は、当デパートをご利用いただき、まことにありがとうございます。今日の閉店時間は、8時となっております……』
 頭上からアナウンスが流れるが、時覇は特に気にする事無く、棚に置いてある本を眺めていた。
「う〜ん……ほとんどいい本が、残ってないな〜」
 頭をかきながらぼやく。
 本屋の棚という棚を、一通り見たがほとんどいいのは残っていなかった。
「やはり最終日二日前は、ほとんど無いか……しゃあない、諦めるか」
 渋々本屋を出てきた瞬間、時覇は違和感を覚えた。
 そして、辺りを見回すと、ある一点に集中した。
 こちらをチラチラと柱の影から、見ている人がいたが――
「……自信過剰か」
 苦笑しながら、エスカレーターを降りていった。
 しかし、近くのベンチに座っていた二人(正確には、三人だが)違っていた。
 エスカレーターから、完全に時覇の姿が見えなくなってから、緊張を解いた。
「なあ、シグナム……バレたかな?」
 未だにハラハラしているはやて。
「いえ、他の方を向いていたようです」
 さすがのシグナムも、少しばかり焦ったのか、頬の辺りに、一滴の汗が垂れていた。
(大丈夫です、マイスター)
 はやてを宥めながら、時覇の視点場所が違うと報告する。
「ともかく、桐嶋 時覇を追わないと」
「そうやな、リインフォース」
 小声で、待機状態のシュベルツクロイツに語りかける。
(はい、時覇さんの位置はトレース出来ていますが、ただ……)
 言葉を濁すリインフォース。
「ただなんや?」
(はい、時覇さんから少し離れた距離で、あとを追う人がいるんです)
 その言葉に、はやては焦った。
「まさか……ラギュナス!?」
 つい大声を上げてしまった為、視線が集中する。
「あ……あ〜、行こうか、シグナム」
「は、はい、主はやて」
 二人は、顔を赤くしながら、その場を離れた。
 そして、そのままエスカレーターからではなく、横の階段から時覇の後を追った。
 同時に、柱の影に隠れていた者も後を追うように、エスカレーターに乗り、駆け下りて行った。



 最後に、水多町・東側外れの上空では――なのはは、ラギュナスのメンバーと名乗る男と、空中で向き合っていた。
 その男の名は、ロングイ・バウンティトという。
 互いに向き合って、彼此二分は経過していた。
 そんな沈黙を破ったのが、不意に口を開いたロングイだった。
「管理局に伝える。今すぐ桐嶋時覇から手を引け……お前たちには無価値な男である」
 淡々となのはに言い放ちおえると、いつでも攻撃態勢に入れるようにしてあるロングイ。
 しかし、それで引き下がるなのはではなかった。
「悪いけど……それは無理かな」
 そう言いつつ、レイジングハートを構えるなのは。
「無理、か……ならば悪いが、当分病院で休暇とシャレ込んでくれ」
 そう言いながら、ロングイの魔力が高まった瞬間、一瞬だけ全身に怖気が走った。
 それを感じ取ったレイジングハートが、はのはの代わりに障壁を体全体に展開する。
 が、次の瞬間――十四発のディバインシューターが、四方八方から飛んできた。
「くうううううううう!」
 なんとか不意打ちの攻撃を防いだが、一発一発の攻撃力が並ではなかった。
 おかげで、攻撃が終わったと同時に、障壁は破壊された。
“マスター、無事ですか!?”
「な、なんとか……あ、ありがとう、レイジングハート」
 少々息を切らしながら、レイジングハートに礼を言うなのは。
“いい――マスター!”
 だが、すぐにレイジングハートは叫んだ。
 目の前にロングイがいた。
 だが、それを認知することに戸惑ってしまった。
「邪魔して悪いが、ここでチェックメイトにさせてもらう――」
 言いながら腰を落とし、体を横に捻り、左手をなのはの前に突き出す。
 それと同時に、デバイスが杖から槍に変形した。
「――バインド・ストライク・ランサー!」
 なのはの体にバインドが掛かり、腹部目掛け、矛先が突き刺さる。
「え、がぁ!」
 なのはの意識は、闇に飲み込まれていった。
 それは、一瞬の出来事だった。
 いつの間にか、至近距離にいたロングイのバインド付きゼロ距離攻撃の直撃を受けたのだ。
 状況は、いつの間にか目の前にいたロングイが、拘束魔法でなのはを縛り、持っていた杖が槍に変形させた。
 その槍の先端に、魔力が集約させ、ゼロ距離の直接攻撃を鳩尾に受け、なのはは訳も分からずに気絶してしまったのだ。
 そのまま崩れ落ちるなのはを受け止めるロングイ。
「管理局のSクラスの魔道士……アレに使え――」
「うおおおおおりゃあああああああああ!」
 上空から叫びと、強力な魔力の波動があった。
「チェンジング・インフィニティ」
“了解。――ディフェンダー・リフレクト”
 そのまま叫びと、強力な魔力の主であるヴィータが、グラーフアイゼン振りかざす。
「吼えろ、グラーフアイゼン!」
“うん、ラケーテンフォルム”
 ハンマーヘッドの片方が噴射口に変形すし、その反対側がスパイクに変形した。
 噴射口から火が入り、ロングイ目掛け、回転しながら突っ込んでいったが――
 スパイクが障壁に当たった途端、一瞬だけ障壁が一段と輝きを増した。 ヴィータは目が眩み、同時に吹き飛ばされるように弾かれた。
「うわあああああああああああ!」
 弾かれた衝撃が強かったのか、もの凄い勢いで森に落ちていくヴィータ。
「……ただ闇雲に突っ込めばいいという訳でもないのに」
 ヴィータの落ちて行った場所から上がった煙を、見つめながらなのはを抱え、中央駅方面に飛んでいった。
「雑魚は……無視していいな」
 そう呟きながら。
 そして、ヴィータが落ちた森の方では、慌てて駆けつけたユーノが、落下したヴィータを発見した。
「ヴィータ!しっかりしてヴィータ!」
 必死に呼びかけるユーノ。
 たが、ヴィータは気絶していた。
「こちらユーノ!緊急事態発生!」
 緊急で、アースラに念話を飛ばすユーノ。
(こちらアースラ、どうしたのユーノくん? そんにあわ――)
「エイミィさん、大変なんだ!なのはとヴィータがラギュナスのメンバーと名乗る男、ロングイって奴にやられたんだ!」
(なんですって!?状況は!)
 エイミィは素早くパネルを叩く。
「ヴィータの方は、気絶しているけど……なのはが連れていかれたんだ」
(なのはさんが!?)
 通信に、リンディが割り込んできた。
「はい。……ロングイは、水多町へ飛んでいきました。目的は、未だ不明です」
(わかったわ、すぐ各チームに連絡を入れるわ。ユーノくんは、一旦ヴィータ捜査官を連れてアースラに戻ってきて)
「わかりました……なのは、無事でいてくれ」
 ユーノは、ヴィータと共に転送魔法で、アースラまで跳んだ。



 ロングイは、なのはを抱えたまま、水多町へ向かっていた。
 そして、街を見つめながら一言。
 一言だけ呟いた。

















































『待っていろ、時覇』


















































「 ん? 」
 ふと、時覇は東の空を見上げた。
 そこに、米粒ほどだが白と灰色の光が見えたような気がした。
「……気の、せいか?」
 何か釈然としなかったのか、首を傾げながら、再び歩き出す。
 そして、そのまま公園の方に足がいく時覇。
 気まぐれなのか、必然なのか……何かに導かれるように。
 手の甲の緑色の水晶が輝くのだった。












































第二話:動き出す歯車・END






































次回予告
















あとがき
 駄目作家DBです。
 相変わらず、『シャルマ』と『シャマル』をまた間違えた。(汗
 元があるから、何とか改正しつつ書き直し中。
 バイト辞めるから、こちらに時間を裂けるようになったので、デバックしてから公開ができるように。
 当たり前か。(汗
 まぁ、読みやすくとまでは行かなくても、見栄えはよくなったはず。
 以上、第三話にドラフト・アイ! ――って、酒やんけ!






制作開始:2006/2/12〜2006/2/20
改正日:2006/11/10〜2006/11/29







さてさて、何かに導かれるようにして…。
美姫 「事態は動き出すわよ」
これから先に待っているものとは。
美姫 「また次回でね〜」
ではでは。



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